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2014年12月10日 (水)

「第四百四十三話」

「先生!これは、何ですか?私の右手にあるモノは何なんですか?」
「脳みそですね。」
「そうですよね!脳みそですよね!何で私の右手に脳みそが!」
「知りませんよ。逆に僕が聞きたい事の1つですよ。」
「やっぱり、病気でしょうか?」
「病気?」
「だって!右手に脳みそを持ってるなんて、病気としか考えられないじゃないですか!」
「もっと、色々と考えられるんじゃないでしょうか?例えば病院に来る前に、警察に行った方がいいんじゃないでしょうか?」
「なぜそんなお母さんみたいな事を言うんですか!」
「別に、お母さん限定じゃないでしょ。この状況を見たら誰だって言いますよ。いいですか?普通に考えたらですよ?貴方が誰かを殺して、脳みそを取って、それを持ってるって考えるでしょ?」
「私が人を殺す訳がないじゃないですか!どうして右手から脳みそが生えて来たんじゃないかって発想にならないんですか!」
「なる訳ないでしょ!逆立ちしたってその考えに至りませんよ!仮に右手から脳みそが生えて来たのならば、それは病気ですよ。まだ病名が存在しないだけで、確実に病気ですよ。」
「いつですか?」
「何がですか?」
「手術です。」
「しないですよ!」
「え?じゃあ、薬で治るんですか!」
「何の話をしているのでしょうか?」
「右手から脳みそが生えて来るまだ名もなき奇病の治療法の話じゃないですか!」
「生えてないだろ!」
「先生!?そんな素手で私の右手の脳みそを持ち上げたりして触ったら感染しちゃうかもですよ!?」
「右手から脳みそが生えて来る奇病ではないので大丈夫です。」
「でも先生?確かにこれで私は右手から脳みそが生えて来る奇病じゃないって事が証明されましたね。」
「警察に連絡しますね。」
「何でですか!ここは病院じゃないんですか!」
「だから警察に連絡するんですよ!病院に殺人犯が来たから!」
「この病院に殺人犯が!?」
「貴方だ!それは紛れもなく貴方だ!」
「私が!?」
「なぜ、自分ではないと言うリアクションが出来るのか不思議でならないです。」
「だって、右手に脳みそを持ってたからって私が殺人犯ってのは、先生?あまりにも安易じゃないですか!」
「どストライクだろ!」
「どうして先生は、もしかしたら私の脳みそが、突然右手にテレポーテーションしたのかもって、柔軟な発想が出来ないんですか!」
「出来るか!そんなグニャグニャな発想!」
「先生?少しは真面目に考えて下さい。」
「貴方がな!」
「ある日突然、脳みそが右手にテレポーテーションした私の身にもなって下さい。」
「どうしろと?僕に一体どうしろと言うのです?」
「元に戻して下さい。」
「はあ?」
「テレポーテーションした脳みそを頭の中に戻して下さい!」
「では、今貴方の頭の中には脳みそがないと?」
「そりゃあ、ないでしょ!だって私の脳みそは今!右手にあるのだもの!それに先生!早くしないとまた、脳みそがどここにテレポーテーションしちゃうかもじゃないですか!」
「死ぬだろ!」
「そうですよ!早くしないと私は死んじゃいますよ!」
「いやそうではなく!人体の構造上、頭の中から脳みそが消えたら即死だって話ですよ!」
「先生!今は人体の構造上、頭の中から脳みそが消えたら即死だって話なんかどうでもいいんですよ!早くこの脳みそを私の頭の中へ!」
「はっは~ん。今やっと分かりましたよ?」
「何がですか?」
「貴方、頭おかしい人だな?」
「おかしいですよ!」
「やっぱり。」
「だって今!私の頭の中には脳みそが無いんですもの!」
「いやそうじゃなくて!」
「先生!パカッと開けてササッと手術して下さいよ!嫌ですよ僕、これから一生、自分の脳みそを持ち歩いて生活しなきゃならない人生なんて!」
「脳みそ入れでも作って、腰からぶら下げておけばいいのでは?」
「ここが本来の脳みそ入れなのに!何で別に脳みそ入れを作らなきゃならないんですか!気持ち悪い人じゃないですか!」
「今でも十分、とても気持ちの悪い人ですけどね。」
「見捨てるんですか?」
「はい?」
「先生は!先生なのに!目の前でこんなに苦しんでる人を気持ち悪いの一言で見捨てるって言うんですか!」
「僕が聞きたかった事の1つに、その右手に持ってる脳みそ、本物ですか?と言うのがあるのですが?」
「え?ええ?先生なのに、疑うんですか?」
「先生だからですよ。」
「ちょっと待って下さい!え?私は、作り物の脳みそを右手に持って、病院に来て脳みそが右手から生えてるとか、脳みそが頭の中からテレポーテーションして来たとか言ってるって事ですか?」
「違うのですか?」
「だったら私は!単なる気持ち悪い人じゃないですか!」
「違うのですか?」
「先生は、人でなしですか?同じ血が通った人間ですか?」
「だったら今すぐ貴方の頭を検査して脳みそがあるかないかはっきりさせてやろうか!もしくは右手に持ってる脳みそが本物なのか偽物なのかはっきりさせてやろうか!」
「シーッ!先生、ここは病院ですよ?」
「貴方が原因でこっちは出したくもない大声を出してるんだろうが!」
「検査をして、私の頭の中に脳みそがあるとしましょう。」
「絶対あるよ。」
「だったらこの右手に持ってる脳みそは、一体誰の脳みそなんですか!?いきなり恐い話になるじゃないですか!」
「十分、導入部分から違う意味で恐い話ですけどね。いいですか?右手に持ってる脳みそが、検査の結果本物だったとしたら、やっぱり貴方は殺人犯でしたって事になりますよ?」
「誰かの脳みそが私の右手にテレポーテーションして来たって可能性も捨てきれませんよ?」
「元々がゴミみたいな可能性だろ!」
「先生?全ての固定概念を捨てて考えてみて下さい。街を歩いてたら、気付くと右手に脳みそを持ってた。私の話が全て事実だとしたら?」
「その話が全て事実だとしたら、やはり病院ではなく、警察に行くべきでしょう。」
「2つあります。私がこの病院に来た理由は。」
「何ですか?」
「1つは、やっぱり病気なんじゃないかって事です。」
「確かに精神を病んでいるのかもしれませんね。でしたら、脳外科ではなく、精神科に行くべきです。」
「念じたんです。」
「念じた?」
「はい。街を歩いてたら、その人は急いでたんですかね?走ってぶつかって来た人がいて、私は反動で倒れてしまった。でもその相手は、私の事なんかお構いなしに、急いでたんですかね?走り去って行った。だから、念じたんです。」
「何をです?」
「その相手の脳みそをこの手で握り潰したいって。」
「そしたら突然、その相手の脳みそが右手に出現したと?超常現象の類いならやはり、病院ではなくてそう言った機関に行かれた方がいいですよ?仮にその話が科学者によって実証されたのなら、貴方は大スターだ。」
「先生?」
「もうここには、用はないでしょう。と言うか、私に出来る事はありませんよ。」
「忘れ物です。」
「・・・・・・あの時の!?」

第四百四十三話
「窓の外にはハイウェイ」

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