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2016年9月

2016年9月 7日 (水)

「第五百三十四話」

 汽車は今、どこを走っているのだろうか?そう、僕は今、心地良く汽車に揺られ、うつろうつろしながらぼやける景色を車窓の向こうに見ながら一人旅をしている。本来なら、着の身着のまま自由気ままな一人旅でストレスなんて異次元の彼方のはずなのに、この物凄いストレスは一体何なんだ?この物凄いストレスは、この車両がガラガラに空いてるって言うのに、この車両のこの狭い座席の真横におじさんってシチュエーションが成せる業なのだろうか?
「そうだな。青年。」
えっ!?今、おじさんは僕の意見に同意した?まさか、途中ぐらいから僕は知らず知らずのうちに心の声が口から出てたって言うのか?
「それは違うぞ。青年。心の声が口から出ていたんではなく、私が人の心の声を聞く事が出来るからだ。」
有り得ない!?いやだけど、この状況は、それを明らかに証明している。だとすると、おじさんは変態?
「何でそうなる。青年。」
だって、人の心の声を聞く事が出来るなんて、変態じゃありませんか。
「超能力と言って欲しいものだ。」
超能力者って、つまりは変態って事ですよね?
「だから何でそうなる。青年。その独特な感性はいかがなものだろう?超能力者と言ったら、誰もが一度は憧れる存在ではないか?」
それは、テーブルの上のコップを浮かせたり、壁をすり抜けられたり、透明人間になれたりって超能力になら憧れますけど、人の心の声を聞く事が出来る超能力に憧れた事はありません。
「随分と人の心の声を聞く事が出来る超能力に偏見を持っているみたいだな。青年は。」
偏見と言うか、だからどうした?って気持ちが強いです。
「どう言う意味だ?」
人の心の声を聞く事が出来るから、だからどうした?って事です。確かに場合によっては便利この上ないと思います。だけど、むしろ多くは不便で仕方ないと思います。本来なら知らなくてもいい人の心の声を聞く訳ですから、もしかしたら上手く行く事も行かなくなってしまう可能性がある。
「なるほどな。例えば、好きなあの子の聞かなくてもいい心の声を聞いてしまうとか?」
そうです。人の感情なんて一過性のものが多い。だから、それを口に出さずに心に留めて置く。聞く側は、それが心の声って事で、一過性の感情にも関わらず重要視してしまう。戦争の始まりです。
「青年。何とも大袈裟だな。しかし、その一過性の感情だけの思いを口に出さずに心に留めて置く人の数と同じぐらい、その一過性の感情を言葉にして相手にぶつけて来る人がいる。」
それは、人それぞれ性格ってものがあるからです。
「だとしたら、同じ事ではないか?」
その言葉を心に留めて置くか口に出すかは、全然違います!
「落ち着きなさい。青年。確かにこの超能力は、人の性格と言う大事な一部を無視した能力だ。優しさやいたわり、それら善を悪に変えてしまうかもしれない危険な能力だ。だが、裏を返せばこの能力の前に善も悪も存在しないと言えないか?」
言ってる意味が分からないです。
「完全なる裁きだ。青年。」
バカな!心の声を第三者にどうやって説明するつもりなんですか!
「まあ、その答えは置いとくとして、もう一つこの能力には特徴がある。」
特徴?人の心の声を聞く事が出来るだけでしょ?
「そうだ。青年。しかし、それは口には出せない心の声を聞き取るとも言えないか?」
言い方次第ですよ。
「例えば、駅のトイレの中で間もなく死にそうな女性が助けを呼ぶ口には出せない心の声を聞き取る事も出来る。そう、そうだ、青年。青年が、あのホームで一目惚れした女性だよ。事実、何を女性の口から言われたのかは、私には到底想像もつかない。ましてや一目惚れした相手を撲殺してしまおうと思ってしまうような言葉などな。」
・・・・・・・・・。
「青年。ここが人生の分かれ道だぞ?息のある女性を救って自首するか息のある女性をほったらかしにして自首するか。ただし、このまま逃亡は不可能とする。」
不可能?あのトイレは密室だし、目撃者もいなければ、僕に繋がる証拠は一切残してない。誰がどう見てもこれは事故死、として処理される。心の声だけじゃ僕は、絶対に犯人にはならない。
「青年。それは、自白と考えてもいいのかな?」
自白?心の声が?ああ、いいとも!心の声で自白したとして、そこに一体どんな価値があるって言うんだ?
「言っただろ?この能力の前に善も悪も存在しない、と。完全なる裁きだ、と。これはな。博士が開発した心の声も録音出来る凄い機械だ。ああ、それと自己紹介が遅れたが、私は刑事だ。青年、私の取り調べの前に、完璧なトリックは意味を成さないのだよ。」
博士とか録音出来る機械とか、ズルくない!?
「世の中とは、そう言うものだ。青年。」

第五百三十四話
「無敵刑事」

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2016年9月14日 (水)

「第五百三十五話」

「おばちゃん!」
「何だ!クソガキ!」
「デブ!」
「だからどうした?デブが犯罪か?デブが法律で裁かれるか?デブは国外追放か?」
「難しくて4歳児には何を言ってるのか分からないよ!」
「何を言ってるか分からない答えが返ってきてうろたえるならば、そもそもが話し掛けるな!このクソガキ!」
「おばちゃん!」
「性懲りもなく何だ!クソガキ!」
「厚化粧!」
「だからどうした?厚化粧が犯罪か?厚化粧が法律で裁かれるか?厚化粧は国外追放か?」
「だから難しくて4歳児には何を言ってるのか分からないよ!」
「アタシに言わせれば、何を言ってるか分からない答えが返ってきてうろたえるクソガキなんかにこの国の未来は託せないから、一生地下でこの国の為に働いてればいいのさ!」
「おばちゃん!」
「懲りないクソガキだね!何だ!クソガキの中のクソガキ!」
「クソガキの中のクソガキ?それって凄く偉いの?ねぇねぇ!クソガキの中のクソガキって、何かそれって物凄く強そう!」
「強い訳ないだろ!ましてや偉い訳がないだろ!クソガキの中のクソガキってのは、クソガキとして下の下の下の下だって事さ!」
「それも難しくて4歳児には何を言ってるか分からないよ!」
「何を言ってるか分からないなら、3歳児からやり直せ!」
「おばちゃん!」
「不毛だね!とにかく無駄な時間ってヤツの何でもないね!何だ!クソガキ!」
「おじちゃん!」
「だからどうした?おじちゃんみたいなおばちゃんが犯罪か?おじちゃんみたいなおばちゃんが法律で裁かれるか?おじちゃんみたいなおばちゃんは国外追放で、おばちゃんみたいなおじちゃん残れるのか?」
「今のは今日一難しくて4歳児には何を言ってるのか分からないよ!」
「何を言ってるか分からないんだったら!何を言ってるか分からないって自分の心の中だけで思っとけ!それをわざわざ口に出すな!そんな事を言われたって少なくともアタシは、そう言われて4歳児にも分かるように言葉を選び直して話をするタマじゃないよ!アタシはね!何を言ってるか分からない事を言い続けるよ!とことん何を言ってるか分からないって言ってくるクソガキには、何を言ってるか分からない答えを言い続けるよ!ポリシーだからね!それがアタシであって、アタシであり続ける為に必要不可欠なのさ!」
「4歳児には、難しくて何を言ってるか分からないんだってば!!」
「怒るな!そんな事で怒ってたら、この先の人生、どうやって生きて行くつもりなんだい!理不尽に立ち向かえ!不条理の中をもがけ!自分が理解出来ないからって怒るとか動物以下のミジンコ以下の存在だね!ホント、このクソガキはさ!」
「やったー!」
「今の会話の一体どこに、そんな飛び上がって地面を転げ回るほどの喜びの要素があったんだい?」
「僕はね!おばちゃんにね!ミジンコって言わせる為に!その為だけにこの世に生まれて来たんだよ!長かったなぁ!この4年間!回りの大人達は、もっと時間が掛かるって言ってたけど!長い人では、僕が15歳になるまで無理だって言ってたけどさ!見てよ!4歳でやり遂げたんだよ!どう?おばちゃん!凄くない?凄いよね!凄過ぎて声も出ないよね!分かる!その気持ち分かる!」
「すいません。64歳のおばちゃんには、難しくて何を言ってるか分からないです。」

第五百三十五話
「4歳児の勝ち」

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2016年9月21日 (水)

「第五百三十六話」

「はあ。」
緑道のベンチに座り、青年は右の頬を擦りながら、下を向き溜め息を吐いていた。
「隣、宜しいですか?」
「えっ?」
声の方へ青年が顔を上げると、そこにはスーツ姿の真面目そうな女性がメガネの縁に手を当てて青年に話し掛けていた。
「いや、今はちょっと。」
「失礼します。」
「ちょっと!?」
女性は、肩に掛けていた鞄をベンチ置くと青年の隣に座った。
「アナタ、何なんですか?空いてるベンチは、いっぱいあるじゃないですか!」
少し声を荒げて、青年は誰も座っていない緑道の他のベンチを指を上下に小刻みに振らしながら指した。
「私は、貴方とお話しがしたいのです。」
「僕は今、誰かと話したい気分じゃないんですよ。」
「それは、彼女に頬を平手打ちされて、オーソドックスにフラれたからですか?」
「見てたんですか!?」
「見ていたと言うよりもこちらからすれば、見せられていた?と言うべきでしょうか?」
「どっちでもいいよ!そんなの!状況が判ってるなら、尚更だよ!僕に構わないでくれ!」
「そうはいきません。」
「もしかしてアンタ、何かの勧誘?こう言う人が落ち込んでる時の心の隙を突いての何かの勧誘?」
「ふふ。」
「何笑ってんだよ!」
「勧誘ではありません。私は、こう言う者です。」
女は、鞄から身分を証明する物を取り出し、青年に開いて見せた。
「こ、こう言う者って、どう言う者だよ!真っ白じゃないか!」
「そうです。」
「そうですって、何なんだよ!ますます怪しいだけだろ!」
「つまり、身分証を真っ白にしなければいけない程の身分と言う事です。」
そう言うと女はメガネの縁に手を当てて青年を見つめた。
「いや、全く意味不明だから!」
「貴方にはこれから適性検査を受けてもらいます。」
「適性検査!?」
そう言うと女は、鞄から黒いノートを取り出した。
「はい。大統領適性検査です。」
「大統領適性検査!?」
「声が大きいですよ。暗殺されても知りませんよ?」
「されないだろ!暗殺!いやいやいや、大統領適性検査って?」
「大統領適性検査とは、貴方が大統領に相応しいかどうかを判断する為の検査です。」
「ただただ、ただただ何で?」
「それでは開始致します。」
「いやだから、淡々と事務的に当たり前のように始めようとしないでくれる?」
「緊張してトイレに行きたいのですか?」
「そうじゃなくて!大統領適性検査って!それに合格したら、僕は大統領になるって事!」
「そうですよ。」
「何を当たり前の事を聞いて来るんだこの人はって顔やめろ!そんな訳ないだろ!大統領ってのは、選挙で決めるもんだろ!」
「いえ、大統領は大統領適性検査で決定します。選挙は、こうやって大統領を決めているのだと言うフェイクです。」
「そんな話が信じられるかよ!」
「貴方が信じようが信じまいが、大統領は昔からずっとこの方法で決められているのです。」
「だとしてだ!それが真実だとしてだ!何で僕なんだよ!政治なんか興味無いし彼女に平手打ちされてフラれるような男の僕が何で大統領なんだよ!」
「大統領候補です。大統領になりたいお気持ちは判りますが、あくまでそれは大統領適性検査に合格してからのお話です。」
「なりたくないですけど!別に大統領になりたくなんかないですけど!」
「大統領になりたいなりたくないと言うそのような適性検査を受ける側の意志は関係ありません。」
「大統領を強制的に決めるって言うのか!」
「強制的ではありません。大統領適性検査で決めるのです。これはこの国に生まれた国民の義務です。」
「そんな義務、聞いた事ないよ!」
「それは当然です。身分を証明する物を真っ白にしなければならない程の極秘事項ですからね。そもそも国民で言うならば、何億人もいる中の99人しか知らない事実です。」
「それって?」
「はい、この国の歴代の大統領の人数です。」
「その歴代99人が適性検査を受けてるって事は、百発百中って事じゃないか!」
「それが大統領適性検査です。さて、そろそろ始めても宜しいですか?質問、貴方は大統領になりたいですか?」
「いきなり!?」
「質問、貴方は大統領になりたいですか?」
「なりたくないですよ!」
「質問、貴方はよく、演説をしますか?」
「どんな質問だよ!よく演説する一般人がいるかよ!」
「質問、貴方は暗殺されても死なない自信がありますか?」
「どう言う質問だよ!質問が大統領寄り過ぎるだろ!大統領寄り過ぎて質問が質問として成り立ってないだろ!」
「質問、貴方は丸ごと焼いた魚を頭から食べますか?」
「急に庶民的!?」
「質問、貴方は丸ごと焼いた魚を頭から食べますか?」
「食べるけど、食べるから何だって話だよ!それと大統領と何が関係あんの?」
「質問、流れ星を見るとついつい大統領になりたいと願ってしまう。」
「そんなヤツいる訳がない!」
「質問、スクランブルエッグには、ソース派だ、いや醤油派だ、いやいやケチャップ派だ、いやいやいや塩派だ、いやいやいやいや私は何もつけない派だ。」
「何を言ってんの?自分の事を言ってんの?」
「とても重要な事なので、お答え下さい。」
「とても重要なの!?まあ、強いて言うなら、塩派かな。」
「なるほど。」
「で、どこがどうとても重要だったの?」
「質問、暗殺された事がある。」
「あったらここにいないだろ!」
「質問、暗殺され掛けた事がある。」
「ないよ!一般人が一般的に暮らしてて暗殺されるかよ!」
「質問、暗殺した事がある。」
「ないよ!何なんだよその質問は!」
「質問、暗殺し掛けた事がある。」
「暗殺なんて特殊な作業をやった事もやり掛けた事もやろうと思った事もないよ!」
「質問、レストランでクチャクチャ音を立てて食べる人と香水の匂いがキツい人では、どちらもぶん殴りたくなる。」
「なるけど!そのちょくちょく放り込んで来る庶民的な質問は何なんだろうか!」
「質問、レストランでクチャクチャ音を立てて食べる人と香水の匂いがキツい人では、どちらも暗殺したくなる。」
「そんな日常的に暗殺は飛び交ってないよ?アンタ、ちょっと仕事に毒され過ぎて、一般人の暮らしってもんが理解出来てないんじゃない?」
「質問、毒は盛るより盛られる方だ。」
「だから!盛られてたらここにいないし!盛らないから!何だその質問は、これ大統領適性検査だろ?暗殺者適性検査なの?」
「大統領適性検査です!」
「内容的には暗殺者適性検査っぽいとこも多々あるけどな!って、そもそも今までの質問で大統領の適性が判定出来るとは到底思えないけどな!」
「質問、明日、地球が滅ぶとしたら、今日滅ぼす。」
「どんな大統領だよ!」
「質問、明日はきっと良い日になる。」
「質問の順番!あと質問の内容!もはや質問でも何でもないだろ!」
「質問、何だかノドの調子がおかしい。」
「だとしたら、この質問のせいだよ!無駄に大きな声を出させるこの質問のせいだよ!」
「質問、そろそろ終わりにして欲しい。」
「結構前から思ってたよ!もう、頭に質問って付けないと日常会話も出来なくなっちゃった?」
「質問、毒は盛るより盛られる方だ。」
「いや、それさっきしただろ!」
「すいません。気に入っている質問なので。」
「気に入ってる質問なのかよ!気に入るなよ質問を!」
「質問、そろそろ大統領になってもいいかもと思い始めて来た。」
「来る訳がないだろ!」
「それでは、まだまだ質問を続けます。」
「僕がなるって言うまで続ける気なのかよ!だとしたら、方法を間違ってるぞ!絶対に!」
「質問、毒は盛るより盛られる方だ。」
「お、おい、これは、何かの罰なのか?」
「質問!」

第五百三十六話
「メガネの縁に手を当てて、キメっ!」

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2016年9月28日 (水)

「第五百三十七話」

ある日。
「体が燃えるように熱い!」
「燃えてますからね。」
そう、ある日。
「燃えてんの!?」
「燃えてますよ。」
僕がいつものある日のように公園を突き抜けてショートカットで駅に向かおうとしていた、どこかいつもとは違った、ある日。
「消してくれよ!」
「消すんですか?」
公園の真ん中で炎に包まれる人がいた。
「こんなに苦しんでるのが分からないのか?」
「いやまあ、言葉ではそう言ってますけどほら、実際のとこは相当楽しんでんのかと思って。」
こんなある日に、いつか遭遇するから、人生は面白い。
「楽しむか!しかも相当!死んじゃうだろ!」
「いやだから、そう言う自殺なのかと、思って。」
「違うよ!」
「違うんですか。」
「違うよ!」
「そうなんですか。」
「そうだよ!」
こんなある日に、いつか遭遇するから、人生は楽しい。面白くて楽しい人生のある日に遭遇したのなら、それらを思う存分に楽しもう。
「今日は、いい天気ですね。」
「外国語の教科書か!何でこの状況で天気の話が出来るんだよ!」
「いや、こうやって会話が成立してるなら、天気の話も出来るんじゃないかな、と思って。やっぱりまずは、天気の話からかな、と。」
「バカなの?」
「燃えてる人に言われたくないですよ。」
「好きで燃えてるんじゃない!気付いたら燃えてたんだ!」
「それって!?それって!?謎の人体発火現象ですか!?それって、凄いですよ!?凄過ぎですよ!?」
「興奮の沸点が、明らかにおかしいだろ。」
「いやいやいや!これは興奮せざるを得ないですって!だって、謎の人体発火現象を目の前で見てるんですよ!?もしかしたら謎が解明出来るかもじゃないですか!もしかしたら謎が解明出来るかもじゃないですか!」
「なぜ二度繰り返す。」
「無意識です。」
「無意識だったのか!?」
「知り合いに博士とか居ないんですか!」
「居ないよ!居たとしても謎の解明よりもまずは、消して欲しいね!火を!」
「今日は、いい天気ですね。」
「だから、なぜ再び天気の話をぶっ込んで来るんだよ!」
「どうして欲しいんですか?」
「消して欲しいって言ってるだろ!消して欲しいって一番最初に言わなかったか?」
「一番最初は、ある日。です。」
「何だ?ある日って!」
「あ、こっちの話です。」
「そっちの話をすんな!」
「そっちの一番最初は、体が燃えるように熱い!です。」
「いやそう言うちゃんとした一番最初じゃなくて!」
「一番最初に、ちゃんとしたとかちゃんとしないとかが存在するんですか!?一番最初は、一番最初じゃないんですか!?知らなかったなぁ!勉強になるなぁ!」
「おい!おいおいおい!そう言う揚げ足取りはいんだよ!そこら辺どうだっていんだよ!とにかく俺は、体を包む炎を消して欲しいって言ってるじゃないか!それでいいじゃないか!それが全てじゃないか!」
「今日は、いい天気ですね。」
「いい天気だな!!これでいいか?そっちの要求は満たされたんだ!こっちの要求も満たしてくれ!」
「分かりました。今から間に合うかどうか分かりませんが、行列の出来るバームクーヘン屋さんに行って来ます!」
「誰がバームクーヘン食いたいって言ったんだよ!一回も会話の中でバームクーヘンって出て来なかっただろ!」
「なら!これからたくさんバームクーヘン出して行きましょうよ!バームクーヘンで盛り上がりましょうよ!僕は、しっとりしたバームクーヘンが好きですね。炎に包まれてる人は、どんなバームクーヘンが好みですか?」
「会話の中で炎に包まれてる人って言ってる時点で日常の何か歯車が狂ってるんだと思え!!」
「新しい医療法が発見される度に、僕思うんですよ。」
「何の話をしてんだ!」
「マウスの実験が成功したんなら、その数時間後には、すぐ人体実験すべきだ、と。」
「人体実験って、言い方!いや何の話をしてんだ!」
「だって、そこで助かる命もあるかもしれないじゃないですか!」
「人体に置き換えた場合、重大な副作用があるかもしれないだろ!失われなくてもいい命があるだろ!状況は違えど、俺も今、そんな感じだ!」
「病気なんですか!?」
「炎に包まれてんだよ!消してくれたら助かるかもしれないけど、このままじゃ、焼け死ぬだろ!」
「魔法使いですか?」
「違うよ!そうだとしたら、完全に失敗してんだろ!これ!」
「炎に包まれる族ですか?」
「どんな族だ!子孫繁栄する気ないだろ!」
「じゃあ!やっぱり謎の人体発火現象ですよ!サインして下さい!」
「おい!」
「ああ、しまった!今日はたまたまサイン色紙を持ってない!」
「いつも持ち歩いてんのか?」
「ちょっと、どっかでサイン色紙を買って来るんで、待ってて下さい!」
「おい!!」
「あれ?」
「どうした?」
「何か、焦げ臭くないですか?」
「俺だよ!おーれ!あのさ?助ける気がないなら、誰か呼んで来てくれよ。」
「お断りします。」
「何でだよ!」
「謎の人体発火現象を独り占めする為です!何か、焦げ臭くないですか?」
「俺だよ!わざとやってんだろ!」
「いや、貴方じゃなくて、僕の鼻毛ですね。妖怪鼻毛燃やしですか?」
「何の為にこの世に生まれて来た妖怪なんだよ!」
「鼻毛を燃やして、困ってる人を柱の陰から見て笑ってる極悪妖怪です。」
「極悪って部分がどこなのか見当も付かないが、とにかく消してくれよ!」
「なぜ、貴方が炎に包まれてるのかを探りましょう。」
「消してから探ってくれないか?」
「体が炎に包まれるような食べ物を食べた?」
「体が炎に包まれるような食べ物って、何?」
「恋ですかね?そうですよ!貴方は、燃えるような恋をしてる!ストーカーですか?警察呼びますよ?」
「いやもう、この際ストーカーでもいいから警察呼んでくれ!」
「違うか。」
「諦めが早い!」
「もしかしたら、地球と太陽の距離感のバランスがアンバランスになり掛けてるとか?それともオゾン層のバランスがアンバランスになり掛けてるとか?オゾン層と言えば、さっきのバームクーヘン屋さんなんですけどね?」
「もうとにかく全てがどうでもいい話だ!早く炎を消してくれ!!」
「それは、無理ですよ。」
「はあ?」
「だって、何だかよく分からないですけど、とにかく貴方は、そう言う人なんでしょ?」
「んなわけあるかーっ!!」
ある日。そう、ある日。こんなファンタスティックなある日に遭遇するから、人生はファンタスティックだ。

第五百三十七話
「公園の真ん中の噴水の中のある日」

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