« 「第四百三十九話」 | トップページ | 「第四百四十一話」 »

2014年11月19日 (水)

「第四百四十話」

 人類は、滅亡した。
「滅亡したな。」
「滅亡しましたね。」
地球は、これでもかってぐらい原形をとどめていなかった。僕は、滅亡した地球の今ではもはやどこだったか分からない場所で、おじさんと二人、生き残った。
「急にだったな。」
「急にでしたね。」
「あれだな?滅亡するする言ってる時にはしないで、もうしないんじゃないかって時に、するな。」
「しますね。」
「滅亡ってのは、あれかな?忘れた頃にするのかね?」
「忘れた頃にするのかもしれないですね。」
地球が呆気なく滅亡してから、一体どれだけの月日が流れているんだろう?時間も分からなければ、朝なのか夜なのかも分からない。何よりもおじさんに助けられた時、僕がどれぐらい気を失っていたのか、分からない。そして今日、おじさんの献身的な看病でやっと起き上がって会話が出来るようになった。あれから自己感覚で言うと一週間だろうか?
「ドーン!って急にだもんな。」
「ドーン!ってなったんですか?」
「なったなった!ドーン!って!物凄くドーン!って!」
「そうだったんですか。」
「覚えてないのか?」
「全然思い出せません。」
「そうか。」
「はい。」
「ドーン!って大きな音がしたと思ったら、次の瞬間にはもう、滅亡だ。」
「ドーン!の原因は何なんですか?」
「さあな?俺は専門家じゃないからそこんとこ詳しく分からないが、たぶん地球が大爆発したんじゃないか?」
「地球が大爆発!?」
「ああ、でなきゃ滅亡なんてしないだろ。今の時代、どんな隕石だろうが事前に破壊出来るんだから、今の時代?前の時代か。」
「前の時代・・・。」
僕は、おじさんの言葉に妙に納得した。時代って節目が明確にあるんだとしたら、きっとそれは本当の意味で今なんだろう、と。
「どうした?」
「いえ、何でもないです。」
「落ち込む気持ちは分かる。」
「落ち込む・・・。」
そう、僕は今、おじさんの言葉で初めて自分が落ち込んでないって事に気付いた。いや、実際は落ち込んでないんじゃなくて、落ち込むのを忘れていたって表現した方がいいのかもしれない。地球が滅亡してから今まで、僕には落ち込む暇すらなかったんだ。
「俺はな、青年。」
「はい。」
「運命なんて言葉は、信用してない。」
「はい。」
「俺と青年が生き残ったのだって、運命だなんて思ってない。」
「はい。」
「たまたまだ。たまたま生き残った。それだけだ。それだけの事だ。」
「はい。」
「誰が生き残ったって、誰が死んだって、おかしくない状況だったんだ。なんせ滅亡だからな。」
「はい。」
「俺が青年を発見したのも、たまたまだ。」
「はい。」
「たまたま歩いてたら、たまたまそこに青年が倒れてた。たまたま近付いて行ったら、たまたま息をしてた。そして、たまたま助けた。」
「ありがとうございます。」
「何だよ急に!?突然どうした。」
「いえ、おじさんに助けてもらったのに、まだちゃんとお礼もしてなかったと思って。」
「よしてくれよ!きっと青年が俺の立場でも同じ事したろ?」
「それはそうですけど。」
「だったらこんな事でお礼なんかよしてくれ。俺だって青年が回復して、こうして会話してくれる事に感謝してんだ。」
「そんな、感謝だなんて。」
「だろ?だから、落ち込むのも感謝も無しだ。」
「はい。」
落ち込むのも感謝も無し、おじさんは笑って言った。これから一体どうなるのかも分からないのに、笑っていた。笑う事で何かを忘れようとしているのか、笑う事で何か大事なモノを忘れないようにしているのか、それともたまたまなのか、目の前のおじさんは笑っていた。でも、どんな意味があろうとも地球が滅亡してのに笑っていられるおじさんを僕は、尊敬していた。
「しっかし、青年!」
「はい?」
「滅亡するかねぇ!ええ?こうもあっさり滅亡ってするもんなのかねぇ!」
「しちゃいましたね。」
「しちゃったな!」
「しちゃいました。」
「滅亡しちゃったな!もう、見るからに滅亡だもんな!」
「滅亡ですね。」
「疑いようもないもんな!」
「ありませんね。」
「凄いな!」
「凄いですね。」
「いやあ!滅亡だな!」
「滅亡です。」
「で、あれだな?青年!」
「はい?」
「以外とこう、こっちもすんなりと受け入れられるもんだな!」
「ですね。」
「まあ、あくまでも思ってたよりもの話だけどな!」
僕とおじさんは、終始笑っていた。笑いながら、どうでもいいような事を話していた。おじさんと出逢わなければきっと、自殺していたかもしれない。だけどそれはきっと、この先も口に出す事は無いだろう。出したとしたらきっと、おじさんに怒られてしまうから。
「青年!青年!」
「はい。」
「滅亡って、めちゃくちゃ恐いな!」
「恐いですね。」
「で、滅亡って、めちゃくちゃ腹減るな!」
「減りますね。」
運命なんて言葉は、信用してない。おじさんはそう言った。それは、僕も同じだった。運命なんてモノは、信用していない。けど、運命なんてモノが存在するんだとしたら、神様みたいなモノが実在するんだとしたら、不謹慎かもしれないけど僕は、強く思った。

第四百四十話
「美女がよかった」

|

« 「第四百三十九話」 | トップページ | 「第四百四十一話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/58035331

この記事へのトラックバック一覧です: 「第四百四十話」:

« 「第四百三十九話」 | トップページ | 「第四百四十一話」 »