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2015年11月 4日 (水)

「第四百九十話」

 放課後の教室。ありふれた高校生活の風景。幼馴染みで親友同士の男子生徒二人は、夢を語り合っていた。
「俺、巨大鮫を退治する!」
「はあ?お前、いきなり何をカミングアウトしてんだよ!」
「いきなりじゃない!これは、小さい時からの俺の夢なんだ!」
「聞いた事ないぞ?」
「俺は、巨大鮫を退治する!」
「図書委員なのに?」
「まあな!」
「誉めちゃいないよ!巨大鮫を退治したいのに何で図書委員なんかやってんだよ!って事だよ。」
「別に巨大鮫を退治したいのに図書委員やってちゃダメって世界共通ルールはないだろ!だったら逆にお前は何で、目からビーム部に入ってんだよ!」
「目からビーム出したいからだよ!目からビーム出したいから以外に目からビーム部に入部する意味無いだろ!」
「出てねぇじゃん!」
「まだ入部して一年半ぐらいだからだよ!俺の小さい頃からの夢はまっしぐらだけど、お前のは違うだろ?ん?待てよ?もしかしてお前!」
「うんこ漏らしてねぇよ!」
「分かってるよ!俺の鼻は見せ掛けか!そうじゃなくて!お前が図書委員やってるのって、文献とから巨大鮫についていろいろ調べられるからか?」
「俺は、本が大嫌いだ!」
「何でだよ!じゃあ、何であえて図書委員なんかしてんだよ!」
「本アレルギーなんだ!」
「だから!何で図書委員なんかしてんだよ!自殺?」
「そこまでのアレルギーじゃない!たまに心肺停止状態になるだけだ。」
「死ぬには十分過ぎるだろ!てか、どんなアレルギーだよ!」
「でもな。巨大鮫を退治したい!俺が絶対巨大鮫を退治するんだって強い信念が俺を再びこの世に蘇らすんだ!」
「幾度も死んでんのかよ!巨大鮫を退治したいなら、まず図書委員やめろよ!あ、もしかしてお前!」
「うんこ漏らしてねぇよ!」
「逆にお前がうんこ漏らしてたら、俺は何も言わずに黙って教室を出て行くよ。そうじゃなくて!お前が図書委員をやってる理由って、もしかして好きな女子が図書委員とかか?」
「いいか!俺は、巨大鮫を退治するまでは、恋愛なんかしてる暇はないんだよ!」
「だったらどうして死の淵まで行きながらも!そこまでして図書委員なんだよ!」
「いいだろ!!」
「そんな怒る事か?最終的に怒りって何なんだよ!俺は、お前の体の心配をして言ってるんだぞ?」
「それは、ありがとう。でもな?人間なんて、いつかは必ず死ぬんだよ。」
「いやだからって、自ら死に飛び込む事はないだろ!いやいやいや、ちょっと待て!本アレルギーが本当ならだぞ?お前は、どうやって授業を受けてんだよ!」
「教科書は教科書のカテゴライズとして別だから何とか眠気だけですんでるんだよ。」
「眠気の部分はみんなだろ。」
「俺がなぜ、死の恐怖と戦いながらも図書委員をやってるのか!それは、巨大鮫を退治する為には、それ以上の死の恐怖と戦わないといけないからだ!」
「つまり、死の恐怖と戦う練習みたいなのをやってるって言うのか?」
「そりゃあ、俺だってこの高校に巨大鮫退治部があったら迷わず入部してたさ!だが、俺の知る限り巨大鮫退治部はない!」
「いやでもそれに近い学校はあっただろ。」
「あったにはあったけど、好きな幼馴染みの女子がこの高校を受験しちゃったんだからしょうがないだろ!」
「恋愛なんかしてる暇はないって言ってたよ!?」
「一方的片想いぐらいはいいだろ!」
「ストーカーかよ!」
「ストーカーだよ!」
「ストーカーなの!?」
「違ぇよ!」
「なら否定しろよ!」
「否定するには証拠が不十分だ!」
「プライベートで何やってんだお前は!」
「その幼馴染みの女子が今はどこの高校行ってるのかとか調べた。」
「お前は受かって、幼馴染みの女子は落ちたのか!」
「いや違う。どうやら幼馴染みの女子にしてみたら、この高校は滑り止めだったらしい。」
「切ないな。」
「ああ、切ない。だけど!俺はそれで吹っ切れた!」
「いや吹っ切れてないだろ?」
「これで思い残す事なく巨大鮫退治に集中出来るってもんさ!」
「少し涙目じゃん!少し涙目じゃん!」
「だって、知らない男と腕組んで歩いてたんだぞ!うんこも漏らすよ!」
「まず病院に行け!そんなに胃腸と肛門に不安を抱えてるなら病院に行け!」
「巨大鮫を退治するだから関係ないだろ!」
「大海原を何だと思ってんだ!」
「人間だけが海でうんこしちゃいけないってのがおかしいだろ!海の生物はみんなしてんだぞ!」
「どう言う角度から怒ってんだよ!とにかくだよ。何でお前が巨大鮫を退治しなきゃならないんだよ。どうしてお前なんだよ。」
「愚問だな。」
「愚問かもしれないけど教えてくれよ。納得いく答えが返って来ないなら、俺はお前を全力で止めるよ!親友を死ぬかもしれない巨大鮫退治に笑顔で送り出すなんて俺には出来ないからな!」
「あいにく俺は、愚問に答えない主義だ。」
「訳の分からない主義を振りかざすな!」
「いいか?巨大鮫を退治しなけりゃ、その巨大鮫の犠牲になる人間がいる。分かるだろ?誰かが巨大鮫を退治しなきゃダメなんだよ。」
「だから、それがどうしてお前なんだよ!」
「世の中、お前みたいな考えだから巨大鮫が退治しきれてないのが分からないのか!それをなぜ、俺がやるのか?愚問中の愚問だな!だが、あえて主義を覆して答えてやるよ!何で俺がやらなきゃならないのかとかそんなのはどうだっていいんだよ!誰かがやるのを待ってたら、死ななくてもいい人間も死んじゃうからだろ!悲しみのどん底に落ちなくてもいい人間が増えるだろ!」
「感動した。」
「感動させる為に言ったんじゃないやい。」
「俺も目からビームが出るようになったら、お前の巨大鮫退治に協力するよ!」
「断る!」
「俺がお前を心配したように、お前も俺を心配してくれるのは分かるけど、俺はお前の信念に心を打たれたんだ!だから、俺が目からビーム出るようになったら、お前の巨大鮫退治のサポートをさせてくれ!」
「だから断るって!」
「何でだよ!」
「目からビーム出ないじゃん。」
「はあ?」
「人体の構造的に絶対無理じゃん。人間、そんな風に作られてないじゃん。で、仮に目からビーム出たら出たで、それは気味が悪いじゃん。そんな頭の狂った気持ち悪い奴と一緒に巨大鮫退治なんか無理じゃん。」
「何だと!もっぺん言ってみろ!」
「目からビーム出ないじゃん。人体の構造的に絶対無理じゃん。人間、そんな風に作られてないじゃん。で、仮に目からビーム出たら出たで、それは気味が悪いじゃん。そんな頭の狂った気持ち悪い奴と一緒に巨大鮫退治なんか無理じゃん。」
「もっぺん言いやがったなコノヤロー!」
「本当の事だろうが!」
「てめぇ!」
「何だよ!」
「川原行くぞ!」
「上等だよ!川原だよ!川原!」
「今日という今日はコノヤロー!」
「川原だ!川原!」
「川原だ!バカヤロー!」
「川原!川原!」
「川原!コノヤロー!」

誰もいなくなった教室を夕日が赤く染めた。

第四百九十話
「明日にはまた親友同士」

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