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2015年6月10日 (水)

「第四百六十九話」

「どりゃあああああ!!」
「うわあっ!!」
「先生!!」
「何だ!」
「おはようございます。」
「おはようって、どりゃあってドア蹴破って入って来る奴がホントに存在するとはな!!今はただただそれしか言えない!それはなぜか!軽くパニックだからだ!」
「これ!どう言う事ですか!」
「ん?何だ?軽くパニックの人間相手に話を進めるのか?」
「進めますよ!それが私の仕事ですから!」
「それは、昨日俺が書き上げた原稿だろ?」
「そうです!昨日先生から預かった原稿です!そして、そのまま私は出版社に帰る電車の中で読みました。」
「で、あれか。旦那の愚痴を言いに来たって訳か。」
「どうしてこの話の流れで私が旦那の愚痴を先生に吐かなきゃならないんですか!」
「違うのか!?」
「軽くパニックの成れの果てですか?私は、旦那の愚痴やママ友の愚痴を言いに来たんじゃなくて!先生の作品に問題があるからドア蹴破って登場したんですよ!」
「何が?俺の新作のどこに問題があるんだよ。発注通りだろ?」
「私は!人が大勢死ぬ作品を書いたら読者にウケますよとアドバイスしました。」
「そうだ。」
「狂気の教師が学校に生徒を閉じ込めて殺戮するとか!狂気のホテルマンがホテルに客を閉じ込めて殺戮するとか!狂気の医師が病院に患者を閉じ込めて殺戮するとか!」
「狂気の警察官が小さな町に住人を閉じ込めて殺戮するとかな。」
「そうです!でも書き上がった作品は何ですか!」
「んまあ、500%発注通りとは言わないが427%ぐらいはだろ?」
「これのどこが427%なんですか!これが427%だったら世の中の427%の概念が覆されてしまう!こんなの6%以下ですよ!」
「じゃあ、6%以下でいいや。」
「いいやじゃないですよ!いいやじゃ!先生は、6%以下の作品を提出したって事ですよ?」
「だってお前、それはあくまでアドバイスの中での話だろ?読者に何%の作品だとかは分からないだろ。だいたいだ。人が意味もなく大勢殺されるって、何だよ。」
「人が意味もなく大勢殺されるは!人が意味もなく大勢殺されるですよ!」
「だからどう言う事なんだよ。」
「いいですか?世の中ってのはですよ?禁断の恋愛に憧れるのと同時に!人が意味もなく大勢殺されるのに憧れるんです!憧れるって言葉が正しい表現なのか分からないですけど、とにかく人は、そう言うとこでストレス発散するんですよ!非日常に憧れる生き物なんです!もっと言うとそう言うのがウケるんですよ!って、これ私昨日先生に散々言いましたよね?」
「だから俺はあえての家族団欒作品を書き上げたんじゃないか。」
「それはでも私とのやり取りからの反発じゃないですか!先生の言葉を借りるならそれこそそんな先生の気持ちなんか読者には全く関係ないじゃないですか!」
「いいか?この父親はな!物凄くいい人なんだよ!それはもう想像を絶するいい人なんだよ!」
「だから何なんですか!私のアドバイスと真逆の人物じゃないですか!」
「でも昔、600人ぐらい殺した過去があるんだな。」
「殺し過ぎなんですよ!しかもそれはラストの一文で父親が家族団欒の夕食時に告白しただけじゃないですか!」
「戦慄の大どんでん返しだろ?」
「1人や2人や3人とかなら大どんでん返し成功ですよ!大成功ですよ!今まで物凄い家族団欒だったのにラストの父親の衝撃の告白!でもね!600人ぐらいって!そこで読者の心は離れて行きますよ!何でいつも肝心なとこでふざけるんですか!」
「ふざける?お前な?1回読んだ後に、もう1度読み返したか?」
「読み返してませんよ。」
「今度は、こんないい人なのにこの父親、実は600人ぐらい殺してるんだって気持ちで読んでみろよ。あのな?真の大どんでん返しってのは、もう1度読んでみて楽しむんだろ!」
「こんないい人なのにこの父親、実は600人ぐらい殺してるんだって気持ちで読んだら、最初から最後まで変な気分で終わりですよ!」
「泣けるだろ?」
「どこに泣く要素があるんですか!長女が結婚報告をする時ですか?長男が見知らぬ女性を助けた時の傷害事件ですか?母親の長年の死んだ父親との誤解が解けた時ですか?父親の父親が死んだ時ですか?」
「違うよ。そう言う目先の泣けるじゃなく、ラストに衝撃の告白が待ってる事を知らない家族を思うとって話だよ。」
「泣けるか!実は父さん、過去に人を600人ぐらい殺してるんだ。って言われたってポカーンとする家族の表情しか想像出来ませんよ!」
「現代人の病だな。何かって言えばすぐにポカーンとすればいいと思ってる。悪しき習慣だな。死ね!」
「意味不明な事を言われて最後に死ねって何なんですか!子供ですか!」
「だって人が大勢殺されるのがウケるんだろ?」
「先生のは単なる私への暴言じゃないですか!」
「あじゃあさ!目の前の生物に死ねって言ったら殺せる能力を持つ主人公の話なんかは?」
「いや主人公が無敵過ぎたらそれはそれでウケないんですよ。その主人公に何かしらの弱点を設定して下さい。」
「弱点?弱点かぁ?膝。」
「体の中で一番くすぐったい部位の弱点じゃなくて!死ねって言われても死なない人間が現れるとか!」
「そんなのはダメだよ。そんな不平等がこの世の中で許されるか?そんな不平等を作品に出したらイジメとかに繋がるだろ!コンプライアンスに引っ掛かるだろ!世の中平等じゃなきゃダメなんだ。死ねって言ったら目の前のどんな生物でも死ぬ!」
「何を大真面目な顔して言ってるんですか?既に主人公が不平等の真ん中にいるのに。」
「で、主人公はある日気付くんだよ。」
「まだ続くんですか?」
「この呪われた能力が全ての生物に対して平等に効果があるなら、自分は医者になればいいじゃないか!」
「はあ?」
「医者になってこの能力で病原菌を死滅させれば多くの人が救える!」
「だからそれじゃあ、話が意味もなく大勢殺されるにならないじゃないですか!真逆行っちゃってるでしょ!」
「そして月日が流れ、主人公は地位も名誉も幸せな家族も手に入れた。だけどある日、何かよく分からないけど衝動に駆られて過去に600人ぐらい殺した事を夕食時に家族に打ち明けてしまった。」
「そいつだった!?」

第四百六十九話
「語られない裏設定」

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