« 「第四百五十三話」 | トップページ | 「第四百五十五話」 »

2015年2月25日 (水)

「第四百五十四話」

「コンコン!」
新郎が新婦の控室をノックした。新郎が扉を開けるとそこには、ウェディングドレス姿の新婦が一人、大きな窓の外を見ながらたたずんでいた。
「綺麗だ。」
太陽の光に照らされる何とも言えない光景に新郎は呟いた。
「ありがとう。」
「ホント、綺麗だよ。」

「もう、照れるじゃん。あ、そうだ。まだ式まで時間あるよね。」
「うん。」
「少し二人で話さない?話したい事があるの。」
「ああ、いいよ。」
「あのね?離婚して欲しいの。」
「それは、つまりジョーク?ウェディングジョーク?」
「ジョーク?ウェディングドレス姿でジョーク言う女性がいる?」
「いないとは言えないだろ。」
「とにかく、今すぐ離婚して欲しいの。」
「こんな時にそんな格好でそんなジョークは不謹慎だぞ。」
「だから、ジョークじゃないんだってば!真面目なんだって、大真面目な話なの!」
「他に好きなヤツでも出来たのか?」
「そんな訳ないでしょ!アタシ、生まれてから今まで、人を好きなった事なんてないわよ!」
「その発言はその発言で問題発言だろ!ウェディングドレス姿の女性が言う事じゃないだろ!」
「政略結婚かもしれないじゃない!」
「この状況に至るまで気付かない政略結婚って、かなりの政略結婚だな!」
「ごめんなさい。」
「分かってくれたらいいよ。もう不謹慎な事言い出すなよ。」
「違うの。」
「違うって何が?」
「アナタは勘違いしてるの。」
「勘違い?」
「そう。アナタが今見てるアタシはアタシじゃないの!」
「は?」
「今まで隠してた事があるの。」
「隠してた事?」
「実は、双子なの。で、アナタの事が好きだったのは、姉の方で、アタシは妹の方なの!アナタが好きなのは姉の方で、妹のアタシじゃないの!」
「意味が全く分からない。」
「アタシ達姉妹は、双子である事を隠して生きて来たの。」
「マジシャンかよ!」
「両親を殺した人達に復讐する為です。」
「復讐?」
「父は、宇宙飛行士でした。でも、宇宙を調査してる時に他の乗組員達に殺されたんです。その時母のお腹の中にはアタシ達がいました。母は、アタシ達を出産するとしばらくして、父の死に疑問を抱きました。そして一人で父の死の真相を調べ始めたんです。母は、アタシ達に危険が及ばないようにとアタシ達を孤児院の前に捨てました。孤児院での生活が数年経ちアタシ達は、五歳の誕生日の日に母の死を知らされました。とても冷たい雨が降る夜でした。あの日、姉とアタシは復讐を誓いました。母もきっと父を殺した人達に殺された。父と母を殺した宇宙船の乗組員を全員殺すって!あと一人、あと一人で復讐が果たされる時に、そんな時に、姉は恋なんてしちゃいけないのに、絶対にしちゃいけないのに、アナタに恋してしまったんです。だからアタシ、アタシ・・・さっき姉を殺しました。本当にごめんなさい。」
「何が?」
「崖じゃなくて、ごめんなさい。」
「いや別に全ての犯人が崖で犯行を告白しなきゃならないルールないから!いやそうじゃなくてさ!長文で嘘ついて何してんだって!」
「嘘じゃないわ!」
「じゃあ、代々続く造り酒屋のお前の実家に行った時に挨拶した両親は一体誰なんだよ!昔のアルバムとか見せてくれたけど、お兄さんの存在しか確認出来なかったぞ!」
「あれは全て影絵です。」
「嘘にも限度ってもんがあるだろ!何だ影絵って!」
「チッ!」
「騙される訳がないだろ!騙したいなら出会った頃につけよ!状況を考えろよ状況を!」
「でも、アタシ達の出会いから今までが全て!今アナタが宇宙船の中で見てる夢かもしれないじゃない!」
「何なんだよそのシチュエーションは!」
「知らないわよ!アタシはアナタが作り出した夢の住人なんだから、何でアナタが宇宙船に乗ってるかまでは分からないわよ!」
「ちょっとほっぺたつねらせろよ。」
「嫌よ。」
「何で。」
「痛いからに決まってるでしょ。」
「じゃあ夢じゃないだろやっぱり!」
「あのね?体のどこかを何かして痛いって感じたらそれは夢じゃないって考えは、もう古いのよ!」
「何の怒りだそれは!」
「さあ、離婚しましょ。」
「納得出来る理由なら俺だってそれに応じるかもしれないけど、こんな訳の分からない状態でこの場で応じられる訳がないだろ!」
「ねぇ?見て、窓の外に広がる美しい街並みを。」
「そうだよ!あのマンションだってもう契約しちゃってんだぞ!」
「アタシ達が結婚式を挙げようとしてる今この瞬間にも、この眼下に広がる美しい街並みの中で誰かが殺されてるかもしれないのよ!」
「何て事言い出すんだよ!」
「ねぇ!出来る?アナタ出来るの? アタシ達が結婚式を挙げようとしてる今この瞬間にも、この眼下に広がる美しい街並みの中で誰かが殺されてるかもしれない時に!海の向こうで名前も顔も知らない誰かが殺されてる時に!アタシは無理!そんな今この瞬間にも誰かが殺されてる時に結婚式なんて! 」
「そんな事を考えてたら一体いつ結婚式挙げればいんだよ!」
「明日、地球が滅亡する日によ!」
「何なんだよお前は!」
「どう?」
「何が?」
「嫌いになった?離婚したくなった?こう言う事言う女なんか嫌でしょ?」
「バカか?お前は?」
「バカですって!?親にも二十八回ぐらいしか言われてないのに!」
「一回も言われてない時に使う文法だろ!」
「何よ偉そうに!教授か!」
「偏見だろ!あれだろ?お前は、俺が本当に自分の事を好きなのか確認したかった。ただそれだけなんだろ?」
「・・・・・・・・・。」
「だから、あんなムチャクチャな事を言ったんだろ?いいか?俺は、どんな事があってもお前を嫌いになんかならない。いつまでも今と変わらず、お前を愛してる。」
「本当に?」
「本当だよ。」
「本当の本当に?」
「本当の本当に。」
「今この瞬間にも殺されてるどこかの誰かに誓って?」
「今この瞬間にも殺されてるどこかの誰かに誓って。」
そう言うと新郎は新婦を優しく抱きしめた。

第四百五十四話
「それはそれこれはこれ」

|

« 「第四百五十三話」 | トップページ | 「第四百五十五話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/59053698

この記事へのトラックバック一覧です: 「第四百五十四話」:

« 「第四百五十三話」 | トップページ | 「第四百五十五話」 »