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2017年1月 4日 (水)

「第五百五十一話」

 俺は、今日もいつもの喫茶店へ行くため、マンションの11階にある自室を出て、エレベーターに乗り込み1階のボタンを押し、頭の中でアイディアを浮かべては沈め、浮かべては沈めを繰り返していた。
「ん?」
すると、エレベーターの天井の黒い物体に気付いた。虫だ。小さな小さな虫が天井をゆっくりと闊歩している。
「虫か。」
ん?虫?そう言えば、数ヶ月前にも同じような光景に遭遇したな。
「同じ虫か?」
物凄くどうでもいい事だが、何か今日は、今この瞬間は、それが物凄く気になった。仮にもし、数ヶ月前に見た虫と今ゆっくりと天井を闊歩しているこの虫が、同じ虫だとしたら?コイツは、どうやって生きているんだ?それともこの虫は、エレベーターの天井ゆっくり闊歩虫って、虫なのか?ただただ、生まれてから死ぬまで、エレベーターの天井をゆっくりと闊歩するためだけの生涯なのか?飯も食わず睡眠も取らず、ただただエレベーターの天井をゆっくりと闊歩する。感情など使命など一切なく、ただただ遺伝子に組み込まれたシステムに従って一生を終える。それが、良いとか悪いとかではなく、楽しいとかつまらないとかではなく、それはつまり無心のオートマチック。行って帰って、帰って行って、それの繰り返し。
「まあ、俺も同じようなもんか。」
それがエレベーターの天井の話か、マンションと喫茶店の話か、地球と月の話か、距離が違うだけで、やってる事は案外同じようなもんだ。きっと、数ヶ月前に見た虫は、今の虫の何世代も前の虫なんだろう。
「ん?」
歩みを止めた?
「え?」
ヤバイ!何かヤバイ!エレベーターの階ボタンは?2階が点灯している!早く!早く開け!早
「チーン!」

第五百五十一話
「巣」

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