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2016年10月26日 (水)

「第五百四十一話」

「この道は何だ!?」
「この道は、人生です。」
俺が若い水着の女にそんな質問をぶつけると、そんな答えが返って来た。
「人生?」
「そう、人生です。」
「誰の?」
「お前の。」
「俺の?」
「そう、お前の。」
「意味がまったく分からない。何で、水着?と言うか、誰?」
「お前に人生の意味を説くためにアタシは、ここに存在する訳ではありません。アタシは、死神。」
「死神!?俺、死ぬのか!?だから、何で水着?何でビキニ?」
「正確には、死ぬ直前。死ぬ一歩手前。死ぬに等しい状況。向こうのお前は今、ビルの屋上から飛び降りての最中。飛び降り真っ只中。」
「俺は、自殺してるのか!?」
「そうです。だから、ここで立ち止まり、アタシに気付いて話し掛けたのでは?歩めない。歩みを止めざるを得ない。なぜなら、ここから先の道がぼやけているから。違いますか?」
「ああ、そうだ。ここから先の道がぼやけて、どう踏み出していいのか分からない。」
「それが死ぬ直前です。」
「ここまでって、事か?」
「さあ?」
「さあ?何で、分からないんだ?俺が死ぬから、死神が現れたんだろ?何で、水着?」
「お前が死にそうだから、アタシが現れたんです。その方が、仕事の効率がいいので。ビルから飛び降りたとしても必ずしも死ぬとは、限りません。運良く誰もが当たり前の当然に死ねる訳ではない。運悪く生きてしまうかもしれません。それは、どの自殺にも言える事ですけどね。」
「ここは、何なんだ。」
「だから、人生です。」
「夢だろ?と言うか、こんな状況、夢じゃなきゃ説明付かないだろ!真っ白な空間に一本道!水着の死神!」
「夢、だとお前が認知するのは、自由です。ここは、魂の世界、魂の時間、魂の人生、そんないろいろな呼び方のある空間です。」
「ほら!ほっぺたをつねっても痛くない!痛くないぞ!」
「はて?それが一体何の証明になると言うんです?」
「夢だからだろ!夢だから、ほっぺたをつねっても痛くないんだろ!ああ、こんな下らない夢、早く覚めたいぜ!」
「そもそもこの空間に痛覚は存在しません。人間がそれを夢だと認知するのは、この空間からの記憶を曖昧に残したまま、生き延びた人間の歪んだ発想が原因だと考えられています。」
「俺は、何なんだ?俺は、俺じゃないのか?」
「だから、死にそうだからです。お前は、お前です。現実世界で死にそうなお前の意識が一時的に、この空間のお前とリンクしただけの事です。」
「いやまったく意味が分からないんだよ!それが!」
「普段、この空間は人生をただただ歩むだけの空間。それは作業用ロボットのようにです。」
「現実の世界の裏側って事か。」
「現実の世界の裏側?その表現は、適切ではありません。この空間で、作業用ロボットのように、ただただ歩き続けているから、生きていられるんです。」
「はあ?」
「ただただ作業用ロボットのように、歩き続けているからこそなのか?お前達人間は、いつの日からか夢を見るようになった。」
「何だと!?」
「それは、死神の想像を越える共有の夢を創り出した。それが、地球。」
「そんなバカな!?」
「実に、興味深いシステムです。しかし、それはあくまでも夢の世界。解けない謎だらけ。お前達が、宇宙と呼ぶ存在、それが良い例です。解明出来ない謎は、全て宇宙のせいにしてしまえばいい。または、お前達が、海と呼ぶ存在。そして、元素と呼ぶ存在。」
「でたらめ言うな!!これは俺の悪夢だ!!早く目覚めろ!!俺!!」
「夢から覚める?まあ、夢から覚めると言うその表現、あながち間違ってはいませんよ。ただし、夢から覚めたのは、今のお前ですけどね。」
俺は、死ぬのか?ま、まさかな。有り得ないだろ、こんなの。
「・・・・・・・・・。」
「って、もう動かなくなったようね。さてと、では廃棄作業を始めますか。ああ、因みにもう聞こえてないと思うけど水着姿なのは、動きやすさを重視した結果よ。」

第五百四十一話
「ロボッタ」

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