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2014年10月 8日 (水)

「第四百三十四話」

 喫茶店、あからさまに怪しい二人組。一人は兄貴で一人は子分。二人組が座る窓側の席の窓の向こうに見えるのは、ジュエリーショップ。
「兄貴、あの店ですか?」
「どう考えてもあの店しかないだろ。いちいちバカみたいな質問してくんな。」
「すいません。」
「どの店だと思う?」
「はい?」
「だから、窓の外には何軒か店があるだろ?」
「はい。」
「俺達は、どの店へ強盗に入ると思う?」
「あのジュエリーショップですよね?」
「強盗としては正解だが、コメディアンとしては不正解な回答だな。」
「え?兄貴、俺達はコメディアンなんですか?」
「お前な。いちいちバカみたいな質問してくんなって言ったばっかりだろ?コメディアンが何で強盗に入るジュエリーショップの下見をするんだよ。俺達は、強盗だ。コメディアンじゃねぇ。」
「ですよね。兄貴?」
「何だよ。」
「じゃあ、どうしてコメディアンだったら不正解とか言ったんです?」
「本物のバカだな。お前は。」
「すいません。」
「いいか?強盗なんて、一生続けて行ける職業じゃないんだよ。たから、次に就く職業も常に頭の片隅で考えとかないとならないんだよ。」
「俺達、いつかはコメディアンになるって事ですか?」
「例え話だよ。色々な可能性をシミュレーションしながら強盗しないとだろ。」
「さ、さすが兄貴!」
「声がデカいんだよ。俺が兄貴ってバレるだろうが。」
「すいません。ところで兄貴?」
「何だよ。」
「さっきの兄貴の質問なんですけど、コメディアンだったらどう言う回答が正解だったんですか?」
「お前な。バカみたいな質問するのいい加減にやめないと、いつかとんでもない目に遭うぞ?」
「す、すいません。」
「俺は、強盗だ。コメディアンみたいな回答が思い付く訳がないだろ。そもそも思い付くんだったらこんなとこで強盗に入るジュエリーショップの下見なんかしないでコメディアンしてるだろ。」
「そうかもしれませんけど、兄貴がコメディアンだったら不正解って言うから正解を知ってるのかと思って。」
「ああ、熟々なバカだな。俺はコメディアンとしての正解は知らないが、強盗としての正解を知ってるんだよ。」
「そう言うカラクリですか。さすが兄貴だ!」
「だからバカ!大きな声で兄貴って言ったら、俺が兄貴だってバレバレだって言っただろ。」
「すいません!」
「まったく、お前といると疲れる。この疲れ知らずの俺がだ。」
「それは兄貴、もしかして?」
「褒め言葉な訳がないだろ!」
「がーん!」
「がーん、実際に言う奴、初めて見たよ。」
「それは兄貴、もしかして?」
「褒め言葉な訳がないだろ!これが褒め言葉だったら、世の中の褒め言葉のハードル低過ぎるだろ!褒め言葉なめんなよ!」
「す、すいません!褒め言葉なめてません!」
「あとな。基本的な事を言うが、大声出したり、大声出させたりするな。俺達は、強盗なんだぞ?目立つような真似したりさせたりすんな。」
「了解です。」
「なあ?」
「はい?」
「お前、ちょっとふざけてるだろ。」
「ふざけてませんよ。」
「ジュエリーショップへ強盗に入る下見してる時にお前、ふざけてるだろ?」
「ふざけてませんよ。」
「ふざけてない奴が、了解ですって敬礼するかよ。」
「いや兄貴、むしろ逆に回りに警察だと思わせようと。」
「お前、たまにはナイスアイディアだな。」
「ありがとうございます。ナイスアイディア頂きました。」
「敬礼!」
「敬礼!」
「よし!」
「ついでに銃もチラつかせちゃいますか?」
「バカ、喫茶店で銃をチラつかせる警察がどこにいんだよ。せっかくのナイスアイディアが今のでプラマイゼロだ。」
「がーん!」
「がーん、で敬礼っておかしいだろ!おっかしいだろ!おい、お前は俺をどっぷり疲れさせて、ぐっすり眠らせようとしてんのか?」
「兄貴が、ぐっすり眠れる役に立つなら、俺頑張ります。」
「バカ野郎。どっぷり疲れてぐっすり眠るなんてな。ぐっすり眠れるからしたら本望じゃないんだよ。そんなもんは、ぐっすりに対する冒涜だ!」
「すいません!」
「もうあれだ。いい加減に本題に入るぞ。」
「はい。」
「いやもう敬礼しなくていいから。」
「違うんです、兄貴。」
「違うってなんだよ。」
「やりたくて敬礼してるんじゃなくて、癖になっちゃったんです。」
「何かが人の癖になる瞬間、初めて立ち会ったよ。」
「ありがとうございます。」
「だから褒め言葉じゃねぇよ。」
「本題、お願いします。」
「お前が会話の主導権を握るな!」
「す、すいません!」
「その癖になった敬礼、イライラするから左手で右手を押さえてろ。」
「了解です。」
「何で両手で敬礼しちゃうんだよ!」
「左手に伝染しちゃいました。」
「免疫作れ!」
「す、すいません!こうして両脇で両手を挟んどきます。」
「何で右脇で右手、左脇で左手なんだよ!鶏の形態模写かよ!右脇で左手、左脇で右手だろうが!」
「はい!」
「そうだよ。やれば出来んじゃねぇか。ちょっと偉そうだけど仕方ない。」
「はい。」
「いいか?俺達が強盗に入ろうとしてるあのジュエリーショップの話をするにはまず、あのジュエリーショップのオーナーの話からしなきゃならない。」
「何か特別なオーナーなんですか?。」
「メチャメチャ恐い。」
「はい。」
「いや、お前イマイチ分かってない。あのジュエリーショップのオーナーのメチャメチャ恐さにピンと来てない。」
「はい。正直来てません。兄貴、メチャメチャ恐いって、どんな感じで恐いんですか?」
「鬼みたいな怪物みたいな悪魔みたいなオーナーだ。」
「人間なんですか?」
「姿形は人間だ。だが、奴を怒らしたら最後、その先に待ってるのは、死だ。」
「えっ!?メチャメチャ恐いじゃないですか!?」
「だからメチャメチャ恐いって言ってるじゃないですか。普通に怒らしただけで死だからな。自分の店へ強盗に入られたなんて事になったら、とんでもなくメチャメチャ恐い事になるだろうな。そして想像したくもないが、もしも俺達がやった事がバレたら、どこへ逃げても無駄だ。どんな手段を使ってでも捜し出すだすからな。で、俺達は地獄以上の苦しみを与えられて殺されるだろうな。」
「でも、兄貴?それ程のリスクを冒すぐらい価値ある宝石があの店にはあるって事なんですよね?」
「いや、あの店に物凄い価値の宝石はない。極々普通の宝石があるだけだ。」
「兄貴?」
「ん?」
「バカみたいな質問なんですが、宜しいですか?」
「言うだけ言ってみろ。」
「ありがとうございます。そもそも何でそんなジュエリーショップへ強盗?」
「予告通りのバカな質問だな。」
「すいません。でも、知りたいんです。」
「いいか?俺達は、強盗だ。」
「はい。」
「これはもう、メチャメチャ悪い事だ。」
「はい。」
「メチャメチャ悪い事するにはな。メチャメチャ恐いリスクが必要なんだよ。いいか?俺はな。強盗として価値ある宝石を盗む事より、人として悪い事をしてバレた時のリスクを選んだんだ。」
「兄貴・・・。」
「何だよ。何か文句でもあんのか?」
「兄貴!どこまでも着いていきます!!」
「脇を緩めるな!バカ野郎!あと大声で兄貴って呼ぶなって言ってるだろ!バレるから!」
「すいません!」
「分かったなら、さっさと涙を拭いてよく見るんだ!ターゲットの店を!」
「はい!」
「決行予定は明後日の夜だ。天気予報で大雨だって言ってたからな。」
「兄貴?」
「どうした?」
「よく見たら店の入り口に何か貼り紙がありますよ?」
「何て書いてあるか分かるか?」
「肉眼じゃ無理なんで、ちょっとオペラグラスで見てみます。」
「メチャメチャ恐いオーナーだからな。もしかしたら店へ強盗に入ろうとする者に対しての警告文かもしれないな。やっぱりメチャメチャ恐い奴だな。」
「違うみたいですね。」
「じゃあ、何が書いてあるんだ。」
「閉店しました。」
「がーん!」

第四百三十四話
「オーナー死亡により」

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コメント

そういえば4〜5年前に見ていたあのssサイト、まだあるんだろうか、とふと今日思い出しまして、久しぶりに読みたくなり微かな記憶を頼りに探した結果、なんとかここを探し出すことができました。
これからまた時間を見つけて読ませていただきます。
これからも更新頑張ってください。

投稿: ななし | 2014年10月13日 (月) 01時23分

おかえりなさい!

微かな記憶を頼りに探し出してもらえて嬉しいです!これからもガシガシ更新して行くので、暇潰しの暇潰しにでも、また来て下さい。

コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2014年10月15日 (水) 20時51分

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