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2015年8月26日 (水)

「第四百八十話」

「あちぃー!」
「どう言う事ですか?」
「エアコンが壊れてて暑いって事だよ!」
「いやそうじゃなくて!そんな事は私だって分かってますよ!」
「修理はいつ来るんだよ!」
「明日です。」
「こんな暑かったらな!仕事にならないよ!もう、今日はやめだやめ!やめやめ!」
「やめだやめって、子供の夏休みの宿題じゃないんですよ?」
「こんな数字の山に囲まれて、エアコン無しで数字を追跡出来るかってんだよ!」
「同じ事、遺族の方々にも言えるんですか?」
「・・・。ジョークだよ!ジョーク!暑い部屋を涼しくする為のジョークだよ!」
「体感温度誤差ゼロですけど?それで、彼は誰に殺されたんですか?」
「誰に殺された?それは警察屋さんのお仕事だろ?」
「屋さんって!」
「俺達数字屋の仕事は、誰に殺された?じゃなく、なぜ殺されなきゃならなかったか?だ。」

第四百八十話
「数字屋」

都会のビル群のあの辺の煙草屋を曲がって細道を行くとこの辺に小さな五階建ての建物があり、その真ん中の三階の部屋にそれはあった。
「なぜ彼は殺されなければならなかったんですか?」
「お前、美人だけど頭悪いな。」
「はあ?」
「それとな。美人だ美人だって世間に持てはやされてるかもしれないけどな。確かに、お前は美人だけど、俺のタイプじゃない。タイプじゃない美人は、ブスと同じ!」
「それは違うでしょ!」
「興味無いんだからさも似たりだよ!」
「はあ??何の話をしてるんですか?所長は真面目に仕事をする気が無いんですか?」
「おい!まさか刑事課に連絡する気じゃないだろうな?」
「仕方ありませんよ。所長が仕事する気無いんですから、所長が仕事する気無いって報告しないと!」
「産業スパイだ。それも三重スパイだ!」
「三重スパイ?」
「そう、彼が殺された理由はそこにある。」
「三重スパイって何ですか?」
「おいおいおい!三重スパイも分からないタイプじゃない美人と俺は数字調査してたってのか!」
「すいませんね!勉強不足で!」
「いいか?三重スパイってのは?二重スパイの一重上だ。」
「ざっくりとした説明をありがとうございます!」
「つまりだ。B社に雇われてA社をスパイする。これがスパイ。で、 B社に雇われてA社をスパイしてると見せ掛けてB社をスパイしていて実はA社に雇われていたってのが、二重スパイ。そんでもって、 B社に雇われてA社をスパイしてると見せ掛けてB社をスパイしていて実はA社に雇われていたと見せ掛けて本当はやっぱりB社に雇われていたんだよってのが三重スパイ。 」
「何ですか?それは?行って来いでドンなら!普通にスパイでいいじゃないですか!」
「これだからタイプじゃない美人は参るよな。」
「タイプじゃない美人は関係ないでしょ?」
「スパイのふりをしといた方が、普通のスパイよりも相手が油断して情報が引き出しやすいだろ?」
「なるほど。」
「これを見てみろ。」
「これは?」
「彼が所持していた改竄した書類だ。おそらくセセセソソソ社のモノをソソソセセセ社に渡そうとしてたんだろう。」
「はい。」
「はい、タイプじゃない美人君。」
「三重スパイでもややこしいのに、社名が絡むと更にややこしさが倍増されます。」
「仕方ないだろ!!」
「怒り方が尋常じゃない!?」
「こう暑かったらな!誰だって怒り方が尋常じゃなくなるわい!」
「早くエアコン修理して欲しいですね。紙のゴミ袋に顔を突っ込んで大声で怒鳴る姿なんか見たくないです。」
「ところで?この紙のゴミ袋は何だ?」
「ああ、それは数字調査の為にセセセソソソ社から押収した資料です。」
「彼は、ソソソセセセ社のスパイなんだぞ?何でセセセソソソ社から押収すんだよ!」
「所長がセセセソソソ社に在籍してたから押収しに行くって言ったんじゃないですか!」
じゃあ、あれだ。押収しに行く会社を間違えた。なんてややこしい社名なんだ!」
「それ、私が言ったら怒りましたよね。でも、その所長の有り得ない間違いで面白いモノを発見しましたよ。」
「このシュレッダーの紙くずの中から面白いモノが出て来るとは思えないけどな!」
「お見せしたいんで、とりあえず紙のゴミ袋から顔を出してもらっていいですか?」
「で?面白いモノって?」
「これです。」
「書類?」
「シュレッダーの中の紙くずを解析し復元したんです。これって、彼が持っていた書類ですよね?」
「ん?んん?そうだな。」
「なぜ、シュレッダーに?」
「改竄する前のやつだろ?」
「え?でも、おかしくないですか?」
「何が?改竄する前の書類をシュレッダーに掛ける!スパイの基本だろ?」
「だから、ソソソセセセ社の三重スパイだとして、どうしてソソソセセセ社にセセセソソソ社の改竄した書類を渡すんです?そしてなぜ、その改竄した書類がセセセソソソ社のシュレッダーの中に?」
「ちょっと二枚の書類を見せろ!」
「はい。」
「はいはいはいはい!なるほどね!そう言う事だったのかよ!こんちくしょいっ!」
「どう言う事ですか?」
「ここを見てみろ。300ベロリンルンチョって書いてある。」
「それが何か?」
「通常、この手のエンジンには、300チョッチョリーチョリンポンが普通だ。」
「300チョッチョリーチョリンポンと300ベロリンルンチョって、単位が一つ違うじゃないですか!」
「そう、単位が違う。」
「え?ええ?どう言う事ですか?」
「これを元にソソソセセセ社が開発を進めても途中で中止になるのは目に見えてる。ソソソセセセ社が開発中止になって得をするのは?」
「セセセソソソ社ですか?え、でも何で?彼はソソソセセセ社のスパイですよね?辻褄が合いません!」
「辻褄は合う!」
「合うんだ!」
「つまり彼は、セセセソソソ社が雇った四重スパイって訳だ!」
「四重スパイ!?それ、五重スパイって可能性は無いですよね?」
「・・・たぶんな!」
「間が恐い!とても!」
「兎にも角にもだ!セセセソソソ社を捜査しても犯人は出て来ない!ソソソセセセ社だ!と、刑事の皆さん方に伝えて差し上げなさい。」
「はいはい、分かりましたよ。でも!もうこんなややこしい仕事引き受けないで下さいね!」
「人間が数字を扱わなくなったら考えるよ。」
「人間が数字を扱わなくなったら私達の仕事は成立しないじゃないですか!」
「あちぃー!喫茶店行って来まーす!」
「ちょっ!ちょっと!」
小さな五階建ての建物のその真ん中の三階の部屋を出て、細道を行って煙草屋を曲がって都会のビル群のあの辺にそれはある。

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