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2017年9月20日 (水)

「第五百八十八話」

「はあ。」
「どうしたどうした!溜め息なんて!え?」
「いや、酷い渋滞だなと思ってさ。」
「確かにな。全く動かないな。目的地に着くまで眠っててもいいんだぞ?」
「運転手の横で助手席の俺が寝るなんて、そんな事は俺には出来ない。」
「そうか。ありがとう。」
「事故でもないし、そう言う時期でも時間帯でもないのに、何でこんな渋滞なんだ?」
「渋滞の原因は、ブレーキだって話を聞いた事がある。」
「ああ、あれだろ?ブレーキの連鎖反応みたいな話だろ?それなら俺も聞いた事あるけど、俄に信じがたい話だよ。実際にこうして原因不明の渋滞に巻き込まれるとさ。ブレーキとか言われてもな。」
「確かにな。一台のブレーキが、ここまでの大渋滞を引き起こすとは思えないしな。だけど、仕方ない。現実は、そうなんだよ。」
「まあそうなんだろうけどさ。しっかしあれだよな?何か時間を無駄にしてる感が物凄いよな。」
「だったらどうだ?この渋滞に巻き込まれてる無駄な時間を有意義に活用してみないか?」
「この無駄な時間を?一体どうやって?」
「この渋滞に巻き込まれてる無駄な時間を有意義に活用するにはどうすればいいのか?そう考えるだけで既に時間は有意義に活用されてるじゃないか!」
「哲学者か?みんながみんな、そう考えて、そう納得してたら、渋滞に巻き込まれてイライラする人間なんていないよ。それに、それに気付いて青天の霹靂みたく、その後の渋滞を清々しい気分でいられるか?俺は無理だ。」
「じゃあ、ゲームをしよう!」
「まだその方がいい。で、一体どんなゲームをするんだ?」
「格闘技だよ!」
「格闘技?そんなの普通に車内で有り得ないだろ!」
「車内じゃない。ここでするんだ。」
「頭の中?」
「そう!イメージトレーニングってあるだろ?それの応用編だよ!」
「そもそもイメージトレーニングが出来ないのに、いきなりその応用編は無理だ!」
「さあ来い!」
「いやだから無理だって!だいたい運転手が目を瞑っちゃダメだろ!」
「盲点だな!」
「まず気付けよな!」
「じゃあ、この空飛ぶボタンを押して、空を飛んで目的地まで行くってのはどうだ?」
「はあ?」
「じゃあ、この空飛ぶボタンを押して、空を飛んで目的地まで行くってのはどうだ?」
「いや、何度聞いても意味が分からないけど?空を飛んで目的地まで?空飛ぶボタン?」
「分かってるじゃないか!」
「この車、空を飛ぶのか?」
「あははははははははは!」
「なぜ突然の大笑い?」
「あははははははははは!だって、お前が飛びっきりのジョークを言うからだろ!」
「言ってないだろ?」
「この車、空を飛ぶのか?って、言っただろ?あははははははははは!」
「いや、話の流れ的に言うだろ。」
「この車が空を飛ぶ訳がないだろ!この車が空を飛ぶなら、最初から空を飛んで目的地まで行けばいいじゃないか!」
「お前が空飛ぶボタンとか言うから言ったんだろ!」
「このボタンを押したって、ハザードランプが点滅するだけだよ!あははははははははは!」
「こえーよ!ひたすら、こえーよ!じゃあ、何で空飛ぶボタンの話なんかしたんだよ!意味分かんねーよ!」
「じゃあ、このミサイルが発射するボタンを押して、前の車共を一掃するって言うのは、どうだ?」
「ハザードランプが点滅するだけだろ?」
「じゃあ、押してみろよ。」
「何だよ!急にシリアスな顔して!」
「ミサイルが発射するか、ハザードランプが点滅するか、やってみればいいじゃないか。」
「シリアスな顔やめろよ!ミサイルなんか発射する訳がないだろ!」
「だから、そう思うなら、やってみればいい。ただし、ミサイルが発射された場合、考えれないぐらいの数の人間が、死ぬぞ!地球の人口が今の三分の一になるぞ?」
「どんなミサイルだよ!だいたい何で、そんなミサイルがこの車に搭載されてんだよ!」
「標準装備だ。」
「だとしたら狂ってんだろ!その自動車メーカー!」
「さあ!どうする!押すのか?押さないのか?」
「押さないよ。」
「あははははははははは!」
「何で大笑い?」
「あははははははははは!ジョークだよ!ジョーク!このボタンを押してもミサイルなんか発射されないよ!ハザードランプが点滅するだけだよ!そんなこの世の終わりみたいな顔するなよ!」
「いやしてない。」
「大丈夫!明日も今日と変わらずあの地球は回ってる!」
「どんな角度の励ましだよ!」
「例えば、今横を通過してった家族連れの車、本当の家族じゃなかったら、どうする?」
「どうするって、別にどうでもいいよ。」
「どうでもいい?なぜ?」
「楽しそうな車中だっただろ?別に、本当の家族だろうがどうだろうが、幸せそうなら別にどうでもいいだろ。」
「お前、何か宗教でも始める気か?」
「何でそうなる!そこまでの偉大な格言を口にしたか?」
「それともあれか?プロポーズの練習か?」
「どんな恋愛の果てのプロポーズだよ!」
「さあ、そんなこんなで目的地に到着だ!実に有意義だったな!」
「無駄話のオンパレードだったじゃねーか!」
「あれ?お前、少し老けたか?」
「お前もな!」

五百八十八話
「火星マデ残リ500メートルデス」

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