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2015年4月22日 (水)

「第四百六十二話」

 僕の妻は今、僕を救う為に奔走している。
「逃げたんじゃないのか?」
「信じてる。必ず帰って来るって僕は妻を信じてる!」
「帰って来ただけじゃダメだ。ただ帰って来ただけじゃな。」
夜の侵入者は、寝ている僕と妻を電撃で目覚めさすと同時に気絶させた。目を覚ますと妻の姿はなく、僕はロープでグルグル巻きのバスルームでミノムシ状態だった。夜の侵入者は、バスタブの淵に座り、楽しそうに銃口を僕に向けながら、僕より先に目を覚ました妻の経緯を語った。夜の侵入者は、夫婦愛を確かめる為にこんなバカげたゲームを仕掛けたようだ。先に目を覚ました方に後から目を覚ます方が殺されたくなければ自分の指定したモノを夜明け前までに持って戻って来い。そのまま逃げるのも警察に駆け込むのも自由。その夜の侵入者が妻に指定したモノは、深海に眠る存在してるのかどうかも分からない地球のへそと言う秘宝だった。
「夜明けまであと3時間だ。」
「3時間でそんな存在してるのかどうかも分からない地球のへそなんて聞いた事もない秘宝を見付けて戻って来れられる訳がないだろ!」
「夫婦愛があるなら、存在してるのかどうかも分からない秘宝でも見付けて戻って来られるんじゃないか?」
ムチャクチャだ。ムチャクチャ中のムチャクチャだ。夜の侵入者は、きっと誰でもいいから殺したいだけなんだ。だけど単に殺すだけだったら罪悪感に苛まれるから、ムチャクチャな理由をこじつけてるだけなんだ。
「お前は!誰でもいいから殺したいだけなんだろ!」
「おいおいおい、人をその辺の頭のイカれた殺人衝動を抑えられない変人と一緒にするな。」
この男が変人じゃなかったら一体何が変人なんだか分からない。
「今頃、妻はきっと警察に向かってる!お前は逮捕されるかその場で射殺だ!」
「その時はその時だ。だが、警察が来た時点でお前は夫婦愛が無かったと絶望しながら死ぬんだぞ?」
「夫婦愛が無いって言うのは、お前の勝手な思い込みだろ!僕達夫婦にはお互いを愛する気持ちが確かに存在する!」
「それはそれで、お前の勝手な思い込みだろ?」
「何だと!お前みたいな奴に何が分かる!僕達の夫婦愛の何が分かる!」
「分かるさ。夜が明ければ全てがな。」
「存在するかどうかも分からない秘宝を持って来いだなんてムチャクチャな事を言っといて何が夫婦愛だ!」
「だから、夫婦愛があれば持って帰って来られるだろ?」
最悪だ。最悪の結婚記念日だ。予想を遥かに上回る最悪だ。予約したレストランもサプライズのプレゼントも全てが最悪だ。
「最高だろ?」
「ふざけんな!この状況の何が最高だ!」
「考えてもみろよ。こんな機会一生無いかもしれないんだぞ?自分達夫婦の夫婦愛が計れる機会なんてな。」
「夫婦愛があるかどうかなんてその夫婦が互いに計ればいい事だ!こうやって他人が勝手に間に入って計るもんじゃない!」
「だが、こうして他人が間に入った方が分かりやすいだろ?ありがたいだろ?感謝される事はあっても非難されるの事じゃないだろ?」
「狂ってる!」
「これが狂ってるって言う世の中の方が狂ってる。お前は信じてるんだろ?」
「ああ、信じてる。必ず妻は警察に駆け込んで僕を救ってくれるってな!」
「悲しいねぇ。そんな風にしかお前は妻を信じられないのか?それがお前の夫婦愛なのか?それが妻の夫婦愛なのか?今、妻は自分を助ける為に存在するかどうかも分からない秘宝を一生懸命探してるって考えられないのか?」
「考えられ」
「ただいまー!秘宝、あったよ!」
「おい、なんて言おうとしたのか知らないが、最後まで言わなくて良かったな。」
「え?僕?僕だけがまともなんじゃなくて、僕だけがおかしいバージョン?」

第四百六十二話
「妻側を書いた方が面白かったかなと思った作品でしたね」

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