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2015年10月

2015年10月 7日 (水)

「第四百八十六話」

 殺人事件とは、いつでもどこでも巻き起こる。しかし今回は、山だ。若い女の刑事が、若い女の死体を前にブツブツと独り言を呟いていた。
「首をヒモのようなもので絞めたあと、全身を刺した。相当な恨みか、あるいは快楽、か。」
「おはよう。」
「えっ!?警部、いつの間に!?」
「今来たところだ。それで、どんな具合だ?」
「いやいやいや、警部!今来たところだって、間抜け顔で言ってる場合じゃないですよ!」
「キミは、相変わらず口が悪いな。難事件を何度も解決していなかったら、今頃は辺境の交番に飛ばされてるぞ?」
「いつの間に感が、いつの間に過ぎますよ!」
「あそう。で?どうなんだ?」
「瞬間移動ですか?もしかして警部は、瞬間移動の能力があるんですか?」
「マジで言っているのか?キミは?」
「大マジです!」
「そんな技が使える訳がないだろ?そんな技が使えてたら、警察なんかやっていないで、今頃は大金持ちになっているよ。」
「表の顔は間抜け顔の刑事で、裏の顔は間抜け顔の暗殺者とか?」
「間抜け顔は付けなきゃダメなのか?」
「それは譲れません!」
「キミに天才的頭脳が無かったら今頃は、辺境の交番に飛ばされてるぞ?」
「たまには他の事言えないんですか?」
「キミが譲らないから、私も譲らないんだ!」
「なるほど。」
「それで?被害者の女性の身元は分かったのか?」
「アタシも数々の殺人現場に来てますけど、こんなのは初めてです。」
「キミの刑事の勘ってヤツもお手上げか?だが見たとこ、そう変わった様子も見当たらないが?」
「あんないつの間には、初めてです!」
「まだその話!?」
「驚きと共に感動です!警部は、あれですか?前世は暗殺者とかですか?」
「知る訳ないだろ!前世なんか!」
「ここは山ですよ?落ち葉とか枝とか土とか、なのにあのいつの間に感!どう言う事ですか!」
「どうだっていいだろ!」
「どっかの博士と太いパイプで繋がってるんですか!」
「何で博士と太いパイプで繋がってると、いつの間にが凄い事になるんだよ。」
「メチャメチャ最新鋭の技術で作った靴を履いてるんじゃないんですか!」
「そんな訳がないだろ!だいたいそんな博士と太いパイプで繋がってるんだとしたら、警察なんかやっていないで、今頃は大金持ちになっているよ。」
「表の顔は間抜け顔な刑事で、裏の顔は間抜け顔な武器商人とか?」
「そんな訳がないだろ!キミがその天才的頭脳で数々の難事件を解決していなかったら!今頃は辺境の交番に飛ばされてるぞ!もういつの間に感は置いといてだ!マジでどうなんだ?」
「置いとけませんよ!こんな国家機密レベルのいつの間に感!」
「何で国家機密レベルだ!どうだっていいだろ!いつの間に感なんか!そもそもキミが集中し過ぎていたから私の存在に気付かなかったんじゃないのか?」
「それは有り得ませんね。」
「なぜそう言い切れる!キミは全神経を集中させ被害者の女性から犯人に繋がる手懸かりを頭をフル回転させて必死に探していた。だから私の存在に気付かなかった。」
「だってそもそも集中なんかしてませんもん。」
「しろ!刑事だろ!」
「だからビックリしてるんじゃないですか。そんな状態のアタシに対してのあのいつの間に感。頭悪いですね。」
「キミよりかは頭悪いかもしれないが、世間一般では良い方の部類だ!」
「もしかして警部!少し浮いてます?」
「そんな訳がないだろ!天才的頭脳がはじき出す考えか!」
「天才的頭脳でも凡人的な発想しか思い付かないほどのいつの間に感だったんですよ!あれは!」
「キミは私をからかっているのか?」
「からかってなんかいませんよ。むしろからかってるのは、警部の方でしょ。」
「殺人事件の現場で私がそんな事するはずがないだろ!ちょっと浮きながら登場って、どんだけ不謹慎なえづらだ!」
「だったらアタシも言いたいです!」
「何をだ。」
「殺人事件の現場で、あんな凄いいつの間に感を出す必要性がありますか!」
「出してないよ!いつもな感じでここまで来たよ!むしろ山だから足が重くなってたよ!」
「だったら警部!あのいつの間に感は何だったんですか!」
「知らないよ!キミが勝手に言っているだけだろ!」
「分かりました。」
「犯人の手懸かりの話か?犯人の手懸かりの話なんだろうな?」
「これしか考えられません!」
「犯人の手懸かりの話じゃないのか!」
「警部は、時間を」
「止められない!」
「なぜそう言い切れるんですか!」
「止めた事がないからだ!」
「止まった事に気付いてないだけでは?」
「どんだけおっちょこちょいなんだ私は!何で自分が時間を止めといて自分で気付かないんだ!」
「いやいやいや、違いますよ。そうじゃなくてですよ。」
「何がだ!」
「今まさに能力が開花したって事ですよ!」
「山道を歩いている時にか?」
「山道を歩いてる時だからこそですよ!」
「どんな理屈なんだよ。」
「聞いた事ありません?人間の脳はまだ100パーセント機能していない。」
「ああ、聞いた事あるよ。」
「眠ってる脳を目覚めさせるには、山を登れ!」
「それは初耳!」
「おめでとうございます!」
「何で祝賀会とかでするような握手をする。」
「時間を止められる能力が開花したんですよ!世界を征服出来るんですよ!」
「どうしてキミは、ちょくちょく悪っぽい発想を織り交ぜて来るんだ?いや、そもそも私に時間を止められる能力なんか開花していない!山を登って眠っている脳を目覚めさせるならば!キミだって条件的にそうだろ!」
「えっ!?」
「キミだけじゃない!他の捜査員達もだろ!」
「そうか!でも、あいにく今回の山登りではアタシの眠ってる脳は目覚めませんでした。もしかしたら!」
「どこへ行く気だ!」
「放して下さい!もしかしたら警部以外にも眠っていた脳が目覚めた人がいるかもじゃないですか!」
「言いたい事は山ほどある!が、これだけは言わせてくれ!」
「どうぞ。」
「事件を解決しろ!」
「分かりましたよ。」
「何だそのふてくされっぷりは!難事件を何度も解決していなかったら、今頃は辺境の交番に飛ばされてるぞ!」
「ちょっと待って下さい?」
「手懸かりか!」
「警部?」
「どんな手懸かりだ?」
「警部は、本当に警部ですか?」
「はあ?当たり前だろ!私は私だ。手帳を見なさい。」
「そう言う事じゃなくて!」
「どう言う事だ!ちんぷんかんぷんな前置きじゃなく!結論から言いなさい!」
「幽霊!」
「どう言う事だ!」
「警部が結論から言えって言うから言っただけですよ。」
「そんな奇天烈な結論を言うと誰が思うんだ!」
「つまり、警部は幽霊なんですよ。殺人現場に来る途中で、山道から転げ落ちて死んだんです。」
「そんな馬鹿な話があるか!」
「警部が幽霊だとしたら、あのいつの間に感も納得です。」
「勝手に納得するな!私は生きている!足だってあるだろ!」
「警部?幽霊に足がないなんて、一体いつの時代の話をしてるんですか?」
「あるのか!」
「まあ、ないタイプもいるかもしれませんけど、警部のそれはあるタイプです!」
「なぜキミに幽霊のタイプ分けが出来るんだ!」
「アタシは天才的頭脳の持ち主ですよ?」
「知っているよ。」
「難事件を何度も解決して来たんですよ?」
「知っているよ!」
「タイプ分けぐらい初見で出来るっしょ!」
「天才的頭脳だからって、何でもかんでもそれで納得出来る訳がないだろ!」
「じゃあ、警部が幽霊か幽霊じゃないかを証明しましょう。」
「証明も何も私が幽霊じゃないと言っているだろ!」
「幽霊は、こぞってみんなそんな事を言うもんなんですよ。」
「会った事あるのか!」
「銃は持ってますよね?」
「ああ、持ってるよ。」
「じゃあ、頭を撃ち抜いて下さい。」
「何でだ!」
「幽霊か幽霊じゃないかを証明するには、この方法が手っ取り早いんですよ。」
「結果的に幽霊だろ!詐欺だろこの方法は!」
「詐欺じゃありませんよ。恐いんですか?自分が死んでた事に気付く事が。」
「違うよ!自分が死ぬ事が恐いんだよ!何で警察が殺人事件の現場で自殺しなきゃならないんだよ!」
「それは警部がいつの間に感が凄過ぎたからでしょ!」
「いつの間に感が凄過ぎて幽霊かもしれないって疑われて!自殺しなきゃならないっておかしいだろ!だいたいいつの間に感が凄過ぎたって、いつの間に感が凄過ぎるんだなって、どうしてキミは簡単に受け入れられないんだ!」
「あまりにも非日常な奇天烈な状況をなぜ!そんな簡単に受け入れられか!人はそこまで単純で単細胞な生き物ではない!!」
「ええ!?私は何についてこんなにも激怒されているんだ?」
「もっとガツガツ音を立てて近付いて来ればよかったんですよ!バカだな!」
「謝ればいいのか?私は深々と頭を下げてキミにおわびすればいいのか?」
「別に謝っても状況は何一つ変わらないですけど、謝りたければ謝ってもいいですよ。」
「じゃあ、謝らないよ。状況が何一つ変わらないなら謝らないよ。」
「分かった!」
「手懸かりか!」
「手懸かりな訳ないでしょ!この状況で!」
「威張るな!警察がこの状況で手懸かり以外を考えてる事が問題だろ!」
「警察は、音を消せる能力が開花したんですよ。」
「全く無駄な開花をしてしまったもんだな。」
「いや、使い方によっては世界を征服出来ますよ!」
「私は生まれてから一度として世界を征服したいだなどと思った事はない!」
「じゃあ、何なんですか!あのいつの間に感の正体は何だったんですか!納得のいく説明して下さいよ!そしたらこんな事件あっという間に解決してみせますよ!」
「たまたまだろ。」
「あ、そっか!」
「納得した!?」

第四百八十六話
「犯人逮捕三時間前」

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2015年10月14日 (水)

「第四百八十七話」

 俺は、死ぬほど金に困ってた。死ぬほど金に困ってる人間がとるバカな行動は、そのまま死ぬか、人の金を奪うかだ。俺は、死に場所を探してた。気付くと夜中で、気付くと知らない町を歩いてた。立ち止まって月が綺麗だななんて思った次に気付くと俺は、知らない人の家にいた。魔が差した。気付くと体は勝手に金目の物を探してた。何でもいい!何か金目の物を!俺は必死で探した。だが、ない!金目の物がない!
「えっ?」
気付くと部屋の明かりが点いて、目の前にはゴルフクラブを手にした爺さんが立っていた。
「よ、よせ。」
俺の声にもならない声は、爺さんの耳には届かなかった。爺さんは、ゴルフクラブを振り上げて俺に襲い掛かって来た。
「よせぇぇぇぇぇ!」
気付くと部屋は静寂だった。花瓶を手にした俺は、頭から血を流して床に倒れる爺さんを見下ろしていた。
「だ、大丈夫か!?今、救急車を呼ぶ!」
「ま、待て。」
これは、罰なのか?死ぬか人の金を奪うかの選択肢しか頭になかった俺への罰なのか?俺の手を両手で握り締めて爺さんは、最後の力を振り絞って言った。
「今日からキミが神様だ。」
そう言うと爺さんは、死んだ。そして、俺は神様になった。

第四百八十七話
「貧乏神」

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2015年10月21日 (水)

「第四百八十八話」

「こんな脚本でゾンビ映画が撮れるか!」
「監督、俺の脚本のどこが不満なんですか!」

第四百八十八話
「ゾンビ映画」

「僕はさ。株式会社からさ。ゾンビ映画を撮ってくれって依頼されたんだよ。で、だったら最高のゾンビ映画にする為に最高の脚本家を用意してくれって条件出した訳だよ。で、数日後に株式会社がさ、新進気鋭の脚本家を用意しましたって連絡して来たんだよ。僕は、飛び上がって喜んだもんだよ。まあ、新進気鋭って意味はよく分からなかったけどさ。悪い意味じゃないって事は分かってたから了解した訳さ。そして数ヶ月が経ち、脚本が完成したって株式会社から連絡を受けてだよ。新進気鋭の脚本家の待つ喫茶店に来て脚本を読んだらこれだよ!」
「どれですか!この脚本は僕の中ではかなり最高傑作の脚本なんですけど!」
「ちょっと待てよ、ウンコ。」
「ウンコ!?」
「この脚本のどこがどう最高傑作だって言うんだ?こんなのありふれたゾンビ映画だろ!」
「お言葉を返しますが!現時点でゾンビ映画なんてやり尽くされてるんですよ!」
「ゾンビウイルスに世界が汚染されて人類は壊滅状態、逃げ惑いながら互いの愛を深めていく男女、途中で出会う生存者との人間賛歌、ワクチンを発見してハッピーエンド、ラストは女性のお腹に新たな生命が宿り人類再興の兆し、と。」
「ただただゾンビに襲われるだけじゃなく、強い人間味を出してみました。」
「今までのゾンビ映画に己のエッセンスをプラスしたって、それはもうパクリ同然!」
「ちょっと待って下さい!」
「だいたい、ゾンビ映画観るヤツってのは、ただただ人間がゾンビに酷たらしく襲われるとこを観たいんだよ!ゾンビ映画に人間味を求めちゃいないんだよ!そんなんだったら流行の女優が出てる恋愛映画でも観に行くっつぅの!」
「さっきも言ったように!ゾンビ映画は現時点でやり尽くされてるんですよ!」
「それでも!そこから今までにないゾンビ映画の脚本を捻り出すのが新進気鋭の脚本家だろうが!」
「んんんんん!だ、だったら、ゾンビウイルスが世界を汚染して」
「ちょいちょいちょい!」
「何ですか?」
「いや、そもそもがだよ?何かメチャクチャ当たり前のように言ってるけど、ゾンビウイルスって何だよ!現実にないだろそんなウイルス!」
「ちょっと待って下さいはこっちです!それを映画監督が言うんですか!」
「言う!言っちゃうんだよ!僕はね。そう言うの平気で言っちゃうの!」
「しかし、ウイルスを否定されたらゾンビ映画が!」
「ゾンビウイルスを封印されたぐらいで脚本が行き詰まるって、何が新進気鋭の脚本家だよ!」
「少し時間を下さい。」
「じゃあ、宇宙海賊が地球に呪いをかけたってのでいいじゃん!」
「宇宙海賊って何ですか!?」
「いいじゃんいいじゃん!斬新!」
「斬新過ぎるでしょ!?宇宙海賊が何でいきなり地球にゾンビの呪いをかけるんですか!」
「おいおいおいおい!新進気鋭なのにこの展開が分からないのか?」
「全く分かりません!」
「宇宙海賊の食料がゾンビだからだよ。メチャクチャ食糧難だから、じゃあ地球にゾンビの呪いをかけて地球人を食料にしようぜ!って納得の理由だよ。」
「いやもう、初っぱなから宇宙海賊だの呪いだのゾンビだので、情報量の処理で観客が置いてけぼりですよ。」
「観客をなめるな!そうやって一般人の情報解析能力をなめてるから!あんな脚本が最高傑作だなんて言えちゃうんだよ!」
「でもこれはぶっ飛び過ぎですよ!」
「この呪いは凄いんだ!」
「何がですか?」
「今までのゾンビウイルスによるゾンビ映画とは質が違う!違い過ぎる!」
「どう違うって言うんですか?」
「所詮、ゾンビウイルスってのは、空気感染か、ゾンビに噛まれたらゾンビになる程度だろ?だけど、この呪いは違いますよ!ゾンビって言ったらダメだし、もちろんゾンビって言葉を聞いてもダメだし、ゾンビって文字を見たらダメだし、ゾンビって考えただけでもダメ!」
「はあ?」
「これで最初の段階で五割の地球人は、宇宙海賊の呪いでゾンビになる!」
「五割!?九割は固いでしょ!」
「おいおいおいおい、新進気鋭!自分の物差しだけで生きてるから!あんな脚本が書けちゃうんだよ!いいか?ゾンビなんて世界人口の中だったらこれぐらいの知名度なんだよ。」
「でも数日後には人類全滅ですよ!」
「アホ!」
「アホ!?」
「世界がテメェの目で見える範囲だけしか存在しないって思うなよ?この世界には秘境に暮らす人々が大勢いる!数日後には人類全滅しない!」
「そんな事言っても!数日後には世界の大都市はほぼ全滅ですよ!」
「まあな。」
「世界の主要都市が全滅すって事は!ゾンビの呪いと戦えないくなるって事ですよ!更に言うなら!その後にやって来る宇宙海賊とも戦えないって事ですよ!」
「まあな。」
「まあな、じゃないですよ!メチャメチャ人類全滅じゃないですか!」
「甘いな。甘い。なんて考えが甘いのだろうか?これでよくもまあ、新進気鋭と呼ばれたもんだよ。」
「こんな絶体絶命の状況で人類全滅しないって言うんですか?」
「エスパー少女とロボットがいるだろ!」
「何なんですか!もう何なんですかとかしか言いようがないですよ!」
「エスパー少女はだな。生まれた時から研究施設で暮らしてたから、外の世界の情報はほぼ知らないんだよな。だから、ゾンビなんて知らないんだよ。聞いた事もなければ見た事もない。ゾンビについてはあまりにも無知な訳さ。」
「無知って言っても!この呪いはゾンビを見ただけでゾンビになっちゃうんですよ!」
「エスパー少女は盲目だ!」
「ゾンビって聞いただけでもゾンビになっちゃうんですよ!」
「エスパー少女は耳が聞こえない。」
「情報の小出しが半端ない!?」
「だからエスパー少女は、絶対にゾンビにはならない!」
「なんて都合のいい登場人物なんだ!」
「おいおいおいおい、今更何を言ってんだ?これは現実じゃない。フィクションの映画なんだぞ?ストーリーを進める上では都合のいい登場人物の出現は当たり前だろ?」
「まあ、確かにそれはそうですが、あまりにもそれが露骨過ぎる!」
「そんで、もちろんロボットはゾンビになる訳がない。」
「そのロボットってのも何なんですか?」
「後にやって来る宇宙海賊を退治するにはロボットだろ!もう人類全滅なんだからロボットが戦うしかないだろ!」
「戦うって言っても、そのロボットを操作する人間もいないし、そもそもロボットに地球を守るって意志があるんですか?」
「ある!」
「ある!?」
「対宇宙海賊用ロボットだからな!」
「どう言う事ですか!?」
「だから!」
「怒らないで説明して下さいよ。」
「あまりにも分からず屋だから、そりゃあ強めの口調になるさ。」
「いや、分からず屋って言うより分からないんですよ全く。」
「宇宙海賊がいるって事は、そもそも人類は宇宙海賊の存在を認識してるに決まってるだろ?だったらその宇宙海賊が攻めて来た時の為に防衛策を用意してるに決まってるだろ?」
「それが対宇宙海賊用ロボット。」
「そうだよ!強いぜ?メチャメチャ強いんだぜ?宇宙海賊なんか簡単に追っ払っちゃうんだぜ?」
「どんなフォルムなんですか?その対宇宙海賊用ロボットは?」
「こう、地球があるだろ?」
「はい。」
「で、こう宇宙海賊が地球に近付いて来るだろ?」
「はい。」
「したら、ガシーン!ガシーン!ガシーン!ガシーン!」
「地球から手足が出て来た!?」
「で、宇宙海賊をボカーン!ボカーン!ボカーン!ボカーン!だよ。」
「地球そのものを対宇宙海賊用ロボットにしちゃうって、どんな技術なんですか!」
「そんなのは全世界の科学技術を駆使すれば容易いだろ。」
「全世界の科学技術を駆使しても地球をメカに出来ないでしょ!」
「これはゾンビ映画の話だ!現実に地球をメカに出来るかどうかのドキュメンタリー映画じゃない!」
「まあ、そうでしたね。でも、監督?」
「何かな?新進気鋭。」
「これって、ゾンビ映画なんですか?」
「ゾンビ出てくりゃ、ゾンビ映画でしょ!そうでしょ!」
「それ以上のインパクト大な登場人物盛り沢山過ぎですよ。」
「因みにエスパー少女は大人になると単独で子供を生む事が出来るシステムだから。」
「化け物じゃん!」
「うっせ!」
「最後の最後で、うっせって何なんですか!」

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2015年10月28日 (水)

「第四百八十九話」

 僕は、この春、中学を卒業した。クラスメイトは高校への進学を選んだけど、僕だけは違った。僕は、高校への進学よりももっと困難な道を選んだ。
「コンコン。」
「はい。」
僕の部屋のドアをノックして入って来る夢への第一号。期待は膨らむばっかりだ!
「ガチャ。」
その期待は、急速に縮まった。
「団員募集の貼り紙を見てお母さんに部屋を聞いてここだって言うから来てみたんだが、冒険団はここでいいのか?」
「爺さんかよ!爺さんかよ!」
「ああ、爺さんだよ。」
「確かに団員募集の貼り紙には年齢制限書いてなかったけど、爺さんかよ!」
「爺さんだよ。」
「分かってる?冒険団だよ?」
「ああ、分かってる。」
「分かってるって、爺さんかよ!」
「ああ、爺さんだよ。爺さんじゃいけないかえ?」
「いけないって訳じゃないけどさ。爺さんかよ!かえって!」
「お前さん、一体どんな人間がやって来ると思ってたんだ?」
「美少女!」
「恋人募集かえ!そう言う不純な心得だから、きっとそれを正す為にわしがここへ誘われたんだな。」
「どう言う意味だよ。」
「冒険団をなめるな!と言う事だ。」
「なめてないよ!僕は真剣に冒険団を結成したんだ!ただ、やっぱり一緒に冒険するなら爺さんよりも美少女の方がいいだろ?」
「美少女が冒険の役に立つとは思わんがな。」
「傍に居てくれるだけで!それだけで十分役割は果たしてる!」
「恋人かえ!」
「何度か冒険をしていれば、おのずとそうなる可能性は大!なのに最初に来たのが、爺さんかよ!」
「カーッ!それが冒険団の団長の口から出る事かえ?そんな事じゃ、すぐ魔物に殺されるぞな?」
「魔物?魔物って?」
「冒険団なんだから、魔物を退治するんだろ?」
「爺さん。そんなファンタジーな訳がないだろ?つか、マジで言ってるの?魔物なんかこの世界にいる訳がないじゃん!だから、美少女が良かったんだよ。」
「いや、美少女でも同じ事を言ったはずだぞな?」
「爺さんと美少女じゃ!同じ言葉でも全然違うの!」
「それはもはや差別の領域だな!なら、冒険団は何をするんだ?」
「怪物退治だよ!決まってるだろ?」
「魔物が存在しなくて怪物は存在する理論が分からん!」
「爺さん?魔物ってのはさ。魔の物って事だろ?そんな地獄の集団が存在する訳ないじゃん!だって、地獄そのものが存在してないんだから!」
「なぬ!?」
「だけど怪物は違う!世界各地ではUMAと呼ばれる未確認動物がたくさん目撃されてる!」
「雪男とかの類かえ?」
「発想は古いけど、そう。」
「その怪物達を退治していくのかえ?」
「だから、そうだって何度も言ってんじゃん!」
「何度もは言ってないぞな!」
「とにかくだよ!美少女なら怪物と戦えるけど、爺さんが怪物と戦える訳?それとも爺さんは、まさかの伝説のスナイパーなの?もしそうだとしたらこれまでの数々の無礼は謝るけど?どうなの?」
「じゃあ、伝説のスナイパーで。」
「絶対違うじゃん!その言い方、絶対単なる爺さんじゃん!」
「単なる爺さんかもしれんが!冒険したいと言う志は!誰にも負けん!」
「志で負けなくても、速攻怪物に殺されるでしょ!」
「入団させてくれんのかえ!」
「させるよ!僕は、来る者は拒まず去る者は追わずの信念ですから!入団はさせるよ!」
「ありがとう!」
「よろしく!」
「それで?まずは何をするんだ?とりあえず怪物の情報を掻き集めたりすればいいのかえ?」
「その面倒臭い言葉遣いを直して欲しいとこだけど、、まずギルドに登録しないと!」
「ギルド?」
「そう。ギルドから仕事を請け負う。」
「なるほど。して、そのギルドはどこにあるんだ?駅前の花屋の横かえ?」
「あれは役所だよ!ギルドじゃないよ!何で爺さんはとにかく何かあると役所役所って発想なんだよ!」
「美少女だったら違うのかえ?」
「美少女だったら子犬だよ!」
「ちんぷんかんぷんだ!」
「ちんぷんかんぷんでも美少女だからなんでもかんでも許されるんだよ!だから、まずは冒険団を結成したのを登録しなきゃならないの!」
「なら、わしの友人に社労士がいるから頼んでみようかえ?」
「会社が立ち上がっちゃうじゃん!そんな事したら年に1度、決算報告しなきゃならないじゃん!面倒臭いし無駄にお金掛かっちゃうじゃんか!」
「なら、どこにあるんだ?そのギルドってヤツは?」
「知らないよ!」
「知らない!?」
「冒険をしてれば、そのうちギルドに辿り着くと思う!」
「ないのかえ?」
「あるよ!あるに決まってんじゃん!」
「だが、場所を知らん。」
「知らないから存在しないにイコールで繋がらないだろ?だから、爺さんは頭が固いから嫌だよ!」
「美少女だったら違うのか?」
「美少女だったら今頃はハミングだよ!」
「脳天気にも程があるだろ!」
「美少女は脳天気ぐらいが丁度良いだよ!」
「なら、ギルドへの登録は後回しにするとしてだ。やはり、怪物の情報を掻き集めるかえ?」
「爺さん?」
「何だ?」
「情報は既に掻き集まってるに決まってるだろ?僕がただただ冒険団を結成したと思ってんの?」
「そうだったのかえ。それはすまない。さすが団長だ。で、最初の魔物は?」
「怪物!」
「ああ、怪物は?」
「爺さんさ。1つだけ言っとくけど、僕らが退治するのは怪物だから!魔物じゃなくて怪物!かーいーぶーつー!」
「分かった分かった。ちょっと言い間違えただけで息子の嫁みたいにいびらんでくれ。」
「最初に退治する怪物は、もう決めてあるんだ。」
「その怪物とは?」
「その怪物ってのはね?」
「うむ。」
「お前だー!!」
「わしかえー!!」
「リアクション、32点。」
「何の採点かえ?」
「まずは、この怪物から!」
「この写真に写る怪物とは?」
「お前だー!!」
「わしかえー!!」
「リアクション、32点。」
「何の採点かえ?」
「雪男だよ。爺さん風に言えばね。」
「雪男を退治すればいいのかえ?」
「いや、正確には生け捕りにする。生け捕りすれば、ギルドからの報酬も跳ね上がるからね。」
「どこに存在するかも分からんのに、生け捕りにすれば報酬が跳ね上がるシステムは知ってるのかえ?」
「そうだよ!つか、生け捕りすればだいたい何でも報酬は跳ね上がるでしょ!そんな基本的な事も知らないんだから爺さんは嫌だよな!」
「美少女だったら違うのかえ?」
「美少女だったらバニラ味のソフトクリームだよ!」
「さっきからのそれらは単に美少女のイメージの話じゃないのかえ?」
「とにかく今から冒険の準備するから!」
「ちょくちょくわしの言う事は流されるんだな。で、準備?」
「だっからー!雪男を生け捕りにするんだから雪山装備だよ!」
「なるほど。」
「それと雪男を生け捕りにするんだから大きな檻だよ!」
「なるほど。」
「あとヘリコプター!」
「それは、なるほどじゃない!」
「だって雪男を生け捕りにするんだから運搬方法はヘリコプターしなないじゃん!」
「さすが団長さんだ!まさかその歳でヘリコプターを運転出来るとは!」
「出来る訳ないだろ?だからこうして美少女とヘリコプターを運転出来る団員を待ってるんじゃないか。」
「なぬ!?」
「だからどう見ても爺さんにヘリコプターが操縦出来るとは思えないから、今は待機!」
「それは具体的に何をしたらいいんだい?」
「こうして、ドアを見て団員がやって来るのを待つのみ!」
「よし!分かった!」
「こうして、待つ。」
「待つ。」
「ただひたすら、待つ。」
「これはこれで何かと暇ぞな。そうだ!ここいらで、わしの生い立ちでも聞くかえ?」
「聞かない!」

第四百八十九話
「ヘリはある」

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