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2018年1月24日 (水)

「第六百六話」

「母さん!」
「何ですか?」
「母さん!」
「だから、何ですか?」
「母さん!いいから!いいから玄関まで来なさい!」
「はいはいはいはいはいはいはいはい、一体何ですか?お父さん。」
「これを見なさい!」
「あらヤダ!落ちてました?」
「あらヤダ!落ちてました?じゃないだろ!母さん!これが何か分かってんのか?分かってんだよな!」
「人類破壊ボタン。」
「そう!人類破壊ボタンだ!うっかり踏んでボタンが押されでもしたら大変だ!」
「さっき買い物から帰って来た時に荷物があたって落ちちゃったのね。」
「落ちちゃったのねじゃない!そもそも玄関に人類破壊ボタンを置いとくのがどうなんだ?いかがなもんなんだ?」
「でもほら、絶対に忘れない場所でしょ?」
「絶対に忘れない場所かもしれないけどな!落っことしたのこれが初めてじゃないだろ!」
「でもほら、一度も間違って踏み押しちゃった事ないでしょ?」
「その一度がアウトな代物なんだよ!」
「それにほら、こんなに頑丈なケースに入ってるんだから、踏んでも押される事なんてないわよ。」
「確かに政府からの取扱説明書には、ゾウが踏んでも大丈夫だとか書いてあるし、玄関に置くなとは書かれてない!」
「そうでしょ。」
「だけど!万が一って事があるだろ?母さん!」
「お父さん?万が一の事を考えていたら、人間は生きて行けませんよ?」
「人類破壊ボタンを雑に玄関へ置くような奴が、諭すな!」
「はいはいはいはい、でも絶対に金庫には入れませんよ。」
「何でだ!」
「いいですか?お父さん。例えば金庫に人類破壊ボタンを入れたとしましょう。それで何が起こります?」
「安心安全に人類破壊ボタンが守られるだろ!」
「確かに、今回みたいに落っこちて踏み押しちゃう危険性は、回避出来ます。」
「いいじゃないか!」
「それが良くないんです!」
「ガンガンガンガンすんのをやめなさい!母さん!分かったから、話を聞くから、人類破壊ボタンを持ってガンガンガンガンすんのをやめなさい!金庫に入れる事の何が良くないんだ?」
「いいですか?人類破壊ボタンなんて、いつ押さなきゃならない時がやって来るかも分からない代物です!それを金庫に入れると言う事は、金庫の開け方を忘れちゃうかもしれないって事です!どうするんですか!人類破壊ボタンを押さなきゃならないって時に、金庫の開け方を忘れちゃってたら!私達夫婦は、国に消されちゃいますよ!」
「忘れないようにすればいいだろ?」
「どうやるんですか!」
「金庫の開け方を紙に書いて置いとけばいいだろ?」
「その金庫の開け方を書いた紙に書いてある金庫の開け方の事を何が書いてあるのか内容が理解出来なくなっちゃったらどうするんですか!」
「いやもう、そこまでいっちゃったら、玄関に人類破壊ボタンを置いといてもそれがどんなボタンなのかも理解出来なくなってるだろ!」
「でも!そうなった場合!玄関に置いとけば、次の人へ渡す事は出来るじゃないですか!金庫に入れといて忘れちゃったら、人類破壊ボタンを無くしたって認識されて、私達夫婦は、国に消されちゃいますよ!」
「分かった!分かったから!人類破壊ボタンを持ったまま、ガンガンガンガンすんのをやめなさい!」
「お父さん!どうして私が人類破壊ボタンを持ったままガンガンガンガンしてるか分かりますか?」
「イライラしてるからだろ?」
「違います!」
「違うのか!?じゃあ、何でガンガンガンガンしてるんだ!やめなさい!」
「それは、お父さん?私が信じてないからです!」
「信じてない?何を言ってるんだ?」
「この人類破壊ボタンを人類破壊ボタンだって信じてないって事です!だから今日!私は、この人類破壊ボタンを押しちゃおうと思ってます!」
「はあ?ななな、何を言い出すんだ!母さん!自分が何を言ってるのか分かってるのか!」
「勿の論です!お父さん!だいたい、変じゃないですか!何ですか?何なんですか?人類破壊ボタンって!」
「人類破壊ボタンは、人類破壊ボタンだろ!物凄く分厚い取扱説明書を二人で熟読したじゃないか!」
「ええ、読みました!読みましたけど、何ですか?何なんですか?人類破壊ボタンって!そもそもの存在自体が意味不明じゃないですか!しかも何で、こんな老夫婦に預けるんですか?お父さん?これが単なる悪戯だとしたら!私達夫婦は、大間抜けですよ!」
「悪戯?何の為に?何の為にこんな大掛かりな悪戯をしないとならない!」
「悪戯は!大掛かりな程、悪戯だとバレないからです!お父さん?人類破壊ボタンに振り回されてたこの五年間を後悔すんじゃなくて!これから先の人生をこの人類破壊ボタンに縛られないで生きて行く事の方が大事だと思いませんか?」
「お、おい!?押すのか?そんな事したら、俺達夫婦は、国に消されるぞ?」
「ボタンが本物だとしたら、国に消されちゃうも何もないでしょ!」
「お、押すのか!?」
「当たり前じゃないですか!」
「わ、分かった!なら、一緒に押そう!」
「お父さん!いいんですか?地球史上最悪の犯罪者になっちゃうかもしれないんですよ?」
「母さんだけに、それを背負わせる訳にはいかないだろ?」
「お父さん!?」
「さあ、一緒に押そう。」
「はい。」
「行くぞ。」
「はい。」

第六百六話
「夫婦愛再確認ボタン」

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