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2015年9月30日 (水)

「第四百八十五話」

「ご、強盗!?」
死なれたくない男。
「おはよう。」
死にたい男。
「な、何してるんだ!?ボクの家のリビングで!?」
「見たら分かるだろ?」
「金は無い!お前が思ってる以上に金は無い!だから、帰れ!さっさと帰れ!」
「オレは、強盗じゃない。」
「リボルバーを手にした強盗じゃないが有り得るか!」
「リボルバーを手にした強盗じゃないが有り得るんだよ。」
「おい!訳が分からないぞ!だったら、お前は人の家のリビングでリボルバーを手にして何をしてんだ!」
「してると言うか、これからするんだ。」
「何をだ!」
「自殺だ。」
「そうか!」
「そうだ。」
「いや何でだよ!何でボクの家のリビングで自殺なんだよ!」
「強盗じゃない。」
「強盗じゃないのかもしれないけど!それはある意味強盗よりタチ悪いだろ!」
「見られてると恥ずかしいから、少しあっちに行っててくれ。」
「ああ、そっか。って、ああ、そっかじゃない!こんなとこで自殺されたら困るって言ってるだろ!」
「そんな事を言われても、オレはここで自殺するって決めたんだ。」
「決めたって何だよ!決めたって!ここはボクの家だぞ!いや、そもそも自殺するのに他人の家ってどう言う事?普通、自殺するなら人気の無い場所を選ぶだろ?」
「自殺にルールは無いだろ。」
「ルールは無いかもしれないけど!自殺するからって何でも有りって訳でもないだろ!」
「じゃあな。」
「いやいやいや!勝手にお別れの挨拶をするな!」
「見ての通り、オレは死にたいんだ。だから、邪魔しないでくれ。」
「するよ邪魔!全力でしてやるよ!邪魔!」
「正義感か?」
「ボクの家だからだ!ここがボクの家のリビングだからだ!自殺するなら他でしてくれよ!そしたら邪魔なんかしないよ!どうぞ!死んで下さいだよ!」
「オレは、ここで自殺したいんだ。」
「どうしてここなんだよ!別にここは自殺の名所でもないだろ!」
「直感だ。」
「だったらその直感、間違ってるだろ!」
「なぜだ?」
「現にスムーズに自殺出来てないじゃん!ボクに邪魔されてんじゃん!」
「少し黙っててくれ。」
「ああ、ごめん。って、ああ、ごめんじゃない!黙ったら自殺するだろ!」
「いいか?自殺ってのは、死ぬ事に意味があるんだ。どんなに邪魔されようが、確実に死ねればそれでいい。逆に、どんなに邪魔がなくても死ねなかったら憐れだろ?」
「まあ、確かにそうだな。」
「じゃあな。」
「じゃあなじゃない!だからってそれは、じゃあなじゃない!」
「死なせてくれよ。」
「待て待て待て!考えてもみろよ!ここで自殺するって事は!アンタが死んだ後に、アンタの死体が転がってて、ここに警察が来て、ボクが殺したんじゃないかって疑われるだろ!」
「遺書を書けばいいか?」
「そう言う問題じゃない!遺書を書いたって警察はボクが殺したんじゃないかって全力で疑うよ!いいか?とにかくどうしたって、ボクの家で自殺したら、ボクは疑われるんだよ!それはなぜか!前代未聞だからだ!他人の家で自殺ってケースが前代未聞だからだ!すんなりボクの意見を受け入れてくれないからだ!」
「まあ、それでもキミがオレを殺したって証拠は無いんだからいいだろ?何だったら、これからしばらく旅行にでも行けばいい。これなら完璧なアリバイだ。」
「何でアンタを自殺させる為に金の無いボクが、わざわざ旅行に行かなきゃならないんだよ!それならアンタの方が、ボクが旅行に行くタイミングで自殺しに来ればいいだろ!」
「今日、自殺したいんだ。」
「だから!ボクの家じゃなかったら!どうぞ好き勝手に自殺して下さいよ!」
「一つ聞きたいんだが?」
「何だよ!」
「もしかして、トイレに行きたいんじゃないのか?」
「そうだよ!オシッコしたいから起きたんだよ!そしたらリビングにリボルバーを持った男がいたんだよ!」
「そんなにモジモジしてるなら、トイレに行ってくればいいだろ。」
「行けるかよ!ボクがトイレに行った瞬間に絶対自殺する気だろ!」
「しないと約束しよう。」
「誰が信じられるか!」
「ああ、何だか、自殺するのがバカらしくなってきたな。」
「そんな棒読みな言葉を一体誰が信じると思ってるんだ!」
「いや、本当だ。トイレを我慢してモジモジしてる滑稽な大人を目にしたら、自殺するのがバカらしくなった。」
「バカにしてんのか!」
「だから、言ってこい。」
「信じられないっつってんだろ!」
「本当だ。」
「なら、アンタがボクの家から今すぐに出てってくれよ!」
「いや、オレは無事にキミがトイレでオシッコをしてリビングに戻って来るかを確認してから帰る。」
「幼子か!ボクは!どんな使命感だよ!それ!」
「これも何かの縁だ。」
「縁を持ち出すな!縁を!」
「それなら、こう言うのはどうだ?」
「どう言うのだ!」
「このリボルバーをキミに預ける。」
「えっ?」
「それなら安心だろ?」
「うーん?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・本当だな?本当にトイレからボクが戻って来たら、帰るんだな?」
「もちろんだ。」
「分かった!じゃあ、リボルバーを!」
「トイレに落とすなよ。」
「落とすかよ!」
リボルバーを預かった男は、慎重に慎重に、急がないように急いでトイレへ向かった。
「ジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボ!」
「バン!」
「アイツ!もう一丁持ってたのか!」
「ジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボ!」
「マズいぞ!非常にマズい!ボクはリボルバーを手にしてるじゃないか!警察にメチャメチャ疑われるじゃないか!?」
「ジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボ!」
「何か考えないと!どうする?どうすればいい?」
「ジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボジョボ!」
「って、その前にこのオシッコ!!」

第四百八十五話
「オシッコが止まらない男」

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