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2015年10月28日 (水)

「第四百八十九話」

 僕は、この春、中学を卒業した。クラスメイトは高校への進学を選んだけど、僕だけは違った。僕は、高校への進学よりももっと困難な道を選んだ。
「コンコン。」
「はい。」
僕の部屋のドアをノックして入って来る夢への第一号。期待は膨らむばっかりだ!
「ガチャ。」
その期待は、急速に縮まった。
「団員募集の貼り紙を見てお母さんに部屋を聞いてここだって言うから来てみたんだが、冒険団はここでいいのか?」
「爺さんかよ!爺さんかよ!」
「ああ、爺さんだよ。」
「確かに団員募集の貼り紙には年齢制限書いてなかったけど、爺さんかよ!」
「爺さんだよ。」
「分かってる?冒険団だよ?」
「ああ、分かってる。」
「分かってるって、爺さんかよ!」
「ああ、爺さんだよ。爺さんじゃいけないかえ?」
「いけないって訳じゃないけどさ。爺さんかよ!かえって!」
「お前さん、一体どんな人間がやって来ると思ってたんだ?」
「美少女!」
「恋人募集かえ!そう言う不純な心得だから、きっとそれを正す為にわしがここへ誘われたんだな。」
「どう言う意味だよ。」
「冒険団をなめるな!と言う事だ。」
「なめてないよ!僕は真剣に冒険団を結成したんだ!ただ、やっぱり一緒に冒険するなら爺さんよりも美少女の方がいいだろ?」
「美少女が冒険の役に立つとは思わんがな。」
「傍に居てくれるだけで!それだけで十分役割は果たしてる!」
「恋人かえ!」
「何度か冒険をしていれば、おのずとそうなる可能性は大!なのに最初に来たのが、爺さんかよ!」
「カーッ!それが冒険団の団長の口から出る事かえ?そんな事じゃ、すぐ魔物に殺されるぞな?」
「魔物?魔物って?」
「冒険団なんだから、魔物を退治するんだろ?」
「爺さん。そんなファンタジーな訳がないだろ?つか、マジで言ってるの?魔物なんかこの世界にいる訳がないじゃん!だから、美少女が良かったんだよ。」
「いや、美少女でも同じ事を言ったはずだぞな?」
「爺さんと美少女じゃ!同じ言葉でも全然違うの!」
「それはもはや差別の領域だな!なら、冒険団は何をするんだ?」
「怪物退治だよ!決まってるだろ?」
「魔物が存在しなくて怪物は存在する理論が分からん!」
「爺さん?魔物ってのはさ。魔の物って事だろ?そんな地獄の集団が存在する訳ないじゃん!だって、地獄そのものが存在してないんだから!」
「なぬ!?」
「だけど怪物は違う!世界各地ではUMAと呼ばれる未確認動物がたくさん目撃されてる!」
「雪男とかの類かえ?」
「発想は古いけど、そう。」
「その怪物達を退治していくのかえ?」
「だから、そうだって何度も言ってんじゃん!」
「何度もは言ってないぞな!」
「とにかくだよ!美少女なら怪物と戦えるけど、爺さんが怪物と戦える訳?それとも爺さんは、まさかの伝説のスナイパーなの?もしそうだとしたらこれまでの数々の無礼は謝るけど?どうなの?」
「じゃあ、伝説のスナイパーで。」
「絶対違うじゃん!その言い方、絶対単なる爺さんじゃん!」
「単なる爺さんかもしれんが!冒険したいと言う志は!誰にも負けん!」
「志で負けなくても、速攻怪物に殺されるでしょ!」
「入団させてくれんのかえ!」
「させるよ!僕は、来る者は拒まず去る者は追わずの信念ですから!入団はさせるよ!」
「ありがとう!」
「よろしく!」
「それで?まずは何をするんだ?とりあえず怪物の情報を掻き集めたりすればいいのかえ?」
「その面倒臭い言葉遣いを直して欲しいとこだけど、、まずギルドに登録しないと!」
「ギルド?」
「そう。ギルドから仕事を請け負う。」
「なるほど。して、そのギルドはどこにあるんだ?駅前の花屋の横かえ?」
「あれは役所だよ!ギルドじゃないよ!何で爺さんはとにかく何かあると役所役所って発想なんだよ!」
「美少女だったら違うのかえ?」
「美少女だったら子犬だよ!」
「ちんぷんかんぷんだ!」
「ちんぷんかんぷんでも美少女だからなんでもかんでも許されるんだよ!だから、まずは冒険団を結成したのを登録しなきゃならないの!」
「なら、わしの友人に社労士がいるから頼んでみようかえ?」
「会社が立ち上がっちゃうじゃん!そんな事したら年に1度、決算報告しなきゃならないじゃん!面倒臭いし無駄にお金掛かっちゃうじゃんか!」
「なら、どこにあるんだ?そのギルドってヤツは?」
「知らないよ!」
「知らない!?」
「冒険をしてれば、そのうちギルドに辿り着くと思う!」
「ないのかえ?」
「あるよ!あるに決まってんじゃん!」
「だが、場所を知らん。」
「知らないから存在しないにイコールで繋がらないだろ?だから、爺さんは頭が固いから嫌だよ!」
「美少女だったら違うのか?」
「美少女だったら今頃はハミングだよ!」
「脳天気にも程があるだろ!」
「美少女は脳天気ぐらいが丁度良いだよ!」
「なら、ギルドへの登録は後回しにするとしてだ。やはり、怪物の情報を掻き集めるかえ?」
「爺さん?」
「何だ?」
「情報は既に掻き集まってるに決まってるだろ?僕がただただ冒険団を結成したと思ってんの?」
「そうだったのかえ。それはすまない。さすが団長だ。で、最初の魔物は?」
「怪物!」
「ああ、怪物は?」
「爺さんさ。1つだけ言っとくけど、僕らが退治するのは怪物だから!魔物じゃなくて怪物!かーいーぶーつー!」
「分かった分かった。ちょっと言い間違えただけで息子の嫁みたいにいびらんでくれ。」
「最初に退治する怪物は、もう決めてあるんだ。」
「その怪物とは?」
「その怪物ってのはね?」
「うむ。」
「お前だー!!」
「わしかえー!!」
「リアクション、32点。」
「何の採点かえ?」
「まずは、この怪物から!」
「この写真に写る怪物とは?」
「お前だー!!」
「わしかえー!!」
「リアクション、32点。」
「何の採点かえ?」
「雪男だよ。爺さん風に言えばね。」
「雪男を退治すればいいのかえ?」
「いや、正確には生け捕りにする。生け捕りすれば、ギルドからの報酬も跳ね上がるからね。」
「どこに存在するかも分からんのに、生け捕りにすれば報酬が跳ね上がるシステムは知ってるのかえ?」
「そうだよ!つか、生け捕りすればだいたい何でも報酬は跳ね上がるでしょ!そんな基本的な事も知らないんだから爺さんは嫌だよな!」
「美少女だったら違うのかえ?」
「美少女だったらバニラ味のソフトクリームだよ!」
「さっきからのそれらは単に美少女のイメージの話じゃないのかえ?」
「とにかく今から冒険の準備するから!」
「ちょくちょくわしの言う事は流されるんだな。で、準備?」
「だっからー!雪男を生け捕りにするんだから雪山装備だよ!」
「なるほど。」
「それと雪男を生け捕りにするんだから大きな檻だよ!」
「なるほど。」
「あとヘリコプター!」
「それは、なるほどじゃない!」
「だって雪男を生け捕りにするんだから運搬方法はヘリコプターしなないじゃん!」
「さすが団長さんだ!まさかその歳でヘリコプターを運転出来るとは!」
「出来る訳ないだろ?だからこうして美少女とヘリコプターを運転出来る団員を待ってるんじゃないか。」
「なぬ!?」
「だからどう見ても爺さんにヘリコプターが操縦出来るとは思えないから、今は待機!」
「それは具体的に何をしたらいいんだい?」
「こうして、ドアを見て団員がやって来るのを待つのみ!」
「よし!分かった!」
「こうして、待つ。」
「待つ。」
「ただひたすら、待つ。」
「これはこれで何かと暇ぞな。そうだ!ここいらで、わしの生い立ちでも聞くかえ?」
「聞かない!」

第四百八十九話
「ヘリはある」

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