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2015年4月 1日 (水)

「第四百五十九話」

「すいません。」
「何だ!」
「いまいち状況が掴めてないんですけど?」
椅子の脚に足を縛られ座らされてる男は、いまいち状況が掴めていなかった。テーブルを挟んだ軍人風のガスマスクの男は、掴めている。暗い地下室にあると思われる部屋。ちょろちょろと水が壁を伝う音が聞こえる裸電球がぶら下がる狭い部屋。ゆっくりとそれは、執行されようとしていた。
「状況が掴めないだと?そんなもん掴めなくて構わん!とにかくお前は、これを掛けろ!」
「メガネ?」
「そうだ!メガネだ!」
「僕別にメガネっ子じゃないんで。」
「そんな歪な言い訳で言い逃れ出来ると思うな!」
「すいません。本当に状況が掴めないんですよ。雰囲気的には何かアレですよね?これから僕は殺されるって感じしますよね?ドラマや映画でよく観るようなシチュエーションですもんね?でもアレですよね?まさかですよね?だって僕、誰かに殺されるような事してないですから。」
「何だかんだで状況を掴めているではないか!いいからお前は黙ってその暗殺メガネを掛けろ!」
「暗殺メガネって何ですか!その掛けた人を殺す気まんまんのネーミング何なんですか!」
「掛けた人間を殺す為だけに開発されたメガネだから暗殺メガネだ!」
「掛けたらどうなるんですか?」
「掛けたらレンズから猛毒が散布されて眼球から全身に猛毒が回るシステムだ。」
「だからガスマスクなんですか?」
「そうだ。」
「ガスマスクつけるぐらいなら、直接この部屋に毒を散布すればいいじゃないですか!何でわざわざ暗殺メガネなんか使用するんですか!」
「今日はなんだかとても暗殺メガネを使用したいからだろ!」
「そんなファッション感覚な!だいたい何で僕が殺されなきゃならないんだ!」
「殺されるような事をしたから殺されるに決まっているだろ!」
「だからその殺されるような事って何ですか!」
「メガネを侮辱した。」
「メガネを侮辱?メガネを侮辱なんかしてない!」
「私の顔を忘れたか?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・あの時の!?とかならないですよ?ガスマスクを取ってからこそ発揮する言葉でしょ?」
「ガスマスク外した瞬間にお前が暗殺メガネを掛けたら諸共だろ!」
「掛けないですよ!そもそもが掛ける気無いんですから!」
「せーの!」
「そんな掛け声に乗せられて気軽に掛けられるメガネじゃないでしょうが!このメガネは!僕が何か侮辱するような事を言ったんなら謝りますよ!ただ僕には身に覚えのない事過ぎて、教えて下さいよ!一体僕がどうメガネを侮辱したのかを!」
「どうせ掛けたって外すんだろ?そう言ってお前はメガネを侮辱した。」
「それを侮辱と呼ぶならば!侮辱のストライクゾーンがゆるゆるだ!」
「掛けても外す?メガネは掛けたら外さない!それがメガネ人だ!」
「すいません。メガネ人って?アレ?迷い込んじゃいました?僕、いつの間にか不思議空間に迷い込んじゃいました?」
「とにかくつべこべ言わずに暗殺メガネを掛けろ!」
「掛けませんよ!」
「黒縁だからか?」
「色の問題じゃない!掛けた後の仕組みの問題だ!」
「安心しろ。メガネは掛けたまま土に埋めてやる。」
「土に埋められるってワードが出てるのに安心出来る訳がない!だいたい掛けたら外すって発言が侮辱に値するなら!そんなの僕以外にも大勢存在してるでしょ!」
「だからまた同じようなヤツを発見したら、同じような事をする。安心しろ。」
「いや僕が言いたいのはそんな事じゃなくて!僕にした事を僕以外にもしろって事じゃなくて!僕に今からしようとしてる事をするなって事!」
「それは無理だ!」
「そもそもアンタだって何かを侮辱しながら生きてるだろ!」
「かもしれないな。」
「ほら!だったらアンタだって何かに罰せられなきゃだろ!」
「ただ私の場合は、あくまでかもしれないであって、確実ではない。」
「こんな時に使うもんじゃないだろ!かもしれない理論!」
「侮辱しながら生きているかもしれないが、現に私はどこかの誰かに拉致監禁されて殺されていない。つまりそれは、私が何かを侮辱しながら生きているかもしれないが殺されるに値しない侮辱だと言う事だ。」
「どゆこと?」
「太陽が眩しいとか、超高層ビルが高いとか、朝が来たとか、そう言った侮辱レベルだ。」
「僕のそれもそれだろ!」
「お前のそれはそれではない!」
「どこがだ!」
「常軌を逸しているだろうが!」
「常軌を逸してんのはアンタだ!」
「何とでも言うがいい。さあもうお喋りはおしまいだ!さっさと暗殺メガネを掛けろ!」
「嫌だ!」
「メガネ嫌いか!」
「この暗殺メガネが嫌いなだけだ!」
「じゃあアレか!別にメガネが嫌いって訳じゃないんだな?」
「別に嫌いじゃないよ!」
「普通の黒縁メガネだったら掛けてもいいって事だな?」
「普通のメガネだったら何縁だって掛けてもいいよ。」
「ようこそ!メガネ人へ!」
「いやだからって僕はメガネ人じゃない!」
「なら何人だ!」
「何人って、あえて言うなら目がいい人です。」
「神か?」
「はい?」

第四百五十九話
「私は今日、神に会った」

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