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2016年2月24日 (水)

「第五百六話」

「神父さん。」
「これはこれは、どうなされたのですか?お爺さん。」
「わしには、これと言って懺悔する事がないんだ。」
「それは素晴らしい人生ではありませんか。」
「神父さん。」
「はい。」
「本当にそうだろうか?」
「はい?」
「本当に、わしの人生ってヤツは、神父さんの言う通り、素晴らしいもんなんだろうか?」
「懺悔する事がない。それは、素晴らしい人生ですよ。」
「神父さん?」
「はい。」
「ならなぜ、わしはここへ来たんだ?」
「何も教会に来るのは、懺悔するだけではありませんよ。神に祈りを捧げてみてはいかがです?」
「昔、人を2人殺した。」
「あるんじゃん!めちゃめちゃ懺悔する事あるんじゃん!」
「神父さん?」
「はい。」
「これは、懺悔に値する事なのか?」
「まあ通常、人を殺したら、それは懺悔に値しますね。」
「あんな奴等でもか?」
「どんな奴等でもです。例えそれが、悪魔のような人間でもです。お爺さんは、物凄く悪人を殺したのですか?」
「いや、わしにこなクソってくらい優しくしてくれた奴等だ。」
「何で殺すんだ!そんな天使みたいな優しい人達を!もしかして、お爺さんは快楽殺人の類いですか!?」
「神父さん?」
「はい?」
「優しいってのは、罪なんだよ。」
「たまに何かそんな事を言う人がいますが、優しいは罪ではありません!優しいを罪だと言う人は単に、自身が優しくないからです!優しくするって言うのは、そんな簡単な話ではないのですよ?人に優しくするのは、物凄くエネルギーが必要なのです。」
「ちょっと待った神父さん?」
「はい?」
「これ今、懺悔状態になってないか?」
「んまあ、捉え方によっては、そうかもしれませんね。でもね?」
「それは困る!」
「はい?」
「あくまでわしは、懺悔する事がなくて、ここに来てるんだからな。娘婿にもそう言って家を出たのだからな。」
「人を2人殺しといて!?」
「3人だったかな?」
「なぜ増える!?と言うか、殺したか殺してないかで曖昧なんじゃなくて、殺した人数であやふやなんだから、懺悔しましょうよ!」
「イヤだ!」
「めちゃくちゃ首を横に振って、それがお爺さんの物言いですか!それともその優しくしてくれた人達は、お爺さんの財産を奪い取ろうと優しく近付いて来たとかって、話の最後に裏切りがあるのですか?」
「そんな事はない。奴等は、最後の最後まで優しかった。いや、わしに殺されてからもなお、優しい。」
「殺されてからも優しいって何なのでしょうか?ちょっとお爺さんの脳味噌を疑いたくなります。」
「神父さん?」
「はい。」
「山に登った事は、あるか?」
「唐突ですね。ええまあ、ありますが、本格的な山登りは経験ありません。」
「わしはな。」
「もしかして、人を殺したと言うのは、山で遭難して一緒にいた人達の事ですか?」
「1人はそうだ。」
「だとしたら、自身を責めるのはやめて下さい。それは事故であって、お爺さんが殺した訳ではありません。」
「責めてないさ。だから、わしには懺悔する事がないと言ってるだろ?」
「そうでした。1人と言いましたが、まさかもう1人も同じような感じで?」
「ああ、もう1人は船旅の途中で事故に遭ってな。2人とも優しい奴等だったよ。わしに殺されたってのに、奴等は今でも優しい思い出で、わしの中で生きてる。」
「2人とも事故なのですよね?だったらなぜ、そのように殺しただなんて言うのです?」
「心の奥では、無意識にわしは、奴等に懺悔したいと思ってるのかもしれないな。だから、気付いたら教会の前にいたのかもしれない。」
「娘婿に懺悔する事ないけど教会に行くと家を出たのでは?」
「信じられないかもしれないが、神父さん?」
「はい。」
「わしに優しくすればするほど、わしに優しくした人間の死ぬ確率が高まるんだ。」
「はい?急展開にも程がありませんか?」
「つまり、わしに優しくすればするほど、わしに優しくした人間の死ぬ確率が高まると言う事だ。」
「同じ内容を繰り返し言っただけですよね?いやそれは、お爺さんが身の回りで優しくしてくれた人達を亡くしているから、そう思いたいだけなのでは?それは、お爺さんの自分だけが生き残ってしまったと言う心理状態から、罪の意識が作り出した十字架ですよ!」
「数字が見えるんだよ。」
「数字って何です?」
「頭の上にな。」
「頭の上って?」
「その人間が、わしに優しくしてくれた数字がパーセンテージで見えるんだよ。そいつが、100パーセントになった時、その人間は死ぬ。」
「そんなバカな!それは、幻覚です!お爺さんの罪の意識が見せている幻覚です!」
「だとしたらなぜ、1人目の時から数字が見えてるんだ?」
「お爺さん?」
「何だ?」
「暇なんですか?」
「何?」
「暇で暇で、とてつもなく暇だからって、神父をからかいに教会に来たのですか?面白いですか?だとしたらそれはとても罰当たりですよ?」
「こんなわしにまともに説教とは、神父さん、優しいんだな。」
「それは、お爺さんの捉え方次第でしょ!ちょっとお爺さん?どこ見てるのですか?人の話は目を見て聞きましょう!」
「神父さん?」
「はい?」
「今ので、神父さんの頭の上の数字が97になったよ。」
「何で初対面でそんなに高い数字なんだ!」
「神父さんと言う時点で既に95パーセント持ってるんだ。」
「どう言うルールなんだ!」
「わしの言ってる事が本当かどうか、確かめてみるかい?神父さん?」
「まさか、3人って!?3人目は私の事か!?」
「どうする?」
「どうもこうもない!帰れー!!」

第五百六話
「昨日は今年で3000才のお婆さん」

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