« 「第五百六十話」 | トップページ | 「第五百六十二話」 »

2017年3月15日 (水)

「第五百六十一話」

 短編小説を二作品書き終えた俺は、いつもの喫茶店からそろそろ自宅へ帰ろうと、席を立とうと腰を上げたまさにその時だった。
「立たないで、そのままゆっくり、ゆっくりと座って。」
「えっ!?」
「これ、分かるわよね?」
女は、俺の額に銃を突き付けると俺のスピードに合わせて向かいの席に腰を下ろし、銃口はそのままで銃をテーブルの下へ。
「どう言う事だ?」
「単刀直入に言うわ。もう一つ作品を書いて。」
「何だって!?」
「アナタ、短編小説家なんでしょ?」
「なぜ分かった!?」
「この喫茶店の常連で人間観察が趣味のアタシなら、そんな事は簡単に分かるの。」
「俺のファンか?」
「ファンじゃないわ。」
「ファンじゃないのかよ!」
「ええ、ファンじゃないわ。」
「ファンじゃないのに何でもう一つ作品を書けなんて無茶な要求してくるんだよ!」
「無茶な要求ではないと思うけど?短編小説家なんでしょ?だったら、もう一つ作品を書くなんて、簡単でしょ?」
「人間観察が趣味なら分かるよな?俺は既に今日、この喫茶店で作品を二つ書いてるんだよ!もう一つ短編小説を書けって言われてもすぐには無理だ!」
「待つわ。」
「待たれたって困る!」
「なぜ?」
「今日はもう、書けないからだ!」
「なぜ?」
「だから!既に二つ作品を書いてるって言ってるだろ!今日はもう、書きたくないんだよ!これから家でゴロゴロしたいんだよ!」
「分からない?」
そう言うと女は再び俺の額に銃を突き付けた。
「バカなのか?お前は!」
「アタシは、バカなのかもしれない。だけど、異常者じゃない。」
「人の頭に銃を突き付けといて異常者じゃないはないだろ。」
「もっと言うなら、アタシ以上にバカは、アナタよ。」
「はあ!?何で俺がバカなんだよ。」
「銃を突き付けられてるのよ?分からないの?死ぬのよ?もう一つ短編小説を書かなきゃ死んじゃうのよ?これは、理不尽で不条理なゲームのようなもの。タイムリミットは、そうね?このお店の閉店時間まで。短編小説家なら、十分な時間でしょ?」
「なめてんのか?今から閉店時間までは、10時間ある。だから短編小説なら、それで書けると?」
「ええ、そうよ。」
「ふざけるな!このお店に作品を書くだけの意気込みで来てるなら十分な時間だ!だが、今の俺は、それをさっきの二作品で消化してんだよ!一から構造を練る段階じゃあ、短編小説だってな!十時間あっても足りやしないんだよ!」
「そうなの?」
「お前だって、小説を読むならそこんとこ何となく分かるだろ!」
「漫画は読むけど、小説は読まないから、そこんとこ何となくでも分からないわ。」
「読まないのかよ!」
「ええ、読まないわ。」
「俺のファンじゃないにしても小説は読むからこんな事してんじゃないのかよ!」
「ごめんなさい。」
「おい!謝るなら、こんな理不尽で不条理なゲームのような事すんなよ!」
「頑張れ!」
「あのな?頑張ってどうにかなるもんじゃないんだよ!短編小説を書くにはな!閃きが必要なんだよ!」
「閃け!」
「そんな事で閃けるんだったら、もっと短編小説を量産してらぁ!」
「さあて、こんな会話をしてる最中にも時間は過ぎて行ってるのよ?」
「書けば終わるのか?」
「書けば終わるわ。」
「面白いとか面白くないとか、内容は関係ないんだな?」
「面白いとか面白くないとか、内容は関係ないわ。ただ!」
「ただ?」
「アナタのプライドがそれを許すならの話だけどね。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「なるほど、お前思ったより厄介だな。」
「そう、アタシは厄介なの。」
「設定を厄介にし過ぎたな。」
「後悔してももう遅くない?」
「とりあえず、寝る!」
「それもありかもね。」

第五百六十一話
「ストイック???」

|

« 「第五百六十話」 | トップページ | 「第五百六十二話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/69935624

この記事へのトラックバック一覧です: 「第五百六十一話」:

« 「第五百六十話」 | トップページ | 「第五百六十二話」 »