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2017年7月26日 (水)

「第五百八十話」

 私は、普通のサラリーマンだ。普通のサラリーマン生活を送る、普通のサラリーマンだ。だが、今日はやけになんだか、無性になんだかやけに、近道がしたくなった。普段は、絶対に有り得ない事だが、今日は絶対に近道がしたくなったから、だから近道して妻と子供が待つ家に帰る事にした。生い茂る草を掻き分けて行くと、そこはファンタジーだった。
「よう。」
「夢?」
「夢?誰の?俺の?」
「犬が喋ってる!?」
「哲学だろ?」
「哲学と言うかファンタジー?」
「どうしたんだ?道にでも迷ったのか?」
「いや、初めての近道だから、道に迷ってるのか迷ってないのかが、分からない。」
「哲学だな。お前、哲学者か?握手してくれよ。」
「いや、普通のサラリーマンだ。」
「おお!哲学者っぽい!」
「何がだ?」
「何もかもがだ!今日は素晴らしい夕方だ!どうだ?哲学だろ?」
「どちらかと言うと気象学っぽいな。ところで、何で喋れるんだ?」
「はあ?喋れるから喋ってる。ただそれだけだ。あっ!今の何だかんだで、哲学っぽいな。」
「いやもう、とりあえず何でもかんでも哲学って言ったもん勝ちみたいになってるだろ。」
「俺の耳、哲学っぽくないか?」
「普通だろ?」
「仲間には、哲学っぽいって凄く言われるぞ!」
「そのノリで無理矢理言わせてるんじゃないのか?」
「ピーンとしてて、哲学っぽいって凄く言われるぞ!」
「その哲学さがよく分からない。」
「哲学っぽくする為に疲れるけど頑張ってるんだ!」
「垂れ耳の犬種だったのか!」
「お前、さっきからいちいちリアクションが面白いヤツだな!」
「どちらかと言うと面白いのは、ファンタジーなお前の方だ。」
「猫の女王の城に連れて行きたくなってきたぞ!猫の女王をチラ見させたくなってきたぞ!」
「ガン見させてくれ。いや、これ以上のファンタジーは勘弁してくれ。ファンタジーでお腹一杯になりそうだ。」
「猫の女王はな。お前が考えてる以上に哲学だぞ?」
「その何でもかんでも哲学って言いたがるのもうそろそろやめないか?」
「猫の女王はな。お前が考えてる以上に人間を喰うぞ?」
「だったら、そんな世にも恐ろしい場所に連れて行こうとするな!何一つ哲学じゃないだろ!単なる生け贄だろ!」
「猫の女王はな。人間一人につき勲章を一つくれるんだぞ?」
「とにかく私は、家に帰りたいんだ!こんな恐怖のファンタジー世界からは一秒でも早く出て行きたいんだ!」
「でも、見てみろ!俺は、一つも勲章を貰ってない!」
「だから、私を猫の女王に差し出して勲章を貰いたいって魂胆なんだろ?」
「おいおいおい、人間。それは哲学とは言わない。早とちりって言うんだぞ?」
「まず、大前提として、私は哲学を口にした事がない!」
「哲学を口にした事がない!?おい人間!今のはなかなかの哲学だったぞ!」
「あのな!」
「俺は、猫の女王のやり方には、反対の立場だ!」
「ん?」
「人間を喰うなんて、反対だって事だ!全く哲学じゃない!ナンセンスだ!クソ喰らえだ!」
「はあ。そうなのか、としか言えないが?」
「そこで人間に頼みがある!」
「私にどうしろって言うんだ?」
「俺をお前の家に連れて帰って欲しい!」
「何!?」

第五百八十話
「近道をしたらファンタジーの世界で犬を拾った」

「ここがお前の家か。ほんのり哲学っぽいな。」
「こっちの世界でも喋るのか!」
「哲学だろ?」
「妻と子供の前では絶対に喋るなよ。」
「分かった。」
「絶対だからな!」
「ああ、分かった。」
「喋るなよ!」
「しつこいぞ。そうだ!お前の子供に猫の女王の話を聞かせてやろう!」
「おい!」

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