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2015年10月21日 (水)

「第四百八十八話」

「こんな脚本でゾンビ映画が撮れるか!」
「監督、俺の脚本のどこが不満なんですか!」

第四百八十八話
「ゾンビ映画」

「僕はさ。株式会社からさ。ゾンビ映画を撮ってくれって依頼されたんだよ。で、だったら最高のゾンビ映画にする為に最高の脚本家を用意してくれって条件出した訳だよ。で、数日後に株式会社がさ、新進気鋭の脚本家を用意しましたって連絡して来たんだよ。僕は、飛び上がって喜んだもんだよ。まあ、新進気鋭って意味はよく分からなかったけどさ。悪い意味じゃないって事は分かってたから了解した訳さ。そして数ヶ月が経ち、脚本が完成したって株式会社から連絡を受けてだよ。新進気鋭の脚本家の待つ喫茶店に来て脚本を読んだらこれだよ!」
「どれですか!この脚本は僕の中ではかなり最高傑作の脚本なんですけど!」
「ちょっと待てよ、ウンコ。」
「ウンコ!?」
「この脚本のどこがどう最高傑作だって言うんだ?こんなのありふれたゾンビ映画だろ!」
「お言葉を返しますが!現時点でゾンビ映画なんてやり尽くされてるんですよ!」
「ゾンビウイルスに世界が汚染されて人類は壊滅状態、逃げ惑いながら互いの愛を深めていく男女、途中で出会う生存者との人間賛歌、ワクチンを発見してハッピーエンド、ラストは女性のお腹に新たな生命が宿り人類再興の兆し、と。」
「ただただゾンビに襲われるだけじゃなく、強い人間味を出してみました。」
「今までのゾンビ映画に己のエッセンスをプラスしたって、それはもうパクリ同然!」
「ちょっと待って下さい!」
「だいたい、ゾンビ映画観るヤツってのは、ただただ人間がゾンビに酷たらしく襲われるとこを観たいんだよ!ゾンビ映画に人間味を求めちゃいないんだよ!そんなんだったら流行の女優が出てる恋愛映画でも観に行くっつぅの!」
「さっきも言ったように!ゾンビ映画は現時点でやり尽くされてるんですよ!」
「それでも!そこから今までにないゾンビ映画の脚本を捻り出すのが新進気鋭の脚本家だろうが!」
「んんんんん!だ、だったら、ゾンビウイルスが世界を汚染して」
「ちょいちょいちょい!」
「何ですか?」
「いや、そもそもがだよ?何かメチャクチャ当たり前のように言ってるけど、ゾンビウイルスって何だよ!現実にないだろそんなウイルス!」
「ちょっと待って下さいはこっちです!それを映画監督が言うんですか!」
「言う!言っちゃうんだよ!僕はね。そう言うの平気で言っちゃうの!」
「しかし、ウイルスを否定されたらゾンビ映画が!」
「ゾンビウイルスを封印されたぐらいで脚本が行き詰まるって、何が新進気鋭の脚本家だよ!」
「少し時間を下さい。」
「じゃあ、宇宙海賊が地球に呪いをかけたってのでいいじゃん!」
「宇宙海賊って何ですか!?」
「いいじゃんいいじゃん!斬新!」
「斬新過ぎるでしょ!?宇宙海賊が何でいきなり地球にゾンビの呪いをかけるんですか!」
「おいおいおいおい!新進気鋭なのにこの展開が分からないのか?」
「全く分かりません!」
「宇宙海賊の食料がゾンビだからだよ。メチャクチャ食糧難だから、じゃあ地球にゾンビの呪いをかけて地球人を食料にしようぜ!って納得の理由だよ。」
「いやもう、初っぱなから宇宙海賊だの呪いだのゾンビだので、情報量の処理で観客が置いてけぼりですよ。」
「観客をなめるな!そうやって一般人の情報解析能力をなめてるから!あんな脚本が最高傑作だなんて言えちゃうんだよ!」
「でもこれはぶっ飛び過ぎですよ!」
「この呪いは凄いんだ!」
「何がですか?」
「今までのゾンビウイルスによるゾンビ映画とは質が違う!違い過ぎる!」
「どう違うって言うんですか?」
「所詮、ゾンビウイルスってのは、空気感染か、ゾンビに噛まれたらゾンビになる程度だろ?だけど、この呪いは違いますよ!ゾンビって言ったらダメだし、もちろんゾンビって言葉を聞いてもダメだし、ゾンビって文字を見たらダメだし、ゾンビって考えただけでもダメ!」
「はあ?」
「これで最初の段階で五割の地球人は、宇宙海賊の呪いでゾンビになる!」
「五割!?九割は固いでしょ!」
「おいおいおいおい、新進気鋭!自分の物差しだけで生きてるから!あんな脚本が書けちゃうんだよ!いいか?ゾンビなんて世界人口の中だったらこれぐらいの知名度なんだよ。」
「でも数日後には人類全滅ですよ!」
「アホ!」
「アホ!?」
「世界がテメェの目で見える範囲だけしか存在しないって思うなよ?この世界には秘境に暮らす人々が大勢いる!数日後には人類全滅しない!」
「そんな事言っても!数日後には世界の大都市はほぼ全滅ですよ!」
「まあな。」
「世界の主要都市が全滅すって事は!ゾンビの呪いと戦えないくなるって事ですよ!更に言うなら!その後にやって来る宇宙海賊とも戦えないって事ですよ!」
「まあな。」
「まあな、じゃないですよ!メチャメチャ人類全滅じゃないですか!」
「甘いな。甘い。なんて考えが甘いのだろうか?これでよくもまあ、新進気鋭と呼ばれたもんだよ。」
「こんな絶体絶命の状況で人類全滅しないって言うんですか?」
「エスパー少女とロボットがいるだろ!」
「何なんですか!もう何なんですかとかしか言いようがないですよ!」
「エスパー少女はだな。生まれた時から研究施設で暮らしてたから、外の世界の情報はほぼ知らないんだよな。だから、ゾンビなんて知らないんだよ。聞いた事もなければ見た事もない。ゾンビについてはあまりにも無知な訳さ。」
「無知って言っても!この呪いはゾンビを見ただけでゾンビになっちゃうんですよ!」
「エスパー少女は盲目だ!」
「ゾンビって聞いただけでもゾンビになっちゃうんですよ!」
「エスパー少女は耳が聞こえない。」
「情報の小出しが半端ない!?」
「だからエスパー少女は、絶対にゾンビにはならない!」
「なんて都合のいい登場人物なんだ!」
「おいおいおいおい、今更何を言ってんだ?これは現実じゃない。フィクションの映画なんだぞ?ストーリーを進める上では都合のいい登場人物の出現は当たり前だろ?」
「まあ、確かにそれはそうですが、あまりにもそれが露骨過ぎる!」
「そんで、もちろんロボットはゾンビになる訳がない。」
「そのロボットってのも何なんですか?」
「後にやって来る宇宙海賊を退治するにはロボットだろ!もう人類全滅なんだからロボットが戦うしかないだろ!」
「戦うって言っても、そのロボットを操作する人間もいないし、そもそもロボットに地球を守るって意志があるんですか?」
「ある!」
「ある!?」
「対宇宙海賊用ロボットだからな!」
「どう言う事ですか!?」
「だから!」
「怒らないで説明して下さいよ。」
「あまりにも分からず屋だから、そりゃあ強めの口調になるさ。」
「いや、分からず屋って言うより分からないんですよ全く。」
「宇宙海賊がいるって事は、そもそも人類は宇宙海賊の存在を認識してるに決まってるだろ?だったらその宇宙海賊が攻めて来た時の為に防衛策を用意してるに決まってるだろ?」
「それが対宇宙海賊用ロボット。」
「そうだよ!強いぜ?メチャメチャ強いんだぜ?宇宙海賊なんか簡単に追っ払っちゃうんだぜ?」
「どんなフォルムなんですか?その対宇宙海賊用ロボットは?」
「こう、地球があるだろ?」
「はい。」
「で、こう宇宙海賊が地球に近付いて来るだろ?」
「はい。」
「したら、ガシーン!ガシーン!ガシーン!ガシーン!」
「地球から手足が出て来た!?」
「で、宇宙海賊をボカーン!ボカーン!ボカーン!ボカーン!だよ。」
「地球そのものを対宇宙海賊用ロボットにしちゃうって、どんな技術なんですか!」
「そんなのは全世界の科学技術を駆使すれば容易いだろ。」
「全世界の科学技術を駆使しても地球をメカに出来ないでしょ!」
「これはゾンビ映画の話だ!現実に地球をメカに出来るかどうかのドキュメンタリー映画じゃない!」
「まあ、そうでしたね。でも、監督?」
「何かな?新進気鋭。」
「これって、ゾンビ映画なんですか?」
「ゾンビ出てくりゃ、ゾンビ映画でしょ!そうでしょ!」
「それ以上のインパクト大な登場人物盛り沢山過ぎですよ。」
「因みにエスパー少女は大人になると単独で子供を生む事が出来るシステムだから。」
「化け物じゃん!」
「うっせ!」
「最後の最後で、うっせって何なんですか!」

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