« 「第五百三話」 | トップページ | 「第五百五話」 »

2016年2月10日 (水)

「第五百四話」

「なっ、なななな何だこれは!?どっ、どどどどどう言う事なんだこれは!?」
私は、このマンションの管理人です。いつものようにゴミ置き場の清掃に向かったら、まさか変わり果てた姿の602号室の住人に出会うとは、思いもしませんでした。一体何がどうなって、こうなったんでしょうか?

第五百四話
「ゴミ置き場の全裸死体」

 俺は、シャワーを浴びていた。体の異変は、突然やって来た。
「えっ!?」
気付くと俺は、口から血を吐き、肛門から血を垂れ流していた。
「はあ?」
バスルームは、一瞬で凄惨な殺人現場と化した。何が起きたのか理解しようにも理解出来ない俺は、呆然としていた。だが、頭の中は、空回りのフル回転だった。
「えっ?」
兆し?そう、こう言う事って、もっと普通は何か兆し的なもんがあるんじゃないのか?さっき目が覚めて、カーテンを開けて太陽の光を浴びて、バスルームでシャワーを浴びるまで、俺には兆しはなかった。それとも、俺の普通が間違ってたのか?こう言う事って、死ぬって事って、むしろ全く何の兆しもなく、むしろいつも突然やって来るもんなのか?俺は一人、賃貸マンションの一室のバスルームで、今から死ぬのか?血を吐いて、血を垂れ流しても、これと言って体のどこも痛くない状態なのに?それとも、もはや痛みとかすら凌駕してる状態なのか?もう、痛みとかって問題じゃないのか?
「俺、死ぬのか?」
少しだけ冷静になった頭で血のバスルームをゆっくりと見渡した。まあ、人がこんだけ血を吐いて垂れ流したら、普通死ぬな。体のどっかが悪いんじゃなくて、体全体が悪いってレベルだもんな。そっかそっか。こんな感じなのか。何かこう、死ぬってもっと壮大なイメージだったけど、実際はこう、賃貸マンションのバスルームで一人、誰に看取られる訳でもなく、呆気なくって感じなのか。
「そっかそっか。」
父さんや母さん、元気にしてるかなぁ?そう言えば、もう何年も顔見せてないや。こんな事になるなら、仕事が忙しいからとか言ってないで、実家に帰っとくんだった。姪っ子や甥っ子も大きくなってるんだろうなぁ?何だ何だ。今の俺には、とてつもない後悔しかないな。
「ははっ。」
んまあでも?死を目前にして、後悔しない人間なんかいないか。何だか笑えて来た。いや、俺は後は死ぬだけだから笑ってられるけど、実家の家族はきっと、悲しむだろうな。メチャクチャ悲しむかどうかは分からないけど、全く悲しまないって事はないもんな。そう考えると、何か申し訳ないな。今から実家に電話して「これから死ぬけど、ごめん!」とか言った方がいいのかなぁ?
「って、おい!」
そんな事をしたら、自殺かと思われるだろ!もっと家族の頭を混乱させるだけだろ!まあ、このままここで、死ぬのが無難だな。やれやれ、こんな事になるんなら、もっと頻繁に人間ドックとかに行っとくんだったよ。残された家族に精神的なダメージを与えちゃうだろうなぁ?
「ごめん。」
でもこう、あれじゃない?実は意外と、あれだったりするんじゃない?死ななかったりするんじゃないの?だって、何だかんだで、全くどこも痛くない訳だし、たまたま余分な血を吐き出して垂れ流しただけとか?案外、こう言うのって、そう言うもんだったりするんじゃないの?
「いや、違う。」
何か、そう言う希望的観測は、やめよう。この状況、どっからどう考えたって、完全に死ぬよ。きっと、数時間後か数十分後か数分後かには、死ぬよ。明日の世界に俺は、存在しない。ん?だったらだぞ?だったら、その残された後どれくらいあるか分からない時間を有効に活用すべきじゃないのか?
「そうだよ!」
絶対にそうすべきだよ!と、言う事はだぞ?まず、全裸はマズいよな!これは絶対にマズい!せめて、ベッドで横になって眠るように死んでるって形が、無難だ!そうだそうだ!そうしよう!絶対にそれがいい!
「ん?」
だとしたら、もう少し部屋を片付けた方がいいかもな。俺が発見されて、部屋が汚かったら、ちょっとみっともないもんな。んじゃあ、ギリギリまで部屋の片付けをして、もうそろそろヤバいかなってなったらベッドで横になろう!
「よしよしよし!」
そうだ、それがいい!まず、バスルームを出よう!体を拭いて、髪を乾かして、服を着て、部屋を片付けて、それからベッドで死のう!
「まず、バスルームを出る。」
ここで、全裸で死ぬのが嫌だからベッドに行ったんだなって、思われないように、血を綺麗に洗い流さないとな。
「よし!」
これで、バッチリだ。んまあ、多少濡れてるのは、ご愛敬だな。乾くかもしれないしな。で、体を拭いて、頭を乾かす。部屋の片付けをして、死ぬ。
「部屋の片付けをして・・・部屋の片付け?」
マズい!非常にマズいぞ!片付けとか服を着るとか髪を乾かすとか体を拭くなんて事よりも最優先でやらなきゃならない事があっただろ!ああ、俺はバカか!何でもっと早くに気付かなかったんだよ!残された時間は僅かだって言うのに!
「ゴミ袋ゴミ袋ゴミ袋ゴミ袋!どこだゴミ袋!」
部屋にあるスケベなもんを全て処分せねばっ!!

|

« 「第五百三話」 | トップページ | 「第五百五話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/63887642

この記事へのトラックバック一覧です: 「第五百四話」:

« 「第五百三話」 | トップページ | 「第五百五話」 »