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2017年2月22日 (水)

「第五百五十八話」

沼。
「どうだ?伝説は釣れたか?」
「伝説?いや、釣れるのは、沼スライムばっかりです。」
「それは、残念だな。まあ、この沼は、沼スライムの巣だからな。隣、いいか?」
「どうりで沼スライムしか釣れないと思った。ええ、構いませんよ。だけど、それはそれで、何か考え事をするには、丁度いい。」
「旅で行き詰まったのか?」
「そんなとこです。で、さっきの話なんですけど。こんな沼スライムしか釣れない沼に、伝説の主みたいなのがいるって言うんですか?」
「私も昔からの言い伝えでしか聞いた事しかないが、この沼には主が存在するらしい。沼スライムが巣を作るのもその主がいるからだと言う説もある。この沼は、深い。とてもとても深い沼で、底まで調査出来てない。もしかしたら、伝説の主よりも伝説が存在してるかもしれない。」
「なるほど。だとしたらこの沼は考え事をするには、逆に不都合な場所だったかもしれないですね。」
「そうかもな。だが、伝説は伝説。本当のところが謎だから成立してる。この沼は、単に沼スライムにとって環境の良い沼なだけなのかもしれない。この沼にはなぜか、コブリンやドワーフやエルフも近付きたがらない。不思議な場所と言ったら不思議な場所だ。」
「もしかしたら、沼の底には、ドラゴンが眠っているとか?」
「はっはっはっ!面白い事を言うな!」
「だってほら、ドラゴンの寝息は、魔除けだって言うじゃないですか。」
「そうかもしれないな。底に辿り着いた者がいない以上、同時にそれはドラゴンがいない事も証明されてない事になるからな。」
「何か、ドラゴンがもしも釣れちゃったらって考えたら、ドキドキしてきちゃいました!」
「はっはっはっ!人間とは実に想像力豊かで面白い生き物だな!」
「ん?」
「何だ?」
「いや、何でもないです。」
「ジジイの体から魔物の香りがしたか?はっはっはっ!お前さんは、鼻がいいようだな。」
「この匂いを混乱させる森でもアナタの匂いをしっかりと感じ取れます。でもまあ、僕には、アナタが誰で、何者かなんて関係ないです。単なる見知らぬ釣り仲間ですからね。」
「そうだな。だが、私にも分かるぞ?お前さんが、剣の腕も魔法の腕も他の人間とは比べものにならないって事はな。まあ、だがそれも単なる釣り仲間には、関係ない事か。」
「ですね。」
「ところで、最近城では何か事件でもあったのか?」
「どうしてです?ん、また沼スライムか。」
「こんな森にいたって遠い城の話は耳に入って来る。逆を言うなら、こんな森にまで入って来る事だ。余程の事じゃないだろ。」
「姫様がさらわれたんです。」
「何!?」
「だから、城は大騒ぎなんです。」
「そんな事が起きてたのか。誰が姫をさらったって言うんだ?」
「大魔王。」
「大魔王!?」
「はい、あれは人間の仕業じゃないです。香りでピンと来ました。これは、魔物の仕業だってね。しかも最上級の魔物。と言ったら、大魔王でしょ?」
「いやしかし、本当に大魔王なんて存在が、存在するのか?」
「それは分からないです。」
「分からない?」
「この沼の底にドラゴンが存在してるかもしれない確率と同じぐらいですかね?もしかしたら、最上級の魔物の香りを使った人間の仕業かもしれないし、鬼の仕業かもしれないし、ゴーストの仕業かもしれない。姫様の自作自演の可能性だって有り得る。」
「なるほどな。」
「また、沼スライム。」
「で、お前さんは、大魔王の仕業の線で姫を捜索してるって訳か。」
「はい。」
「なぜ?」
「なぜって、だってそうだとしたら、ドキドキしてワクワクするじゃないですか!」
「はっはっはっ!今分かったよ。人間が面白いんじゃない。お前さんが面白い人間なんだな。」
「そうですか?あ、また沼スライム!」
「はっはっはっ!」
「はっはっはって笑ってますけどね。お爺さんもさっきから沼スライムばっかですよ。」
「そうだな!やはり、この沼にドラゴンが眠ってるなら、古代樹の実を使わなければならないかもな。」
「古代樹の実?」
「昔から、ドラゴンの好物とされてる実だ。」
「そうなんですか!?」
「ああ、そう言う言い伝えだ。」
「そっか。グリフォンの羽じゃあ、やっぱりダメなのか。」
「何!?グリフォンの羽だと!?お前さん、まさか!?」
「この森に来る途中で倒して手に入れたんです。」
「グリフォンを一人で倒す腕前か。それなら、いけるかもしれないな。」
「いける?」
「お前さん、古代樹の実を手に入れたいか?」
「お爺さん!場所知ってるんですか!」
「一段と目を輝かせたな。ああ、知ってるも何もこの先の洞窟の奥深くある。」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。だが、そこには強大な力を持つ魔物が存在する。それでも行くか?」
「当たり前じゃないですか!」
「お前さんなら、そう言うと思ったよ。なら、案内しよう。」
「え、いいですよ。地図さえもらえれば、僕一人で行きます。」
「いや、あの洞窟は複雑だ。私が同行した方が安全だろう。」
「でも、大丈夫ですか?」
「私の心配をしてくれるのか?だったら無用だ。自分の身は自分で守れる。
・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・みたいですね!」
「では、行こうか。」
「はい!」

第五百五十八話
「勇者と大魔王」

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