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2016年6月 8日 (水)

「第五百二十一話」

「さすがに今回は、死ぬかと思ったな。」
「ああ、だが生きてる。」
「こうして生きてるのが不思議なぐらいだ。」
「いつもの事だろ?」
「そうだ。」
「ああ、そうだ。」
辺りには何もない長い一本道の真ん中で、何か途轍もない大きな仕事を終えた男が二人、ボロボロな格好で立っていた。
「さて、そろそろ行くかな。」
「ああ、そうだな。」
「またな。」
「ああ、またな。」
「次は、ヘマするなよ?」
「おいおいおい、どの口が言うんだ?」
「確かに俺もヘマはするが、お前の方が多いだろ?」
「いやいやいや、俺よりもお前の方がヘマの数は多い。」
「いいや、お前の方が多い。」
「神に誓ってもいい。多いのは、確実にお前だ。」
「神なんか信じてんのか?」
「いいや、信じた事は一度もない。」
「だよな?」
「ああ、そうだ。」
男達は、そう言うと握手を交わした。男達は、数々の色々な思い出を共有する大親友であった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「これは、別れじゃない。」
「ああ、知ってる。」
「俺達は、必ずどこかでまた、出会う。」
「ああ、分かってる。」
「そして、共に笑い。」
「共に泣き。」
「共に怒り、お前がヘマをする。」
「いや、お前がヘマして、それを俺がフォローしてやる。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「そしてまた、共に笑う。」
「で、最後にこうして別れる。」
「で、こうしてまたいつかどこかで出会う。」
「そうだ。」
「ああ、そうだ。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「元気でな。」
「そっちも元気でな。」
「退屈で死ぬなよ。」
「お前もな。」
男達は、笑顔を見せた。別れが辛いから無理に笑顔を作ったのではなく、次に出会った時の事を思い浮かべて笑っていた。一体その時には、どんな活劇が待っているのだろうか?退屈な日常を覆す日々が待っているからこそ、男達は退屈な日常へと帰って行く。
「俺は、右に。」
「俺は、左に。」
何度繰り返したか分からない出会いと別れ。その数と同じ数だけの色々な思い出が男達の頭の中に駈け巡る。地球が丸いから男達が何度も出会うのか?男達が何度も出会うのから地球が丸いのか?
「じゃあな。」
「またな。」
別れの干渉には浸らない。男達は、振り返らずに歩いて行く。次に待ち受ける刺激的な日々を想像しながら、前を向いて歩き出す。一人は、右へ。一人は、左へ。退屈な日常へと一歩一歩、帰って行く。その足取りは、それほど重くはない。

第五百二十一話
いや、出会わないよ!絶対に!だって右に行った男は数分後、飲酒運転のトラックに轢かれて死ぬし!でもってその数分後に左に行った男もその飲酒運転のトラックに轢かれて死ぬし!」

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