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2017年12月20日 (水)

「第六百一話」

「はあ!?何で!?」
「お疲れ様です。」
釣ってきた鯛をどう料理しようか考えながらさばいてたら、中からいきなり水着姿の美女が現れた。
「夢?」
「現実ですよっ!」
「いててててて!何で耳を引き千切ろうとする!?この場合は、ある程度の力加減でほっぺたって相場は決まってるだろ!?」
「すいません!鯛の中にいたもので、世の中と感覚が少しズレちゃったみたいです!」
「随分と最新の流行を取り入れた水着だけど?だいたいほっぺたをつねるのに世の中との感覚のズレは生じないだろ!てか、何で鯛の中から!?そこだよ!まずはそこから片付けよう!」
「答えは簡単です!アタシが海を泳いでたら鯛に食べられたんです!」
「全然簡単じゃないよね!それ、全然簡単じゃないよね!だってほら!俺の釣った鯛の大きさは、明らかに美女より小さいよね!アンタ、体重は!」
「えっ!?美女に体重聞くなんて紳士じゃないですね!」
「いててててて!その耳を引き千切ろうとすんのやめろ!違う!いいか!俺は、鯛を釣り上げた時!明らかに鯛の重さをこの手に感じた!この鯛の重さしか感じなかったんだよ!つまりだ!」
「何が言いたいんですか!」
「つまりだ!って言っただろ!それは、これから何かを言おうとする合図だろ!変なとこで割り込んで来るなよ!」
「すいません!鯛の中にいたもので、世の中と感覚が少しズレちゃったみたいです!」
「いやもう!これは、世の中と遮断されてたのが原因じゃなくて!持って生まれた性格が原因なんじゃないのか!」
「で?何が言いたいんですか!」
「何で俺が責められる風になってる!?いいか?つまりだ!俺が鯛を釣り上げた時点では、美女は鯛の中にいなかったって事だ!アンタ、一体どっから現れたんだ!そして何が目的だ!」
「その考えには、一つだけ間違いが御座います。」
「何で映画やドラマの事件解決シーンみたいな動きをする!何が間違ってるって言うんだ!」
「もし、アタシが0キログラムだとしたら、その推理は成立しませんっ!」
「いててててて!よくもそんな事をドヤ顔で人の耳を引き千切ろうとしながら言えたもんだな!なら、体重計に乗ってもらおうじゃないか!」
「美女の辞書に、体重計の文字はないっ!」
「もろもろ分かったから、とりあえず何事も無かった感じで、俺の前から消えてくれるか?」
「えっ?プロポーズとかしなくていいんですか?美女を前にしてるのに?」
「初対面の美女を目の前にしてプロポーズなんてする訳がないだろ!」
「意気地無し!」
「いててててて!本当にやめろ!本当に引き千切れるだろ!聞いた事のない変な音が聞こえたぞ!あのな?」
「何が言いたいんですか!」
「言い掛けてる時にちょくちょく口を挟むな!」
「すいません!鯛の中にいたもので、世の中と感覚が少しズレちゃったみたいです!」
「そのいい訳もやめろ!あのな?いいか?だいたい初対面の美女にプロポーズして断られる確率は、100パーセントだ!それは、初対面の美女じゃなくても同じ事が言える!そして!そもそも鯛の中から出て来た怪しさだけで構成された美女になんてプロポーズする訳がないだろ!」
「ガビーン!」
「そんなショックの受け方するヤツ、初めて見たよ。アンタ、どんな美女人生を送って来たんだよ。毎日毎日、初対面の男からプロポーズされてたのかよ。さぞ疲れる人生だったろうな。」
「・・・・・・。」
「いててててて!無言で耳を引き千切ろうとすんな!一番こえーよ!どんな八つ当たりだよ!いいから、さっさと何事も無かった感じで、俺の前から消えてくれよ!こう言う摩訶不思議な事もあるんだなぁ、って感じで受け止めるからさ。」
「そうですね。こう言う摩訶不思議な出来事に、アタシ達は巻き込まれてしまったのかもしれませんね。」
「ああ、きっとそうだ。」
「でも、摩訶不思議な出来事に巻き込まれたアタシを摩訶不思議な出来事に巻き込まれたアナタが助け出してくれたのも摩訶不思議な現実です。」
「そうだな。」
「何かお礼をさせてもらわないとアタシの気が済みませんっ!」
「いや、別に礼なんていいよ。さっさと何事も無かった感じで、俺の前から消えて、この時間は綺麗さっぱり消し去るからさ。一秒でも早くいつもの現実に戻してくれるのが何よりものお礼だよ。」
「分かりました。でも、お礼はちゃんとさせて下さい。」
「だからいいっての!」
「ありがとうございました!」
「いててててて!何で、感謝で耳を引き千切ろうとすんだよ!いててててて!やめろ!いてててて!」
「あっ!」
「あっ!」

第六百一話
鯛の呪いなのかはさておき、引き千切られた右耳が床の上でビチビチ飛び跳ねてるよ」

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