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2017年8月23日 (水)

「第五百八十四話」

「神の」
「ああ、神父様?有難い言葉の最中申し訳ないんだが、俺の頼みを聞いて欲しいんだ。」
「私語は慎むように言われています。」
「いいじゃないか。俺は、間もなく刑が執行されて死ぬ身なんだぞ?少しぐらいいいだろ?きっとそれぐらいは神も許してくれるさ。」
「・・・・・・。」
「なっ?」
「・・・何ですか?」
「時間が無いから単刀直入に言うぞ。俺をここから逃がしてくれ。」
「なっ!?」
「俺は死刑囚で、間もなく刑が執行される。これが最後のチャンスなんだ。」
「そんな事が出来る訳がないでしょう。私は、神に仕える身です。貴方は、死刑囚で間もなく刑が執行されるのです。」
「だから、この最後のチャンスに賭けてみたいんだ。」
「人生最後のジョークを言っているのですか?」
「これがジョークを言ってる人間の目に見えるか?神父なら分かるだろ?」
「だけど、一体どうやって逃げると言うのです?何か秘策があると言うのですか?もし、万が一にもこの刑務所を逃げ出せるとして、まず初めに、ここで私が貴方に手を貸さなかったら話はそれで終わりです。」
「アンタは、俺に手を貸すよ。」
「いくら私が神父だとしても貴方は死刑囚です。犯してはならない罪を犯した人間です。そのような人間に手を貸すほど、私は神父として人間が出来ていない。」
「俺にはな。神父様、人の寿命ってのが見えるんだよ。丁度ここ、そう胸の辺りに生年月日みたく見えるんだ。」
「そんな話を信じろと?」
「信じてもらわないと困る。だって、神父様?アンタの寿命は、明日なんだからな。」
「な
っ!?そんなバカな話がある訳がない。」
「これは、百発百中の能力なんだよ。外れた事はない。間違いなくアンタは、明日死ぬ。」
「仮に私の寿命が明日ならば、貴方の寿命は、今日ではないですか。なぜ、明日死ぬ私が、今日死ぬ貴方を助けなければならないのです?矛盾しているでしょう。」
「この能力には、続きがある。」
「続き?」
「病死だ。」
「どう言う意味です?」
「あくまで俺の見える寿命ってのは、病死での寿命のみで、予測不可能な事故や自殺なんかは、除外される。きっと遺伝子レベルの能力ってヤツだ。そして、その寿命は、病の根源の場所に浮かび上がる。つまり、神父様?アンタは明日、心臓発作で死ぬ。」
「なっ!?」
「人生の最後に、良い行いをしたいとは思わないか?」
「貴方の脱獄に手を貸す事が良い行いだとは到底思えませんが?」
「俺の罪は知ってるな?」
「殺人医師。貴方が手術をした患者が何十人も死んでいる。手術中を含めれば更に人数は増える。」
「俺は、誰も殺しちゃいない。だが、致命的だったのは、院長の死だったな。」
「ではなぜ、患者が死ぬのです?患者を救うのが医師なのでは?貴方がしているのは、まるで逆の行為です。」
「まるで逆か。これでも運命に抗おうと必死だったんだがな。神父様に言われるのが一番キツいな。」
「まさか!?救えない命を救おうと!?いやしかし、そんな死刑囚の話、信じられる訳がない。」
「ああ、俺も運命を受け入れて、このまま今日、死のうと思ったよ。アンタがここにやって来るまではな。」
「どう言う意味です?」
「言っただろ?これが最後のチャンスだと。」
「だから、それはどう言う意味なのです。」
「アンタの手術を俺にやらせてくれ!」
「なっ!?」
「最後だ。運命に抗うのは、これで最後だ。アンタを救えなかったら、俺は生まれ持ってのこの呪われた運命を受け入れよう。」
「まさか!?それでもなお、医師を目指したと言うのですか!?」
「ふっ、占い師にでもなれば、今頃は大金持ちだったかもな。」
「しかし、どうやってここから?」
「逃げるのは簡単だ。」
「ここは刑務所ですよ?」
「神父様?誰がいつ、刑務所の外へ逃げると言った?」
「ならば一体どこへ逃げようとしてるんですか。」
「医務室へ行ければそれでいい。いや、手術が出来る場所へ、だ。心臓発作の演技なら得意だ。嫌ってほど目にしてこれまで生きて来たからな。」
「そんな上手く行くもでしょうか?」
「どうせ明日には死ぬ運命の二人なんだぜ?神父様。」
「・・・・・・。」
「なっ?」
「・・・分かりました。」
「ありがとう。」
「だけど、誰も死にませんよ。貴方が私を救い、そして私が貴方の無実を証明してみせます。」
「本当に、ありがとう。」
「では、始めましょうか。もう時間がありません。」
「分かった。」
「お願いしますよ。」
「神父様もな。」
「はい。誰かーっ!!誰か来て下さーいっ!!」

第五百八十四話
「死ぬには良い日だ、と」

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