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2016年1月20日 (水)

「第五百一話」

「ビーーーー!」
「ガチャ!」
「こんばんは!」
「どちら様ですか?」
「今日、このマンションの隣に引っ越して来たので、挨拶をと思いまして!引っ越しの片付けで挨拶が夜になってしまってすいません。」
「いえいえ、それは、わざわざご丁寧に。」
「改めまして、今日から隣に引っ越して来た殺人者です。」
「え?」
「はい?」
「え何て言ったんですか?」
「今日から隣に引っ越して来た殺人者です。」
「え?」
「はい?」
「え?」
「はい?」
「え今、殺人者って言いました?」
「言いました。」
「え?」
「はい?」
「え?」
「はい?」
「言う?」
「はい?」
「いや、だから、それをわざわざ言う?」
「それと言うのは?」
「だから、殺人者って事をさ!」
「言わないんですか?」
「普通、言わないよね?」
「でも、僕も経験があるんですけど、隣に引っ越して来た人は、自分が何者かを告げますよね?」
「職業的なな!それは、自分がどんな仕事をしてるかは言ったりもするよ!聞いた方も、ああそうですかって感じだよ!」
「今日から宜しくお願いします。」
「メチャメチャ物騒な話を聞かされて宜しく出来るか!それとも?ジョーク?引っ越しジョーク?」
「引っ越しジョークって、何ですか?」
「知らないよ!ただ、殺人者って言うのがジョークじゃないのかなって思ったんだよ!ジョークだろうなって思いたかったんだよ!」
「ジョークじゃないですよ。」
「え?」
「はい?」
「え?」
「ちゃんと殺しましたから。」
「え?」
「はい?」
「え?」
「はい?」
「え言う?そう言う事!例えば、俺がそれを警察に言ったらどうするの?」
「言っても大丈夫ですよ!」
「恐い恐い恐い!」
「僕、恐いですか?」
「殺人者の時点でだいぶ恐いのに、警察に言っても大丈夫ですって、笑顔で言われたら更に恐いに決まってるだろ!」
「どこがですか?」
「それってつまり、俺が警察に言う前に、俺も殺すって事だろ?」
「僕は、貴方を殺したりなんかしませんよ!」
「説得力の欠片もない!」
「警察に言っても大丈夫ですよって言うのは、警察に言ったとこで、僕が殺人者って証拠が見付かる訳がないからです!」
「え?」
「はい?」
「え?」
「はい?」
「えそれってやっぱり殺人者って言うのはジョークなんじゃなくて?」
「ちゃんと人は殺してます。ただ、それが僕に辿り着く事はないって意味です!僕、完全犯罪が得意なんです!まず、死体は絶対に見付かりません。死体が見付からないって事は、それはつまり事件にすらならないって事です。」
「どう言う自慢だよ!他人に言っちゃダメな自慢だろ!」
「他人に自慢出来るぐらいの腕なんです!」
「それを聞かされて、俺はどうすりゃいいんだよ!」
「ああ、世の中には、そんな人もいるんだなぁって、軽く受け流せばいいじゃないですか。」
「軽く受け流せるレベルの自慢話じゃないだろっての!」
「じゃあ、ジョークでいいです。」
「今更?今更ジョーク?今更ジョークは、無理だなぁ?がっつり否定された後にジョークへ切り返すの無理でしょ!」
「ならほら、医者だと思えばいいんじゃないですか?」
「どう言う事?」
「極論で言えば医者って殺人者じゃないですか?」
「それは絶対違う!例え、物凄く頑張って医者を殺人者だと思ったとこで、本物の殺人者とは種類が大きく違う!」
「この間も手術失敗しちゃって患者、殺しちゃいましてねぇ!」
「急に医者ぶっても無駄だろ!だって医者じゃないんだからさ!で、医者だって、引っ越しの挨拶でそんな軽々しく失敗談語らないだろ!」
「実はね。僕、人なんか殺してないんですよ。」
「今更の否定は肯定感を高めるだけだろ!だったら、最初っから言わないで欲しかったなぁ!殺人者だって知りたくもなかったなぁ!」
「何でですか!隣に引っ越して来た人が、殺人者か殺人者じゃないかって知っときたいじゃないですか!」
「知ってどうするんだよ!殺人者だった場合の今回のこの何とも言えない感覚はどうすりゃいいんだよ!」
「分かりました。どーぞ!」
「え?」
「はい?」
「え?」
「はい?」
「えどーぞって?何が、どーぞ?」
「だから、僕も貴方と同じ何とも言えない感覚にして下さい!」
「いや、俺は殺人者じゃないから!」
「嘘でもいいじゃないですか!どーぞどーぞ!」
「嘘でもいいなら、嘘なんだなってなるだけじゃん!そこに何の感覚が生まれるって言うんだ!」
「大丈夫ですよ!僕は、貴方を殺人者だと信じますから!さあ!どーぞ!」
「何で俺が殺人者じゃないのに、隣人に殺人者だと思われながら、これから生活して行かなきゃならないんだよ!」
「じゃあ、やり方教えますよ!」
「恐い恐い恐い!何?何で俺まで殺人者の道に引きずり込もうとしてんの?」
「赤信号の横断歩道を車の往来がないからって渡られた事ありますよね?」
「あるよ。」
「それだって立派な犯罪なんです!」
「いや違う違う違う!犯罪と言う大きな括りの中では同じかもしれないけど、信号無視と殺人は犯罪のレベルが違う!」
「僕は信号無視した事ありませんっ!!」
「そんな正義感を振りかざすなら!何で人は殺すんだよ!」
「そこに人がいるから!」
「それは高名な人がドキュメンタリーで口にする言葉だ!」
「僕、明日も人を殺さないといけないんで、そろそろいいですか?」
「どんな意表を突いた話の終わらせ方だよ!仕事感覚じゃん!もう、仕事感覚で人殺ししてんじゃん!え?暗殺者?」
「いえ、死刑執行人です。」
「だったらだったでそれを最初に物凄くオブラートに包んでやんわりと言ってくれればいいだろ!何で逆にストレートで回りくどく言うんだよ!」
「自分一人で抱え込んでたら、とてもじゃないけど正気でいられないんですよ。誰かに聞いてもらえるだけで、それだけで少し救われた気分になれるんです。」
「急に真面目!?」
「なーんちゃって!」
「なーんちゃってっては、今言っちゃダメだろ!部屋に帰ってから言う事だろ!」
「あそっか!次は上手くやります!」
「次とかも言わなくていいんだよ!」
「難しいですね。殺人みたいに上手くいかないや!まあ、とにかくこれからちょくちょく作り過ぎた料理とか持って行くと思いますんで、宜しくお願いします。」
「絶対食わねぇよ!」

第五百一話
「隣人は肉料理を持って来る」

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