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2016年8月17日 (水)

「第五百三十一話」

「ダークヒーロー?」
「ん?」
「ボクは、本当に助かるの?」
「ああ、俺がお前を助けてやる。お前に酷い事をしてきた父親と母親は、今日でお前の目の前から姿を消す。」
「ダークヒーロー?それって、パパとママを殺しちゃうって事?」
「俺は、こう見えてもあくまでヒーローだ。人間を殺すなんて事はしない。ただ、普通のヒーローじゃない。もしかしたら、他の人間からしてみたら、お前の父親と母親は、死んだも同然かもしれない。」
「パパとママに何をするの?」
「それは、お前のような小さな子供が知る必要はない。」
「そう。」
「現時点で、お前には三つの選択肢を自由に選ぶ事が可能だ。」
「三つの選択肢?」
「まずは、これから先もあの父親と母親と生活を共にする。つまりは、今までと何一つ変わらない生き方だ。もしも、お前がこの状況でその選択肢を選ぶなら、俺は今すぐこの場から姿を消す。そして、二度とお前の前に姿を現す事はない。」
「それはヤダ!このままパパとママと一緒にいたら、きっとボクは殺されちゃう!」
「もう一つは、俺がお前を父親と母親から救い出す選択肢だ。これを選べば、お前は二度と父親と母親に会えなくなる。」
「会いたくない!」
「もしかしたら、あの父親と母親が、心を入れ替える可能性も残されているんだぞ?」
「ボク、分かるんだ!パパとママは、ボクを愛してない!」
「愛してない、か。その顔で言われると、説得力があるな。」
「もう一つは?」
「ん?」
「ダークヒーロー、選択肢は三つあるって言ってたじゃないか。もう一つは?」

第五百三十一話
「ダークヒーロー」

「これだ。」
「銃?」
「最後の選択肢は、今からこの銃で、お前自身が父親と母親を殺す。」
「えっ!?」
「お前自身が、この運命の糸を断ち切る。それが、三つ目の選択肢だ。」
「憎いよ!殺したいよ!パパとママを殺したい!でも、でもそんな事したら!」
「ああ、俺はこう見えてもヒーローだからな。目の前の殺人を見過ごす訳にはいかない。お前が父親と母親を殺した時、お前は俺の敵になる。俺はお前を裁く。」
「ボクは、殺されちゃうの?」
「だから言っただろ?こう見えてもヒーローだ。殺したりはしない。ただ、他の人間からしてみたら、それは死んだも同然かもしれない、と。人には、復讐心がある。そして、殺意が存在する。だがそれは、どんな人間の心の中にもあるもんだ。しかし、心の中を占めるその大きさはそれぞれだ。お前の中にあるそれを心に封印したまま、大人になり、人生を歩んで行く事は、困難だ。お前の父親と母親は、お前の妹を殺した。奴等は、もはや人間と言うカテゴリーから逸脱してしまったのかもしれない。耳をすましてみろ?このシャワーの音が止まり、バスルームから父親と母親が出て来たら、次はきっと、お前の番だ。」
「や、やっぱり警察に!」
「アドバイスをやろう。警察は、三つ目の選択肢は与えちゃくれない。こうしてクローゼットに隠れて待っていても正義の味方は来てくれないぞ?さあ、時間はあまり残されてはいない。だがしかし、よーく考えるんだ、ダークヒーロー。」
「お兄ちゃん?誰と話してるの?ダークヒーローって?暗くて何も見えないよ。」
「ん?ううん、何でもないよ。何でもない。大丈夫、お兄ちゃんが絶対に守るからな。絶対に・・・。」
「うん!」

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