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2017年4月26日 (水)

「第五百六十七話」

「バリバリバリバリ!!」
嵐の日の夜中、ボクは物凄い雷鳴によって目が覚めた。そして、次の瞬間、物凄い尿意に襲われた。夜中に一人でトイレに行くのは、普通の日だって恐いのに、でも朝起きてお漏らしを発見した時のママの怒りの雷の方がもっと恐いから、恐る恐るボクは、部屋を出てトイレに向かった。
「ガタン!」
すると、何やら一階の玄関の方から音がした。それはもう極限状態だったけど、人間はなぜかこう言う時に限って、その元を確かめるって行動に出ちゃうから仕方ない。恐る恐る階段を下りて行くと、それに比例して玄関に人影が浮かんで来る。
「ピカッ!!」
ボクが、誰だ!って叫ぶ直前に稲光が答えを教えてくれた。玄関に立っていたのは、ママだった。レインコート姿で右手に包丁、左手に女性らしき生首を髪の毛で持つママだった。これは夢?何してるのママ?とボクが問い質そうとしようとした時。
「何してるの?」
先にママから問い質された。
「目が覚めたらトイレに行きたくなって。」
「そう、なら早く行って来なさい。」
「うん。」
何だかこれ以上、この場で何かを聞ける雰囲気でもなくなったから、ボクは階段を上り、トイレに行った。オシッコを済ませて部屋に戻る前にもう一度、玄関を見に行ったけど、そこにはママの姿はなかった。きっと寝惚けて幻でも見てたんだろう。でなきゃ、ボクのママは殺人者って事になっちゃう。さあ、もう寝よう。こんな日は、寝てしまおう。
「ピカッ!!」
稲光で一瞬、ママが立ってた両サイドの床に赤い液体が見えたような気もしたけど、何よりも眠かったボクは、部屋に戻ってベッドに入って、寝た。そして、朝が訪れた。
「ママ?」
「何?」
ボクとママは向かい合って、いつものようにいつもの時間に朝食を食べてた。でも、どうしても夜中の出来事が気になって気になってボクは、口を開いた。
「物凄い嵐だったね。」
「そうね。」
「今日はこんなに晴れてて、まるでウソみたいだね。」
「そうね。」
「そう言えばね。ボク、夜中に物凄い雷鳴で目を覚ましちゃったんだ。」
「そうみたいね。」
ママのこの反応、やっぱり夜中の出来事は、寝惚けて幻を見てた訳じゃないんだ。
「それでね。その時、物凄くオシッコがしたくなったからトイレに行く事にしたんだ。」
「そうみたいね。」
「でね?その時、玄関の方から物音がしたからボク、見に行ったんだ。」
「そうよね。」
「ねぇ?ママ?」
「何?」
「ママは、殺人者?」
遂に聞いてしまった。もう、後戻りは出来ない。でも、きっとこのモヤモヤを胸にしまい込んで、この先の人生を生きて行くなんてボクには出来ない。何か理由があるはずだ。あの状況を納得させてくれる何か特別な理由があるはずなんだ。ママが、ボクのママが特別な理由もなく殺人者になる訳がないんだ。
「そうよ。ママは、殺人者よ。」
「何で!何でママは、殺人者なの!もしかして、あの女性はこの家に来た強盗なの?それをママが返り討ちにしてくれたの?」
「違うわ。あの女は、町の薬局で働いてる薬剤師よ。」
はっ!?確かに、言われてみればそうだ!?生首を思い出す作業なんかしたくもないけど、確かにママの言う通りだ!あの顔は、薬剤師の女性だ!
「ど、どうして!あの人、凄く優しい人じゃないか!」
「でもね。買い物をしてレジでもたつくママに対して、舌打ちをしたの。許せないでしょ?」
「・・・・・・ママ。」

第五百六十七話
「母98歳、息子77歳」

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