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2015年7月29日 (水)

「第四百七十六話」

 街に着いたのは夜だった。俺は、宿屋よりも先に、まずは酒場だ。軽快な音楽に合わせて踊り子が舞っていた。酒場の店主から蒸留酒を受け取ると、俺は窓際の席に座った。月明かりを見ながら飲みたい気分だったからだ。
「よう!」
すると、屈強な男がジョッキを手に、俺の向に座った。
「何だ?誰かと飲みたい気分じゃないんだが?」
「まあまあ、そう言わず。乾杯でもしようや!戦争に散った勇敢な戦士達へ!」
「戦士達へ。」
「で?この街には何をしにやって来たんだ?」
「一人で飲みたい気分だと言っただろ?」
「おいおいおい!怪物に喉を引き裂かれた訳でも魔女に呪いを掛けられた訳でもないのに、会話を楽しまずに月を見ながら酒って、頭でもおかしいのか?」
「それ以上、俺を侮辱したら明日の太陽は見れないと思え。」
「ほう?剣には自信があるのか?」
「こんな話を知ってるか?最近、この街の近くの山に住む巨人が退治された。」
「緑色の一つ目巨人の話か!知ってるも何もあの日は朝までお祭り騒ぎよ!国王まで一緒になってバカ騒ぎだ!この街でその話を知らない奴はいない!」
「なら、俺を侮辱しない方が身のためだ。」
「お、おい!?まさか巨人を退治したのは、アンタなのか!?国王は、何度も討伐の依頼を出したが、その度山からは誰一人として戻って来なかった。だがある日、巨人が退治されたって街中に噂が広まった。間もなくして、国王が巨人の目を手にして国民の前に姿を現し発表した。たが、それは誰かが討伐したんじゃなく、神が裁いた、と。神の雷が巨人の角に落ちた、と。」
「いくら剣で相手しても巨人は倒れなかった。だから最終的に稲妻の呪文を使ったんだ。見ろ。」
「焦げてる!?」
「代償に俺は、左腕を失った。」
「だがなぜ!それなら国王は、神の仕業だなんて嘘を!」
「それは、簡単な話だ。」
「どう言う事だ?」
「俺が異端の者だからだ。」
「何だって!?」
「見た目は人間だが、流れる血は白銀。」
「精霊と人間との間に生まれたハーフなのか!?有り得ない!空想上の話だ!」
「理論上は可能だ。だが、どこへ行っても嫌われる。」
「羽根が無い!」
「おい、誰かが何世紀も昔に書いた書物が事実だと思ってるのか?」
「だったら!何か証拠はあるのか?」
「俺と勝負して、俺の体をその剣で斬り付けてみればいい。白銀の血が拝めるだろう。だが、それはあまりおすすめしない。お前が剣を抜いた瞬間、お前の頭と胴体は離れ離れだ。」
「大草原のグリフィンを退治したのも噂ではシルバーブラッドだと聞いた。」
「ああ、そうだ。」
「海の洞窟のセイレーンを退治したのも!」
「俺だ。」
「あのワイバーンもなのか?」
「詳しいな。」
「シルバーブラッドは不幸をもたらすと聞いた。」
「それも昔の書物だな。不幸をもたらす者が、酒場で月を見ながら蒸留酒を飲むと思うか?」

「アンタ、何しに戻って来たんだ?巨人がいなくなったのは数週間前の話だ。報酬は貰ったはずだ!」

「国王は、また新たな依頼を貼り出した。」
「ドラゴン討伐か!?」
「ああ、そうだ。」
「本気か?本気でドラゴンを討伐しようとしてるのか?」
「当たり前だ。世界から拒絶されたシルバーブラッドがこうして酒場で酒を飲むには、それしか稼ぐ方法がないだろう?」
「そうかそうか!ドラゴンを討伐してくれるのか!」
「これで安心して眠れるな。」
「ハッハッハッハッハッ!」
「まだ討伐した訳じゃない。そんなに喜ぶな。もしかしたら俺がドラゴンのディナーになるかもしれないんだ。」
「いやいやいや、アンタはドラゴンのディナーにもランチにも、もちろんモーニングにもならないさ!」
「そうか。なら楽しみにしていてくれ。」
「ああ、楽しみにしてるよ!アンタがどうやって空想上の生き物を討伐するのかをな!」
「何?」
「ドラゴン?おいおいおい、本当にドラゴンなんて書物の中の生き物が、この世界に存在すると思ってるのか?もう少し茶番に付き合おうかと思ってたが、限界だ。笑いが止まらない!」
「酔ってるのか?ドラゴンは存在する!これはゴーレムの話じゃない!」
「分かってるさ!分かってるとも!ああ、確かにドラゴンは存在する。だが、ドラゴンってのは、巨大な植物の事だ。」
「俺を侮辱してるのか?」
「侮辱じゃない。無知なアンタに教えてやってるんだよ。本当のドラゴンっての目にした事がないみたいだからな。」
「お前、何者だ!」
「俺か?俺は、俺を語って詐欺を働く者を見付け出して国王の前に連れて行く者だ。」
「な、何だと!?」
「よーく見て置くんだぞ?こんなのは滅多に見れるもんじゃないからな。」
「何をする気だ!?」
「ナイフで少し指先を傷付けるだけだ。」
「な!?白銀の血!?」
「さあ、国王がお待ちかねだ。逃げるなよ?首と胴体が離れ離れになるぞ?」
「まさか、本当に存在するなんて。」
「残念だったな。ああそれと、シルバーブラッドは酒は飲めない。猛毒だからな。」

第四百七十六話
「情弱の末路」

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