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2017年6月 7日 (水)

「第五百七十三話」

「先輩?」
「任務中の私語は厳禁だ。」
「そんな事は分かってますよ。」
「トイレか?」
「そんなヘマはしませんよ。」
「だったら、任務に集中しろ。」
「先輩?集中しろって言ったって、僕等こうしてドアの前に立ってるだけですよね?何か話でもしてないと暇じゃないですか?」
「ただドアの前に立っている訳じゃない。部屋の中には、大統領が居る。私達の仕事は、大統領を警護する事だ。分かっているなら、私語は慎め。」
「いやいやいや、先輩?僕が言いたいのは、この国でこの仕事って成立するんですか?って言いたいんですよ。そう言う話ですよ。」
「大統領の命を命懸けで護る。それが任務だ。」
「先輩の言ってる事は、この国以外だったら当て嵌まるんですよ。立派な志ですよ。でも、この国で大統領の命を狙う者がいますか?そんな愚か者絶対いませんよ。」
「この世の中に絶対は存在しない。」
「そう言いますけど、よく言いますけど、この国で大統領の命を狙う者がいないのは、絶対です。」
「どうしてそう言い切れる。」
「え?だって、この国のシステムがそうじゃないですか。大統領の命を狙った者は、頭が爆発する。国民全ては生まれた時にそのチップを埋め込まれ、定期的に交換する。他の国から入国して来た者には、その場でチップが埋め込まれ、出国時にチップを抜き取られる。まあ、島国だから成せる業とでも言うんですか?完璧なシステムですよ。」
「そうだな。」
「いや先輩?そうだなじゃなくて、この完璧過ぎるシステムの中、なぜ大統領警護が必要なのか?ですよ。話はそこですよ。」
「このシステムも人間が作り出したモノだ。人間が作り出したモノには、必ず欠点があり弱点がある。」
「いやいやいや、そう言いますけどね。よく言いますけどね。このシステムは難攻不落過ぎるぐらい難攻不落ですよ。」
「なら、こう考えたらどうだ?」
「どう考えるんですか?」
「立ってるだけで、金が貰える。」
「ええーっ!いやまあ、実際そうなんですけど、何か先輩の口から聞きたくなかったなぁ!」
「おい、そろそろ本当に私語を慎め。」
「あそうだ!いい事を思い付きましたよ。」
「この状況で黙る事以外にいい事などないぞ?」
「本当に頭が爆発するか試してみません?」
「何!?」
「先輩は、見た事あります?大統領の命を狙ってる者の頭が爆発した瞬間を。」
「いや、ない。」
「こう、考えた事はありませんか?いや、こう考えたらこの状況の全てに説明が付く。」
「何を考えている?」
「嘘なんですよ。」
「嘘?何が嘘だと言うんだ?」
「この国のこのシステムがですよ。」
「バカな!?そんな飛躍し過ぎた考えがあるか!」
「そこですよ。まさにそこです。全ての人間が、この国のこのシステムを疑わない。でも、実際にはそんなシステムはなく、話だけが一人歩きしてる状況なんですよ。当たり前に塗り固められた嘘を信じてる。だから、警護が必要になる。だって、そんなシステムが存在しないなら万が一の場合は、マジで大統領の命は危険ですからね。」
「私もお前もチップが埋め込まれているだろ。」
「ええ、でも実際に爆発した人間は見た事がない。チップを埋め込むと言う作業をする事で、嘘が飛躍的に真実へと進化する。」
「突拍子しもない想像をするは自由だ。だが、お前が試そうとしている事は、罪だ。」
「ここで大統領の命を狙ったら、本当に僕の頭が爆発するのか?試してみる価値はあると思いませんか?」
「ない!」
「先輩だって、疑問に思ってたはずです。」
「私は疑問になど思った事などない!」
「この大統領警護の仕事をしてて、それは有り得ないですよ。でも、安心して下さい。僕が今からその疑問を解決してみせます。」
「おい!」
「先輩?なぜ銃を?大統領の命を狙ったら、頭が爆発するんですよ?銃なんか向けても意味はないはずです。先輩は、遠くから安全な場所から本当に僕が爆発するかを見届けてくれればいいんです。」
「やめろ。それ以上は、冗談の域を越える。」
「巻き込まれちゃいますよ?」
「やめろ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・冗談ですよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「だって、僕が大統領の命を本気で狙ってたら、今頃爆発してるはずじゃないですか。」
「・・・・・私語は慎め。」
「先輩?」
「これ以上は、上に報告するぞ。」
「このシステムって、大統領も例外じゃないですよね。」
「当たり前だ。」
「それって、大統領が自殺しようとしたら、どうなるんですか?やっぱり爆発するんですか?大統領が大統領の命を狙ってる訳だから、システムが起動しますよね?」
「トンチみたいな事を言っていないで任務に集中」
「ボンッ!!」
「先輩!?」
「まさか!?」

第五百七十三話
「それは自殺か暗殺か?」

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