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2015年11月11日 (水)

「第四百九十一話」

「刑事さん。何で俺がこんな所に連れて来られなきゃならないんだ?」
「取り調べる事があるから取調室に連れて来られたんじゃないか。まあ、そう気を立てるな。これでも飲んで少し落ち着いたらどうだ?」
「これは?ココナッツ?」
「そうだ。」
「にストロー?」
「遠慮せずに飲め。」
「どう言う状況でココナッツにストローの出してんだよ!」
「嫌いか?」
「飲んだ事ないから好きか嫌いかも分かんねぇよ!こんなトロピカルな飲み物!」
「つまりそれは、罪を認めたと言う事かな?」
「なぜそうなる!だいたい罪って何だよ!俺は、罪なんか犯した覚えはないぞ!」
「この国で目からビームを出す事が何を意味するか分かってるだろ?」
「目からビーム?」
「目からビーム出すのは違法だ。それはつまり、罪だ。」
「アンタが何を言ってるのか。一体何が言いたいのか。全く理解出来ないんだが?これは夢か?」
「これが夢なら、私も孫の誕生日を祝えたんだがな。あいにくとこれは夢じゃない。そして私はまた、孫と娘に嫌われた。」
「だったら俺を解放して、孫の誕生日を祝ってやればいいだろ!」
「犯罪者を街に野放しには出来ない。孫の未来の為にもこの街の治安は守らなければならないからな。」
「だから!俺は犯罪者なんかじゃない!」
「犯罪者じゃなかったら何だ?正義のヒーローか?いいか?例えお前さんが正義のヒーローだったとしてもだ。この国で目からビームを出す事は犯罪だ。それは正義のヒーローでも例外じゃない。」
「さっきから聞いてると俺が目からビームを出したからここに連れて来られたみたいに聞こえるんたが?」
「それはつまり、罪を認めたと言う事かな?」
「認めてねぇし!俺は、目からビームなんか出せやしない!」
「あのな?目からビーム出すヤツが、素直に目からビーム出しますって言うと思うか?待てって言って待つ犯罪者がいないのと同じだ。」
「じゃあ、分かった。目からビーム出すのが犯罪だとしよう。俺の知らない間に変な法律が可決したんだとしよう。目からビーム出すヤツが目からビーム出しますって言わないんだとしよう。でも俺は、本当に目からビームなんか出ないんだよ!」
「この国で目からビーム犯罪が年間どれぐらいか知ってるか?」
「知るか!」
「小さな事件を含めたら、我々警察にも把握出来ない数字だ。今や犯罪のトップは目からビームだ。いや、全ての犯罪の元凶は目からビームと言っても過言じゃない。じゃあ、目玉を刳り貫かせてもらうぞ?」
「ちょっと待て待て待て!はあ?目玉を刳り貫く?突然何なんだよ!どんな話の流れだよ!いい訳ないだろ!」
「目からビームを出すんだから、目玉を刳り貫くしかないだろ?」
「理屈はそうかもしれないけど!何遍も言ってるが、俺の目からはビームなんか出ないんだよ!」
「止まれって言って止まる犯罪者がいないのと同じぐらい!目からビーム出るだろ?って聞いて目からビーム出るって答える犯罪者はいない!」
「だったら!そんなに俺を疑うんだったら!何か証拠があるんだろうな!証拠があって俺の目玉を刳り貫こうとしてるんだろうな!」
「目撃者がいる。お前が原っぱで目からビームを出してアリの巣を破壊してるとこをな!」
「人違いだろ!」
「目撃された犯罪者は、みな口を揃えてそう言うよ。」
「俺を見ろよ!もういい大人だぞ!そんな大人が原っぱでアリの巣を破壊するかよ!」
「それは一概に何とも言えないだろ?そう言う大人がいない確率はゼロじゃない。ただ、問題にしてるのは、いい大人が原っぱでアリの巣を破壊してた事じゃない。どうやってアリの巣を破壊してたかだ。水や花火とは訳が違う。」
「だから!出ねぇよ!目からビーム!」
「今は、原っぱでアリの巣を破壊する程度かもしれない。だが、いずれは目からビームで人を殺す。お前さんも人殺しにはなりたくないだろ?いいか?これは考え方一つだ。人殺しになって死刑になるより、今この場で目玉を刳り貫かれるだけで済む。良かったじゃないか。」
「俺が本当に目からビーム出るヤツだったらな!」
「おい、悪足掻きはもうよさないか?どうせお前さんは、目玉を刳り貫かなきゃここを出られないんだ。素直になれ。」
「だったら!俺の体を検査しろ!あるんだろ?こんだけ目からビーム出るヤツを取り締まってんなら、目からビーム出るか出ないかを判別する装置が!」
「もちろんだ。」
「だったら俺を検査しろ!」
「それは出来ない。」
「何でだよ!こんな冤罪が許される訳がないだろ!」
「あの装置を1回使用するのに、どれだけの善良な市民の税金が使われるか知ってるのか?そんな無駄金は使えない。」
「じゃあ!何の為にあるんだよ!その装置は!」
「抑止力だ。」
「何への抑止力なんだよ!」
「お前さんら、目からビームを出すヤツらへのだ。警察には、こう言う装置が存在する。だから観念しろ的なだ。」
「待てよ!じゃあ、俺みたいな無実の罪はどうなるんだ!」
「知らないのか?目からビーム罪での冤罪は、いまだかつて存在しない。」
「バカな!?」
「なぜだか分かるか?」
「冤罪を警察が揉み消してるからだろ!こうやってな!」
「お前さんは、一体いつの時代の話をしてるんだ。警察の不正は大警察が取り締まる時代だぞ?警察が何かを揉み消す事は不可能だ。さあ、出来るだけ痛くしないから目玉を刳り貫かせてくれないか。」
「どんなに出来るだけ配慮したって、麻酔もなしでスプーンで目玉刳り貫いたらムチャクチャ痛いだろ!」
「麻酔をしたら眠ってしまうだろ?瞼が閉じるだろ。」
「起きてる時の瞼の抵抗力の方が物凄いと思うけどな!!」
「それはつまり、罪を認めたと言う事でいいかな?」
「俺は、本当の本当に目からビームなんか出ないんだよ!」
「宿題してない我が子を前に宿題しなさい!って言わない母親がいるか?」
「いやもうそれは、犯罪者の例えでもないだろ!」
「警察もバカじゃない。」
「どう言う意味だよ。」
「目撃者だけで、お前さんをここに引っ張って来た訳じゃないって事だ。」
「ちゃんとした証拠があるってのか?」
「そうだ。」
「俺の目からはビームなんか出ないのに?ちゃんとした証拠が?」
「ああ、お前さんが観念するには十分過ぎるほどのな。」
「目からビーム出ないんだから、そんな証拠がある訳がない!」
「お前さん、高校時代は何部に入ってたんだ?」
「えっ?」
「調べたらすぐ分かったよ。数々の大会で輝かしい功績を残してたからな。目からビーム部の主将さん。これでもまだ、しらを切る気か?」
「それは、全て過去の栄光だ。」
「ああ、時代は変わった。だが、十分過ぎる証拠だ。」
「違うんだよ。刑事さん。本当に今の俺は目からビームが出せないんだよ。高校を卒業して目からビーム推薦で大学に入り、目からビーム入社して、1年した頃だ。何が原因かは分からないが、突然目からビームが出なくなったんだ。」
「その話を信じろと言うのか?」
「信じようが信じまいが、真実は真実だ。だから、俺になんか構ってないで、原っぱでアリの巣を目からビームで破壊してたヤツを捜した方がいいんじゃないか?」
「まだ自分じゃないって言い張るのか?」
「言い張るもなにも俺には無理なんだよ。刑事さん。」
「なっ!?」

第四百九十一話
「義眼」

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