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2016年11月30日 (水)

「第五百四十六話」

 平凡で幸せなもうすぐ結婚生活4年目に突入する夫婦の休日の朝のリビングの様子である。
「ねぇ?」
「ん?」
「このカレンダーの丸印、何?結婚記念日の前の日のこの丸印。」
「ああ、それはお前を殺す日だよ。」
「なんだ、アタシを殺す日ね。って、アタシを殺す日って、何!?アタシを殺す日って、どゆこと!?」
「お前を殺す日は、お前を殺す日だよ。」
「比喩?」
「比喩じゃないよ。比喩だとしたらそれは、どんな比喩だよ。」
「結婚記念日の前にアタシを比喩殺して、新しく比喩生まれ変わったアタシとまた、新たに結婚生活を送ろうって言う、比喩?」
「どう言う難解な比喩だよ。だから、比喩じゃない。」
「そしたら、本当にアタシを殺すって事?」
「さっきからそうだって言ってるだろ?」
「さっきからそうだって言われてるけど、さっきから実感が無いわ。」
「そりゃそうだろ。まだ殺す日になってもなければ、実際に殺されてもいない訳なんだから、実感出来るはずもない。」
「比喩?」
「比喩、便利でオールマイティーな言葉じゃないからな!」
「どうしてアタシは、殺されなきゃならないの!そうよ!そこをもっと掘り下げてお伺いしたいわ!」
「支離滅裂だな。」
「支離滅裂、便利でオールマイティーな言葉じゃないからね!」
「今のは正しいタイミングで正しく使ったんだ!」
「アタシを殺して、別の女と一緒になろうって見え見えの魂胆ね!」
「別の女なんかいないよ。」
「アタシを殺して、多額の保険金を貰おうって見え見えの魂胆ね!」
「貰えてもたかが知れてる額だろ?」
「アタシを殺して、名探偵と華麗なる心理戦を繰り広げるつもりな見え見えの魂胆ね!」
「映画やドラマの観過ぎだ。」
「なら、どういった魂胆?」
「何となくだな。」
「なるほどなるほど、そこに物凄く深い大どんでん返しの理由があるのね。」
「無いよ。」
「無い!?妻を殺す驚愕の真実が隠されてない!?」
「映画の広告じゃないんだから、世の中そうそう大どんでん返しでもなければ、驚愕の真実が隠されてる訳でもない。」
「本当の本当に単に何となくでアタシを殺そうとしてるなら、アナタ、快楽殺人鬼って事よ?」
「そうか?」
「そうよ!だって、殺人によって快楽を得ようとしてるんだもの!」
「いや別にオレは、殺人によって快楽を得ようとなんかしてないよ。」
「無快楽殺人鬼って事!?」
「無快楽殺人鬼って言葉ないだろ?」
「アタシに何か不満でもあるの?」
「無いよ。」
「仕事で何か悩みでもあるの?」
「無いよ。」
「病気?もしかして病気なの?余命を宣告されたの!?」
「健康だよ。」
「なら、なぜアタシを殺そうとしてるのよ!」
「だから、何となくだよ。犬飼いたいとか、引っ越ししたいとか、旅行に行きたいとか、そんな感じの何となくだよ。」
「だとしたら、このカレンダーの丸印は、単なるカレンダーの丸印って事で、実行はされないって事ね!」
「いや、確実に実行する!カレンダーに丸印を付けるって事は、男にとったら相当の覚悟だからな。」
「初耳!」
「とは言ったものの、殺す事は決まっても、一体どうやって殺したらいいのか悩んでんだよ。何かいいアイディアないか?」
「前代未聞ね!殺そうとしてる相手に殺し方、聞く!?」
「出来るだけ、残忍なヤツがいいんだけどさ。」
「思い付く訳がないでしょ!自分を残忍に殺す殺し方なんて!」
「生きたまま何かするのがいいと思うんだけど、どうだ?」
「本当に殺し方決まってないんでしょうね?そこそこシチュエーションが固まってるような気がするんだけど、気のせい?」
「生きたまま耳を引っ張り続けるとか?」
「どのタイミングでアタシは死ぬんだ!永遠に怒られ続けるのかアタシは!こうやって!こうやって!」
「バカ!死ぬ気か!」
「死ぬか!こんなんで死んでたら、少子化まっしぐらだ!」
「生きたまま無視し続けるとか?」
「だから、それでアタシはどのタイミングで死ぬの!単なる夫婦仲が悪いだけじゃん!」
「お前は、凄い話し掛けて来ていいんだよ。」
「そんな一方的に無視し続けられたら、途中で離婚するわよ!」
「じゃあ、生き埋めだな。」
「じゃあ、じゃない!じゃあ、の後に言う言葉ではない!ガチガチにシチュエーション決まってんじゃん!ねぇ?アタシを殺した後の事は考えてんの?」
「後の事って?」
「アタシを殺すって、アタシがこの世から居なくなっちゃうって事なんだよ?もう二度と会えないんだよ?一緒に出掛けたり、一緒に笑ったり泣いたり出来ないんだよ?」
「そしたらオレは、一生掛けてお前と瓜二つの人間を捜す!」
「それは事故死とか病死の時に当てはまるパターンのヤツ!一生掛けてアタシと瓜二つの人間を捜すなら、何で丸印の日にアタシを殺したんだって話になるでしょうが!それに、アタシを殺してアタシと瓜二つの人間を捜すなんて出来ないわよ?」
「それはなぜだ!お前を殺したと同時に、オレの両足がもげるからか?」
「どう言う事!?生き埋めの後に山中から転げでも落ちたの?いやいや、両足がもげたとしても、そこは根性でカバー出来るでしょう!だから!アタシを殺したって事は、その時点で同時に警察が動き出すって事よ!」
「お前、実はどっかの国のお姫様なのか!?」
「だったらもっとど派手な結婚式挙げてるわよ!」
「なら、なぜ警察が動く!」
「警察は、そう言う時に動く組織だからよ!」
「厄介だな。」
「アナタの頭の中の方がよっぽど厄介よ!だから、バカな事は考えないで!」
「バカな事?目を瞑って右目と左目を入れ替えてみようかな?とか?」
「バカな事だけど!そうじゃなくて!」
「新築の家に泥だらけで帰って来ようとか?」
「大バカ野郎だけど!そうじゃなくて!アタシを殺すってバカな考えはやめてって事でしょ!」
「でも、もうカレンダーに丸印付けちゃったからな。」
「カレンダー丸印絶対主義者か!いい?こんな言葉がある!約束は破る為にある!」
「攻撃は最大の防御なり!」
「いや、言葉被せやめて!そう言うゲームしてんじゃないんだから!もういい!もうね!こんな丸印なんてね!こうして!こうして!上からバツ印付けてやればいいのよ!」
「お前!何て事するんだ!」
「自分の命がかかってんのよ!これぐらいするでしょ!」
「違う!そんな事したら、この世から11月4日が無くなっちゃうだろ!」
「アタシが殺されるなら、無くなっちゃえばいい!」
「誰かが困るぞ?」
「1日早く結婚記念日が出来るからいいじゃない!」
「なるほど!」
平凡で幸せなもうすぐ結婚生活4年目に突入する夫婦の休日の朝のリビングの様子であった。

第五百四十六話
「11月4日が無くなった日」

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