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2015年5月20日 (水)

「第四百六十六話」

「これって青春ってヤツじゃない?」
夜の道、帰り道、自転車に2人乗りの高校生、後ろに乗る女子が言った。
「青春?青春って何だよ!」
前で自転車を運転する男子が笑いながら答えた。2人は恋人同士。
「だから、青春ってのを絵にしたら今のアタシ達じゃない?って事!」
「ただ夜道を自転車で2人乗りして走ってるだけの俺達が?」
「そう!」
「青春ってこう、部活とか学校のイベントとかで大勢ではしゃぐ事なんじゃないの?」
「違うってば!そんなの大人になってからでもやろうと思えば出来る事じゃん!」
「これだって大人になってからでもやろうと思えば出来ると思うけどな?」
「それは違う!」
「何が違うんだよ。」
「何となくだよ。何となく今のアタシが青春って言うのは、これだ!って感じてるの!今まさにアタシ達は青春の最中だ!って感じてるの!」
「オマエ、相変わらず変わってるな。」
「そうかなぁ?」
「自分で気付いてないだけだよ。」
「人はみんなどっか変わってんだよ。ただ、それを誰かに向けて発信するか自分の心の中に止めとくかの違いじゃない?」
「俺には難しくてよく分かんないよ。」
「見て!」
「ん?」
「満月!」
「ホントだ!」
「青春だね!」
「これも青春なのか?」
「今、この状況で感じる事全てが青春なんだよ?だから、体の細胞全てに刻まなきゃダメなんだよ?」
「また難しい事を言うな。」
「満月の夜には不思議な事が起こるって言うじゃん。」
「化け物に変身するとか?」
「変身しないでよ!」
「するかよ!」
「またまたー!そんな事言ってる人に限って変身するんだからー!」
「世の中、そんな事言ってる人だらけだろ!化け物だらけだぞ!」
「どうする?あの曲がり角曲がったら、そこにゾンビの大群!」
「もう、めちゃくちゃ全速力で自転車こいで逃げる!」
「無理だよ!ゾンビもむちゃくちゃ全速力で自転車こいで追い掛けて来るんだもん!」
「何でゾンビも自転車なんだよ!」
「だってたまたま自転車乗ってる時に満月見てゾンビになったんだもん!」
「その法則で行くと俺も自転車ゾンビだぞ?」
「じゃあ、アタシも自転車の後ろゾンビだ!」
「オマエもゾンビになってんのかよ!」
「だってアタシだって満月見て化け物に変身するなんて思ってないもん!」
「何だよそれ!」
「でも、満月とか関係なくて、あの曲がり角曲がったら、ゾンビだらけだったらどうする?」
「ゾンビだらけってどれくらいだよ。」
「17体ぐらい?」
「ぐらいいらないだろ。で、動きは鈍いタイプのゾンビ?それとも早いタイプ?」
「鈍いタイプ!」
「じゃあやっぱり全速力で走り抜ける!」
「分かった!運転に集中してね!アタシはゾンビの頭を撃ち抜くから!」
「撃ち抜くって何だよ!」
「だってゾンビを退治するには頭部を破壊するか燃やすかでしょ?」
「そうかも知れないけど撃ち抜くって何で?」
「リボルバーで!」
「持ってないだろ!」
「持ってない!どうしよう!ねぇ!どうしよう!」
「落ち着けって!あの曲がり角曲がったって、絶対ゾンビなんかいないから!」
「この世の中に絶対なんかないんだよ!」
「じゃあ、ゾンビがいるかもしれないけど、絶対にいるって訳でもないだろ?」
「絶対を逆手に取った説得とは、なかなかのネゴシエーターだね!」
「木の枝とかでいいかな?」
「いつの間にだよ!」
「さっき軽くパニックになってた時にあの家から拝借したの。」
「何してんだよ!」
「ちゃんと折るときに、ごめんなさいって謝っといたから大丈夫!」
「何が大丈夫なんだよ!」
「集中!」
「えっ?」
「間もなく例の曲がり角だよ!」
「もう完全に曲がり角曲がったらゾンビがいる体じゃん!」
「運転に集中して!」
「はいはい。」
「行くよ!」
「間違って人間の頭を殴るなよ?大問題だからな!」
「アタシがそんなヘマすると思う?」
「今の興奮状態だったらしないとは限らないだろ!」
「ちょっと!何でブレーキ?ゾンビはすぐそこなんだよ!」
「いや何か曲がる前に1回深呼吸した方がいいかなって思ったからさ。」
「深呼吸?それもそうかもね。」
「吸ってー!」
「スゥゥゥゥ!」
「吐いてー!」
「プハァー!」
「プハァー、って。」
「よし!行こう!」
「大丈夫か?」
「さあ来いゾンビ達!」
「誰もいませんように!」
「えっ!?」
「あっ!?」
「まさかの猛スピードの車!」
「うわあああああああ!」
「きゃあああああああ!」

第四百六十六話
「青春の1ページ」

「え?え?ど、どうなってんだ?車は?」
「い、いないね。」
「確かにいたよな!曲がり角曲がったらそこに猛スピードの車!」
「いた。」
「俺達、絶対轢き殺されたよな!」
「轢き殺された。でも、轢き殺されてない。」
「何がどうなってんだ?」
「青春?もしかしてこれも青春ってヤツ?」
「単なる摩訶不思議だろ!」

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