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2017年9月27日 (水)

「第五百八十九話」

「何してるんですか?」
「娘さん、何してると思いますか?」
「お爺さんが散歩の途中で疲れて道端に座ってる?」
「正解!」
「大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」
「と、言いたいところだが、不正解だ。」
「え?何でわざわざそんなフェイントを?」
「せっかくの娘さんの優しさを無下にして申し訳ない。」
「なら、本当に何をしてるんですか?」
「自分探しだよ。」
「自分探し?よく若者がしてるあの自分探し?」
「いや、よく若者がしてるあの自分探しとは、違う。」
「どう違うの?」
「本当の意味の自分探しさ。」
「はい?」
「私はね。この歳になるまで、この自分が、本当の自分だと思って生きて来たんだ。だが、妙な違和感と共に考えた。本当の自分は、別にいるんじゃないか?とな。」
「失礼します。」
「娘さん!ちょっと、まだ話は終わってないぞ?」
「いやだって、お爺さんが明らかに頭が狂っちゃった人だから!」
「随分とダイレクトにモノを言う娘さんだな。確かに、今の話を聞いたら、頭が狂ったと思うのも当たり前だな。しかしだ。娘さん?私の頭は、至極正常!」
「いやいやいやいや、お爺さん!無理がありますって!狂ってないにしてもとても正常とは思えません!狂う寸前ですって!」
「そうか?」
「え?そうですよね?だって、本当の自分は、どこかにいるって言ってるんですよ?じゃあ、今のこの道端に座ってるお爺さんは、誰なんですか?」
「誰なんだろうな?」
「いやちょっともう、不思議だらけで関わり合いたくないんですけど。」
「きっとな。どっかの人生のタイミングで、中身が入れ替わってしまったんだな。」
「本気ですか?本気でそんなSFみたいな事を言ってるんですか?」
「娘さんには、分からないんだよ。この妙な違和感がな。自分のようで自分でない。本当の自分は、どこかにいるはずだと言うこの違和感。」
「救急車呼びましょうか?」
「本当の私が医者なら、是非ともそうしてもらいたいもんだ。」
「本当のお爺さんがお医者さんかどうかは知らないでけど、とりあえず病院にいた方が安心安全なんじゃないですか?」
「まあ、確かに大勢の人間が集まる場所として病院で自分探しをするのは、一つの案だな。」
「いやいやいや、そう言う意味じゃないですよ。じゃあ、アタシはとにかくこれで失礼します。」
「待ちなさい。娘さん。」
「優しさが仇になった。」
「とりあえずおでことおでこをくっつけてみよう!」
「変態じゃないですか!」
「変態?そうじゃない。そうする事によって、本当の自分かそうじゃないか判別出来るんだ。」
「そこに正解が存在しないのに、どうして判別出来るんですか!例えばでよ?例えば、お爺さんの言ってる事が全て真実だとして、仮にですよ?仮に、アタシがお爺さんの本当の自分だったとして、どうするんです?」
「どうするって、娘さんが私の本当の自分だったとしたら、本当の自分を見付けたんだから、本当の自分に戻るだけだろ?」
「アタシ、急にお爺さんになっちゃう訳ですか?」
「急にお爺さんになる訳ではない。人生軸が元に戻るだけだ。正しく修正されただけの事だ。逆を言うなら、私は本当は娘さんなのに、お爺さんになっていたんだぞ?」
「もう何だかとにかくさっさとこの場を離れたいんで、おでことおでこをくっつけて違う事を証明しますよ!変なとこ触ったら、ぶん殴りますからね?」
「分かった。さあ、娘さん。来なさい。」
「え?いやちょっと何してるんですか?おでことおでこじゃなくて、唇と唇をくっつけようとしてますよね?目なんか閉じちゃって!」
「別に、おでこと言う決まりもないからな。とりあえず、チューに変更した。さあ!来なさい!」
「犬のウンコでも食ってろ!」
「ぶはっ!!」
「やれやれだわ。」
「ありがとう。お嬢さん。」
「まさか!?」

第五百八十九話
「ウンコの自分探し」

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