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2015年2月

2015年2月 4日 (水)

「第四百五十一話」

 僕は今、彼女と喫茶店にいる。
「僕、思ったんだけどさ!」
「え!?物凄い興奮だけどどうしたんですか?」
「いやこれは興奮せずには話せない話なんだよ!」
「そんな事よりさ。アリクイラーメン食べに行こうよ。」
「いや、アリクイラーメン食べに行くけどその前に僕の話を聞いてよ!」
「なるべく簡潔にね。スープなくなり次第終了だから、アリクイラーメン!」
「人にはさ。」
「え、人にはから話すの?」
「話すよ!人にはから話さなきゃな話なんだから、人にはから話すよ!」
「大体、人にはから話す話って長くなる流れだけど大丈夫?」
「大丈夫!」
「じゃあ、早くね!アリクイラーメン、今日半額なんだから!」
「人にはさ。眠ってる才能的なもんがあるじゃん。」
「眠ってる才能的なもん?」
「そう!例えば、僕は全くテニスをした事ないけど、テニスをしたら凄く上手いとかさ!天賦の才っての?何の努力もしないでもいい的な?」
「実は私には物凄いデザイナーの才能があるとか!」
「そうそう!」
「じゃあ、アリクイラーメン食べに行こっか!」
「いや何で?まだ話し終わってないのに何でアリクイラーメン?てか、アリクイラーメンって何!?チャーシューがアリクイ的な?アリクイの肉使ってますよ的な?」
「そんな不気味な感じじゃないよ。アリクイがラーメン作ってるから通称アリクイラーメン!」
「そっちの方が十分不気味ですけど!何?アリクイ似の大将がやってる大人気のラーメン店って事?」
「行けば分かるさ!」
「ちょっと待って!まだ話の核心を突いていない!」
「だったら早く突いてよ!アリクイラーメン伸びちゃうよ!」
「まだ注文してない!今物凄くアリクイラーメンに興味津々だけど!気持ちがアリクイラーメンに引っ張られてるけど!聞いて!いいから僕の話を聞いて!」
「分かった。」
「で、僕思ったんだ。もしかしたら、今まで生まれてから1度も試みてないだけで、僕はこの手のひらからビーム的なもんを出せるんじゃないかってさ!そう言う眠れる力があるんじゃないかってさ!」
「いや出せないでしょ!」
「こうやって、腕をピーンと伸ばして!」
「そんなにピーンと伸ばすの?」
「ビーム的なもん出すんだからこれくらいピーンと伸ばさなきゃ!」
「だからって、そんなにピーンと伸ばす?私の鼻の頭につくかつかないかの距離だよ?そしてそんな指と指の感覚ピーンと広げる?」
「もう指と指の間がちぎれるぐらいにピーンとね!」
「で?」
「手のひら全体からビーム的なもんを出す!」
「どうやって?」
「出ろ!って念じるんだよ!」
「念じるだけ?」
「念じるだけだよ。眠れる力だからね。天賦の才だからね。ここに何の努力もいらない。」
「で?」
「バーッ!ってビーム的なもんが出るんだよ!」
「ビーム的なもんが出たら、私の頭なくならない?」
「出たら頭、吹っ飛んでなくなる!」
「アリクイラーメン食べれないじ」
「バーッ!」

第四百五十一話
「出た!?」

「アリクイラーメンって?」
「そこ、食い付くとこですか?刑事さん。」
「で?なぜショットガンで彼女の頭を喫茶店で吹っ飛ばしたんだ?」
「ショットガンで彼女の頭を喫茶店で吹っ飛ばしたりしませんよ!」
「嘘つけ!ショットガンだろ!大体、頭を喫茶店で吹っ飛ばすって言ったらショットガンだろ!」
「限定的過ぎるでしょ!シチュエーションが!」
「ショットガンじゃなかったら何なんだよ!」
「ビーム的なもんです。」
「何?」
「だから、ビーム的なもんです。」
「まだそんな事を言うか!」
「僕はさっきから真実しか話してませんよ!彼女の頭を喫茶店で吹っ飛ばしたのは、不可抗力なんです!実際に僕には手のひら全体からビーム的なもんが出る力が眠ってたんですよ!」
「不可抗力で彼女の頭を喫茶店で吹っ飛ばすかよ!」
「だったら!ビーム的なもんじゃなかったら!ショットガンで彼女の頭を喫茶店で吹っ飛ばしたんだとしたら!そのショットガンはどこにあるんですか!そんなもん刑事さん達が来た時には喫茶店になかったですよね?」
「どうせ食べれるショットガンだったんだろ?」
「どうせ食べれるショットガンって何ですか!」
「溶けないチョコレートみたいなもんで作った食べれるショットガンだったんだろ?」
「そんな技術があったら僕は今頃、億万長者ですよ!」
「なら、やってみろ!」
「何をですか?」
「だからこの取調室で再現してみろって言ってんだ!」
「出ちゃいますよ?」
「出てたまるかよ。」
「頭、吹っ飛んじゃいますよ?」
「そんときゃそん時だよ。」
「死んじゃうんですよ?」
「死ぬかよ。出ないんだから。」
「いやでも!」
「いいから!やってみろって言ってんだからやればいいんだよ!」
「分かりました。」
「おいおいおい!こんなに腕をピーンと伸ばすのか?」
「こんなに腕をピーンと伸ばすんです。これが大事なんです。」
「鼻の頭につくかつかないかの距離だぞ?」
「ビーム的なもんを出す訳ですから、こんなに腕をピーンと伸ばす訳です。」
「いやだからって、こんなに腕をピーンと伸ばして、こんなに指と指の間までピーンとすんのか?」
「ちぎれるぐらいにピーンとする訳です。」
「で?」
「手のひら全体からビーム的なもんを出すんです。」
「出ないじゃん。」
「念じてませんから。」
「念じろよ。」
「出ちゃいますよ?」
「出てたまるかよ。」
「頭、吹っ飛んじゃいますよ?」
「そんときゃそん時だって言ったろ?」
「死んじゃうんですよ?」
「死ぬかよ。出ないんだから。」
「いやでも!」
「いいから!やってみろって言ってんだからやればいいん」
「バーッ!」

第四百五十一話
「出た!?」

「何してんだお前!?」
「記録係的な刑事さん!だから僕は出るって言ったんですよ!」
「ショットガン隠し持ってやがったのか!」
「はあ!無理でしょ!ここ取調室ですよ?つか、見てましたよね!」
「先輩はな!昨日、子供が産まれたばっかりなんだぞ!」
「何でそんな情報今!一部始終見てましたよね?僕の手のひら全体からビーム的なもんが出たのを!」
「昨日、子供が産まれたばっかりなのに!食べれるショットガンで頭を吹っ飛ばしやがって!」
「もうムチャクチャでしょ!何もかもが!見てましたよね?こうして!こうして腕をピーンと伸ばして、指と指の間をピーンと伸ばして、手のひら全体からビーム的なもんが出たのを!」
「こんなとこからそんなもんが出る訳ねぇだ」
「バーッ!」
「あ!?」

第四百五十一話
「出た!?」

「男の子だったんですか?女の子だったんですか?」
「知りませんよ!後から聞いた情報なんですから!」
「溶けないチョコレートって、味がなくならないガム的な事ですか?」
「弁護士さん。そんなとこに食い付かなくていいんですよ。早く僕を透明な隔たりのそっち側に出して下さいよ。」
「いくら敏腕弁護士の私でも、人を3人も殺した人間を透明な隔たりのこっち側に出す事は不可能ですよ。」
「完全なる不可抗力なんですよ!殺そうと思って殺したんじゃないんですよ!」
「ショットガンで殺意がなかったなんて、そんなの裁判では通用しませんよ?」
「だから!ショットガンじゃなくて、ビーム的なもんなんですよ!」
「それは、ショットガンで殺意がなかった以上に裁判では通用しませんよ。」
「本当なんですよ!本当に手のひら全体からビーム的なもんが出るんですよ!」
「なら、出してみて下さい。」
「それは出来ません。」
「貴方がもし、本当に手のひら全体からビーム的なもんが出せるのなら、裁判をひっくり返す事が出来るかもしれません。」
「ほ、本当ですか!?」
「私を誰だと思ってるんですか?私は、敏腕弁護士ですよ?」
「・・・・・・・・・。」
「さあ、ここで証明してみせて下さい。」
「こうして腕をピーンと伸ばします。」
「そんなに!?え?腕も指と指の間もそんなに!?」
「こんなにです。あのう?顔を近付けない方が?」
「これ、透明な隔たりがなかったら、確実に鼻の頭についてるんじゃないか?で?」
「あとは、手のひら全体からビーム的なもんが出ろって念じるだけです。」
「続けて!」
「出ますよ?」
「出たら裁判をひっくり返せます。」
「いやでも!弁護士さんが死んじゃったら誰が裁判をひっくり返すんですか!」
「透明な隔たりを信じましょう。」
「無理ですよ!」
「死刑になりたいんですか!」
「死刑!?」
「このままでは、貴方は確実に死刑です。それはもう敏腕弁護士の私でもです。さあ!透明な隔たりのポテンシャルを信じてビーム的なもんを!」
「分かりました。」
「ハハハ!安心して下さい。そもそもこの透明な隔たりは、どんな屈強な凶悪犯でも破壊出来な」
「バーッ!」

第四百五十一話
「出た!?」

「何してんだお前!?」
「見張り役的な人!だから僕は出るって言ってんですよ!透明な隔たりも破壊しちゃうって思ってたんですよ!」
「ショットガン隠し持ってやがったのか!」
「無理でしょ!」
「この敏腕弁護士さんはな!昨日、子供が産まれたばっかりなんだぞ!」
「この人も!?見てましたよね?僕の手のひら全体からビーム的なもんが出たのを!」
「昨日、子供が産まれたばっかりなのに!食べれるショットガンで頭を吹っ飛ばしやがって!」
「何なんですかその食べれるショットガン!そんなポピュラーなんですか!見てましたよね?こうして!こうして腕をピーンと伸ばして、指と指の間をピーンと伸ばして、手のひら全体からビーム的なもんが出たのを!」
「こんなとこからそんなもんが出る訳ねぇだ」
「バーッ!」
「あ!?」

第四百五十一話
「出た!?」

僕は、逃げた。逃げて今、ビルの屋上にいた。
「疲れた。」
僕は、疲れた。いろんな意味で疲れた。
「こうして。」
だから僕はこの世から消え去る選択肢を選んだ。鼻の頭につくかつかないかの距離で指と指の間をピーンとして、念じる。

「あ、でもこれじゃあ腕をピーンと出来ないから手のひら全体からビーム的なもんが出ないか・・・・・・・・・あっそうだ!アリクイラーメン食べ」
「バーッ!」

第四百五十一話
「出た!?」

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2015年2月11日 (水)

「第四百五十二話」

「は、博士!?こ、これは!?」
「人造人間出来ちゃった!」
「人造人間出来ちゃったって何ですか!声が少し似てるから試してみたら出来たモノマネみたいに言わないで下さい!と言うか何で人造人間?何で人造人間を?」
「何かな?ワシさ。前々から、人造人間を造れるんじゃないか、人造人間を造れるんじゃないかって思って生きてたんだよ。」
「だからって本当に造っちゃダメでしょ!そう言うのは心の中で留めとかなきゃダメでしょ!」
「ワシだって、まさか昨晩キミがブスだけど性格しか良くない奥さんの誕生日だから早く帰るって、研究所を出て行った時には、ブスだけど性格しか良くない奥さんの誕生日を終えてキミが研究所に来るまでに人造人間が出来ちゃうとは思ってなかったわい!」
「何で僕の奥さんを違う角度から同じ感じで悪口言うんですか!ブスでいいじゃないですか!性格しか良くないでいいじゃないですか!あのね?博士は、知らないと思いますが、いや知りませんよ。だって今初めて話すんですからね。実はね。今朝、妻とケンカしたんですよ。妻とケンカしただけじゃありませんよ。今朝は散々だったんですよ。ケンカに至るまで散々だったんですよ。寝癖がなかなか直らないし歯磨きしようとしたら間違って洗顔クリームを歯ブラシに付けちゃうし床に落ちてた爪を踏むし朝食のパンは焦げてるし寝癖は直らないしお気に入りの服が虫に喰われてるしお気に入りのズボンはジッパーが壊れてるし寝癖は直らないし自転車のチェーンが外れてるし手は汚れるし寝癖は直らないし爪踏むし出掛けに妻に今日も可愛いねって言ったらぶっ飛ばされるし寝癖は直らないし大夫婦喧嘩に発展するし研究所に来てみたら博士が人造人間完成させてるしで!散々な目のオンパレードなんですよ!」
「おい、それは言い掛かりってもんだろ?ワシがキミの散々な目の請け負う部分は人造人間出来ちゃったとこだけだろ?あとは、朝にありがちなパターンがたまたま重なっただけで、ブスに可愛いだなんて、おべんちゃらを使うキミがいけないんだろ?ブスで性格しか良くない奥さんには、キミが誠意を持って帰ったら謝罪すべきだ!」
「人の奥さんをディスるのやめてもらえません?考えてみたら、ブスとか性格しか良くないとか言わないでよくない?奥さんだけでよくない?」
「変な髪型!」
「急にターゲットを僕に変更ですか!だから寝癖が直らなかったんですよ!だいたい髪型の事で博士にとやかく言われたくないですよ!」
「ツルッパゲだもんね!」
「昔の話をしてるんです!」
「昔か、昔は良かったなぁ。飛行機はちゃんと空を飛んでたし船はちゃん海を渡ってたし人はちゃんと歩いてたしでな。」
「今も飛行機はちゃんと空を飛んでるし船はちゃんと海を渡ってるし人もちゃんと歩いてるでしょ!どう言う時代に生きてる設定なんですか!そんな事よりも!そんな事よりもですよ!博士!どうするつもりですか!」
「それはワシに委ねるよりもキミの問題だろ!キミ達夫婦の問題だろ!ワシがアドバイス出来る事と言ったら、今すぐ整形手術しなさいとしか言えないだろ!そんな失礼な事をキミはワシに言わすつもりか!」
「言ってるじゃないですか!誰が僕ら夫婦の話をしてるんですか!この人造人間をどうするつもりですかって話でしょうが!」
「考え中だ。」
「まさか博士!この人造人間を使って悪い事を企んでるんじゃないでしょうね!」
「悪い事?」
「強盗させたりするんじゃないでしょうね!」
「ワシがそんな事、企む訳がないだろ!悪い事が嫌いなワシが!」
「だったら、もしかして良い事を企んでるんですか?」
「良い事?」
「そうです。この人造人間に人命救助させたりです!」
「ワシがそんな事、企む訳がないだろ!悪い事と同じぐらい良い事が嫌いなワシが!」
「それは人間としてどうなんでしょうか?なら、この人造人間はどうするつもりですか!」
「考え中だと言ったが、既に答えは出ているんだ。」
「なら考え中とか言わないで下さい。で?どうするつもりなんですか?」
「壊すよ。」
「壊す!?壊すって何ですか!何で壊すんですか!」
「いいか?謂わば、この人造人間は不本意に造られたもんなんだよ。たまたま出来ちゃったもんなんだよ。声が似てるから試してみたら、たまたま出来ちゃったモノマネを葬儀の席で披露するか?しないだろ?したら怒られるだろ?」
「葬儀の席でモノマネを披露するからですよ!」
「怒られるの嫌なんだよ。ワシはな。怒られる事が悪い事と良い事と同じぐらい嫌いなんだよ。」
「だから葬儀の席でするから怒られるんですって!」
「モノマネの事を言ってるんじゃないよ!この人造人間の事を言ってるんだ!いいか?人造人間を造れるんじゃないかって思ってて、何となくテレビ観ながら何となく明日の昼食は何にしようかって何となくそう言えば最近流れ星見てないなって何となく外に出て何となく昔を思い出しながら何となく黄昏て何となく朝を迎えて何となく出来ちゃった事は凄い事だ。」
「凄い事ですよ。何となくの連鎖の上に完成されたとは思えない完成度ですよ!ほぼ人間ですよ!ちょっと怪物みたいな顔立ちのほぼ人間ですよ!」
「だが、凄い事も怒られる事と悪い事と良い事と同じぐらい嫌いなんだよワシは!」
「博士やめちゃえ!凄い事も怒られる事も悪い事も良い事も嫌いなら博士やめちゃえ!」
「大体、人造人間なんて倫理的に大問題だろ。」
「え?今更それ言います?カバ見たいって言うから動物園に連れてったらカバ恐いってドン引きするみたいな事ですよ?言われたこっちがドン引きみたいな事ですよ?」
「それはキミの奥さんがカバだからだろ!」
「奥さんがカバってどう言う事ですか!」
「じゃあ、とりあえずオノで首を切り落とすぞ!」
「とりあえずでやる事じゃないでしょ!」
「とりあえずやる事じゃない?こんな事はな。とりあえずでやらなきゃ出来た事じゃないんだよ。寒い朝にベッドから飛び起きる時のあの感覚だよ。湖畔でボーッとしてて車のエンジンをかける時のあの感覚だよ。せめて目を覚ます前に切り落としてやるのが優しさってヤツだろ。」
「優しさって!いいですか?博士は、何となくでもたまたまでも命ある人造人間を造ったんですよ?それを倫理的に大問題とか言ってとりあえずオノで首を切り落とすっては倫理的に大問題なんじゃないですか!」
「知らん!」
「あっ!」

第四百五十二話
「オノ研究所」

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2015年2月18日 (水)

「第四百五十三話」

「明日、何か美味しいモノでも食べに行くか。」
「・・・。」
「ん?」
「・・・ん?うん、分かった。」

第四百五十三話
「明日、死ぬかもしれないからボクは、交わせる約束は全て交わす」

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2015年2月25日 (水)

「第四百五十四話」

「コンコン!」
新郎が新婦の控室をノックした。新郎が扉を開けるとそこには、ウェディングドレス姿の新婦が一人、大きな窓の外を見ながらたたずんでいた。
「綺麗だ。」
太陽の光に照らされる何とも言えない光景に新郎は呟いた。
「ありがとう。」
「ホント、綺麗だよ。」

「もう、照れるじゃん。あ、そうだ。まだ式まで時間あるよね。」
「うん。」
「少し二人で話さない?話したい事があるの。」
「ああ、いいよ。」
「あのね?離婚して欲しいの。」
「それは、つまりジョーク?ウェディングジョーク?」
「ジョーク?ウェディングドレス姿でジョーク言う女性がいる?」
「いないとは言えないだろ。」
「とにかく、今すぐ離婚して欲しいの。」
「こんな時にそんな格好でそんなジョークは不謹慎だぞ。」
「だから、ジョークじゃないんだってば!真面目なんだって、大真面目な話なの!」
「他に好きなヤツでも出来たのか?」
「そんな訳ないでしょ!アタシ、生まれてから今まで、人を好きなった事なんてないわよ!」
「その発言はその発言で問題発言だろ!ウェディングドレス姿の女性が言う事じゃないだろ!」
「政略結婚かもしれないじゃない!」
「この状況に至るまで気付かない政略結婚って、かなりの政略結婚だな!」
「ごめんなさい。」
「分かってくれたらいいよ。もう不謹慎な事言い出すなよ。」
「違うの。」
「違うって何が?」
「アナタは勘違いしてるの。」
「勘違い?」
「そう。アナタが今見てるアタシはアタシじゃないの!」
「は?」
「今まで隠してた事があるの。」
「隠してた事?」
「実は、双子なの。で、アナタの事が好きだったのは、姉の方で、アタシは妹の方なの!アナタが好きなのは姉の方で、妹のアタシじゃないの!」
「意味が全く分からない。」
「アタシ達姉妹は、双子である事を隠して生きて来たの。」
「マジシャンかよ!」
「両親を殺した人達に復讐する為です。」
「復讐?」
「父は、宇宙飛行士でした。でも、宇宙を調査してる時に他の乗組員達に殺されたんです。その時母のお腹の中にはアタシ達がいました。母は、アタシ達を出産するとしばらくして、父の死に疑問を抱きました。そして一人で父の死の真相を調べ始めたんです。母は、アタシ達に危険が及ばないようにとアタシ達を孤児院の前に捨てました。孤児院での生活が数年経ちアタシ達は、五歳の誕生日の日に母の死を知らされました。とても冷たい雨が降る夜でした。あの日、姉とアタシは復讐を誓いました。母もきっと父を殺した人達に殺された。父と母を殺した宇宙船の乗組員を全員殺すって!あと一人、あと一人で復讐が果たされる時に、そんな時に、姉は恋なんてしちゃいけないのに、絶対にしちゃいけないのに、アナタに恋してしまったんです。だからアタシ、アタシ・・・さっき姉を殺しました。本当にごめんなさい。」
「何が?」
「崖じゃなくて、ごめんなさい。」
「いや別に全ての犯人が崖で犯行を告白しなきゃならないルールないから!いやそうじゃなくてさ!長文で嘘ついて何してんだって!」
「嘘じゃないわ!」
「じゃあ、代々続く造り酒屋のお前の実家に行った時に挨拶した両親は一体誰なんだよ!昔のアルバムとか見せてくれたけど、お兄さんの存在しか確認出来なかったぞ!」
「あれは全て影絵です。」
「嘘にも限度ってもんがあるだろ!何だ影絵って!」
「チッ!」
「騙される訳がないだろ!騙したいなら出会った頃につけよ!状況を考えろよ状況を!」
「でも、アタシ達の出会いから今までが全て!今アナタが宇宙船の中で見てる夢かもしれないじゃない!」
「何なんだよそのシチュエーションは!」
「知らないわよ!アタシはアナタが作り出した夢の住人なんだから、何でアナタが宇宙船に乗ってるかまでは分からないわよ!」
「ちょっとほっぺたつねらせろよ。」
「嫌よ。」
「何で。」
「痛いからに決まってるでしょ。」
「じゃあ夢じゃないだろやっぱり!」
「あのね?体のどこかを何かして痛いって感じたらそれは夢じゃないって考えは、もう古いのよ!」
「何の怒りだそれは!」
「さあ、離婚しましょ。」
「納得出来る理由なら俺だってそれに応じるかもしれないけど、こんな訳の分からない状態でこの場で応じられる訳がないだろ!」
「ねぇ?見て、窓の外に広がる美しい街並みを。」
「そうだよ!あのマンションだってもう契約しちゃってんだぞ!」
「アタシ達が結婚式を挙げようとしてる今この瞬間にも、この眼下に広がる美しい街並みの中で誰かが殺されてるかもしれないのよ!」
「何て事言い出すんだよ!」
「ねぇ!出来る?アナタ出来るの? アタシ達が結婚式を挙げようとしてる今この瞬間にも、この眼下に広がる美しい街並みの中で誰かが殺されてるかもしれない時に!海の向こうで名前も顔も知らない誰かが殺されてる時に!アタシは無理!そんな今この瞬間にも誰かが殺されてる時に結婚式なんて! 」
「そんな事を考えてたら一体いつ結婚式挙げればいんだよ!」
「明日、地球が滅亡する日によ!」
「何なんだよお前は!」
「どう?」
「何が?」
「嫌いになった?離婚したくなった?こう言う事言う女なんか嫌でしょ?」
「バカか?お前は?」
「バカですって!?親にも二十八回ぐらいしか言われてないのに!」
「一回も言われてない時に使う文法だろ!」
「何よ偉そうに!教授か!」
「偏見だろ!あれだろ?お前は、俺が本当に自分の事を好きなのか確認したかった。ただそれだけなんだろ?」
「・・・・・・・・・。」
「だから、あんなムチャクチャな事を言ったんだろ?いいか?俺は、どんな事があってもお前を嫌いになんかならない。いつまでも今と変わらず、お前を愛してる。」
「本当に?」
「本当だよ。」
「本当の本当に?」
「本当の本当に。」
「今この瞬間にも殺されてるどこかの誰かに誓って?」
「今この瞬間にも殺されてるどこかの誰かに誓って。」
そう言うと新郎は新婦を優しく抱きしめた。

第四百五十四話
「それはそれこれはこれ」

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