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2015年11月

2015年11月 4日 (水)

「第四百九十話」

 放課後の教室。ありふれた高校生活の風景。幼馴染みで親友同士の男子生徒二人は、夢を語り合っていた。
「俺、巨大鮫を退治する!」
「はあ?お前、いきなり何をカミングアウトしてんだよ!」
「いきなりじゃない!これは、小さい時からの俺の夢なんだ!」
「聞いた事ないぞ?」
「俺は、巨大鮫を退治する!」
「図書委員なのに?」
「まあな!」
「誉めちゃいないよ!巨大鮫を退治したいのに何で図書委員なんかやってんだよ!って事だよ。」
「別に巨大鮫を退治したいのに図書委員やってちゃダメって世界共通ルールはないだろ!だったら逆にお前は何で、目からビーム部に入ってんだよ!」
「目からビーム出したいからだよ!目からビーム出したいから以外に目からビーム部に入部する意味無いだろ!」
「出てねぇじゃん!」
「まだ入部して一年半ぐらいだからだよ!俺の小さい頃からの夢はまっしぐらだけど、お前のは違うだろ?ん?待てよ?もしかしてお前!」
「うんこ漏らしてねぇよ!」
「分かってるよ!俺の鼻は見せ掛けか!そうじゃなくて!お前が図書委員やってるのって、文献とから巨大鮫についていろいろ調べられるからか?」
「俺は、本が大嫌いだ!」
「何でだよ!じゃあ、何であえて図書委員なんかしてんだよ!」
「本アレルギーなんだ!」
「だから!何で図書委員なんかしてんだよ!自殺?」
「そこまでのアレルギーじゃない!たまに心肺停止状態になるだけだ。」
「死ぬには十分過ぎるだろ!てか、どんなアレルギーだよ!」
「でもな。巨大鮫を退治したい!俺が絶対巨大鮫を退治するんだって強い信念が俺を再びこの世に蘇らすんだ!」
「幾度も死んでんのかよ!巨大鮫を退治したいなら、まず図書委員やめろよ!あ、もしかしてお前!」
「うんこ漏らしてねぇよ!」
「逆にお前がうんこ漏らしてたら、俺は何も言わずに黙って教室を出て行くよ。そうじゃなくて!お前が図書委員をやってる理由って、もしかして好きな女子が図書委員とかか?」
「いいか!俺は、巨大鮫を退治するまでは、恋愛なんかしてる暇はないんだよ!」
「だったらどうして死の淵まで行きながらも!そこまでして図書委員なんだよ!」
「いいだろ!!」
「そんな怒る事か?最終的に怒りって何なんだよ!俺は、お前の体の心配をして言ってるんだぞ?」
「それは、ありがとう。でもな?人間なんて、いつかは必ず死ぬんだよ。」
「いやだからって、自ら死に飛び込む事はないだろ!いやいやいや、ちょっと待て!本アレルギーが本当ならだぞ?お前は、どうやって授業を受けてんだよ!」
「教科書は教科書のカテゴライズとして別だから何とか眠気だけですんでるんだよ。」
「眠気の部分はみんなだろ。」
「俺がなぜ、死の恐怖と戦いながらも図書委員をやってるのか!それは、巨大鮫を退治する為には、それ以上の死の恐怖と戦わないといけないからだ!」
「つまり、死の恐怖と戦う練習みたいなのをやってるって言うのか?」
「そりゃあ、俺だってこの高校に巨大鮫退治部があったら迷わず入部してたさ!だが、俺の知る限り巨大鮫退治部はない!」
「いやでもそれに近い学校はあっただろ。」
「あったにはあったけど、好きな幼馴染みの女子がこの高校を受験しちゃったんだからしょうがないだろ!」
「恋愛なんかしてる暇はないって言ってたよ!?」
「一方的片想いぐらいはいいだろ!」
「ストーカーかよ!」
「ストーカーだよ!」
「ストーカーなの!?」
「違ぇよ!」
「なら否定しろよ!」
「否定するには証拠が不十分だ!」
「プライベートで何やってんだお前は!」
「その幼馴染みの女子が今はどこの高校行ってるのかとか調べた。」
「お前は受かって、幼馴染みの女子は落ちたのか!」
「いや違う。どうやら幼馴染みの女子にしてみたら、この高校は滑り止めだったらしい。」
「切ないな。」
「ああ、切ない。だけど!俺はそれで吹っ切れた!」
「いや吹っ切れてないだろ?」
「これで思い残す事なく巨大鮫退治に集中出来るってもんさ!」
「少し涙目じゃん!少し涙目じゃん!」
「だって、知らない男と腕組んで歩いてたんだぞ!うんこも漏らすよ!」
「まず病院に行け!そんなに胃腸と肛門に不安を抱えてるなら病院に行け!」
「巨大鮫を退治するだから関係ないだろ!」
「大海原を何だと思ってんだ!」
「人間だけが海でうんこしちゃいけないってのがおかしいだろ!海の生物はみんなしてんだぞ!」
「どう言う角度から怒ってんだよ!とにかくだよ。何でお前が巨大鮫を退治しなきゃならないんだよ。どうしてお前なんだよ。」
「愚問だな。」
「愚問かもしれないけど教えてくれよ。納得いく答えが返って来ないなら、俺はお前を全力で止めるよ!親友を死ぬかもしれない巨大鮫退治に笑顔で送り出すなんて俺には出来ないからな!」
「あいにく俺は、愚問に答えない主義だ。」
「訳の分からない主義を振りかざすな!」
「いいか?巨大鮫を退治しなけりゃ、その巨大鮫の犠牲になる人間がいる。分かるだろ?誰かが巨大鮫を退治しなきゃダメなんだよ。」
「だから、それがどうしてお前なんだよ!」
「世の中、お前みたいな考えだから巨大鮫が退治しきれてないのが分からないのか!それをなぜ、俺がやるのか?愚問中の愚問だな!だが、あえて主義を覆して答えてやるよ!何で俺がやらなきゃならないのかとかそんなのはどうだっていいんだよ!誰かがやるのを待ってたら、死ななくてもいい人間も死んじゃうからだろ!悲しみのどん底に落ちなくてもいい人間が増えるだろ!」
「感動した。」
「感動させる為に言ったんじゃないやい。」
「俺も目からビームが出るようになったら、お前の巨大鮫退治に協力するよ!」
「断る!」
「俺がお前を心配したように、お前も俺を心配してくれるのは分かるけど、俺はお前の信念に心を打たれたんだ!だから、俺が目からビーム出るようになったら、お前の巨大鮫退治のサポートをさせてくれ!」
「だから断るって!」
「何でだよ!」
「目からビーム出ないじゃん。」
「はあ?」
「人体の構造的に絶対無理じゃん。人間、そんな風に作られてないじゃん。で、仮に目からビーム出たら出たで、それは気味が悪いじゃん。そんな頭の狂った気持ち悪い奴と一緒に巨大鮫退治なんか無理じゃん。」
「何だと!もっぺん言ってみろ!」
「目からビーム出ないじゃん。人体の構造的に絶対無理じゃん。人間、そんな風に作られてないじゃん。で、仮に目からビーム出たら出たで、それは気味が悪いじゃん。そんな頭の狂った気持ち悪い奴と一緒に巨大鮫退治なんか無理じゃん。」
「もっぺん言いやがったなコノヤロー!」
「本当の事だろうが!」
「てめぇ!」
「何だよ!」
「川原行くぞ!」
「上等だよ!川原だよ!川原!」
「今日という今日はコノヤロー!」
「川原だ!川原!」
「川原だ!バカヤロー!」
「川原!川原!」
「川原!コノヤロー!」

誰もいなくなった教室を夕日が赤く染めた。

第四百九十話
「明日にはまた親友同士」

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2015年11月11日 (水)

「第四百九十一話」

「刑事さん。何で俺がこんな所に連れて来られなきゃならないんだ?」
「取り調べる事があるから取調室に連れて来られたんじゃないか。まあ、そう気を立てるな。これでも飲んで少し落ち着いたらどうだ?」
「これは?ココナッツ?」
「そうだ。」
「にストロー?」
「遠慮せずに飲め。」
「どう言う状況でココナッツにストローの出してんだよ!」
「嫌いか?」
「飲んだ事ないから好きか嫌いかも分かんねぇよ!こんなトロピカルな飲み物!」
「つまりそれは、罪を認めたと言う事かな?」
「なぜそうなる!だいたい罪って何だよ!俺は、罪なんか犯した覚えはないぞ!」
「この国で目からビームを出す事が何を意味するか分かってるだろ?」
「目からビーム?」
「目からビーム出すのは違法だ。それはつまり、罪だ。」
「アンタが何を言ってるのか。一体何が言いたいのか。全く理解出来ないんだが?これは夢か?」
「これが夢なら、私も孫の誕生日を祝えたんだがな。あいにくとこれは夢じゃない。そして私はまた、孫と娘に嫌われた。」
「だったら俺を解放して、孫の誕生日を祝ってやればいいだろ!」
「犯罪者を街に野放しには出来ない。孫の未来の為にもこの街の治安は守らなければならないからな。」
「だから!俺は犯罪者なんかじゃない!」
「犯罪者じゃなかったら何だ?正義のヒーローか?いいか?例えお前さんが正義のヒーローだったとしてもだ。この国で目からビームを出す事は犯罪だ。それは正義のヒーローでも例外じゃない。」
「さっきから聞いてると俺が目からビームを出したからここに連れて来られたみたいに聞こえるんたが?」
「それはつまり、罪を認めたと言う事かな?」
「認めてねぇし!俺は、目からビームなんか出せやしない!」
「あのな?目からビーム出すヤツが、素直に目からビーム出しますって言うと思うか?待てって言って待つ犯罪者がいないのと同じだ。」
「じゃあ、分かった。目からビーム出すのが犯罪だとしよう。俺の知らない間に変な法律が可決したんだとしよう。目からビーム出すヤツが目からビーム出しますって言わないんだとしよう。でも俺は、本当に目からビームなんか出ないんだよ!」
「この国で目からビーム犯罪が年間どれぐらいか知ってるか?」
「知るか!」
「小さな事件を含めたら、我々警察にも把握出来ない数字だ。今や犯罪のトップは目からビームだ。いや、全ての犯罪の元凶は目からビームと言っても過言じゃない。じゃあ、目玉を刳り貫かせてもらうぞ?」
「ちょっと待て待て待て!はあ?目玉を刳り貫く?突然何なんだよ!どんな話の流れだよ!いい訳ないだろ!」
「目からビームを出すんだから、目玉を刳り貫くしかないだろ?」
「理屈はそうかもしれないけど!何遍も言ってるが、俺の目からはビームなんか出ないんだよ!」
「止まれって言って止まる犯罪者がいないのと同じぐらい!目からビーム出るだろ?って聞いて目からビーム出るって答える犯罪者はいない!」
「だったら!そんなに俺を疑うんだったら!何か証拠があるんだろうな!証拠があって俺の目玉を刳り貫こうとしてるんだろうな!」
「目撃者がいる。お前が原っぱで目からビームを出してアリの巣を破壊してるとこをな!」
「人違いだろ!」
「目撃された犯罪者は、みな口を揃えてそう言うよ。」
「俺を見ろよ!もういい大人だぞ!そんな大人が原っぱでアリの巣を破壊するかよ!」
「それは一概に何とも言えないだろ?そう言う大人がいない確率はゼロじゃない。ただ、問題にしてるのは、いい大人が原っぱでアリの巣を破壊してた事じゃない。どうやってアリの巣を破壊してたかだ。水や花火とは訳が違う。」
「だから!出ねぇよ!目からビーム!」
「今は、原っぱでアリの巣を破壊する程度かもしれない。だが、いずれは目からビームで人を殺す。お前さんも人殺しにはなりたくないだろ?いいか?これは考え方一つだ。人殺しになって死刑になるより、今この場で目玉を刳り貫かれるだけで済む。良かったじゃないか。」
「俺が本当に目からビーム出るヤツだったらな!」
「おい、悪足掻きはもうよさないか?どうせお前さんは、目玉を刳り貫かなきゃここを出られないんだ。素直になれ。」
「だったら!俺の体を検査しろ!あるんだろ?こんだけ目からビーム出るヤツを取り締まってんなら、目からビーム出るか出ないかを判別する装置が!」
「もちろんだ。」
「だったら俺を検査しろ!」
「それは出来ない。」
「何でだよ!こんな冤罪が許される訳がないだろ!」
「あの装置を1回使用するのに、どれだけの善良な市民の税金が使われるか知ってるのか?そんな無駄金は使えない。」
「じゃあ!何の為にあるんだよ!その装置は!」
「抑止力だ。」
「何への抑止力なんだよ!」
「お前さんら、目からビームを出すヤツらへのだ。警察には、こう言う装置が存在する。だから観念しろ的なだ。」
「待てよ!じゃあ、俺みたいな無実の罪はどうなるんだ!」
「知らないのか?目からビーム罪での冤罪は、いまだかつて存在しない。」
「バカな!?」
「なぜだか分かるか?」
「冤罪を警察が揉み消してるからだろ!こうやってな!」
「お前さんは、一体いつの時代の話をしてるんだ。警察の不正は大警察が取り締まる時代だぞ?警察が何かを揉み消す事は不可能だ。さあ、出来るだけ痛くしないから目玉を刳り貫かせてくれないか。」
「どんなに出来るだけ配慮したって、麻酔もなしでスプーンで目玉刳り貫いたらムチャクチャ痛いだろ!」
「麻酔をしたら眠ってしまうだろ?瞼が閉じるだろ。」
「起きてる時の瞼の抵抗力の方が物凄いと思うけどな!!」
「それはつまり、罪を認めたと言う事でいいかな?」
「俺は、本当の本当に目からビームなんか出ないんだよ!」
「宿題してない我が子を前に宿題しなさい!って言わない母親がいるか?」
「いやもうそれは、犯罪者の例えでもないだろ!」
「警察もバカじゃない。」
「どう言う意味だよ。」
「目撃者だけで、お前さんをここに引っ張って来た訳じゃないって事だ。」
「ちゃんとした証拠があるってのか?」
「そうだ。」
「俺の目からはビームなんか出ないのに?ちゃんとした証拠が?」
「ああ、お前さんが観念するには十分過ぎるほどのな。」
「目からビーム出ないんだから、そんな証拠がある訳がない!」
「お前さん、高校時代は何部に入ってたんだ?」
「えっ?」
「調べたらすぐ分かったよ。数々の大会で輝かしい功績を残してたからな。目からビーム部の主将さん。これでもまだ、しらを切る気か?」
「それは、全て過去の栄光だ。」
「ああ、時代は変わった。だが、十分過ぎる証拠だ。」
「違うんだよ。刑事さん。本当に今の俺は目からビームが出せないんだよ。高校を卒業して目からビーム推薦で大学に入り、目からビーム入社して、1年した頃だ。何が原因かは分からないが、突然目からビームが出なくなったんだ。」
「その話を信じろと言うのか?」
「信じようが信じまいが、真実は真実だ。だから、俺になんか構ってないで、原っぱでアリの巣を目からビームで破壊してたヤツを捜した方がいいんじゃないか?」
「まだ自分じゃないって言い張るのか?」
「言い張るもなにも俺には無理なんだよ。刑事さん。」
「なっ!?」

第四百九十一話
「義眼」

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2015年11月18日 (水)

「第四百九十二話」

「ただいま。玄関の外まであるダンボールの山は何だ!?」
「ああ、お帰りなさい。また当たったわ。」
「あれは一体何が入ってんだよ!まさか、変な商売に引っ掛かったんじゃないだろうな!」
「アナタじゃあるまいし。」
「だったら、まさか変な商売を始めたんじゃないだろうな!」
「まさか、アナタじゃあるまいし。」
「俺は何なんだよ!」
「あのね?アナタは何も知らないから、そんな事を言ってられるのよ。きっとすぐにアタシに感謝する時が訪れるわよ!」
「ダンボールの中身は何なんだ!」
「いきなりダンボールの中身を言ってもアナタは、アタシを怒鳴り散らすだけだから、まずは順を追って説明するわね。」
「急な残業から帰って来たら、妻の訳の分からないダンボールの中身話かよ。明日も早いんだぞ?」
「平凡な毎日が、明日も続くと思わないで!」
「何で俺が怒鳴り散らされなきゃならないんだよ。一体何があったんだよ。」
「今日ね。昼間、友達と買い物に行ったの。」
「知ってるよ。と言うか、晩飯とかないのか?」
「ないわよ!」
「何でだよ!」
「だから!アタシの話を最後まで聞いたら、夕飯を作ってる場合じゃなかったんだって分かるわよ!そして最後にアナタは、アタシに感謝する事となる!」
「その何かを言い放つ時に漫画の主人公がする決めポーズみたいなの必要なのか?」
「お腹が減ってるならその辺にある缶詰でも適当に食べれば?」
「缶詰かよ!散々な日だな。」
「昼間、友達と買い物に行ったの。ランチ食べて、買い物に行こうと街をウロウロしてた訳よ。」
「ブラブラだろ?」
「そしたら、友達が発見したの!」
「何を?」
「有名な占い師よ!」
「占い師?」
「まあ、メディアとかでは取り上げられないけど、そっちの世界では超絶有名な占い師!」
「おいおいおい、やっぱりあのダンボールの中身は、変な商売に引っ掛かったんじゃないだろうな?」
「何でそうなるのよ!」
「だって、あのダンボールの中身は、その占い師が原因なんだろ?」
「よく分かったわね!アナタもしかして、エスパー!?」
「仮にもし俺がエスパーだとしたら、どんなタイミングで妻に打ち明けてんだよ。話の流れで汲み取っただけだよ。で、その占い師に何を吹き込まれたんだ?」
「こんなチャンスを逃したら一生後悔すると思って!友達と一緒に、そのそっちの世界では超絶有名な目からビーム出る占い師に占ってもらったの!」
「目からビーム出るのか!?」
「出るわよ。」
「目からビーム出るのか!?」
「そこ、引っ掛かるとこ?」
「引っ掛かるとしたら、ここだろ!」
「たまたま目からビーム出るってだけで、重要なのは占いが百発百中なとこなの!」
「出るのか?」
「出るわよ。」
「見たのか?」
「見てはないわよ。」
「じゃあ、出ないだろ。」
「物凄いSFなサングラス的なモノをしてたから出るでしょ!」
「何でそんな演出だけで信用すんだよ!むしろ胡散臭ささ満載だろ!」
「だから!目からビーム出ようが出まいが、そこはどうだっていい訳!そこは関係ないの!占い師なんだから占いが百発百中なら十分でしょ!本人が目からビーム出るって言ってんだから出るでいいじゃん!むしろ逆に目からビーム出ないのに、目からビーム出るなんて嘘を付く必要性があるの?って話よ!」
「んまあ、話がややこしくなるから目からビームはもうこれ以上、掘り下げないよ。それで?占い師に何て言われたんだ?」
「まずは、アタシ達が買おうと思ってたモノを全て言い当てられたの!」
「そんなの女性が買いそうなモノを列挙しただけだろ?」
「友達はその日、犬を買う予定だったのよ!その犬種も付けようとしてた名前まで当てたのよ!」
「それは、少し凄いな。」
「少し?アナタ、素直になりなさいよ!超絶凄いでしょ!それで、その占い師は、明日までにアタシ達に起こる主な出来事を占って紙に書いて手渡したの!」
「お前、そんな高名な占い師に占ってもらって、一体いくら支払ったんだよ。」
「タダよ!」
「バカな!?そんな百発百中の占い師がタダな訳があるか!」
「確かにふだんなら高級車並よ!でも今日はタダだったの!紙を手渡すとその場から居なくなったの!」
「いやちょっと待てよ。例え今回がタダだったとしてもだ。お前は、こんなチャンスを逃したらって、高級車並の金額を支払って占いをしてもらおうと思ってたって事か?」
「そこはご愛嬌よ!」
「ご愛嬌で高級車並の金額が口座から引き落とされてたまるか!」
「でね!ことごとく占いは当たり続けてるの!」
「高級車並の話をことごとく流すな!」
「アナタが急な残業で帰りが遅くなるのももちろんよ!」
「いやもう話が散らかり過ぎて何に集中していいんだか分からないよ!」
「アタシが犬のウンチを3回踏むとか、アタシがカラスにフンを3回落とされるとか、アタシが急な腹痛で入ったトイレのトイレットペーパーがないとか、アタシが道に落ちてるバナナの皮に3回滑るとか!」
「何て、おっちょこちょいな1日なんだ!」
「とにかくもう!当たりまくりなのよ!」
「当たりまくりなのは分かったよ。で、その話はどうやってあのダンボールの中身と繋がるんだ?」
「これを見よ!」
「例の占いが書かれた紙か?」
「イエス!」
「ハエが髪の毛にとまる。ウォシュレットの水の勢いがマックスになってる。買った雑誌が先週号。買ったキャベツの中に虫。リンゴは腐ってる。お気に入りの腕時計が壁にぶつかって壊れる。おい何だよこれ!悪い事しか書いてないじゃないか!」
「まあ、そう言う占い師だからね。」
「そりゃあ!メディアとかでは取り上げられないよ!てか、何で高級車並の金額を支払って、悪い事を占ってもらうんだよ!」
「そう言うアナタの知らない世界もあるのよ。」
「深く頷かな!と言うかだぞ?これって占ってもらってんたから回避出来るのは回避出来ただろ!」
「今日の午後11時を過ぎたら紙を見よって言われたの。」
「無料お試し期間で信用させて次に高級車並みの金額で占うつもりじゃないのか?ああ!良かった!タダで!」
「喜ぶのはまだ早いわ!最後を読んで!そこになぜ占い師が明日までに起こる事しか占わなかったかの答えが書かれてるから!」
「タダだからだろ?無料お試し期間的なやつだろ?いいか?百発百中だからって、次にその占い師と出会っても絶対に占ってもらうなよ!」
「いいから最後を見よ!」
「えっ!?」
「そう!地球は明日、大爆発して滅亡する!」
「嘘だろ?」
「これまでの占いが全て的中してんのに、嘘な訳ないじゃん!」
「おい!あのダンボールの中身は一体何なんだ!」
「酸素よ!」
「酸素!?」
「そう!全て酸素!いい?これでアタシ達は、宇宙に放り出されてもしばらくは生きられるのよ!」
「それは大爆発を生き残れたらの話だろ!と言うか、生き残れたとしても酸素だけで宇宙空間を生き残れる訳ないだろ!宇宙飛行士見た事あるだろ!」
「だから、大量の毛布も買ったわよ!」
「宇宙空間何だと思ってんだよ!と言うか、間もなく日付が変わるぞ?」
「そうね。」
「さあ、風呂入って寝るぞ。」
「えっ!?この状況で寝れる!?」
「地球が大爆発する訳がないだろ?」
「占いがハズレるって事?」
「占いがハズレるって事じゃなくて、お前は占い師に担がれたんだよ。こうやって慌てふためくお前を想像して、今頃その占い師はニヤニヤしながら眠りについてるよ。」
「占い師のジョークに翻弄されたって事!?」
「まあ、よく捉えたらそうかもな?」
「でも本当に明日、地球が大爆発して滅亡したら?」
「おい、冷静になって考えてみろよ。地球が大爆発するんだぞ?だとしてらそう言う感じの機関が、そう言う予兆に気付いてるだろ?明日、地球が滅びるって前日がこんなにも平和な訳がないだろ?」
「まあ、言われてみればそうね。」
「いいか?お前がすべき事は、明日の朝一でダンボールの中身の酸素と大量の毛布を返品する事だ。」
「あの占い師、今度会ったらぶっ飛ばしてやる!」
「それは無理だな。」
「何で!」
「だって、そう言う事を占えるんだろ?だから、お前は二度とその占い師には出会えない。」
「くっそーっ!」
「今日もきっと、いつも通りの平凡な毎日の続きだよ。」

「もう0時過ぎてるじゃない!あーヤダヤダ!寝よ!」
「なんて無駄な時間だったんだ!」
「目からビーム出す夢でも見よ!」
「夢で憂さ晴らしすんなよ!」
「あれ?今、揺れなかった?」
「気のせいだろ?」

第四百九十二話
「午前0時5分地球消滅」

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2015年11月25日 (水)

「第四百九十三話」

 高いビルの屋上に刑事が二人いるよ。一人はベテラン、一人はルーキーだよ。二人とも顔面蒼白で互いに見合ってるよ。
「先輩?」
「新人。」
二人は息が合ったように、柵とは反対方向のドアの方を向いたよ。
「先輩?」
「新人。」
二人の視線の先には、壁に頭をぶつけた衝撃でぐったりしてる若い女性がいたよ。
「先輩?」
「新人。」
「死んでますよね?」
「いや、死んでないんじゃないか?」
「いや死んでますよ!あんな壁がへこんでるし、ちょっと脳みそ出てるし、100パー死んでますって!」
「そうか?ちょっと動いてるぞ?」
「ピクピクしてるだけじゃないすか!死んだ時のピクピクですってば!あれは!絶対、死んじゃいましたって!」
「だとしたら、可哀想に。」
一体何があったんだろうね?気になる解決編は、このあとすぐだよ。
「先輩があんな馬鹿力で引っ張るからですよ!」
「あの場合、そうするのが刑事だろ!」
「ああするのが刑事かもしれないすけど!あの馬鹿力はダメですよ!」
「出ちゃったんだよ!命を粗末にしようとした女性を助けようとつい、出ちゃったんだよ!」
「屋上から飛び降り自殺しようとした人間を壁にぶつけて死なせるって、どんだけナンセンスなんすか!」
「今にも飛び降りそうだったんだぞ!襟首掴んで引っ張るのが当然だろ!」
「だから、それは刑事として当然なのかもしれないすけど、手加減して下さいよ!」
そう言う事だったんだね。あれ?あれあれ?でも、死んだと思ってた若い女性が立ち上がったよ。
「先輩?」
「新人?」
フラフラと歩き出したよ。
「生きてたんだ!」
「そらみたことか!生きてるって言っただろ!」
「いや絶対、先輩も死んだと思ってたじゃないすか!でも良かった。」
「ああ、めでたしめでたしだ。」
「めでたしめでたしではないすけどね。」
「おいキミ、何があったか知らないが、命を粗末にするも」
若い女性は、フラフラ歩きながら刑事達の真ん中を通って柵に手を掛け、また飛び降り自殺しようとしているよ。
「ちょっと待て!」
「いや、待つのはお前だ!新人!」
「はあ?何言い出すんすか!」
「いいか?このまま飛び降り自殺しないで女性が死んじまったら、理由は何であれ、俺は殺人犯だ。」
「何を言ってるんすか!目の前で人が飛び降り自殺しようとしてるんですよ!」
「同じ人間がな。」
「先輩が助けないって言うなら僕が助けますよ!」
「最後に触った奴の責任だからな。」
「何で子供のそう言うやり取りみたくなるんすか!」
そう言うとルーキーの刑事は、飛び降り自殺する為に柵を乗り越えようとする女性の腰に抱き付いたよ。
「いいか?女性は、死にたがってるんだ。死にたい人間を死なせてやるのもこれ、刑事の仕事じゃなかろうか?」
「誰を説得してるんすか!説得するなら女性の方を説得して下さいよ!と言うか、手伝って下さいよ!」
「そうしたいんだが、手が震えて足がすくんで動けないんだ!」
「何、トラウマ発動しちゃってるんすか!」
「さっきの今だぞ!発動するだろ!また命を粗末にしようとしたヤツを助けようとして殺しそうになったらって思ったら!」
「分かりますけど!僕一人じゃ絶対無理です!」
「男と女だぞ!いくら何でもお前の力の方が上だろ!踏ん張れ!」
「そうしたいのは、山々なんですが、踏ん張ったら今にもウンコが溢れ出しそうなんすよ!」
「人の命とウンコ、何天秤に掛けてんだ!いいだろ別に、ウンコ漏れたって!」
「よくないっすよ!こんなとこでウンコ漏らしたら、先輩が絶対に言いふらすじゃないすか!変なニックネーム付けるじゃないすか!」
「俺は小学生か!そんな事する訳ないだろ!」
「信用出来ません!」
「お前の中で俺をどんなキャラに仕上げてんだ!」
「じゃあ、先輩帰って下さい!先輩が見てないなら、ウンコ漏らしながらも女性は助けます!」
「だから!足がすくんで動けないんだよ!」
「何なんすか!じゃあ、どうしろって言うんすか!」
「助ければいいだろ!」
「だから!踏ん張ったら確実にウンコ大爆発って言ってるじゃないですか!」
「それはいいだろ!」
「よくない!と言うか、このままだと僕も落ちちゃうんすよ!」
「だったら手を放せばいいだろ!元々、死ぬ予定だった女性なんだ。死なせてやるのも乙なもんだぞ?」
「こんな時に風情な感じで言わないで下さい!それに!手を放す事は出来ません!」
「何でだ!別にその女性と交際してた訳じゃないだろ!」
「僕の事を捨てないでくれって抱き付いてるんじゃないですよ!」
「だったら、逝かせてやれ。」
「良い感じで均衡を保ってるから無理です!」
「何だ!均衡って!」
「だから、こうしてるからウンコが溢れ出さないですんでるんす!お互いのこのパワーバランスだからこそウンコが溢れ出さないですんでるんす!」
「それはつまり身動きが取れないって事か?」
「簡単に言うとそうです!」
「お前はウンコが漏れたくないのか女性を死なせたくないのかどっちなんだ!」
「両方です!」
「何なんだ?俺達三人は、この広い世界のこんな狭い空間で一体何をしてんだ!」
「好んでこうなった訳じゃないですよ!まだ動けないんすか!」
「まだまだ動けそうもないな。」
「何なんすか!」
「それは俺の台詞でもあるぞ!」
実に不条理だね。そしてなんてシュールリアリズムなんだろうね。この話の結末がどうなったかって?幕は、呆気なく閉じたんだよ。そうこうしてる間に若い女性は息を引き取り、均衡が破られたルーキー刑事はその場でウンコを漏らし、ベテラン刑事は殺人犯になった。でもね?こんな不可思議な夜もあるけど、今日も地球はいつも通りな人にはいつも通りな感じで回り続けてるんだよ。

第四百九十三話
「五話オムニバスだったら二話目的作品」

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