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2016年1月27日 (水)

「第五百二話」

「月があったら、今日はもっとこう、平和って感じの夜空だったろうね。」
「変な事言う子だね。でも、そうかもしれないね。」
「さてと、ごちそうさま!」
「お粗末さまでした。」
「ああ!やっぱり母さんのご飯が一番美味いや!」
「何言ってんの!そんな事言っても何にも出ないよ!はい、叔母さんから送られて来たみかん!」
「おお!もうそんな時期かぁ。」
「それで?」
「甘い!さすが叔母さんのみかん!」
「ちょっと!みかんはいいから、どうしたの?」
「どうしたのって?」
「アンタが家に帰って来るなんて、何かあったんじゃないの?って話よ。病院で何かあった?」
「ああ、病院?辞めた。」
「あそう。辞めたの。ええ!?辞めた!?辞めたってアンタ!何考えてんの!?」
「母さん、俺さ。医者よりもなりたい仕事見付けたんだ。」
「見付けなくていいわよ!頑張って勉強して!物凄い根性で頑張って!やっと大学病院に入れたんじゃない!それを、辞める?一人でも多くの人を助けたいってのが、アンタの夢だったんじゃないの?」
「それは今も変わらないよ。」
「だったら!辞めなくてもいいでしょ!」
「母さん、俺、ヒーローになる!」
「母さん、俺、ヒーローになる!って、何!?救命救急だっけ?そこで、何?毎日毎日休みもなく働き過ぎて疲れちゃったの?だったら、しばらく休養すればいいじゃない!それだけの事じゃない!そしてまた、多くの人を助ければいいじゃない!」
「母さん?俺は、疲れてなんかないよ。むしろ、めちゃくちゃ元気!」
「ならば、大学病院に戻ろうよ!」
「医者でいるよりもヒーローでいる方が、より多くの人を助けられるって事に気付いただけだよ!」
「何を子供みたいな事を医者になってから言い出してんのよ!」
「医者になったから気付けたんだよ!」
「分かった!母さん!一緒に院長先生のとこに行って、頭下げてあげる!ほら!みかんなんか食べてないで!行くよ!」
「無理だよ、母さん。二人で頭下げたって、どうにもならないよ。」
「そんな事やってみなくちゃ分からないだろ!ほら!早く支度しなさい!」
「殴ったんだ。」
「誰を!」
「院長。」
「何で殴るのよ!殴るのは完全にアウトでしょ!」
「悪だからだよ。」
「何なのよ、悪って!」
「ヒーローは、悪を許さない!」
「アンタは、ヒーローじゃないでしょ!」
「母さん?俺は、あの時、院長の机に全指突き指するぐらい辞表を叩き付けた瞬間から、医者じゃなくて、ヒーローになったんだ!」
「何を訳の分からない事と訳の分からない怪我してんの!」
「あの院長さ。裏で政治家と繋がっててさ。まだ認可されてない薬を患者に投与して、金貰ってたんだよ!多くの患者が、命を落としたり副作用に悩まされてるんだよ!患者をまるで実験道具としてしか考えてないんだよ!許せないよ!」
「よくある事じゃない!」
「確かに、母さんの言う通り、どこでも裏ではそんな事が行われてるのかもしれないよ!俺が守れる範囲は狭いかもしれない!でもさ!それでも救える人はいるんだよ!」
「そう言う事じゃないでしょ!」
「今はまだ、目の届く範囲かもしれないけど、そのうち俺は、この緑の地球全体を救うヒーローになる!」
「何を宣言してるんだ!アンタは!それに、ヒーローになるって、婚約者のほら、女医の彼女さんは知ってるのかい?アンタ達、来年には結婚すんだろ?」
「彼女とは別れた。」
「何別れてんのよ!母さん、一緒に行って彼女さんに頭下げてあげるから!」
「無駄よ。」
「無駄じゃない!アンタ達、何年間も一緒にいたんでしょ?」
「六年。」
「だったら分かってくれるわよ!二人で頭下げたら、彼女さん絶対分かってくれる!だからほら、みかんなんか食べてないで!早く支度しなさい!」
「殴ったんだ。」
「誰を?」
「彼女。」
「何で殴るのよ!殴るのは完全にアウトでしょ!」
「悪だからだよ。」
「悪って、女の子じゃない!母さん、アンタを女の子に手をあげる男に育てた覚えはないよ!」
「母さん?悪に、老若男女は関係ないんだよ。ヒーローは平等に裁くんだよ。俺の彼女さ。実は、裏で政治家と繋がっててさ。」
「何でアンタの回りは、みんな裏で政治家と繋がってんの!」
「臓器売買してたんだ。」
「だったら、裏で繋がってる政治家を殴りなさいよ!」
「俺だってそうしたいよ!でも、まだ無理なんだ!俺にはまだ、ヒーローとしての力が足りない!ヒーロー力不足なんだ!」
「ヒーロー力って何よ!?」
「母さん?俺が、何で帰って来たか分かる?」
「医者辞めてヒーローになるって言ってる息子の考える事なんか分かる訳ないでしょ!」
「ヒーロー力をつける為に帰って来たんじゃないか!」
「もうずーっとね!ずーっと訳の分からない事を言い続けるね!」
「母さん、確か博士の友人がいたよね?」
「いるけど、それが何なの?」
「頼む!母さん!」
「どうしたのよ!あんなにも頭下げるの拒んでたのに、どうしたの!?」
「母さんの友人の博士に頼んで、俺を改造して欲しい!」
「言ってる意味が分からない!」
「目からビーム出るようにして欲しいんだ!あと、何らかの形で、飛べるようにもして欲しいんだ!それと、これは出来ればなんだけど、パンチが発射するみたいな感じにもして欲しいんだ!」
「何言い出すの!そんな事したら!」
「大丈夫!金なら俺が出すから!もし足りなかったら、頑張ってヒーローで稼いで払うから!」
「お金の心配じゃなくて!」
「この地球の明日の平和の為なんだ!母さん!頼む!」
「やれやれね。」
「いや、母さん。みかんなんか食べてないで!頼むよ!博士紹介してくれよ!」
「まさか、アンタまでお父さんと同じ事を言い出すとはね。」
「え?」
「顔なんか見た事もないのにね。やっぱり親子なのね。」
「俺が生まれる前に死んだ父さんも?」
「そう。」
「ヒーローだったの!?」
「学校で学ばなかった?この地球が一度滅亡しかけた話。」
「月の衝突!でもあれは確か、大量のミサイルで!」
「父さんよ。」
「え!?」
「地球の明日の平和の為に、ね。」
「父さん。」
「会った事もないのに、口癖まで似るなんてね。ほら、何干渉に浸ってんの!」
「え?」
「行くんでしょ?博士のとこに!」
「か、母さん!?今から!?」
「ん?ほら!」
「おう!」

第五百二話
「月のない世界」

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