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2015年8月 5日 (水)

「第四百七十七話」

「よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。私は、この課の課長だ。」
母さん!僕は今、子供の頃からの夢だった刑事になりました!刑事になっての第一歩を歩き出しました!母さん、天国の母さん?きっと喜んでくれてますよね?
「分からない事があったら、恥ずかしがらずに何でも私に聞いてくれ。」
「はい!」
「因みに私は、課の連中からは課長と呼ばれている。」
「はい?」
「まあ、課長だから課長と呼ばれているのは当たり前じゃないかと新人君も思っただろ。」
「はい。」
「誰も私にニックネームを付けてくれないんだ。」
「ニックネーム?」
「まあ、私が課の連中のニックネームを付けてるから、私にニックネームがないのは当たり前と言えば当たり前なんだがな。だがしかし、薄情な連中だとは思わないか?私は、ニックネームを付けてやっていると言うのに、その私にニックネームを付け返してくれないんだからな。」
ニックネームか!母さん!ニックネームだよ?ニックネーム!刑事と言ったらニックネーム!まさに今僕は、刑事になった実感を堪能してます!
「聞いてるのか?新人君。」
「課長!」
「ど、どうした!?急にハッスルして!?」
「僕のニックネームは何でしょうか!」
「残念ながら新人君、キミにはニックネームはない!」
「そんなー!」
「安心しろ。最初はここにいる連中も新人君からのスタートだった。そうだなぁ?だいたい三ヶ月ぐらい行動を見たら私がニックネームを付けている。だから、新人君。私に思う存分、働きっぷりを見せてくれ!」
「はい!」
母さん!天国の母さん!やっとここまで来ました!刑事になって母さんを殺した犯人を捕まえる!子供の頃、心に決めたスタート地点に、ようやく立てました!母さん?僕が絶対にあの犯人を捕まえます。だからその日まで、僕の刑事魂溢れる働きっぷりを天国から見てて下さい!

第四百七十七話
「刑事魂」

「とりあえず新人君。キミに課の連中を紹介しよう。」
「は、はあ、ですが課長?」
「と言っても今はあの事件で全員出払ってるな。」
「あの事件?」
「殺人事件の捜査だ。」
「じゃあ、僕も行きます!」
「まあ、待ちなさい新人君。右も左も分からないで捜査に参加するのは、逆に足手まといだ。キミのバディが戻るまで、とりあえず課の連中をこの写真と共に紹介しよう。」
「集合写真、分かりました。」
「あそこのデスクは、思い出し笑い刑事。」
「え?」
「ん?何だ?既に顔見知りか?思い出し笑い刑事と。」
「いや、ここに来る途中でぶつかった的な、え?じゃありませんよ。今のはもしかしてニックネームってやつですか?」
「そうだよ。」
「思い出し笑い刑事って?」
「そのままだよ。コイツはな。よく思い出し笑いをするんだよ。」
「よくって、ニックネームにする程ですか?」
「見てみろこの写真の笑顔。」
「これ!思い出し笑いなんですか?」
「コイツはな。リアルタイムで笑った事がないんだ。」
「病気ですか?」
「なかなか面白い発想をするな新人君!思い出し笑い刑事は健康そのまものだ。」
「刑事が勤まるんですか?」
「思い出し笑い刑事を侮るな?コイツの思い出し笑いはただの思い出し笑いではない。その時の全てを記憶しているんだ。風景から匂い。周囲の会話。そこから何度も事件を解決に導いている。」
「凄いですね。」
「超記憶術とでも言ったらいいのか?まあ、難点はコイツが思い出し笑いするぐらいの出来事でなければ記憶しないってとこだな。」
「なるほど。」
「次にあそこのデスクは、この独り言刑事だ。」
「独り言ばっかり言うんですか?」
「そんなレベルで私がニックネームに採用する訳がないだろう?」
「と、言いますと?」
「コイツは、独り言しか喋らない。」
「はい?」
「だから会話は成立しない。覚えておくといい。」
「それこそ刑事が勤まるんですか?」
「新人君。キミは映画やドラマで、刑事モノや探偵モノを観た事はないか?」
「あります。」
「その時、事件解決になるような一言を言うキーパーソン的な人間がいるだろ?」
「はい。」
「独り言刑事は、まさにそのキーパーソン的な人間だ。コイツの発する独り言をきっかけに何度も事件を解決した。」
「そうなんですか。」
「次はあそこのデスクのこの下痢刑事だな。」
「そのニックネームでこの流れだと、つまりこの人は、ずっと下痢って事ですか?」
「察しが良いな、新人君!そう、コイツは常に下痢だ。」
「それこそ病気なんじゃないですか?」
「これは病気だな。」
「病院には行ったんですか?」
「ああ、さすがに私もガリガリの姿を見て、病院に行かせたよ。」
「治ったんですか?」
「ああ、治った。」
「え?治ったのにまだ下痢刑事はおかしいですよ。」
「いや、おかしくない。私が通院をやめさせたから、下痢だ。」
「何でやめさせるんですか!」
「事件を解決出来なくなったからだよ。」
「まさか、下痢だと事件を解決出来るって言うんですか?」
「私もそんな事あるかって思ったよ。だが、歴然だ。下痢時のトイレと言う個室空間で発揮するコイツの推理力は物凄い。」
「死んじゃうのでは?」
「下痢か辞職か選べと言ったら、コイツは迷わず下痢を選んだ。自分を犠牲にしてでも世の中を悪から守ろうとするその正義の心は誰にも負けない。」
「じゃあ、ニックネーム変えて上げましょうよ。」
「次はあそこのデス」
「課長!どう言うつもりですか!」
「おっ!丁度キミのバディが戻って来たぞ。」
「彼女がですか?」
「課の連中の紹介はまた後でゆっくりとするとして、まずはキミのバディの紹介だ。」
「課長!どう言うつもりですか!何でアタシが新人とバディを組まされなきゃならないんですか!」
「初々しいだろ?ほら、挨拶しなさい。」
「よろしくお願いします!」
「課長!アタシにバディは必要ありません!」
「そう言わずに、新人君を鍛え上げてくれよ。」
「そんなの絶対音感刑事や!」
「絶対音感刑事?」
「観葉植物刑事や!」
「観葉植物刑事?」
「しりとり刑事に任せればいいじゃないですか!」
「しりとり刑事?」
「彼らには既にバディがいて、キミだけだろ?バディがいない一匹狼は。」
「だから!アタシには必要ないって言ってるじゃないですか!」
「先輩!」
「はあ?何?」
「確かに僕は新人君です!他の先輩刑事方のような特殊な能力で事件を解決に導けないかもしれません!でも、僕にも先輩刑事の皆さんに負けない能力があります!それが捜査の約に立つか分かりませんけど。」
「はあ?」
「おっ!それは一体どんな能力なんだ新人君!」
「はい!僕は一度見たお母さんの顔と名前は絶対に忘れません!」
「だから!そう言うのが気持ち悪いって言ってんの!」
「き、気持ち悪い?」
「一度見た何々は忘れないとか!無機物と会話出来るとか!病気が分かるとか!そう言うの気持ち悪いのよ!」
「まあまあまあ、落ち着きなさい。新人君に八つ当たりしても仕方ないだろう。すまんな、新人君。」
「え?課長?これは一体?」
「とにかく!アタシにバディは必要ありませんから!それだけです!」
「お、おい。どこへ行くんだ?」
「犯人捕まえたんで!これから取り調べです!」
「捕まえたって、万引きか?銀行強盗か?」
「あの事件のですよ!」
「あの事件のだと!?」
「そうです!」
「相変わらずだな。」
「課長?彼女は?かなりの凄腕刑事っぽいですけど、一体彼女のニックネームは?」
「普通刑事だ。」
「普通刑事!?」
「普通なんだよ、彼女は。」
「普通刑事って、刑事って普通ですよね?この課の方達が少し変わってるだけで、殆どの刑事は普通刑事ですよ。」
「まさか、あの事件の犯人を捕まえて来るとはな。さすが普通刑事だ。」
「課長、そのさっきからちょくちょく出て来るあの事件って何ですか?」
「この写真の男が起こした事件だ。キミもよーく知っているだろう。」
「コイツは!?」
母さん!天国の母さん!刑事として母さんを殺した犯人を絶対に捕まえてやるってスタート地点に立った初日の1時間もしないうちに僕は、ゴールテープを切っていました。

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