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2016年7月27日 (水)

「第五百二十八話」

「お邪魔します。」
「また来たのかよ!」
「来るよ!来るでしょ!出版社と物書きの間柄って、そう言うもんでしょ!」
「お前さぁ?美人って取り柄しかないんだからさぁ?なっ?美人だって、ちやほやされて今まで生きて来たんだから、その流れに乗っかって、さっさと結婚しろよ!」
「いいじゃん!美人って取り柄、いいじゃん!持って生まれた才能の一つじゃん!だいたい、何で先生にアタシの結婚の心配されなきゃなんないんですか!」
「じゃあ、何をしに来たんだ?」
「仕事ですよ!仕事に決まってるじゃないですか!何でここに結婚相談に来るんですか!先生に、いい話を持って来たんですよ!」
「いい話?見合い話?」
「何でだ!仕事の話に決まってるじゃないですか!先生、スパイの小説を書きましょう!」
「何で?」

第五百二十八話
「2時間半後」

「先生?」
「何だよ!」
「な、何で喧嘩腰?」
「お前はいつもいつも俺の作品にケチを付けるからだよ!」
「それは、いつもいつも先生がこっちの発注した作品とは異なる作品を書き上げるからじゃないですか!」
「発注って、スパイの小説だろ?」
「スパイの小説ですよ?」
「スパイの小説だろ?」
「スパイの小説じゃないじゃん!」
「スパイの小説だろ!」
「スパイの小説じゃないじゃん!」
「スパイが出て来るだろ!」
「スパイ、出て来るけど、時代背景が原始時代じゃないですか!」
「斬新だろ?」
「だーかーらー!先生のその斬新、何か分からないですけど売りにしてるその斬新、いらないんですよ!」
「お前なぁ?俺から斬新を取ったら、単なる時代の流れに乗ったそれなりに売れるアイデアしか残らないだろ!」
「いいじゃん!それで、いいじゃん!単なる時代の流れに乗ったそれなりに売れる小説、いいじゃん!」
「気持ち悪い!」
「はい?」
「そう言うのは、そう言うのが得意な物書きが書けばいいんだよ。俺は、俺にしか書けない小説を書く!」
「立派な事を言ってる風に言わないで下さいよ!スパイの小説を発注したら、時代背景が原始時代のスパイの小説を提出してんですよ!」
「斬新だろ?」
「だから!斬新いらない!凄いハイテクな石斧って何なんですか!」
「ハイテクは、スパイに欠かせないだろ!必要不可欠だろ!盗聴出来たり盗撮出来たり銃になったり、乗り物になったりするんだよ!」
「むちゃくちゃじゃん!そもそもが武器だし、乗り物って、ハイテクの向こう側に行き過ぎでしょ!」
「おいおいおい!だいたい、スパイなんてむちゃくちゃだろ?」
「いやいやいや、そんなハイテクな石斧作れるのに、石斧って!」
「原始時代なんだから、仕方ないだろ!」
「そこのこだわり!原始時代じゃなくていいじゃん!って話ですよ!」
「そしたら、斬新じゃなくなっちゃうだろ?」
「斬新じゃなくていいじゃん!って話ですよ!」
「お前さぁ?これをそのまま現代にしたら、メカマンモスとか変だろ?」
「いやこの時代でも変だよ!何なんですか!メカマンモスって!」
「メカのマンモスだよ。」
「分かりますよ!」
「メカマンモスに乗って、マンモスの群れに紛れてスパイ活動すんだよ。分かるだろ?」
「いやだから!そんな技術力がどっから出て来るんですか!」
「スパイ小説で技術力を事細かに語るシーンとか無いだろ!そんな事を書いてたら、スパイ小説じゃなくて単なる取扱説明書になるだろ!みんな、スパイは摩訶不思議な道具を使うんだって前提で読むだろ!」
「アタシは、時代背景を問題視してんだ!」
「評論家ぶるな!」
「ぶってねーや!全読者を代表して、ツッコんでんだ!」
「アクションとラブと謎解きが入ってんだから、いいだろ!」
「アクションとラブと謎解きが入ってたんだ!?」
「お前、読解力が乏しいくせして、美人って取り柄しかないくせして、時代背景がどうとか食って掛かって来てたのかよ!」
「会話も全て原始時代だからストーリーがよく分かんないんだ!ここは、普通に書いて下さいよ!」
「リアリティーだよ。」
「こんなとこにリアリティーいらない!これは、単なる手抜きだ!」
「ブルドックって、下からの牙が凄いよな。」
「話をすり替える始めたら、終わりでしょ!」
「こんな感じ?」
「ヘッタクソな絵!?」
「いいか?この絵をヘッタクソって、感じるのは、絵の全体を見てるからだ。」
「何の話ですか?」
「だが、ここを見よ!よーく見よ!」
「下からの牙ですか?」
「そう!俺が伝えたかったのは、そこ!ブルドックの下からの牙感だ!絵がヘッタクソだろうが、この下からの牙感が伝わればそれでいい。」
「つまり何が言いたいんですか?」
「だから!ブルドックの下からの牙って凄いよなって話だよ!」
「まんまじゃないですか!何か作品と絡めて来るとかじゃないんですか!?だからあえて、ヘッタクソなブルドックの絵を見せたとかじゃないんですか!?」
「いや、これが俺の画力だ!以上!」
「いや、終われない終われない!終われないから!スパイの小説を書いて下さい!」
「分かったよ。変装シーンを書き足せばいいんだろ?」
「そう言う問題じゃない!!」

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