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2016年8月10日 (水)

「第五百三十話」

「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!」
「ん?耳鳴り?」
突然襲った強烈な耳鳴り、次の瞬間、俺の目の前には男が立っていた。
「え?誰?」
「幽霊です。」
「幽霊?こんなタイミングで?」
俺は、休日に仕事で溜まったストレスを解放する為に、ドライブをしていた。人はもちろん、車もほとんど走ってないどこか遠くの山道をマイペースに車を走らせていた。だが、唐突にそれはやって来た。そう、恐怖の腹痛だ。もはやそこから俺のドライブは、休日に溜まった仕事のストレスを解放する為のドライブじゃなく、ケツの穴から奴らを解放するトイレ探しのドライブになった訳だ。人間の尊厳と人なんていないんだから別にいいじゃんかって考えとが葛藤しながら、冷や汗で俺はトイレを探した。そしてやっと見付けた山道のドライブイン。この時ばりは、さすがの俺も神に感謝した。急いで車を駐車して、ケツにありったけの力を入れてトイレに駆け込み、便座に座って奴らを一気に解放し出したと同時に襲った強烈な耳鳴り、そして目の前に現れた男。
「幽霊?こんなタイミングで?」
「すいません。」
「何?」
「え?」
「いやだから、出て来たからには、何か理由があるんだろ?しかもこんなタイミングで現れるんだから、凄く重要な事なんだろ?だったらさっさと用件を言ってくれよ。見ての通り俺は今、とても忙しいんだよ。物凄く立て込んでんだよ。」
「重要かどうかは分かりません。この個室で首を吊って自殺しました。」
「そう。」
「こんな山道のドライブインで、しかもオフシーズンってのもあって、発見まで相当時間が掛かりました。」
「そうなんだ。」
「恐くないんですか?」
「恐いよ。幽霊だからね。でも、今は恐がる余裕がないんだよ。見て分かるだろ?で?それで?」
「僕は、貴方を殺す為に現れました。」
「こんなタイミングで!」
「すいません。」
「あれ?何かよく怪談話で聞く道連れ的なやつか?」
「たぶん、そうだと思います。」
「淋しいから?」
「そうなのかもしれません。」
「いやでもさぁ?いくら淋しいからって、初対面の人間に道連れ的な事するか?」
「ダメですか?」
「俺が質問してんだよ。」
「すいません。」
「だって、初対面だぜ?気の合った人間をってなら、まだ分かるけど、初対面でお互い何も知らないんだぜ?仲良くなれるかどうかなんて分からないんだぜ?俺が凄く嫌な奴だったら、どうすんの?」
「そこまで考えてませんでした。」
「誰でもいいからってのは、分かるよ。その気持ちは分かる。でも、もう少しよく考えた方がいいと俺は思うけどな。」
「苦しむ方がいいですか?やっぱり苦しまない方がいいですか?」
「なになになに?もう、俺を殺すってのは決定されてんの?」
「すいません。死んでから、一人も殺せてないので、鬼に物凄く叱られるんです。」
「叱るんだ、鬼。」
「はい。」
「つか、いるんだ、鬼。」
「はい。自殺した時、死んだショックであんまり鬼の説明を聞いてなかったから、詳しくはよく分からないんですけど、僕のケースはそう言う感じだそうです。」
「ちゃんと聞かなきゃ、ざっくり過ぎて分からないよ。」
「すいません。」
「まあ、あっちの世界がそう言うシステムなら、そう言うシステムでいいけどさ。俺は嫌だよ。こんなとこで死ぬなんてさ。」
「じゃあ、外で待ってます。」
「違うよ!こんなとこでってのは、トイレの中でって訳じゃなくて、人生のこんなとこでって事だよ。」
「これから先、生きてても楽しい事なんて一握りですよ?残りは辛い事だけですよ?」
「何で人生半ばで死んだ奴が人生を語る?いいか?例え、アンタが言ってる人生論が正しいとしてもだ。人間ってのは、生きてる事そのものに意味があるんだよ。」
「え?すいません。貴方をどうやって殺そうか考えててあまり聞いてませんでした。」
「そう言うとこだよ!」
「エンジンを掛けたら車が爆発するのと、便器の水が逆流してお尻の穴から入って来て溺死と、どっちがいいですか?」
「便器の水が逆流を選ぶ奴なんかいる訳ないだろ!」
「じゃあ!」
「じゃあ!じゃない!おい、聞いてなかったのか?俺は、殺されるつもりはないって言っただろ!」
「それは困ります!」
「俺も困ります!」
「ジャンケンしましょうか!」
「そんな事で生き死に決められるかよ!」
「僕は、グーを出します!」
「駆け引きすんな!やる訳ないだろ!」
「じゃあ、生き死に関係なしで、ただジャンケンしましょうよ。」
「信用出来るかよ!しかも、勝ったら生きるのか負けたら生きるのかルールが分からないだろ!」
「貴方、物凄く頭が良いですね。」
「当たり前だろ。これから俺は、世界を驚かせる大発明をするんだからな。」
「世界を驚かせる大発明!?一体何を大発明するんです?」
「幽霊が聞いても驚くぞ?」
「何ですか?」
「タイムマシーンだ!」
「ああ、なるほど。」
「何だよそのリアクションは!おいおいおい、まさか俺が夢だけ語る単細胞だと思ってんのか?だとしたら、見当違いだぞ?既に試作品は完成してんだ。明日、その試運転を控えてるってのに、死ねる訳がないだろ!」
「それ、失敗しますよ。」
「いくら幽霊だからって、俺の世紀の大発明を馬鹿にするなら、ぶっ飛ばすぞ?」
「馬鹿になんかしてません。」
「いきなり否定は、馬鹿にしてるも同然だろ!」
「馬鹿になんかしてませんよ!」
「だったら、もう何も言わずに俺の前から消えてくれ!」
「それは出来ません!」
「はあ?なら、俺が出て行く!」
「それも叶いません!」
「ふざけるな!」
「ふざけてませんよ!タイムマシーンを発明するのは、貴方ではありません。」
「おいおいおい、幽霊が今度は予言者気取りか?」
「これは、予言ではなく、事実です。」
「事実だと?」
「幽霊が未来の事を知ってる訳がないだろ!」
「幽霊じゃないんです、僕。」
「何!?」
「貴方のタイムマシーンの試作品の試運転は大事故を起こすんです。それは、貴方の助手によるものです。そう、スパイですよ。貴方のタイムマシーンの研究は、既に別の人間に奪われてるんです。その大事故がきっかけで、一族は辛い人生を歩む事になるんです。」
「何を言ってるんだ?」
「辛い人生を歩んで来た一族が出したこれが結論なんです。お祖父さん。」
「本当に幽霊じゃないのか?お前は、未来から来た俺の孫なのか!?」
「貴方を殺して、一族も消える。」
「ま、待て!?まだ実験は失敗した訳じゃないだろ!」
「まだ?お祖父さん。そんな希望的観測で意見しないで下さい。どんな事をしても、既に失敗してるんですよ。分かりますよね?だから、僕がここにいるんです。そして、貴方がどん底に落ちて、お祖母ちゃんと出会うフラグが立つ前に、僕らは消えなければならないんです。」
「や、やめろ!?ま、待て!?」
「大丈夫。誰が見ても首吊り自殺にしか見えないようにしますからから。」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

第五百三十話
「未来自殺」

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