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2017年10月25日 (水)

「第五百九十三話」

 西部開拓時代。そこには、世の中に知られていない職業がまだまだ多く存在していた。

第五百九十三話

「メッセンジャー」

 嵐の夜。所々で雨漏りのする酒場には、男が二人。一人は、片手にリボルバーを持つ男。もう一人は、そのリボルバーを向けられた顔を数発殴られた跡のある男。
「棺屋、まさかお前がメッセンジャーだったとはな。」
グラスに残っていたウイスキーを飲み干し、リボルバーの男が口を開いた。
「・・・・・・。」
「黙ってたって事態は好転しないぞ?こんな嵐の夜に、酒場に来る奴なんていない。ましてや、この街を訪れる保安官もいない。なんたってここは、ゴーストタウンなんだからな。」
「俺を殺す気か?」
「事の次第だよ。棺屋。」
「何が望みだ?金ピカの棺か?」
「はっはっはっ!棺に用はねぇ!興味もねぇ!あるのは、お前が届けようとしてるメッセージの方だ。」
「そうか。メッセージを妨害してた黒幕は、アンタって訳か。」
「そうだ!あの女と結婚するのは、俺だ!牧場の息子じゃない!」
「彼からの依頼の、愛してる。このメッセージを届けなければ、俺は殺されないって事か?」
「ああ、そうだ。」
「断れば、死ぬのか?」
「ああ、そうだ。物分かりが良いメッセンジャーで助かった。」
「メッセージを届けたとこで、領主の娘と牧場の息子が結婚するかは、分からないんだぞ?」
「おい、おいおいおい、メッセンジャー?俺をなめるなよ?狼に襲われて、あの牧場で介抱してもらい数ヶ月家族と暮らした。ん?んん?どっからが計算だ?いいや、そもそもが誰の依頼だ?」
「・・・・・・。」
「本当の依頼主は、牧場の息子じゃなく、あの女からなんじゃないのか?彼の想いを届けてくれ、そう言う依頼なんだろ?」
「さあな?」
「ふん、惚けたって無駄だ。だから、そのメッセージを届けられたら、あの二人は確実に結婚する!」
「メッセンジャーには、二つの誓いがある。」
「ん?」
「一つは、託されたメッセージは、命懸けで届ける。」
「ああ、なるほど。ここで死にたいって宣言か。で?因みに殺す前に二つの誓いのもう一つを聞いてやるよ。」
「もう一つは、どこからが計算かを見抜かれるな。」
「何?」
「ドン!」
その時、雨漏りがする穴から、カエルが降って来た。
「カエル?」
リボルバーの男がそう言うと同時に、穴から次々とカエルが降って来た。
「お、おい!まさか!?なっ!?」
店内を見渡すリボルバーの男が正面に顔を直した時には、既にそこにメッセンジャーの姿はなかった。元々、所々が痛んでいた酒場は、その後も降り続けるカエルに耐えられる事もなく倒壊した。
「・・・アンタには、立派過ぎる棺だな。」
その光景を目にしたメッセンジャーは、そう呟くと馬を走らせた。

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