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2016年6月22日 (水)

「第五百二十三話」

「いい天気ですね。」
「びっくりした!?」
「どーも。」
「こんな所で何してるんだ!?」
「それは僕の台詞ですよ。僕は、貴方が何をしてるのか気になって、だったら直接聞いてみようと思って、来ちゃいました。」
「何をしてるかって、分かるだろ?」
「車大好きおじさんですか?」
「誰が車大好きおじさんだ!」
「車大好きおじさんじゃないんだったら、やっぱりここで何してるんですか?ですよ?」
「少し考えたら分かるだろ?」
「向こうで、何時間もここに普段着で立ってる貴方を普段着で何時間も見てて、色々考えてたんですよ。で、導き出したシンプルな答えが、さっきの車大好きおじさん。」
「ずっと私を見ていたのか?」
「はい。一部始終。」
「分からないのか?一部始終見ていたのに?」
「ごめんなさい。僕の頭では、限界です。もう、車大好きおじさんの答えに辿り着いてから、貴方が車大好きおじさんにしか見えません。だから、それが間違いだとしたら、もはや答えを本人の口から聞くしかないんです。教えて下さい!貴方は、ここで一体何をしてるんですか?」
「キミは、私をからかってるんじゃないのか?」
「からかう?とんでもない!僕は、真剣に悩んでるんです!」
「本当に、私を見て、ここで何をしてるのか分からないのか?」
「はい!」
「渡れないんだよ!」
「渡れない!?」
「そんなに驚く事か?」
「いや、車大好きおじさん以上にシンプルな、実にシンプル過ぎる答えに少し驚いただけです。」
「そうか。私は、ここを渡って向こうに行きたいだけだ。だが、思った以上に交通量が激しくてな。ここで立ち往生だ。」
「何時間もですか!?」
「何時間も経っていたのは、キミに教えてもらうまで気付かなかった。そうか、もう何時間も経っていたのか。それならキミが私を車大好きおじさんだと勘違いするのも納得だ。」
「政治が悪いんですかね?」
「何の話だ?」
「いや、貴方が向こうに渡れないのは、この国の政治が悪いのかなって話です。」
「政治は関係ないだろ。」
「アレじゃないんですか?何かやり場のない根源は、全て政治のせいにしちゃおうって言うのが、この世のルールなんじゃないんですか?」
「知らんよ!そんなルール!ん?」
「どうしたんですか?」
「何か、キミがここに来てから少し交通量が減ってきた気がするな。」
「いやでも、危ないですよ!」
「そんな事言ったって、どの道行くか戻るかしかないんだ。それに、娘が家でプレゼントを待っているからな。」
「娘さん、誕生日ですか?」
「ああ。」
「おめでとうございます。」
「ありがとう。よし、次の車が行ったら行けそうだ!」
「いやでも!」
「私は、絶対に渡りきる!」
「私は?」
「よっと!」
「急いで!早く早・・・あっ!」
車大好きおじさんだって思ってた人は、みるみる加速する交通量に取り込まれて、瞬く間に無惨にも跡形もなく、この世から消えた。そして僕は、ここに取り残された。もしかしたらここは、別次元の世界で、誰からも見えてないのかもしれない。
「何してるの?車大好きお兄さん?」
「えっ!?」
気付くと僕の真横に少女が立っていた。
「そう言うルールなのか!?」

第五百二十三話
THE中央分離帯物語」

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