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2016年10月

2016年10月 5日 (水)

「第五百三十八話」

「俺は、親指を切断するから、後は任せた!」
「何でだよ!」
日が変わり一つ歳を取った頃、人を殺したから、切断するのを手伝ってくれと親友から連絡があり、どうせまたイタズラだろうと思い、暇だったから親友の家を訪ねてみると、バスルームに親友の彼女の死体が横たわっていた。原因は、些細なケンカだったらしい。その結末、親友が首を絞めて彼女を絞殺すると言うものだった。バスルームは全面、ビニールで覆われていた。バスルームのビニールで覆われた床には、土が盛られていた。その上に、親友の彼女は横たわっていた。それは、彼女が失踪してまず疑われるのが親友であり、部屋には一切の血液を残さない為だった。僕は、異様なバスルームのその光景を親友の口から聞かされた時、コイツ狂ってると思った。そして、コイツいつかやろうとしていたな、とも思った。その説明の後、僕は撥水加工を過剰に施されたレインコートに着替えさせられ、包丁を手渡され、バスルームに入った。
「俺は、親指を切断するから、後は任せた!」
「何でだよ!」
「シーッ!大きな声を出すなよ。彼女が目を覚ましたらどうすんだよ。」
「こえーよ!こんな状況でよくジョークをぶっ込んでこられるな!」
「彼女にもよく言われた。」
「お前ら、いつもどんな状況下でデートしてたんだよ!とにかく、まずは服を脱がすぞ。」
「しかし、リーダー。」
「誰がリーダーだよ!俺が殺したみたいだろ!」
「服を脱がすと言う事は、裸になるって事では?」
「死体をバラバラにするなら、どうしたって服が邪魔だろ。」
「それを口実に、人の彼女の裸を見て、興奮したいだけなんだろ!」
「興奮出来るか!こんな形相の女の裸で興奮出来るか!」
「こんな形相の女とは何だ!こんな形相の女とは!親友の彼女だぞ!親友の!」
「何で殺した?」
「つい!テヘッ!」
「テヘッ!じゃねぇよ!テヘッ!じゃ!テヘッ、一番不釣り合いな場面だろ!ふざけてんなら、帰るぞ?」
「ごめんごめん。悪かったよ。」
「切断して、バラバラにして、どっか山に埋めるんだろ?」
「目玉は記念に保管しとくけどな。」
「こえーよ!もう、そう言うヤツじゃん!シリアルキラー的なヤツがするヤツじゃん!」
「シリアルジョークだよ。」
「いいか?もうジョークやめろ!な!」
「分かりました!リーダー!」
「帰るぞ?」
「ごめんごめん。でもな?切断するだけじゃなくて、出来るだけ肉を削ぎ落として、ミキサーで細かく出来るとこまで細かくしたいんだよ。」
「そう言う、屋さんじゃねぇんだよ!俺は!お客さんの要望に出来るだけ答える、そう言う、屋さんじゃねぇんだよ!だいたい、そんな肉を削ぎ落としてミキサーしてたら、どんどけ時間が掛かると思ってんだよ。死んだら、どんどん硬くなっていくって言うじゃんか。」
「だから、出来る限りバスルームを暖かくしてるだろ?あそうだ!お袋がリンゴ送って来たんだけど、食うか?」
「食わねぇよ!食わねぇだろ!どのタイミングでお裾分けぶっ込んで来てんだよ!」
「じゃあ、帰りに持って帰れよ。ウチのリンゴは甘くて美味いぞ!」
「毎年くれるから知ってるよ。」
「よし!そうと決まれば、ちゃっちゃと切断して、終わらせちゃいましょう!リーダー!」
「リーダーやめろって言ってんだろ!」
「ごめんごめん。」
「じゃあ、やるぞ。」
「ラジャー!」
その後、俺は親友と親友の彼女と三人で、昼近くまで盛り上がった。

第五百三十八話
「サプライズバースデー」

「この辺でいいのか?」
「そうだな。ここなら景色も良いし、彼女もきっと喜ぶ!」
「お前なぁ?」

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2016年10月12日 (水)

「第五百三十九話」

「この村は呪われている。」
この村は呪われている、と言う老人に、旅先の村の神社の境内で出会った。まさか、旅先の村の神社の境内で老人に、この村は呪われている、とか言われるとは思ってなかったから、僕は思わず
「その呪い、僕が解明しましょう。」
って、言ってしまった。僕は、この村は呪われている、と言った老人を境内にあるベンチに誘導し、その呪いについて聞き出す事にした。
「それで、お爺さん。そのこの村の呪いと言うのは?」
「お前さんは、タイムリープって代物を知っているか?」
「タイムリープ?ああ、確か、一日を何度も何度も繰り返す奇妙な現象の事ですよね。」
「そうだ。」
「まさか、お爺さんが言うそのこの村の呪いって、タイムリープの事ですか?でも、そんな現象はSF小説の中だけの話ですよね?だって、現実にそんな奇妙な現象が起きたら、世界の歴史が奇天烈にぶっ壊れちゃいますよ。」
「お前さんは、考えた事がないのか?なぜ、人間がタイムリープと言う奇妙な現象を奇天烈に想像出来たのか、と。」
「それは、小説家や科学者の果てしなき想像力の産物でしょ。」
「いいや、それは間違いだ。世の中の全ては現象が先にある。」
「バカな!?だったら、タイムマシーンも存在するって言うんですか?」
「タイムマシーンか。それは、物体であって、現象ではない。タイムリープは、現象だ。」
「そうかもしれませんが、いやそうなのかなぁ?僕の中では、タイムリープもタイムマシーンも同等ですよ。この宇宙で絶対に逆らえないモノがあるとするなら、それは時間です!時間って概念が正確にその時を刻むからこそ、世の中は成立してるんです。」
「お前さんが、この村の呪いを信じようが信じまいが、この村の呪いはこの村の呪いだ。解明する気がないなら、今すぐ村を出て行くんだ。」
「そのこの村の呪いなんですけどね。タイムリープと村がどう関係してるんですか?」
「村の古くからの言い伝えでな。この神社の裏に、井戸がある。その井戸は、いつから使われてないのかは誰も知らない。その井戸にはな。封印がされている。」
「封印?」
「井戸には、大きな石が乗っている。」
「なるほど。で?そこには、何が封印されてるって言うんですか?」
「時間だ。」
「時間!?」
「そう、時間だ。」
「そんなバカげた言い伝えを信じてるんですか?時代を考えて下さいよ。」
「そうだな。」
「で?その封印を解いた者は、タイムリープするって訳ですか?」
「ああ、そうだ。しかも一日を繰り返すのではなく、人生を繰り返すと言うタイムリープだ。」
「有り得ない!?タイムリープ史上もっとも有り得ない!?そんな事が現実に巻き起こってるんだったら、歴史が前に進まないじゃないですか!」
「歴史が前に進むか進まないかは知らんよ。封印を解いた者に呪いが掛かった時点で既に、その者は別次元に存在してるのかもしれない。」
「ご都合主義にも程があるでしょ!まさにSF小説の世界だ。封印を解いた者が主人公として、その他の全人類の人生は無茶苦茶じゃないですか。」
「だが、タイムリープに気付く者は、その呪いを掛けられた者だけだ。何度繰り返そうが同じような人生を歩むその他大勢もいる。呪い気付かないのなら、それは無茶苦茶ではないだろ?」
「いや、そうかもしれないですけどね。いやそうなのかなぁ?」
「それに、その呪いに掛かった者が、同じような人生を繰り返せば、世の中はそうそう変わるもんじゃない。」
「仮に、現時点でそのこの村の呪いに掛かってる人が存在するとして、人の人生が80年だとしたらですよ?この宇宙は永遠に80年間を繰り返してるって事ですか?」
「ああ、そうだ。」
「はっはーん!分かりましたよ。呪いの正体が!」
「呪いの正体?呪いの正体は、最初から分かっている。時間だ。」
「違いますよ。その時間と言う呪いの本当の意味が分かったって言う事ですよ。」
「本当の意味?」
「この宇宙で絶対に逆らえない時間って概念。人に例えるなら、それは死です。どんな人間も生まれた瞬間から死に向かってその時間は進んでいる。それは、想像を絶する恐怖です。しかも死って言うのは厄介で、年齢を重ねれば重ねる程に、地位や名誉や富を得れば得る程に、その恐怖は増す。」
「何が言いたい?」
「つまり、そのタイムリープの呪いは、そんな死の恐怖を和らげる為の存在だって事ですよ。死は、終わりじゃない。死は、人生の繰り返しだって言う。そうやってこの村では昔、老人達を見送っていたんでしょう。それは、死の恐怖への処方箋、とでも言うべきでしょうか。」
「子供をしつける時の化け物の話のようなもんって事か?」
「その逆バージョンですね。伝説や呪いなんてモノは、紐解けば紐解く程そんな陳腐な代物ですよ。どうです?見事にそのこの村の呪いを解いてみせましたよ?」
「だったら、お前さん。井戸の水を飲んでみるか?」
「えっ?」
「お前さんが考えてるような事は、とっくの昔に村の誰もが考えてる事だ。」
「なら!何でまだ呪いだなんて言うんですか!」
「本当に死の恐怖から逃げたいなら、本当に井戸の水を飲めばいい話だろ?そうすれば、何度でも人生を繰り返す事が出来る。何度でも死の恐怖を回避出来る。それは、永遠に生き続けると言う事だ。」
「んまあ、確かにそうかもしれませんが。」
「しかし、この呪いの言い伝えを知りながら、誰も井戸の水を飲もうとしない。それはなぜか?誰も永遠に生き続けたくはないと言う事だ。永遠に生き続けると言うのは、苦痛だと言う事だ。」
「でも、そんな実感は実体験でしか得られ、まさか!?お爺さんは、その井戸の水を飲んだんですか!?人生を繰り返してるんですか!?永遠に生き続けてるんですか!?ここで僕と何度も出会って、何度もこの話をしてるんですか!?」
「飲んでない。」
「即答で飲んでなかった!?」
僕は、この後もしばらく老人と会話をし、村を出た。旅先でいろいろな場所を訪れる度に、呪いや伝説の類は、どんな場所にも存在するって事を思い知らされる。それは、大きなモノから小さなモノまで、大小様々で、本当に多種多様で、大小様々で、中位を見付けるのが難しい。でももし、勇気ある者がいるなら、あの呪いの井戸の水を飲んでみたらどうだろうか?僕は、飲む事が出来なかったけどね。

第五百三十九話
「人生一度きり?」

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2016年10月19日 (水)

「第五百四十話」

「さてさてさてさてさてさて!今日は、この街を歩いてみたいと思います!この街は、初めて訪れましたけど、なかなか、なかなかですね!あ、何だか不思議な佇まいのお店さんを早速発見しちゃいましたよ!ちょっと行ってみましょう!行きましょう行きましょう!あのう?お邪魔します。」
なかなかなアイドルのなかなかな顔立ちのなかなかな散歩番組がスタートした。
「いらっしゃい。」
なかなかな頑固おやじ店主が出迎えた。
「このお店さんは、だいぶ古い感じがするんですけど、どのぐらい前からやってるんですかぁ?」
「この地球が爆誕する前からだ。」
「ええ!?この地球が爆誕する前からここでお店さんやってるんですか!?でもそれってぇ、一体どうやってお店さんが存在してたんですか?宇宙を漂ってたんですかぁ?」
「宇宙を、漂ってたんだ。」
「宇宙を漂ってたら、偶然に地球が爆誕しちゃったんですか!?」
「まあ、そうだな。」
「そうするとぉ、ご主人で何兆代目なんですか?」
「初代だ。」
「初代!?アタシ、地球より年上の人に、初めて会いました!?ん?人でいいんですよねぇ?」
「ああ、人で構わない。」
「あのう?握手してもらっていいですかぁ?」
「断る!!」
「ギャフン!!」
「これはあれか?撮影か?」
「はい!ガリガリお散歩って番組ですぅ!ご存知ですかぁ?」
「ああ、知ってるよ。毎月、9の付く日の4時44分の早朝に44分44秒やってる番組だろ?」
「そうです!」
「9月は毎日やってる番組だろ?」
「そうですそうです!ご主人、もしかしてこの番組のファンですかぁ?」
「違う!!」
「ギャフン!!」
「で?」
「でぇ、今回はぁ、この街をガリガリお散歩しようとやって来てぇ、このお店さんが気になって入ったのです!そしたら、地球が爆誕する前からやってたって言う、何かとてつもなく今まで偉い学者さん達のいろいろを覆す答えが返って来たのです!」
「そうか。それは、凄い事なのか?」
「凄いですよ!きっとこの出会いはぁ、この番組が何かしらの名誉ある賞を獲っちゃいますよ!」
「で?」
「でぇ、そうだそうだ!本題に入りましょう!このお店さんは、店内を見る限りですとぉ、何も置いてませんが、何を売ってるお店さんなんですか?」
「見ての通りだ。」
「見ての通りだと言いますとぉ?」
「何も売ってない。」
「何も売ってない!?」
「何も売ってない店だ。」
「そそそ、それはお店さんとして成立するんですか?」
「今の世の中ってのはさ。どの店も何かしらの商品を売ってるだろ?でもな?こんな世の中だから、こんな世の中だからこそ、一軒ぐらい何にも売ってない店があってもいいんじゃないかって思ったんだよ。そんな店が存在してもいいんじゃないかって思ったんだよ。今の世の中は、どの店も何かしら売ってるからな。」
「はあ?」
「今の世の中ってのはさ。どの店も何かしらの商品を売ってるだろ?でもな?こんな世の中だから、こんな世の中だからこそ、一軒ぐらい何にも売ってない店があってもいいんじゃないかって思ったんだよ。そんな店が存在してもいいんじゃないかって思ったんだよ。今の世の中は、どの店も何かしら売ってるからな。」
「はあ?」
「今の世の中ってのはさ。どの店も何かしらの商品を売ってるだろ?でもな?こんな世の中だから、こんな世の中だからこそ、一軒ぐらい何にも売ってない店があってもいいんじゃないかって思ったんだよ。そんな店が存在してもいいんじゃないかって思ったんだよ。今の世の中は、どの店も何かしら売ってるからな。」
「ん?んん?んんん?分かりました分かりました!ご主人の考えは分かりました!それぇ、もう大丈夫ですぅ。このお店さんは、何も売ってないお店さん、と言う事ですねぇ。」
「ちげーよ!!」
「ギャフン!!どどど、どう言う事ですか!?散々、あんな事言っといて、どどど、どう言う事ですか!?」
「この店はな。地球を売ってんだ!」
「ありゃまっ!!それはもう、ありゃまっ!!ですよ!ご主人!?それはつまり、ご主人は、神様なんですか!?」
「そうだ。」
「ありゃまっ!!それはもう、ありゃまっ!!ですよ!ご主人!?かかか、神様!?アタシ、かかか、神様に初めて会いました!握手してもらっていいですか?」
「断る!!」
「ギャフン!!」
「で?」
「でぇ、地球を売ってるってぇ、地球って一体いくらで買えるんですかぁ?」
「気になるか?」
「気になって気になって、食事もノドを通らなくて、もっともっとガリガリになっちゃいますよぉ!」
「そんなに高いもんじゃない。」
「そうなんだ!?」
「火星2つだ!」
「ギャフン!!もはや単位が分からないし、火星って2つ無いし!?買えないじゃないですか!」
「火星が2つ無い?」
「無いですよね?あるんですか!?そう言う偉い学者さん達が長い年月を費やした功績をいとも簡単に覆しまくらないであげて下さい!」
「で?」
「でぇ、例えばぁ、アタシが火星2つ支払って地球を購入するとしますよね?そうするとぉ、どうなるんですか?アタシは、地球の王になれるんですか?」
「何一つ変わらん!!」
「ギャフン!!ちちち、地球を購入したのに!?ライフスタイルに何一つ変化無し!?」
「地球は、誰のモノでもない。たかが地球を購入したからと言って、自惚れるな!!」
「買ったんですよ?アタシ!地球の所有権を手にしたのに、地球は誰のモノでもないんですか!」
「そうだ!地球とは、爆誕した時からそう言う存在だ。強いて言うなら、地球は地球のモノだ。ただ、お前が地球を購入したんなら、その時はお前に名誉ある称号が与えられる。」
「名誉ある称号?このお店さんの二代目なら、お断りよ!!」
「ギャフン!!」

第五百四十話
「迷走中でも新作を」

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2016年10月26日 (水)

「第五百四十一話」

「この道は何だ!?」
「この道は、人生です。」
俺が若い水着の女にそんな質問をぶつけると、そんな答えが返って来た。
「人生?」
「そう、人生です。」
「誰の?」
「お前の。」
「俺の?」
「そう、お前の。」
「意味がまったく分からない。何で、水着?と言うか、誰?」
「お前に人生の意味を説くためにアタシは、ここに存在する訳ではありません。アタシは、死神。」
「死神!?俺、死ぬのか!?だから、何で水着?何でビキニ?」
「正確には、死ぬ直前。死ぬ一歩手前。死ぬに等しい状況。向こうのお前は今、ビルの屋上から飛び降りての最中。飛び降り真っ只中。」
「俺は、自殺してるのか!?」
「そうです。だから、ここで立ち止まり、アタシに気付いて話し掛けたのでは?歩めない。歩みを止めざるを得ない。なぜなら、ここから先の道がぼやけているから。違いますか?」
「ああ、そうだ。ここから先の道がぼやけて、どう踏み出していいのか分からない。」
「それが死ぬ直前です。」
「ここまでって、事か?」
「さあ?」
「さあ?何で、分からないんだ?俺が死ぬから、死神が現れたんだろ?何で、水着?」
「お前が死にそうだから、アタシが現れたんです。その方が、仕事の効率がいいので。ビルから飛び降りたとしても必ずしも死ぬとは、限りません。運良く誰もが当たり前の当然に死ねる訳ではない。運悪く生きてしまうかもしれません。それは、どの自殺にも言える事ですけどね。」
「ここは、何なんだ。」
「だから、人生です。」
「夢だろ?と言うか、こんな状況、夢じゃなきゃ説明付かないだろ!真っ白な空間に一本道!水着の死神!」
「夢、だとお前が認知するのは、自由です。ここは、魂の世界、魂の時間、魂の人生、そんないろいろな呼び方のある空間です。」
「ほら!ほっぺたをつねっても痛くない!痛くないぞ!」
「はて?それが一体何の証明になると言うんです?」
「夢だからだろ!夢だから、ほっぺたをつねっても痛くないんだろ!ああ、こんな下らない夢、早く覚めたいぜ!」
「そもそもこの空間に痛覚は存在しません。人間がそれを夢だと認知するのは、この空間からの記憶を曖昧に残したまま、生き延びた人間の歪んだ発想が原因だと考えられています。」
「俺は、何なんだ?俺は、俺じゃないのか?」
「だから、死にそうだからです。お前は、お前です。現実世界で死にそうなお前の意識が一時的に、この空間のお前とリンクしただけの事です。」
「いやまったく意味が分からないんだよ!それが!」
「普段、この空間は人生をただただ歩むだけの空間。それは作業用ロボットのようにです。」
「現実の世界の裏側って事か。」
「現実の世界の裏側?その表現は、適切ではありません。この空間で、作業用ロボットのように、ただただ歩き続けているから、生きていられるんです。」
「はあ?」
「ただただ作業用ロボットのように、歩き続けているからこそなのか?お前達人間は、いつの日からか夢を見るようになった。」
「何だと!?」
「それは、死神の想像を越える共有の夢を創り出した。それが、地球。」
「そんなバカな!?」
「実に、興味深いシステムです。しかし、それはあくまでも夢の世界。解けない謎だらけ。お前達が、宇宙と呼ぶ存在、それが良い例です。解明出来ない謎は、全て宇宙のせいにしてしまえばいい。または、お前達が、海と呼ぶ存在。そして、元素と呼ぶ存在。」
「でたらめ言うな!!これは俺の悪夢だ!!早く目覚めろ!!俺!!」
「夢から覚める?まあ、夢から覚めると言うその表現、あながち間違ってはいませんよ。ただし、夢から覚めたのは、今のお前ですけどね。」
俺は、死ぬのか?ま、まさかな。有り得ないだろ、こんなの。
「・・・・・・・・・。」
「って、もう動かなくなったようね。さてと、では廃棄作業を始めますか。ああ、因みにもう聞こえてないと思うけど水着姿なのは、動きやすさを重視した結果よ。」

第五百四十一話
「ロボッタ」

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