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2016年12月

2016年12月 7日 (水)

「第五百四十七話」

 雰囲気のある素敵なバーのカウンター。
「もう、ダメかもしれない。」
雰囲気のある男が呟いた。
「何が?ダメなの?」
雰囲気のある女は男に理由を尋ねた。
「何も思い浮かばないんだ。」
「思い浮かばない?どう言う意味?」
「思い浮かばないんだ。俺は、もうダメだ。」
「・・・何があったか分からないけど、きっと大丈夫よ。うん、大丈夫よ。」
「キミは、アレだな。ゲームに出て来るヒロインみたいに優しい言葉を投げ掛けてくれるんだな。」
「ん?ちょっとそっち方面は疎いから分からないけど、何も思い浮かばないのは、たぶんこれから何かが思い浮かぶ兆候なんだと思う。」
「キミは、優しいな。ボソッと弱音を呟いたこんな男にそんな優しい事を言ってくれるなんてな。」
「うーん?何か、ほっとけないなって思っただけ。こう言うの。」
「宗教の勧誘の人?」
「何でそうなるのよ!」
「いやだって、キミみたいな20代の女性が、一人バーのカウンターで飲んでる40間近のオッサンの弱音を聞いて励ましてくれるなんて、現実世界では有り得ないからさ。」
「有り得るでしょ!ここ、現実世界なんだから!」
「キミ、モテるだろ?」
「いきなり何の話?」
「顔は、まあまあだけど、その優しさで、そこそこの顔の女性より、スペックは上だ。」
「スペックって。」
「モテるだろ?」
「モテないよ。優しくしたって、スペックはスペック。最初から最後まで顔でしか選んでないよ。」
「厳しい世界だな。」
「そんな感覚で生きてないよ。で、オジサンは何をしてる人なの?何も思い浮かばないって言ってたけど、やっぱり芸術家?」
「いや、芸術家じゃない。売れそうもない時代遅れの商品を訪問販売する日々さ。」
「じゃあ、その時代遅れの商品がどうしたら売れるかの売り文句みたいなのが思い浮かばないって事?」
「いや、殺したい奴がいるんだが、どうしたら完全犯罪が出来るかその犯行手口を考えてたんだけど、全然思い浮かばないんだ。」
「え?何それ?ジョーク?」
「ジョーク?ジョークじゃない。本気だ。本気で殺したい奴がいるんだよ。けど、バレたら警察に捕まるだろ?それだけは、ゴメンだ。よし!ならば完全犯罪!って、具合で数ヶ月前からいろいろと考えてはみてるんだけど、結局イメージトレーニングの中で、俺は最後には死刑だ。」
「じゃあ、やっぱりそれって殺人はダメって事なんじゃない?」
「さっきまで優しかったのに、途端に冷たくなったな。だから、モテないんだよ。」
「冷たくなってないでしょ!何で正論言ってそんな言われ方しなきゃならないの!」
「正論は、常に人を傷付ける。キミも歳を重ねれば分かる。」
「あそう。」
「キミは、超能力をどう思う?」
「はい?超能力?コロコロと話が変わるのね。超能力ねぇ?まあ、完全否定はしないけど。」
「だよな!やっぱりキミがモテない理由が俺にはさっぱり分からない!」
「あそう。手、放してもらってもいいですか?」
「悪い悪い。でな?人には、眠ってる超能力があると思うんだよ!」
「潜在能力?」
「そう!だが、多くの人間は、超能力に否定的で、その存在すらマジックの類だと信じようとしない。だから、自らに超能力が眠っているかもなんて、これっぽっちも思いもしない。だが、俺は違う!違うんだ!そんじょそこらの奴等とはな!俺はさ!自分には、超能力が眠っているかもしれない!いや、絶対に眠っている!そうやって生きてるんだ!」
「疲れない?で、今一体何の話になってんだか、置いてけぼりなんだけど?」
「だから!俺の眠ってる超能力の人間の頭を爆発させるって能力で、その殺したい奴の頭を吹き飛ばせれば、完全犯罪成立だって話だよ!」
「酷い着地ね!?可能性として限りなくゼロに等しいもん同士を掛け合わせるなんて!」
「ちょっといいか?」
「な、何?」
「だから、俺の眠ってる超能力を開花させる手伝いに付き合ってくれって事だよ。」
「はあ?」
「いいか?行くぞ!」
そう言うと男は、女の頭部を見つめた。
「いや、それ成功したらアタシ死んじゃうじゃん!」
「いいじゃん!」
「いくないじゃん!なら、アタシも!」
「何!?」
そう言うと女は、男の頭部を見つめた。

第五百四十七話
「超ラッキー殺人(仮)」

そして、二時間後のバーの閉店時間となった。
「はあ、はあ、はあ、今日は無理か!」
「ずっと無理よ!はあ、はあ、はあ。」
「息、止めた方がいいのかな?」
「知らないよ!」

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2016年12月14日 (水)

「第五百四十八話」

 ここは、或る病院。或る診察室。或る患者と或る医者。
「先生!」
「どうされました?」
「足が臭いんです!」
「ほう。」
「毎年毎年!足が臭くなる一方なんです!」
「では、足を切断しましょう。」
「足を切断する!?」
「ほう。」
「足を切断する!?」
「ほう。」
「先生!他の方法にして下さい!」
「他の方法?」
「お願いします!」
「では、足を切断しましょう。」
「足を切断する!?」
「ほう。」
「足を切断する!?」
「ほう。」
「先生!」
「どうされました?」
「足を切断する以外の別の方法で、何とかお願いします!」
「ほう。」
「お願いします!」
「では、足を切断しましょう。」
「足を切断する!?」
「ほう。」
「足を切断する!?」
「ほう。」
「あの先生?僕は、足が臭いんです。足が臭いってだけなんです。痛いとか腐ってるとかじゃないんです。」
「だが、困っている。」
「はい。尋常ではない足の臭さなんです。タクシーの運転手をしてるんですが、乗ったお客さんが五分もしないで、全員ゲロを吐きます。」
「やはり、足を切断しましょう。」
「いやいやいや、そんな事したら、仕事が出来ません!」
「私には、今でも仕事が出来ているとは思えませんが?」
「辛うじて生活出来てます。でも、足を切断なんかしたら、タクシーの運転手は、辞めなきゃならないじゃないですか。」
「ゾンビ?」
「急に何を言い出すんですか!ゾンビが病院に来る訳ないじゃないですか!僕の足は、尋常ではない臭さですけど、腐ってる訳じゃない!」
「今日しますか?」
「何をですか?」
「心の準備が出来てから後日しますか?」
「いやだから、切断しませんよ!切断以外に何かあるはずでしょ!」
「ほう。」
「お願いします!先生!」
「例えば?」
「例えば?例えば足の裏から臭さを発生させる根源を取り除くとか、薬で何とかするとか、あるでしょ!」
「バラを毎日たくさん食べるとか、ハーブを毎日たくさん食べるとか、そんなのはどうですか?」
「先生!僕はこの三年間、バラしか食べてません!それでも、それでも足は尋常ではない臭さを放ってるんです!」
「あと十年続けてみてはどうです?」
「栄養失調で死んじゃいますよ!」
「でも、そんな言う程、臭くありませんよ。大丈夫、大丈夫。気にし過ぎです。」
「いや、このタイミングで気休めって、しかもずっと鼻を摘まんでる人に棒読みで言われてもですよ。」
「武器商人?」
「兵器扱いですか!僕の足は、化学兵器ですか!」
「さて、切断しますか。」
「いや別に雑談してた訳じゃないんですよ!先生!切断の考えは捨てて下さい!」
「でも、それが一番早い解決策なんですけどね。」
「そうかもしれないですけど、切断される方は、たまったもんじゃないですよ!」
「する方だって、たまったもんじゃないですよ。ゲロ吐きながらの手術なんですよ?今までやったどの手術よりも困難です。」
「それに関しては何とも言えませんよ!例えばですよ?例えば、僕が切断の方向を選んだ場合ですよ?」
「ほう。」
「切断切断って、先生は言ってますけど、一体どの程度の切断なんですか?足の裏の皮を切断って軽い感じの切断ですか?それとも足首から?それとも膝から下?まさか、足の付け根からって訳じゃないですよね?」
「首から下。」
「死んじゃうじゃん!それ、処刑じゃん!いや何か、心の奥底では、もしかしたら最悪足を切断したとしても根性でタクシーの運転手を続けて行けるかもって思ってた自分がバカみたいじゃん!」
「諦めないで下さい。」
「その選択肢で諦めないって選択肢があるんですか?」
「頭だけになっても生きてる人は、たくさんいます。」
「ギロチンの概念!?どんな気休めですか!嘘付くにも程ってもんがあるでしょ!」
「では、薬を処方しましょう。」
「あんじゃん!薬!今までの会話は何だったんですか!」
「食後にこれを一気に飲み干して下さい。」
「先生?」
「ほう?」
「こんなドクロマークのビンの中に入った液体なんか飲んで大丈夫なんですか?」
「逆に大丈夫です。」
「逆に大丈夫の逆って何なんですか!明らかに毒が入ってるでしょ!これ!」
「どどどどどどど毒なんか入ってる訳ないじゃないですか!」
「そんな古風な動揺のし方されたら、ますますですよ!え?殺そうとしてます?あからさまに殺そうとしてますよね?僕を!」
「では、注射するので腕を出して下さい。」
「いや、そのドクロマークのビンの中の液体を注射させるかよ!」
「苦しみませんから、ね?」
「先生!先生!!僕は、死にたい訳じゃないんですよ!僕はただ、尋常ではないこの足の臭さを治療して欲しいだけなんですよ。」
「この病院の裏に有名な神社がありますよ。」
「いやもう、神頼みし出したら人間終わりでしょ!」
「地球外生命体なんだから、いいじゃないですか。」
「こう言う星人じゃないですよ!僕は!この尋常ではない足の臭さで地球を征服しに来た星人じゃないですよ!」
「正体を見せろ!!」
「いやその誰のか分からないレントゲン写真をかざされてもですよ!」
「糞詰まりですね。」
「それを説明されてもですよ!」
「糞詰まりですか?」
「聞かれてもですよ!」
「さあ、切断しましょう。」
「その、そろそろ的な感じ出すのやめてもらえません?しないですから!切断!絶対に!」
「では!貴方は!世の中全ての人間の鼻を切断しろと言うんですか!」
「いやちょっと落ち着いて下さいよ。話のスケール感がおかしいでしょ。」
「おい!誰か日本刀を持って来てくれ!!」
「曲者扱いじゃないですか!それ絶対に首を切断しようとしてるじゃないですか!」
「いえ、日本刀の手入れの時間なので。」
「紛らわしい!このタイミングで、その趣味、紛らわしい!いや、そもそも診察中に日本刀の手入れって、おかしいでしょ!先生!僕は真面目に悩んでるんですよ!だから、真面目に診察して下さいよ!」
「ほう。それでは、私も真面目に診察しましょう。」
「お願いしますよ!」
「診察!死刑!」
「なにそれーっ!!」
「・・・・・・。」
「先生?」
「・・・・・・。」
「ちょっと?大丈夫ですか?先生?」
「・・・・・・。」
「気絶、嘘ですよね?先生?」
「・・・・・・。」
「そんなポージングで先生?先生!先生ーっ!!」

第五百四十八話
「或るタクシーは今日も走る」

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2016年12月21日 (水)

「第五百四十九話」

 俺達は、仲良し3人組で、いつものように登山を満喫していた。だが、仲良し3人組の1人が足を滑らし、崖から転落して死んだ。それは、完全なる事故だった。登山をする者ならば、隣り合わせの常に覚悟している現実だった。残された俺とコイツは今、死んだ友人の葬儀に参列していた。幼い頃からいつも同じ時間を共有していた仲良し3人組の1人を失い、俺達は悲しみのどん底に突き落とされている、はずだった。
「ちょっと来い!!」
「いてててて!」
「いいから来い!」
「痛ぇな!」
「お前ってヤツは!」
「何だよ!」
「何だよじゃないだろ!」
「いや、何だよだろ!」
「ふざけんなよ!」
「何がだよ!」
「お前、ずっと笑ってただろ!」
「笑ってねぇよ!」
「いや、ここに来てからずっと笑ってた!いいや、俺が車で迎えに行って家から出て来る時から笑ってた!と言うか、きっとその前からずっと笑ってるだろ!昨日の夜も今日の事を思って笑って寝ただろ!」
「はあ?笑ってねぇよ!」
「お前、分かってんのか!これは、アイツの葬儀なんだぞ!」
「分かってるよ!」
「アイツの両親や兄弟や嫁や子供がいるんだぞ!」
「分かってるよ!」
「ここに参列してる全員が悲しみのどん底に突き落とされてんだぞ!」
「ぷっ!」
「何で笑ってんだよ!」
「今のは、お前が悪いだろ!」
「はあ?何で俺が悪いんだよ!」
「だって、突き落とすとか、お前が突き落とすとかアイツが転落した時の事を思い出すような事を言うからだろ!」
「笑うな!お前なぁ?葬儀中に笑ってるって、凄く不謹慎なのが分からないのか?」
「分かってるよ!だけど、仕方ないだろ!アイツの葬儀だからこそ、アイツの顔が浮かぶんだよ!アイツの顔が浮かんで浮かんで仕方ないんだよ!特にアイツがあの日、崖から転落した時のあの顔がさ!」
「だから笑うな!お前!そのニヤニヤした顔どうにかしろよ!」
「どうにかしてぇよ!でも、どうにもなんねぇんだよ!スゲェ悲しくて悲しくて仕方ないけど!どうしても最期のアイツの顔が浮かんじゃうんだよ!」
「気持ちは分かるけどよ。この場は堪えろ!」
「無理だ!」
「即答かよ!少しは何とかしようって努力しろよ!」
「無理だろ!お前だって本当は、腹抱えて大笑いしたいんだろ?俺は、したい!棺の中のアイツの顔見て、そのギャップで腹抱えて大笑いしたい!」
「どの状況で爆弾発言してんだよ!お前は!」
「なあ?」
「何だよ。」
「なあ?これって俺が悪いのか?」
「明らかに、お前が悪いに決まってるだろ。」
「本当に悪いのは、俺じゃなくて、崖から転落して死んだアイツの方だろ?」
「そんな訳ないだろ!」
「あのな?俺は俺で、あの日から悲しみのどん底の中の抱腹絶倒の中を葛藤してパニック寸前なんだよ!ぶっ壊れそうなんだよ!」
「気持ちは、分かるが何とかこの場だけでも切り抜けてくれ。俺だってもう、口の中が血だらけなんだ。」
「お前・・・。」

第五百四十九話
「凄い面白い顔で崖から転落死」

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2016年12月28日 (水)

「第五百五十話」

 白い部屋に椅子だけが二脚、一脚には男が座っていた。男は、天井を仰ぎ、視線を白いドアに向けた。向かい合わせのもう一脚に座るであろう人物の登場を待っていた。
「失礼します。」
瞬間、若い女がドアを開けて入って来た。男は、少し驚いたがそれを女に悟られまいと表情を崩さず、目線だけで女を追った。
「それでは、7回目の調査を開始します。」
そう言うと女は、スーツの内側からメモ帳を取り出した。
「役所に、アンタみたいな可愛いお嬢さんが働いてるとは、俺もまだまだ悪足掻きが過ぎるな。」
「はい?」
「いや、続けてくれ。」
「それでは」
「いや、やっぱり続けないでくれ。」
「はい?」
「今までと同じ話が繰り返されるだけだろ?アンタら役所の人間が何度面会に来たって同じだ。」
「面会ではなく調査です。これは、仕事です。隊長。お付き合い下さい。」
「だから、役所は市民から目の敵にされてんだよ。」
「貴重なご意見ありがとうございます。まず、事件の経緯をお話しします。間違っていたら、その場で訂正をお願いします。」
「間違ってないから、そのまま一気に頼むよ。」
「市役所に爆弾が仕掛けられたと通報があり、隊長率いる処理班が出動し、爆弾の解除に当たった。爆弾は、屋上に仕掛けられていた。宜しいですか?」
「アンタ、そうやっていちいち聞いてくるタイプか?面倒臭いな。」

「お願いします。」
「ああ、爆弾は屋上にあった。ここの警備も大した事ないんだなって思ったよ。と、同時に犯人は随分と奇抜で思い切った策を実行したなって思ったよ。」
「ヘリコプターによる時限式爆弾の投下。」
「上空の警備も怠らない事だな。」
「貴重なご意見ありがとうございます。」
「何も時限式の爆弾を投下するなら、爆弾そのものを投下しちまえば、一発だったのにな。」
「それは、不可能です。」
「ああ、そうだったそうだった。最初の面会、調査に来た役所の人間が言ってたな。」
「ええ、上空からの落下物は事前にセンサーが検知し、破壊します。」
「ただ、例外があるんだよな?」
「ええ、危険ではないと判断した落下物に対しては、センサーは反応しません。例えば、紙のようなもの、雨や雪のようなもの、そして」
「鳥、のような生物。」
「ええ、盲点でした。まさか、鳥を時限式爆弾化するとは、想定外でした。」
「想定外とは常に隣り合わせだって教訓だな。」
「貴重なご意見ありがとうございます。そして、隊長。アナタは、その爆弾の解除に取り掛かった。」
「まさか、爆弾処理に向かって鳥の解体をする羽目になるとはな。」
「丁度半分の150羽目に取り掛かった時、アナタはこう叫んだ。」
「なぜ爆弾は爆発した!」
「奇妙な事を仰りますね。」
「奇妙な事?いいか?お嬢さん?何度も何度も言うが、爆弾は爆発した。解除したはずの1羽目が爆発し、連鎖して他の爆弾も爆発した。そして、俺は無念の中、死んだ。」
「死んだ?では、私の目の前に存在するアナタは一体誰なのですか?」
「それはな、お嬢さん?こっちの台詞だ。アンタは、一体何者で、ここはどこなんだ?天国か?それとも地獄か?ああ、きっと爆発解除に失敗して大勢の犠牲者を出したんだから、こう言う地獄なんだろうな。俺はきっと、無限の時間の中で自分の罪を償い続けなきゃならないんだな。」
「ここは、役所の地下にある1室です。」
「それが俺の知識の限界なんだろ。」
「知識の限界とは?」
「映画じゃあるまいし、役所にこんな施設が存在して、アンタみたいなお嬢さんが登場したりするか?」
「私は、アナタの頭が作り出した存在だと?」
「このシチュエーション、それしか考えられないだろ。」
「隊長、爆弾は爆発していないのですよ?犠牲者は出ていません。」
「俺の良心が、アンタにそう言わせてるのか?ジョークを言うタイプには見えないがな。」
「ええ、ジョークを言うタイプではありません。」
「俺の目の前で爆弾は爆発したんだよ!」
「いいえ、爆弾は爆発しませんでした。」
「何!?そんな事を言う奴は、初めてだな。次のステップに移行したのか?」
「次のステップ?」
「そうやって、自分で自分の犯した罪を優しく解除していくってオチか?茶番だな。」
「アナタの理論では、ここは死の世界で、アナタの頭が見せる罪の世界、と言う事ですよね?」
「どう考えてもそうだろ?」
「プログラムが最終ステップに移行した事は事実ですが、ここは死の世界でも罪の意識が創り出した幻想の世界でもありません。」
「だったらここは、どんな世界なんだ?」
「現実の世界です。」
「ふざけるな!!」
「隊長?」
「もういい加減にしてくれ!!俺は、多くの市民の命を助けられなかった!多くの市民の未来を奪った!だけどな!解除は成功してたんだ!してたんだよ!なぜ、爆弾が爆発したかは分かんないんだよ!もう、勘弁してくれ!頼むよ!な?」
「茶番、終わりました?」
「茶番だと!?」
「ええ、茶番です。隊長、アナタは丁度半分の150羽目に取り掛かった時、こう叫んだのですよ?なぜ、爆弾は爆発しないのか!と。」
「何だと!?」
「我々は途中で気が付いたのです。アナタが、爆弾を解除しているのではなく、爆弾を仕掛けていると、そう犯人が誰なのかを。爆弾は、確かにありました。しかしそれは、最初の1羽目のみ。そう、だから我々は屋上に特殊な電磁波を流し、爆弾を無力化したのです。役所としましてもこれは、大きな賭けでしたが成功しました。隊長?全てが逆なのですよ。アナタは、良心の呵責により罪の意識で世界を創り出しているのではなく、この大罪から逃れる為に茶番を創り出しているのです。アナタは、大勢の市民の命を奪った悪魔でもなければ、大勢の市民の命を救った英雄でもない。単なる失敗人なのです。」
「何だと!?何言って」
「これでもまだ!この世界が死の世界だと言えますか!」
そう言うと女はスーツの内側からナイフを取り出し、男の右足の太腿に突き刺した。
「お、おい!?これは、何の真似だ!?」
「痛み、感じますよね?では、1度だけお聞きします。このテロは、アナタの単独ですか?それとも他にお仲間がいるのですか?」
「ふざけるな!!俺はな!!爆弾処理班の隊長だぞ!!」
「バン!」
瞬間、白い部屋に銃声が鳴り響いた。同時に男は床の上に倒れ込み、返り血を浴びた女は椅子から立ち上がりドアから出て行った。
「裁くのは、アナタではなく、我々の方です。」
最果ての街、欲望の街、裁きの街、人それぞれに呼び名の異なるこの街のニンジン色の巨大な建物の地下の1室で、その裁きは静かに下った。

第五百五十話
「スリーティーズ・シティ・ジャッジメント」

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