« 2014年9月 | トップページ | 2014年11月 »

2014年10月

2014年10月 1日 (水)

「第四百三十三話」

「よう。」
「よう。」
俺は、自分の影と話せる。 かと言って他の影と話せる訳ではなく、一人になった時に会話出来る程度だ。
「おう。」
「おう。」
影も他の人間と話せる訳ではなく、他の影と話せる訳でもない。物心ついた時には既に俺は、自分の影と話せた。影は、光が無いと存在しないと思うだろうが、実は影はその存在が目に見えないだけで、何も見えない真っ暗闇の中でも人間が存在しているように、常にそこに存在している。影は俺で、俺は影で、そこに日常があり、その中にほんの少しの非日常がある。おそらく、この先もそれ以上でもそれ以下でもない日々を俺は、過ごして生きて行くのだろう。誰かに驚かれる訳でもなければ、誰かに自慢出来る訳でもない退屈な能力で俺は、日常に期待しながらきっと明日も生きて行くのだろう。
「おやすみ。」
「おやすみ。」

第四百三十三話
「羨ましくない能力百選」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月 8日 (水)

「第四百三十四話」

 喫茶店、あからさまに怪しい二人組。一人は兄貴で一人は子分。二人組が座る窓側の席の窓の向こうに見えるのは、ジュエリーショップ。
「兄貴、あの店ですか?」
「どう考えてもあの店しかないだろ。いちいちバカみたいな質問してくんな。」
「すいません。」
「どの店だと思う?」
「はい?」
「だから、窓の外には何軒か店があるだろ?」
「はい。」
「俺達は、どの店へ強盗に入ると思う?」
「あのジュエリーショップですよね?」
「強盗としては正解だが、コメディアンとしては不正解な回答だな。」
「え?兄貴、俺達はコメディアンなんですか?」
「お前な。いちいちバカみたいな質問してくんなって言ったばっかりだろ?コメディアンが何で強盗に入るジュエリーショップの下見をするんだよ。俺達は、強盗だ。コメディアンじゃねぇ。」
「ですよね。兄貴?」
「何だよ。」
「じゃあ、どうしてコメディアンだったら不正解とか言ったんです?」
「本物のバカだな。お前は。」
「すいません。」
「いいか?強盗なんて、一生続けて行ける職業じゃないんだよ。たから、次に就く職業も常に頭の片隅で考えとかないとならないんだよ。」
「俺達、いつかはコメディアンになるって事ですか?」
「例え話だよ。色々な可能性をシミュレーションしながら強盗しないとだろ。」
「さ、さすが兄貴!」
「声がデカいんだよ。俺が兄貴ってバレるだろうが。」
「すいません。ところで兄貴?」
「何だよ。」
「さっきの兄貴の質問なんですけど、コメディアンだったらどう言う回答が正解だったんですか?」
「お前な。バカみたいな質問するのいい加減にやめないと、いつかとんでもない目に遭うぞ?」
「す、すいません。」
「俺は、強盗だ。コメディアンみたいな回答が思い付く訳がないだろ。そもそも思い付くんだったらこんなとこで強盗に入るジュエリーショップの下見なんかしないでコメディアンしてるだろ。」
「そうかもしれませんけど、兄貴がコメディアンだったら不正解って言うから正解を知ってるのかと思って。」
「ああ、熟々なバカだな。俺はコメディアンとしての正解は知らないが、強盗としての正解を知ってるんだよ。」
「そう言うカラクリですか。さすが兄貴だ!」
「だからバカ!大きな声で兄貴って言ったら、俺が兄貴だってバレバレだって言っただろ。」
「すいません!」
「まったく、お前といると疲れる。この疲れ知らずの俺がだ。」
「それは兄貴、もしかして?」
「褒め言葉な訳がないだろ!」
「がーん!」
「がーん、実際に言う奴、初めて見たよ。」
「それは兄貴、もしかして?」
「褒め言葉な訳がないだろ!これが褒め言葉だったら、世の中の褒め言葉のハードル低過ぎるだろ!褒め言葉なめんなよ!」
「す、すいません!褒め言葉なめてません!」
「あとな。基本的な事を言うが、大声出したり、大声出させたりするな。俺達は、強盗なんだぞ?目立つような真似したりさせたりすんな。」
「了解です。」
「なあ?」
「はい?」
「お前、ちょっとふざけてるだろ。」
「ふざけてませんよ。」
「ジュエリーショップへ強盗に入る下見してる時にお前、ふざけてるだろ?」
「ふざけてませんよ。」
「ふざけてない奴が、了解ですって敬礼するかよ。」
「いや兄貴、むしろ逆に回りに警察だと思わせようと。」
「お前、たまにはナイスアイディアだな。」
「ありがとうございます。ナイスアイディア頂きました。」
「敬礼!」
「敬礼!」
「よし!」
「ついでに銃もチラつかせちゃいますか?」
「バカ、喫茶店で銃をチラつかせる警察がどこにいんだよ。せっかくのナイスアイディアが今のでプラマイゼロだ。」
「がーん!」
「がーん、で敬礼っておかしいだろ!おっかしいだろ!おい、お前は俺をどっぷり疲れさせて、ぐっすり眠らせようとしてんのか?」
「兄貴が、ぐっすり眠れる役に立つなら、俺頑張ります。」
「バカ野郎。どっぷり疲れてぐっすり眠るなんてな。ぐっすり眠れるからしたら本望じゃないんだよ。そんなもんは、ぐっすりに対する冒涜だ!」
「すいません!」
「もうあれだ。いい加減に本題に入るぞ。」
「はい。」
「いやもう敬礼しなくていいから。」
「違うんです、兄貴。」
「違うってなんだよ。」
「やりたくて敬礼してるんじゃなくて、癖になっちゃったんです。」
「何かが人の癖になる瞬間、初めて立ち会ったよ。」
「ありがとうございます。」
「だから褒め言葉じゃねぇよ。」
「本題、お願いします。」
「お前が会話の主導権を握るな!」
「す、すいません!」
「その癖になった敬礼、イライラするから左手で右手を押さえてろ。」
「了解です。」
「何で両手で敬礼しちゃうんだよ!」
「左手に伝染しちゃいました。」
「免疫作れ!」
「す、すいません!こうして両脇で両手を挟んどきます。」
「何で右脇で右手、左脇で左手なんだよ!鶏の形態模写かよ!右脇で左手、左脇で右手だろうが!」
「はい!」
「そうだよ。やれば出来んじゃねぇか。ちょっと偉そうだけど仕方ない。」
「はい。」
「いいか?俺達が強盗に入ろうとしてるあのジュエリーショップの話をするにはまず、あのジュエリーショップのオーナーの話からしなきゃならない。」
「何か特別なオーナーなんですか?。」
「メチャメチャ恐い。」
「はい。」
「いや、お前イマイチ分かってない。あのジュエリーショップのオーナーのメチャメチャ恐さにピンと来てない。」
「はい。正直来てません。兄貴、メチャメチャ恐いって、どんな感じで恐いんですか?」
「鬼みたいな怪物みたいな悪魔みたいなオーナーだ。」
「人間なんですか?」
「姿形は人間だ。だが、奴を怒らしたら最後、その先に待ってるのは、死だ。」
「えっ!?メチャメチャ恐いじゃないですか!?」
「だからメチャメチャ恐いって言ってるじゃないですか。普通に怒らしただけで死だからな。自分の店へ強盗に入られたなんて事になったら、とんでもなくメチャメチャ恐い事になるだろうな。そして想像したくもないが、もしも俺達がやった事がバレたら、どこへ逃げても無駄だ。どんな手段を使ってでも捜し出すだすからな。で、俺達は地獄以上の苦しみを与えられて殺されるだろうな。」
「でも、兄貴?それ程のリスクを冒すぐらい価値ある宝石があの店にはあるって事なんですよね?」
「いや、あの店に物凄い価値の宝石はない。極々普通の宝石があるだけだ。」
「兄貴?」
「ん?」
「バカみたいな質問なんですが、宜しいですか?」
「言うだけ言ってみろ。」
「ありがとうございます。そもそも何でそんなジュエリーショップへ強盗?」
「予告通りのバカな質問だな。」
「すいません。でも、知りたいんです。」
「いいか?俺達は、強盗だ。」
「はい。」
「これはもう、メチャメチャ悪い事だ。」
「はい。」
「メチャメチャ悪い事するにはな。メチャメチャ恐いリスクが必要なんだよ。いいか?俺はな。強盗として価値ある宝石を盗む事より、人として悪い事をしてバレた時のリスクを選んだんだ。」
「兄貴・・・。」
「何だよ。何か文句でもあんのか?」
「兄貴!どこまでも着いていきます!!」
「脇を緩めるな!バカ野郎!あと大声で兄貴って呼ぶなって言ってるだろ!バレるから!」
「すいません!」
「分かったなら、さっさと涙を拭いてよく見るんだ!ターゲットの店を!」
「はい!」
「決行予定は明後日の夜だ。天気予報で大雨だって言ってたからな。」
「兄貴?」
「どうした?」
「よく見たら店の入り口に何か貼り紙がありますよ?」
「何て書いてあるか分かるか?」
「肉眼じゃ無理なんで、ちょっとオペラグラスで見てみます。」
「メチャメチャ恐いオーナーだからな。もしかしたら店へ強盗に入ろうとする者に対しての警告文かもしれないな。やっぱりメチャメチャ恐い奴だな。」
「違うみたいですね。」
「じゃあ、何が書いてあるんだ。」
「閉店しました。」
「がーん!」

第四百三十四話
「オーナー死亡により」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2014年10月15日 (水)

「第四百三十五話」

 優しい話が書きたくて、俺はどこまでも真っ直ぐな道を孤独を満喫しながら車を走らせ、浮かんで来る無数のアイデアと一人戦っていた。
「庭でのんびり日なたぼっこしてたら向日葵に話し掛けられたみたいな感じで今から話す話を聞いてくれ。」
「想像も出来ない感覚だよ!どんな話が展開されんだよ一体!」
「この前な。庭で向日葵に話し掛けられたんだよ。」
「まんま展開されちゃったよ!?」
「向日葵が言うんだよ。チャーハン食べたいってさ。」
「どこかの国のジョークを展開してんのか?」
「ジョーク?これがジョークだったらどれほど幸せか。チャーハン食べたいって向日葵が言ったあと、僕は間髪入れずに向日葵に食べられたんだぞ!チャーハン食べたいって言った矢先にだ!チャーハン食べたいって、食い気味に食われたんだぞ!何か?僕はチャーハンか?」
「とにかく言いたい事はたくさんあるけど、厳選して厳選して一言言わせてくれ。」
「どーぞ。」
「生きてるじゃん!」
「生きてるよ!」
「いや、生きてるよじゃなくて!向日葵に食われたんだろ?」
「食われましたよ!食い気味に食われたよ!びっくりしたよ!まさか向日葵が人間を食うなんて思わなかったからさ!人食いザメや人食いワニやゾンビなら分かるよ!けど、向日葵だぜ?僕の身の丈程の向日葵だぜ?食うかね?僕を!丸呑み!」
「スゲェ喋るな!?所々ツッコミ所満載にスゲェ喋るな!?まず食われた事にびっくりする以前に向日葵が話し掛けて来た時点でびっくりしろ!」
「いや、向日葵が話し掛けて来るのは古文書で読んだ事があったからさ。」
「おい!1つのツッコミ所を処理しきれてないのに次のツッコミ所に誘うな!」
「古文書には、こう書かれていたんだ。コットン100%ってね。」
「それは洋服とかに付いてる洗濯する時に役立つ情報の出所だ!仮に古文書にそう書かれてたんなら!お前はなぜコットン100%で向日葵が話し掛けて来るって解釈を!」
「古文書に書かれたコットン100%は、向日葵が話し掛けて来るって意味なのは、古文書界ではあまりにも有名な話だぜ?」
「どんなあるあるだよ!古文書界って何なんだよ!そんなこんなでとにかく俺が言いたいのは!とどのつまり向日葵に丸呑みされたのに生きてんじゃん!お前、生きてんじゃんか!」
「ああ。」
「ああ、じゃなくて!何だよ、ああって!俺の勢いを全て受け流すような護身術の如く、紳士の如く、ああ、は何なんだよ!」
「向日葵に丸呑みされても死なないんだよ。」
「はあ??」
「別に向日葵に丸呑みされても、だただた向日葵に丸呑みされただけなんだよ。花火大会を見に行った。スイカ割りをした。向日葵に丸呑みされた。そんな他愛ない絵日記のような出来事なのさ。考えてもみろよ。お前、向日葵に丸呑みされて死んだってニュース聞いた事ないだろ?」
「向日葵に丸呑みされて死んだってニュース聞いた事ないけど、向日葵に丸呑みされて生きててもニュースになるだろ!そもそもだったら人食いザメや人食いワニやゾンビの例えおかしいだろ!何だこれは!やっぱりどこかの国のジョークを展開してんのか!」
「ジョーク?これがジョークな訳がないだろ!毒向日葵や人食い向日葵やゾンビ向日葵だったら僕は今頃死んでたんだぞ!丸呑み向日葵で良かったなって話だろ!」
「初めての話にいっぱいの初めてを盛り込んで来んな!」
「お前、古文書って燃やすとどうなるか知ってるか?」
「何で今更、古文書の話に戻るんだよ!知るかよ!あれじゃないのか?何か別の古文書が出現するとかじゃないのか?」
「燃えかすになる。」
「普通の展開!?大概の書物がそうなるだろ!」
「でもな?その燃えかすの上で転がるとどうなるかは予想を上回るだろ?」
「上回ったか下回ったかは、話の続きを聞かなきゃ分からないだろ?」
「真っ黒!」
「よくもそんな普通の展開をミステリアスに話そうと試みたな!」
「でもな?そのまま家に帰ったらどうなるかまでは分からないだろ?」
「そもそもこれって古文書関係あんのか?」
「古文書の燃えかすの上で転がって家に帰ったが為の大どんでん返しが待ち構えているんだよ!」
「じゃあ、家に帰ると魔法使いがいるとかか?」
「お前、どこの古文書の話をしてんだよ!」
「お前がだ!」
「そんな古典的で非現実的な事が巻き起こる訳がないだろ!」
「古典的で非現実的って、どう捉えたらいいんだよ!だったら、どうなるんだよ!古文書の燃えかすの上で転がって家に帰ったら、どんな展開が待ち構えてるんだよ!」
「お母さんに怒られる!」
「妥当だよ!泥だらけの時と同じ展開だよ!」
「実際には、泥だらけの時より3ぐらい違うけどな。」
「何の数字だそれは!3ぐらいなら同じでいいだろ!」
「お前!この3をただの3だと思うなよ!」
「いや、そもそもの3が何の3なのかが分からないから!」
「あの3とは全くの別物だからな!」
「どの3だよ!」
「だから!!」
「何でキレられてんだ?俺は?」
「この場合の3は、普通の数にしたら8だよ!」
「家に帰った時のお母さんが怒る指数とか知らないから!いや、んなもん無いから!で、8ならやっぱり大しての範囲内だろ!」
「お前!この8をただの8だと思うなよ!」
「どこまでこんなどうでもいい訳の分からない数字の話をするつもりだ!」
「ごめん。お前にはまだ早かったかな。」
「訳の分からない話を持ち出して俺を見下すな!」
「お前、将来の不安ある?」
「え!?急に真面目な展開!?」
「ある?」
「まあ、そりゃあ、あるよ。誰だってあるだろ?お前だってあるだろ?経済的な不安とか、健康面の不安とか、介護の不安とか、考え出したらキリがないよ。」
「いや、明日地球が粉砕したらの不安。」
「将来で明日持ち出して来んなよな!で、ねぇよ!地球が粉砕したらの不安なんて1度も抱いた事がねぇよ!」
「お前、おこがましいな。」
「どちらかと言ったらお前がだろ!何だよ明日地球が粉砕したらって!相変わらずどこかの国のジョークを展開してんのか?そんな不安を毎日抱いて生きてたら生きてられるか!」
「お前、道でマッチョと擦れ違う時があるだろ?」
「何でマッチョが登場人物として出て来るんだよ!」
「いいから聞け!」
「お前の話を聞いて良かった展開ないぞ?」
「聞け!!」
「話せ!!」
「道じゃなくても公共の場でマッチョを見掛ける事があるだろ?」
「あるよ!」
「そん時に不安が脳裏を横切らないのか?」
「どんな不安が横切るんだよ!」
「あのマッチョが激怒して地面を殴ったら明日地球が粉砕するんじゃないかって不安だろ!」
「横切るか!だいたいそのタイムラグは何なんだよ!地面殴ったらその瞬間に粉砕なんじゃないのかよ!」
「マッチョ指数×地球のコアまでの距離÷重力=明日、だろ!」
「何だその数式!どんな博士がどの面下げて導き出した方程式だ!」
「まあ、明日ってのは世界最強のマッチョを当てはめた場合で、そこら辺のマッチョだったら約120年ってとこかな?」
「なら俺の将来の不安の範囲の遥か先を行ってんじゃねぇか!」
「だけど世界最強のマッチョだったら明日だぞ!世界最強のマッチョ怒らせて地面殴られたら明日なんだぞ!」
「だったらその世界最強のマッチョを死ぬまで激怒させなきゃいいだろ!」
「な、何て優しい発想なんだ!?」
「まず最初に辿り着く発想だろ!」
「丸呑みマッチョ向日葵だったらどうする?」
「丸呑み向日葵ですら想像出来てないのに更にその上を行く向日葵を想像出来てたまるか!燃やせばいいだろ!」
「そんな事したらその燃えかすの上で転がって、家に入ろうとしたらマッチョお母さんが絶対激怒で地球粉砕だろうが!」
「どこの国のジョークを展開してんだ一体!」
優しい話が書きたくて、俺は相変わらずどこまでも真っ直ぐな道を孤独を満喫しながら車を走らせ、浮かんで来る無数のアイデアと一人戦っている。

第四百三十五話
「ボツ」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月22日 (水)

「第四百三十六話」

「おはよ。」
「おはよう。」
「いただきます。」
「ねぇ?朝御飯を食べる前に、ちょっと言って欲しい事があるんだけど?」
「食べながらでもいいだろ?」
「食べながらじゃダメなの。」
「いや、食べながらじゃダメって事ないだろ。」
「ダメって事があるのよ。」
「一般家庭だぞ?俺達は、普通の在り来たりな夫婦だぞ?やっぱり食べながらじゃダメって事ないだろ。大統領でもあるまいし。」
「極々一般家庭の在り来たりな普通の結婚生活五年目の季節が移り変わる晴天の朝の食卓だからこそダメなの!」
「テーブルに右肘グリグリやりって怒る事でもないだろ。いただきます。」
「おいこら待てーい! テーブルに右肘グリグリやって妻が怒ってる目の前で夫がいただきますって! テーブルに右肘グリグリやりって妻が怒ってる目の前で夫がいただきますって! テーブルに右肘グリグリやりって妻が怒ってる目の前で夫がいただきますって!」
「早口過ぎて音じゃ捉えられないよ。」
「だから!言って欲しい事があるの!その言葉を言ったら朝御飯食べていいし、屋上でも公園が見渡せる建設途中のビルでも小高い丘の上でも好きなとこ行っていいわよ。」
「スナイパーか俺は!何だよ。その言って欲しい言葉ってのは?」
「あのね?」
「うん。」
「あのね?」
「何だよ。」
「あのね?」
「あのね?いただきます。」
「あのね?じゃねぇし!言って欲しい言葉、あのね?な訳ねぇし!」
「連呼してたろ。」
「恥じらいの連呼よ!」
「おいお前まさか!?」
「察した?さすがに察した?」
「俺に朝から下ネタ言わせる気じゃないだろうな!」
「どんな変態的思考回路よアタシは!」
「いただきます。」
「だから食おうとしないで!」
「ならさっさと俺に言って欲しい言葉を言えよ。」
「あのね?」
「うん。」
「だからね?」
「うん。」
「アナタに言って欲しい事って言うのはね?」
「言って欲しい事って言うのは?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・?」
「・・・キャッ!恥ずかしい!」
「バカなのか?」
「バカじゃねぇし!」
「じゃあ、何で朝から乙女が恥ずかしがる時みたいな感じで恥ずかしがってんだよ。」
「アタシ乙女だし!朝から晩まで乙女だし!生まれてから死ぬまで乙女だし!そう女は未来永劫!乙女だし!」
「ミュージカル?」
「どんなミュージカルだ!何でアタシは朝から夫相手に一人ミュージカルしなきゃならないのよ!」
「歌って踊り出しそうな勢いだったからさ。」
「ちょっと待ちなさいよ!アナタのせいで話が全然前へ進まないじゃない!」
「お前のせいだろ!お前がさっさと俺に言って欲しい言葉を言えば前へ進む話だろ!」
「乙女心察せよ!」
「いきなり朝から言って欲しい言葉がある。それを言うまで朝御飯は食べちゃダメで察せるか!右肘グリグリやめろ!テーブルに穴でも開いたらどうすんだよ!もしくは火事んなったらどうすんだ!ローンもまだ払い終えてないんだぞ!」
「超人かアタシは!超高速右肘グリグリで宇宙からの侵略者をやっつけるのか!地球のピンチ何度も救うか!大体、テーブルや家の心配する以前にアタシの右肘の心配したらどうなの!」
「酔っ払ってんのか?」
「酔っ払ってねぇよ!」
「いただきます。」
「いただきますでもねぇよ!」
「いい加減に食わしてくれよ。休日にゴロゴロしながら溜め録り観るのが楽しみなんだからさ。」
「何だそれ!しょーもない!もっとバーベキューとかロッキングチェアで読書とか湖で釣りとか大人の休日の過ごし方があるだろ!」
「山男か俺は!ハム、ナイフに刺したままフライパンで焼くか!ちょっと町まで食料と銃弾を買いに行って来るって言って四駆に乗り込むか!」
「ならアタシはその間に野イチゴでジャムでも作るか!」
「ノリをノリで返すなよ!全く話が進まないだろ?乙女の壁を乗り越えて、さっさと俺に言って欲しい言葉を言えよ!」
「愛してる!」
「はあ?」

「愛してる!」
「急に何だよ?潜伏期間を経て発病したのか?」
「冒険者かアタシは!ジャングルで見知らぬ植物触ったか!違うわよ!アナタに言って欲しいのよ!愛してるって!」
「何で今?」
「極々一般家庭の在り来たりな普通の結婚生活五年目の季節が移り変わる晴天の朝だからよ!」
「はあ?」
「ふと気付いたのよ!ふと気付いちゃったのよ!言われてないってね!愛してるって言われてないってね!」
「そうか。」
「そうよ!結婚する前は、あんなに愛してるって言ってくれたのに!結婚してからはどう?どうなの?そう!全く言ってくれない!」
「悪かったよ。」
「だから今!朝御飯を食べる前に言って欲しいの!アナタの口からアナタの言葉で、愛してるって!」
「そうだったのか。」
「どーぞ。」
「いただきます。」
「いただきますじゃねぇし!要望の全貌明らかになったのに、いただきますじゃねぇし!アタシがコメディアンだったら今頃、椅子と共によ!視線の先には天井よ!」
「ひっくり返ってないとこを見ると、お前はコメディアンじゃないんだな。」
「当たり前じゃい!今度劇場に来てねって、チケット渡した事ないだろ!」
「分かったから右肘グリグリやめろよ。カニみたいになったらどうすんだよ。」
「シオマネキかアタシは!どんな運動量よ!いやいやいやいやいやいやいや、こんなどーでもいい会話してる場合じゃなくて!早く愛してるって言ってよ!」
「嫌だよ。」
「はい?え?何々?それってつまりは、アタシの事をもはや愛してないって事?」
「そんな訳ないだろ?」
「じゃあ!言おうよ!愛してるって言おうよ!言ってしまおうよ!」
「だから、嫌だって。」
「アタシの事をもはや愛してない訳じゃないのに嫌なの?」
「まあ、あれだよ。嫌って言うのはつまりは恥ずかしいって事だよ。」
「恥ずかしいって何?愛してるなら愛してるって恥ずかしがらずに言えるでしょ?言えちゃうでしょ?」
「恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ。それに言葉にしなくても分かるだろ?」
「言葉にしなくても分かるかもしれないけど、言葉にして欲しいのよ!それが乙女心なのよ!」
「それに言うんだったらもっとロマンチックなシチュエーションの方がいいだろ?」
「分かってない!アナタ、全っ然分かってないわ!ロマンチックなシチュエーションの時になんて男の勝手な思い込みで、 極々一般家庭の在り来たりな普通の結婚生活を過ごしてる女は何気ない有り触れた日常生活の中で愛してるって言われたいのよ!」
「そう言うもんなのか?」
「だってそうでしょ!恋人じゃなくて夫婦なんですもん!ロマンチックなシチュエーションがいつ来る事やら!」
「そうか。」
「そう!」
「なるほどな。」
「だから、お願い!」
「そうだよな。」
「ほら!」
「その気持ちに気付いてやれなくて悪かった。」
「うん、謝罪はいいから!」
「本当に、ごめん。」
「うん、だからほら!」
「考えてみれば最後に言ったのはいつだったかなぁ?確か遊園地の観覧車の中だったかなぁ?いや待てよ?結婚式の」
「言う気ないだろ!何となくこの場をはぐらかしてゴロゴロする気だろ!」
「第五話が気になるんだよ。早く観たいんだよ。」
「妻に愛してるって言うよりもドラマの続きが気になるって何なんだよ!」
「続きが気になるように作ってるんだろ?ドラマってのはさ。」
「はあ、何か、もういいや。アナタに期待したアタシが愚か者だった。」
「いや、今日じゃなかったら言ってたよ。確実に恥ずかしさを乗り越えて言ってたよ。」
「今日言えない男がいつ言えるってのよ。」
「あのドラマの続きさえ気にならなかったらと思うと痛恨の極みだ!」
「もういいって、さっさと食べて、とっととゴロゴロすれば?」
「いただきます。」
「早っ!で?ドラマって何?」
「ああ、ほらシリーズもの。今シーズン3のだよ。」
「ん?何てタイトル?」
「愛してる。」
「あ?」

第四百三十六話
「ボヤ」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年10月29日 (水)

「第四百三十七話」

「この写真を見なさい。」
「教授?これは?」
「何だと思うかね?」
「犬種は分かりませんが、小型犬ですか?」
「マンモスだ。」
「ウソですよね?」
「ウソじゃない。マンモスだ。」
「どう頑張って見たって小型犬ですよね?」
「小型犬に見えるかもしれないが、やはりマンモスだ。」
「小型犬にしか見えませんよ。」
「うむ。」
「いや、うむじゃなくて!これがマンモスなら、街のペットショップはマンモスだらけですよ!」
「マンモスだらけだな。いや実際、マンモスだらけだ。」
「はい?教授?大丈夫ですか?」
「長年進化の分野を研究して来て分かった事実がある。」
「唐突に何ですか?」
「長年進化の分野を研究し続けて昨夜分かった事実だ!」
「何ですか?」
「小型犬がマンモスだと言う事実だ!」
「これだったんですか!?信念も熱意も感じられない、やっつけの単なる思い付きとしか私には思えません!」
「マンモスはな。絶滅などしていなかった。小型犬に進化し、時代を今も生きている。」
「斬新過ぎですよ!」
「そうだな。マンモスは実に斬新な進化方法を見付けたな。だがしかし!その斬新な進化により!犬に紛れ込む事により!絶滅の危機を免れた!」
「すいません。その斬新な進化を真に受けると、つまり中型犬と大型犬は犬で、小型犬だけがマンモスと言う事なんですか?」
「そうですよ。」
「そんなバカな進化がありますか!」
「生物の進化とは、そんなバカなの連続です。一方では不合理に見えても一方では実に合理的、時に我々の想像の遥か上を行く、それが進化の正体です。」
「いや教授。何もそんな進化全体の大きな話をしている訳ではなくて、マンモスが小型犬に進化したウソの話をしているんですよ。」
「この斬新進化は、進化の歴史を大きく変える!マンモスだけではなく!進化全体に関わる話なんだ!キミは、恐竜が絶滅していないって話を知っているな?」
「知りませんよ!そんなウソ!」
「知らないの!?」
「こっちがビックリてすよ!」
「そんな事も知らないで進化の研究に携わってんの!?」
「だから、ビックリはこっちですよって!つまり教授は、恐竜もマンモス同様に斬新な進化をして今も生き続けていると仰りたいんですね!」
「そうですよ。」
「なら、恐竜は一体何に進化したと言うんですか!」
「部長だ。」
「部長だ、って何ですか?」
「だから、部長だよ。」
「だから、部長って何ですか?」
「主に会社に生息してるだろ。」
「生息って言うか、会社内でのみ通用する役職ですよね?」
「あれは、恐竜が進化した姿だ。」
「新入社員が積み上げた功績の証だ!」
「違うよ!そじゃないよ!」
「言っちゃいますけど部長は人間ですよね!教授は!恐竜は人間に進化したって言うんですか!」
「違うよ。恐竜は部長に紛れ込む事により、絶滅の危機を免れたって事だよ。」
「恐竜から部長の間は何だったんですか!」
「無いよ。そんな時代。」
「じゃあ、最近まで恐竜が恐竜の姿で存在してたって事になるじゃないですか!」
「何で?」
「部長の歴史が浅いからだ!」
「おいおいおい、進化の研究に携わる者なら、太古の昔から部長が存在していたとは考えられないのか?」
「頑張っても無理です!」
「人類がやっと部長に追いついたとは、考えられないのか?」
「いやもう、そうなると部長って何なんですか?ってなりますよ?」
「だから!恐竜の斬新な進化だと言ってるだろ!部長部長と私は言ってるが、それはあくまでこの時代に合わせた呼び名であって!恐竜が進化した当時の呼び名は知らないよ!どっかの部長に聞いてくれよ!」
「知り合いに部長がいますが、彼は人間ですよ?」
「全部の部長が恐竜だとは言ってないだろ?二割は、新入社員が積み上げた功績の証だよ!」
「多っ!?恐竜の比率多っ!?」
「だってどうしたってそうだろ?そうなっちゃうだろ?」
「ならないでしょ!」
「とにかく!マンモスは小型犬で部長は恐竜なんだよ!」
「とにかくの部分があまりにも不鮮明過ぎる!単なる駄々っ子じゃないですか!」
「駄々っ子?つまり私は、ペガサスと言う事か?」
「現象が想像上の生き物の進化って何なんですか!」
「想像上の生き物?キミは、ペガサスが想像上の生き物だと言うのか?」
「神話の世界でのお話ですよね?」
「神話の世界の話に登場するから想像上の生き物とは、安直にも程がある!だったら、人間も神話の話に登場するから想像上の生き物ってか?」
「それは単なる屁理屈でしょうが!なら、ペガサスが進化した姿が駄々っ子だとしたら!ユニコーンが進化した姿は一体何なんですか!」
「ユニコーンは想像上の生き物だろ。」
「何でだよ!何でペガサスが実在してユニコーンは想像上の生き物に部類されるんですか!」
「角が生えてる馬が実在する訳がないだろ。」
「翼が生えてる馬も同じぐらい実在する訳がないじゃないですか!」
「ペガサスは、駄々っ子に紛れ込む事により、絶滅の危機を免れたんだ!」
「小型犬、マンモスの段階でその斬新な進化論が信憑性ゼロなのに、恐竜ペガサスで病院送りですよ。」
「じゃあ、時計は何が進化した姿だ?」
「何で急に楽しいクイズ形式みたいな展開になったんです?まず、時計が何かの進化した姿だなんて考えた事もないですし!何かが時計に進化するとも考えた事ないです!」
「ブッブー!」
「不正解でも全く悔しくないです。」
「時計は、ケセランパサランが進化した姿でしたー!」
「遂に謎の生物まで持ち出しちゃったよ!?」
「ではこれからは、少しだけ未来の話をしよう。」
「どう言う意味ですか?」
「ゴリラは何に進化すると思うかね。」
「しませんよ!ゴリラはゴリラですよ。」
「ゴリラはな。タイムマシーンに進化する!」
「そんな訳がない!しかも近い将来って!二つの意味で、そんな訳がない!」
「盲点だったろ?」
「ゴリラにそんな片鱗を見出した事ありませんよ!」
「これらの長年の進化の研究の果てに辿り着いた昨夜の大発見のこの斬新進化を私の集大成として論文で発表するつもりだ。」
「やめて下さい!そんな事をしでかしたら!教授の名は地に落ちますよ!しかも教授の展開する根拠もない話に誰も肯定しませんよ!」
「勇気の問題だ。」
「はあ?勇気でどうにかなる問題じゃないですよ!」
「確かに私の偉大な斬新進化に賛同する者は少ないかもしれない。」
「一人もいませんよ!そんな思い付きに賛同する者は!まず実証や検証のしようがないでしょうが!」
「だがどうだ?それはつまり一方で誰も否定出来ないと言う事だ。」
「それはまさに屁理屈ど真ん中だっ!!」

第四百三十七話
「進化論の進化」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年9月 | トップページ | 2014年11月 »