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2015年9月16日 (水)

「第四百八十三話」

「あのう?」
「何なんだキミは!?どうして手術室にいるんだ!?」
「ちょっと道を尋ねたいんですけどいいですか?」
「いやよくないだろ!見て分からないか?私はね。これから1時間後に難しい手術を控えてるんだよ。だからこうして手術室でイメージトレーニングしてるんだよ。」
「僕もこれから難しい道が控えてるんです!」
「難しい道って何なんだよ!だいたいどうして手術室まで来るんだ?受付に人がいなかったとしても、ここに辿り着くまでに沢山の人がいたろ!何で手術室なんだ!そもそもここは立ち入り禁止だぞ!手術中だったらどうすんだ!命が危険にさらされてたかもしれないんだぞ!」
「すいません。地図に集中してて、聞いてませんでした。本当にすいません!」
「そんなに深々と頭を下げて謝るぐらいなら聞いておけばいいだろ!もういい!地図を見せてみなさい!」
「ここなんですけどね?」
「宝?」
「ええ、宝の地図です。」
「キミ、海賊か!?」
「陸賊です。」
「単なる強盗の類いじゃないか!」
「失礼な!」
「キミが失礼を口にするな!」
「父が死んで、これが相続財産として僕の手元に来たんです。」
「この地図が相続財産?」
「上3人には、マンションやマンションやマンションだったんですけど、末っ子だったんで、ラッキーでした。」
「これをラッキーと捉えられる脳天気だから騙されるんだ!」
「騙される?まさか!?」
「どう考えたってそうだろ!そう言う事だろ!」
「医者じゃないんですか!?」
「医者だよ!これでも名医と呼ばれるぐらいの医者だよ!神の手と尊敬の念で呼ばれている医者だよ!逆に手術室でイメージトレーニングしてて医者じゃなかったら私は何なんだ!」
「尋ね人?」
「何で行方をくらましてるのに神の手とか呼ばれるぐらいまでに有名になってしまうんだよ!」
「客寄せパンダ?」
「実力は今でも健在だ!だからこうして手術室にいるんだろ!」
「客寄せカバ?」
「それはもう私の容姿からの悪口だろ!いやいやいや、そうじゃなくてだ!その宝の地図が偽物なんじゃないかと言う話だ!」
「この地図が偽物!?だったら本物はどこにあるんですか!」
「私が知る訳がないだろ!いや、そもそも本物の宝の地図なんか存在しない。いいか?キミは兄弟に騙されたんだよ。本来は4人で分けるべき相続財産を3人で分けたと言う事だ!」
「そんなはずはない!」
「一般常識で考えたら宝の地図が相続財産なんておかしいだろ?そもそも宝の地図を持っていたのなら、どうしてキミのお父さんは死ぬまで宝を発見しなかったんだ?私だったら宝探しに行くよ。」
「目の前に苦しむ患者さんがいてもですか!それでも先生はその患者さんより宝を選ぶんですか!」
「キミのお父さんの立場だったらの話をしているんだ!仮に目の前に苦しむ患者がいたら、手術してから宝探しに行くよ!」
「素晴らしいです!」
「何の握手だこれは?」
「僕も先生のような医者になりたいです!」
「何だ?もしかしてキミは研修医か?」
「いえ、単なるさつまいも好きです!」
「職業を好物で返したら訳が分からないだろ!」
「3度の飯よりさつまいもが好きです!」
「3度の飯よりもを食べ物で例えたら不成立なんだよ!いいからもう手術室から出て行ってくれ!」
「出て行きません!」
「道なら他の人に聞けばいいだろ!いいか?キミがここに入って来てしまったと言う事はだ!ここに何かしらの菌を持ち込んだかもしれないって事なんだぞ!つまりはだ!一旦この手術室は使用出来なくなるって事だ!たまたま今日は他の手術室が空いてるからいいようなものの!そうでなかったらこれは重大な事だぞ!人一人の命が懸かってる事なんだぞ!」
「すいません。ここに来る前に美味しそうなシュークリームが売ってるお店を見掛けたもんで、そのシュークリームを絶対に帰りに買うぞ!って事で頭がいっぱいでした!」
「だったら聞いてますよみたいな顔をするな!長々と言っちゃうだろ!時間の無駄もいいとこだ!」
「話はちゃんと聞いてました。ただ、頭がシュークリームでいっぱいだっただけです。」
「ならシュークリームの話はしなくていいだろ!頭の中はシュークリームでいっぱいでも聞いてましたよ的な事で丸く収まるだろ!」
「先生はそれでいいんですか!」
「何がだ!」
「先生が手術の流れを丁寧に説明してるのに、聞いてる患者さんの頭の中がシュークリームでも!」
「聞いてますよ!って、そう言う顔していればそれはそれでいいよ!それが大人の社会だろ!」
「僕は、そんな大人にはなりたくない!」
「何の話をしているんだ!」
「ここまでの道が分からないんですよ。」
「だから!家って書いてあって!宝って書いてある地図を見せられても私にも分からないだろ!そもそも家って書いてあって、宝って書いてあるだけだろ!それ以外に何も書いてないんだからそもそもが地図として成立してないんだこれは!道を教えようにも道が書かれてないんだから教えようがないだろ!」
「それって!?」
「そうだよ。可哀想だが、やはりキミは兄弟に騙されてたんだよ。ここまで言えば、さすがのキミでも分かるだろ。」
「この地球の僕の実家以外は全て宝だって事ですか!?」
「地球王か!キミのお父さんは!」
「僕は相続財産として地球を受け継いだって事ですか!」
「キミ、ちょっとここへ横になりなさい。」
「痛っ!?」
「いいから早く!」
「は、はい。こうですか?」
「これも何かの運命と言うヤツかもしれないな。」
「先生?なんか眠くなって来ましたけど?」
「これより緊急手術を開始する!」
「はい!?」

第四百八十三話
「悪性ポジティブ思考」

「な、何だこれは!?頭の中がシュークリームでいっぱいだ!?」

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