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2016年9月28日 (水)

「第五百三十七話」

ある日。
「体が燃えるように熱い!」
「燃えてますからね。」
そう、ある日。
「燃えてんの!?」
「燃えてますよ。」
僕がいつものある日のように公園を突き抜けてショートカットで駅に向かおうとしていた、どこかいつもとは違った、ある日。
「消してくれよ!」
「消すんですか?」
公園の真ん中で炎に包まれる人がいた。
「こんなに苦しんでるのが分からないのか?」
「いやまあ、言葉ではそう言ってますけどほら、実際のとこは相当楽しんでんのかと思って。」
こんなある日に、いつか遭遇するから、人生は面白い。
「楽しむか!しかも相当!死んじゃうだろ!」
「いやだから、そう言う自殺なのかと、思って。」
「違うよ!」
「違うんですか。」
「違うよ!」
「そうなんですか。」
「そうだよ!」
こんなある日に、いつか遭遇するから、人生は楽しい。面白くて楽しい人生のある日に遭遇したのなら、それらを思う存分に楽しもう。
「今日は、いい天気ですね。」
「外国語の教科書か!何でこの状況で天気の話が出来るんだよ!」
「いや、こうやって会話が成立してるなら、天気の話も出来るんじゃないかな、と思って。やっぱりまずは、天気の話からかな、と。」
「バカなの?」
「燃えてる人に言われたくないですよ。」
「好きで燃えてるんじゃない!気付いたら燃えてたんだ!」
「それって!?それって!?謎の人体発火現象ですか!?それって、凄いですよ!?凄過ぎですよ!?」
「興奮の沸点が、明らかにおかしいだろ。」
「いやいやいや!これは興奮せざるを得ないですって!だって、謎の人体発火現象を目の前で見てるんですよ!?もしかしたら謎が解明出来るかもじゃないですか!もしかしたら謎が解明出来るかもじゃないですか!」
「なぜ二度繰り返す。」
「無意識です。」
「無意識だったのか!?」
「知り合いに博士とか居ないんですか!」
「居ないよ!居たとしても謎の解明よりもまずは、消して欲しいね!火を!」
「今日は、いい天気ですね。」
「だから、なぜ再び天気の話をぶっ込んで来るんだよ!」
「どうして欲しいんですか?」
「消して欲しいって言ってるだろ!消して欲しいって一番最初に言わなかったか?」
「一番最初は、ある日。です。」
「何だ?ある日って!」
「あ、こっちの話です。」
「そっちの話をすんな!」
「そっちの一番最初は、体が燃えるように熱い!です。」
「いやそう言うちゃんとした一番最初じゃなくて!」
「一番最初に、ちゃんとしたとかちゃんとしないとかが存在するんですか!?一番最初は、一番最初じゃないんですか!?知らなかったなぁ!勉強になるなぁ!」
「おい!おいおいおい!そう言う揚げ足取りはいんだよ!そこら辺どうだっていんだよ!とにかく俺は、体を包む炎を消して欲しいって言ってるじゃないか!それでいいじゃないか!それが全てじゃないか!」
「今日は、いい天気ですね。」
「いい天気だな!!これでいいか?そっちの要求は満たされたんだ!こっちの要求も満たしてくれ!」
「分かりました。今から間に合うかどうか分かりませんが、行列の出来るバームクーヘン屋さんに行って来ます!」
「誰がバームクーヘン食いたいって言ったんだよ!一回も会話の中でバームクーヘンって出て来なかっただろ!」
「なら!これからたくさんバームクーヘン出して行きましょうよ!バームクーヘンで盛り上がりましょうよ!僕は、しっとりしたバームクーヘンが好きですね。炎に包まれてる人は、どんなバームクーヘンが好みですか?」
「会話の中で炎に包まれてる人って言ってる時点で日常の何か歯車が狂ってるんだと思え!!」
「新しい医療法が発見される度に、僕思うんですよ。」
「何の話をしてんだ!」
「マウスの実験が成功したんなら、その数時間後には、すぐ人体実験すべきだ、と。」
「人体実験って、言い方!いや何の話をしてんだ!」
「だって、そこで助かる命もあるかもしれないじゃないですか!」
「人体に置き換えた場合、重大な副作用があるかもしれないだろ!失われなくてもいい命があるだろ!状況は違えど、俺も今、そんな感じだ!」
「病気なんですか!?」
「炎に包まれてんだよ!消してくれたら助かるかもしれないけど、このままじゃ、焼け死ぬだろ!」
「魔法使いですか?」
「違うよ!そうだとしたら、完全に失敗してんだろ!これ!」
「炎に包まれる族ですか?」
「どんな族だ!子孫繁栄する気ないだろ!」
「じゃあ!やっぱり謎の人体発火現象ですよ!サインして下さい!」
「おい!」
「ああ、しまった!今日はたまたまサイン色紙を持ってない!」
「いつも持ち歩いてんのか?」
「ちょっと、どっかでサイン色紙を買って来るんで、待ってて下さい!」
「おい!!」
「あれ?」
「どうした?」
「何か、焦げ臭くないですか?」
「俺だよ!おーれ!あのさ?助ける気がないなら、誰か呼んで来てくれよ。」
「お断りします。」
「何でだよ!」
「謎の人体発火現象を独り占めする為です!何か、焦げ臭くないですか?」
「俺だよ!わざとやってんだろ!」
「いや、貴方じゃなくて、僕の鼻毛ですね。妖怪鼻毛燃やしですか?」
「何の為にこの世に生まれて来た妖怪なんだよ!」
「鼻毛を燃やして、困ってる人を柱の陰から見て笑ってる極悪妖怪です。」
「極悪って部分がどこなのか見当も付かないが、とにかく消してくれよ!」
「なぜ、貴方が炎に包まれてるのかを探りましょう。」
「消してから探ってくれないか?」
「体が炎に包まれるような食べ物を食べた?」
「体が炎に包まれるような食べ物って、何?」
「恋ですかね?そうですよ!貴方は、燃えるような恋をしてる!ストーカーですか?警察呼びますよ?」
「いやもう、この際ストーカーでもいいから警察呼んでくれ!」
「違うか。」
「諦めが早い!」
「もしかしたら、地球と太陽の距離感のバランスがアンバランスになり掛けてるとか?それともオゾン層のバランスがアンバランスになり掛けてるとか?オゾン層と言えば、さっきのバームクーヘン屋さんなんですけどね?」
「もうとにかく全てがどうでもいい話だ!早く炎を消してくれ!!」
「それは、無理ですよ。」
「はあ?」
「だって、何だかよく分からないですけど、とにかく貴方は、そう言う人なんでしょ?」
「んなわけあるかーっ!!」
ある日。そう、ある日。こんなファンタスティックなある日に遭遇するから、人生はファンタスティックだ。

第五百三十七話
「公園の真ん中の噴水の中のある日」

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