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2017年7月

2017年7月 5日 (水)

「第五百七十七話」

 刑事は、病室のベットの上のミイラ男状態の男に困惑していた。
「刑事さん。」
「ん?」
「とにかく記憶がないんですよ。」
「うん。」
「自分が誰なのか?どうしてあの場所に居たのか?何でこんな全身包帯ぐるぐる巻き状態になっちゃったのか?僕は女性を殺した犯人なんですか?僕は殺人犯なんですか?」
「うん、じゃあ、ここで一回、うん、話を整理してみようか。」
「はい。」
「裏路地で女性の変死体が発見された。あれだ。もう、刃物で滅多刺しの鈍器のようなモノで滅多打ちの変死体だ。んで、その数メートル先の別の裏路地で全身骨折で倒れてるキミが発見された。当初は、恋愛のもつれによる殺人からの自殺と考えて捜査は進められた。だが、キミがミイラ男状態で、しかも所持品に身元を確認出来るモノを所持していなかった事で、早々に捜査は行き詰まった訳だ。」
「刑事さんは、僕が殺したと思ってるんですか?」
「さあな?さっぱり分からないよ。キミが誰で、一体何者なのかが分かって初めてスタートラインだからな。キミは殺人犯かもしれないし、全く無関係かもしれない。」
「そうですか。」
「ただ、俺が思うに、キミは無関係だ。」
「えっ!?そうなんですか!?それは何でですか!?」
「こう言う場合、ドラマや小説だとな?犯人かな?犯人かな?と思わせぶりな奴が犯人じゃないパターンが多いんだよ。」
「はい?」
「あれだろ?キミは、事件の真相を撹乱する為に、あそこで全身骨折で倒れてたんだろ?」
「どんな奴なんですか!僕は!」

「おまけに記憶喪失と来たらもう、決まりだよ。」
「何が決まりなんですか?何も決まってないですよ?」
「話が後半になってクライマックス間近でキミの正体が分かった時、この事件とは無関係だってオチが俺には見える!」
「刑事さん!ちょっと刑事さんこれは!これは現実の話ですよ?ドラマや小説や映画とは違うんですよ!」
「そんなのは分かってるよ!俺が今、ここでウンコしたら、ウンコした事になるからな!」
「斬新な確認方法ですね!」
「だから俺は、さっさと事件の真相に辿り着きたいんだよ。こんなどうせ無関係の男の事情聴取とかしたくないんだよ。」
「無関係かどうかは分からないじゃないですか!それに、仮に無関係だったとしても!僕は僕で何か別の事件に巻き込まれてるかもしれないじゃないですか!」
「そうかもしれないな。」
「そうですよ!」
「だとしてもだ!キミは、この状況では、一番迷惑な存在で、むしろ嫌がらせしてんのか?って、存在なんだよ!」
「いや絶対その態度おかしいでしょ!これは現実の話ですよ!」
「だから!俺がここでウンコしたら、ウンコしたってなるんだから分かってるよ!」
「・・・してないですよね?」
「するかよ!俺は刑事だぞ!」
「どう言う言い分なんですか!何も見えないし何も臭わないから分からないですけど、本当にしてないですよね?」
「あのな?もっと常識的に物事を考えれば分かるだろ!」
「刑事さんに言われたくないでよ!」
「ちょっともうあれだな!埒があかないから、顔の包帯取るぞ?」
「ダメですよ!何言ってるんですか!」
「さあて?キミは一体誰なんだ?」
「誰なんだって、今包帯取ったって分かるわけないじゃないですか!やめて下さい!」
「これで一つ事件の真相に近付くってもんだ。」
「刑事さん!!ダメですって!!やめて下さい!!」
「さあ、キミは、一体誰なん、だ!」
「ちょっと!ちょっと看護師さーん!誰かーっ!」
「えっ!?どう言う事だ!?」
「・・・・・・。」
「俺!?」

第五百七十七話
「という暇潰しの妄想の」

んまあ、俺の想像力なんてのは、こんなもんかな。それにしてもちょっと、何か変な妄想してたら、本当にウンコしたくなって来たぞ?あれ?ボタンがない!?えっ?どこだ?ちょっと?ちょっと誰かーっ!!看護師さーんっ!!ねぇーっ!!」

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2017年7月12日 (水)

「第五百七十八話」

 私は、間違えて喫茶店に入ってしまった。そして、間違えてアイスコーヒーを注文してしまった。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。」
「ありがとう。」
テーブルの上には、アイスコーヒー。なぜ、私は帰らなかった?間違えて喫茶店に入って、間違えてアイスコーヒーを注文してしまったのなら、その間違えを訂正して、帰ればよかったじゃないか。ごめんなさいと謝り、帰ればよかったじゃないか。何をミルクとシロップを入れてストローでかき混ぜて間違えて入った喫茶店の間違えて注文したアイスコーヒーを飲んでいるんだ私は!
「もしかして、貴方も?」
「はい?」
間違えて入った喫茶店の間違えて注文したアイスコーヒーを一口胃に流し込んだ時、隣のテーブル席の女性が不思議な話題を話し掛けて来た。
「もしかして貴方も間違えて喫茶店に入って、間違えてアイスコーヒーを注文してしまったんですか?」
「はい。」
「やっぱり!そうじゃないかなって思って一部始終をガン見してたとこなんですよ!」
「はあ。」
果てしなく、そして果てしなく意味が分からないぞ?貴方もと言う事は、彼女もまた私と同じ間違いをしていると言う事か。ん?だがどうだ?彼女のテーブルの上には、アイスコーヒーではなくオレンジジュースが置かれているぞ?これは矛盾だ!果てしなく、そして果てしなく矛盾だ!
「うふふ。」
「ははは。」
なぜ笑う?なぜそんなに愛らしく笑う?明日、世界が滅亡すると分かっていてもキミは、そんな笑顔が出来るのかい?
「分かりますよ。」
「え!?明日、世界が滅亡するのか!?」
「え!?そうなんですか!?」
「いやでも今、分かるって!」
「ああ、何でアタシのテーブルの上には、アイスコーヒーじゃなくて、オレンジジュースなんだろう?って、疑問に思ってるのが分かるって意味です。」
「ああ、そっちか。ビックリした。」
「ビックリしたのは、こっちですよ。急にアルマゲドン的な事を言い出すんだもん。」
「申し訳ない。」
なぜ、なぜ私は愛想笑いで見ず知らずの女性に謝らないといけないんだ?なぜ、こんな状況が生まれた?
「このオレンジジュースは、間違えて喫茶店に入って、間違えて注文したアイスコーヒーを飲み終えた後に、間違えてオレンジジュースを注文した結果です。」
何を言っているんだか果てしなく意味が分からないぞ?だからここは、素直に聞いてみようではないか。
「どう言う事ですか?」
「だから、間違えて喫茶店に入って、間違えてアイスコーヒーを注文して、更に間違えてオレンジジュースを注文しちゃうんですよ!」
なぜ笑う?なぜそんなに愛らしく笑う?明日、世界が滅亡すると分かっていてもキミは、そんな笑顔が出来るのかい?
「はあ。」
「分かりますよ。」
「やはり明日、世界が滅亡するのか!?」
「何でそうなるんですか。そうじゃなくて、この女、何を果てしなく訳が分からない事を言ってんだって思ってるのが分かるって事です。」
「申し訳ないが、その通りだ。」
「つまり、貴方もまた、これから間違えてオレンジジュースを注文しちゃうって事ですよ!」
「まさか!?」
「そのまさかなんです。」
なぜ笑う?なぜそんなに愛らしく笑う?明日、世界が滅亡すると分かっていてもキミは、そんな笑顔が出来るのかい?いや、これで三度目だから同じ間違いはしないが、どうなっているんだ?彼女は、私より少し前のおっちょこちょいを歩んでいると言う事か?
「はあ。」
「分かりますよ。」
「そんなに明日、世界を滅亡させたいのか!」
「ちょっと、落ち着いて下さい。いいですか?アタシは、少し前の自分を見てるみたいだったから、貴方に話し掛けたんです。」
「え?」
「おっちょこちょい、なんですよね?」
「まあ、自慢じゃないが、そうだ。」
「アタシもです。キャベツとレタスは絶対に間違えちゃうし、電車もエレベーターも絶対に乗り間違えちゃうし、階段、間違えちゃいますよ。」
「なるほど、キミも本当は上の美容室に行こうとした訳か。」
「そうなんですよ!」
そう言えば、どこか風の噂程度にうっすら何となく果てしなく透明なこんな話を耳にしたようなしないような?そう、おっちょこちょいは、おっちょこちょいを引き寄せる、と。まあ、果てしなく噂だが、とにかくなんだ。落ち着いたら、ノドが渇いた。ん?間違えて入った喫茶店の間違えて注文したアイスコーヒーもなくなってしまったな。
「すいません!オレンジジュース下さい!あっ!」
「ほら!」
「ははは。」
「うふふ。」

第五百七十八話
「血だらけの二人」

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2017年7月19日 (水)

「第五百七十九話」

「じゃあ、そろそろ行きましょうか、奥さん。」
「そうしましょうか、奥さん。」
「じゃあ、ここは私が払うわね。」
「ダメダメダメ!何言ってるのよ奥さん!ダメダメ!ここは、私が払います!」
「ちょっと!奥さん!奥さんの方こそ何を言ってんの!ここは私が払います!」
「やめてやめてやめて!ここは私が!」
「だってこの前は、奥さんに払って貰ったでしょ?だから今日は、私が払います!」
「この前は、私じゃなくて違う奥さんよ!だから、今日は私が!」
「あらそう?奥さんじゃなくて、別の奥さんだった?」
「そうよ!私じゃなくて別の奥さんよ!」
「じゃあ、今日は私が払うわね!」
「だから奥さん!聞いてた?奥さん!今日は奥さんじゃなくて、私が払うの!奥さん!」
「じゃあ、こうしましょ!今日は私が払って、今度の時は奥さんが払うって事にしましょ!そうしましょ!」
「ダメダメダメ!今日は、私が払うから、今度奥さんが払って!」
「それは無理な相談よ!奥さん!」
「どうして!奥さん!」
「ここに伝票があるからよ!奥さん!」
「奥さんは、著名な登山家?奥さん!」
「そうよ!奥さん!この国では知られてないけど、別の国へ行けば私は、有名な奥さん登山家よ!」
「そんな嘘までついて払いたいの?奥さん!」
「こんな嘘までついてまで払いたいのよ!奥さん!汲んで上げてよ、奥さん!」
「汲めないわ!奥さん!」
「どうして奥さん!」
「それはなぜか?なぜなら奥さん?それは、私が払うからよ!奥さん!」
「奥さんも頑固者ね!」
「奥さん程じゃないわよ!」
「奥さん頑固者奥さん、ね!」
「頑固者を奥さんで挟まないで!奥さん!と言う事で、ここは私が払うから!」
「奥さん!UFO!」
「えっ!?」
「じゃあ、ここは私が払うわね!」
「ズルいわ!奥さん!」
「こんな古典的な手に引っ掛かる奥さんが悪いのよ?じゃあ、行きましょうか、奥さん。」
「奥さん!ちょっと待って!」
「どうしたの?奥さん?」
「その伝票、印刷がおかしくなかった?」
「おかしくないわよ、奥さん。」
「ちょっと見せて、奥さん。」
「ほら!」
「いや、そうじゃなくて、奥さん。おかしな部分を説明するから、ちょっと貸して!」
「奥さん!そんな古典的な手に引っ掛からないわよ私は!」
「ちぇっ!奥さん!」
「さあ!行きましょう!奥さん!」
「待ちなさい!奥さん!」
「何?奥さん。どう言う事?奥さん?」
「伝票を渡して、奥さん!」
「銃をしまって、奥さん。」
「私もここまでしたくなかったけど、奥さんがこんなにも頑固者だと思わなかったから、しょうがない!武力行使よ!奥さん!」
「奥さん?たかがよ?よく考えて、飲食店でよくある奥さん同士の支払い私私いや私いやいや私よ!よ?たかがよ?奥さん!」
「じゃあ、その伝票を渡して!奥さん!」
「奥さん?」
「私だってこんな事で、こんなたかがな事で、奥さんを撃ちたくないの!奥さん!だから、早くその手に持ってる伝票を渡して!奥さん!」
「そう、そうなの。そこまでの気持ちだったのね。奥さん。」
「そうよ!奥さん!」
「なら!私にも考えがあるわ!奥さん!」
「ちょっと!何してるの!奥さん!銃をしまって!奥さん!」
「勝負よ!奥さん!」
「奥さん?いいのね?」
「生き残った方が払いましょ!奥さん!」
「分かったわ!奥さん!」
「10歩よ!奥さん!」
「いいわ!奥さん!」
「行くわよ!奥さん!」
「いつでも!奥さん!」
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」

第五百七十九話
「ファミレスの決闘」

「「10」」

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2017年7月26日 (水)

「第五百八十話」

 私は、普通のサラリーマンだ。普通のサラリーマン生活を送る、普通のサラリーマンだ。だが、今日はやけになんだか、無性になんだかやけに、近道がしたくなった。普段は、絶対に有り得ない事だが、今日は絶対に近道がしたくなったから、だから近道して妻と子供が待つ家に帰る事にした。生い茂る草を掻き分けて行くと、そこはファンタジーだった。
「よう。」
「夢?」
「夢?誰の?俺の?」
「犬が喋ってる!?」
「哲学だろ?」
「哲学と言うかファンタジー?」
「どうしたんだ?道にでも迷ったのか?」
「いや、初めての近道だから、道に迷ってるのか迷ってないのかが、分からない。」
「哲学だな。お前、哲学者か?握手してくれよ。」
「いや、普通のサラリーマンだ。」
「おお!哲学者っぽい!」
「何がだ?」
「何もかもがだ!今日は素晴らしい夕方だ!どうだ?哲学だろ?」
「どちらかと言うと気象学っぽいな。ところで、何で喋れるんだ?」
「はあ?喋れるから喋ってる。ただそれだけだ。あっ!今の何だかんだで、哲学っぽいな。」
「いやもう、とりあえず何でもかんでも哲学って言ったもん勝ちみたいになってるだろ。」
「俺の耳、哲学っぽくないか?」
「普通だろ?」
「仲間には、哲学っぽいって凄く言われるぞ!」
「そのノリで無理矢理言わせてるんじゃないのか?」
「ピーンとしてて、哲学っぽいって凄く言われるぞ!」
「その哲学さがよく分からない。」
「哲学っぽくする為に疲れるけど頑張ってるんだ!」
「垂れ耳の犬種だったのか!」
「お前、さっきからいちいちリアクションが面白いヤツだな!」
「どちらかと言うと面白いのは、ファンタジーなお前の方だ。」
「猫の女王の城に連れて行きたくなってきたぞ!猫の女王をチラ見させたくなってきたぞ!」
「ガン見させてくれ。いや、これ以上のファンタジーは勘弁してくれ。ファンタジーでお腹一杯になりそうだ。」
「猫の女王はな。お前が考えてる以上に哲学だぞ?」
「その何でもかんでも哲学って言いたがるのもうそろそろやめないか?」
「猫の女王はな。お前が考えてる以上に人間を喰うぞ?」
「だったら、そんな世にも恐ろしい場所に連れて行こうとするな!何一つ哲学じゃないだろ!単なる生け贄だろ!」
「猫の女王はな。人間一人につき勲章を一つくれるんだぞ?」
「とにかく私は、家に帰りたいんだ!こんな恐怖のファンタジー世界からは一秒でも早く出て行きたいんだ!」
「でも、見てみろ!俺は、一つも勲章を貰ってない!」
「だから、私を猫の女王に差し出して勲章を貰いたいって魂胆なんだろ?」
「おいおいおい、人間。それは哲学とは言わない。早とちりって言うんだぞ?」
「まず、大前提として、私は哲学を口にした事がない!」
「哲学を口にした事がない!?おい人間!今のはなかなかの哲学だったぞ!」
「あのな!」
「俺は、猫の女王のやり方には、反対の立場だ!」
「ん?」
「人間を喰うなんて、反対だって事だ!全く哲学じゃない!ナンセンスだ!クソ喰らえだ!」
「はあ。そうなのか、としか言えないが?」
「そこで人間に頼みがある!」
「私にどうしろって言うんだ?」
「俺をお前の家に連れて帰って欲しい!」
「何!?」

第五百八十話
「近道をしたらファンタジーの世界で犬を拾った」

「ここがお前の家か。ほんのり哲学っぽいな。」
「こっちの世界でも喋るのか!」
「哲学だろ?」
「妻と子供の前では絶対に喋るなよ。」
「分かった。」
「絶対だからな!」
「ああ、分かった。」
「喋るなよ!」
「しつこいぞ。そうだ!お前の子供に猫の女王の話を聞かせてやろう!」
「おい!」

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