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2018年2月

2018年2月 7日 (水)

「第六百八話」

「ん?」
私は、88歳のお爺さんだ。日課の散歩の途中、いつもの公園で8歳ぐらいの少女がしゃがみ込んで泣いていた。そんなに広くない公園を見渡すと、少女を慰める人は誰一人としない。私は、辿々しくも優しい足取りで少女に近付き、優しく話し掛けた。
「お嬢ちゃん?どうしたんだ?」
「お爺ちゃん、誰?」
「私は、たまたま公園の前を通り掛かって、お嬢ちゃんが泣いてるのが見えて気になってしまった、単なるお爺ちゃんだよ。」
「そう。」
「何で泣いてるんだい?」
「死んじゃったの。」
なるほど、死んでしまったペットを公園に埋めに来たって具合か。そうなると、公園に埋められるぐらいだから、小さなペットと言った具合か。
「それは、とても悲しいね。」
「うん。」
「金魚、が死んじゃったのかな?」
「ううん。」
「ハムスター、が死んじゃったのかな?」
「ううん。」
違う?まさか、犬や猫ではあるまい。いやしかし、生まれたての犬や猫の可能性はあるな。
「犬、が死んじゃったのかな?」
「ううん。」
「猫、が死んじゃったのかな?」
「ううん。」
おや?おやおや?するってぇと何だ?一体何がするってぇとなんだ?何が死んで、少女をこんなにも悲しませていると言った具合なんだ?これはもう、直接聞かないと駄目な具合か。
「お嬢ちゃん?一体何が死んじゃって、そんなに泣いてるんだい?」
「ステープラー!」
「ステープラー!?」
「うん。」
「ステープラーって、あの?」
「その。」
「何かをとめる時に使用するあの文房具の?ステープラー?」
「その。」
なんてことだ!?頭の中がなんてことだで、いっぱいだ。これが、なんてことだでないのなら、一体何がなんてことだなんだ。
「お嬢ちゃんは、ステープラーが死んで、この公園に埋めに来て、そして泣いていたのかい?」
「うん。」
「ステープラーって、死ぬの?」
「だって、動かなくなっちゃったんだよ?動かなくなっちゃったって事は、死んじゃったって事でしょ?」
優しいのか?この少女は、とんでもなく優しい心の持ち主って具合なのか?命があるない関係無しに、こう言う事で心の底から悲しむ、とんでもなく優しい心の持ち主って具合なのか?
「そうか、お嬢ちゃんは、とんでもなく優しいのだね。」
「そんな事ないよ。」
「いや、そんな事あるよ。」
「そんな事ないもん!」
どどどどうしたと言うんだ!?頭の中がどうしたと言うんだで、いっぱいだ。これが、どうしたと言うんだでないなら、一体何がどうしたと言うんだなんだ。
「お嬢ちゃん?なぜ、そんなに怒ってるんだい?私が何か、お嬢ちゃんをそんなにも怒らせるような事を言ったのかい?」
「だって、ステープラーが死んじゃったのは、アタシのせいなんだもん!」
「どう言う事だい?なぜ、お嬢ちゃんのせいなんだい?」
「だって、ステープラーをレールの上に置いて電車に轢かせたんだもん!」
「コラッ!」

第六百八話
「良い子も悪い子も良い大人も悪い大人も絶対に真似しないで下さい」

まさか、私をこの不自由な体にした犯人が、このお嬢ちゃんだったとはな。

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2018年2月14日 (水)

「第六百九話」

 居酒屋でホットケーキの話で盛り上がった後、俺と友人は俺の自宅でホットケーキを作る事になった。
「なあ?ホットケーキって、ひっくり返さなくていいのか?」
「当たり前だろ!ひっくり返したら、それはもうホットケーキじゃない!」
「いやでも、ひっくり返す気がしてならないんだよなぁ?」
「あのな?ホットケーキを作った事ない人間が、気でモノを言うな!気で!こうやって、黙ってじっと待ってれば出来上がる!それがホットケーキだろ!」
「いやでも、何かこのまま黙ってじっと待ってたら、焦げまくる気がしてならないんだよなぁ?」
「だから!ホットケーキを作った事ない人間が、気でモノを言うなって言ってんだろ!気で!じゃあ何だよ!何なんだよ!どうしろって言うんだよ!」
「いやだからさ。ひっくり返したらいいんじゃないの?」
「ひっくり返したとしよう!じゃあ、ひっくり返したとしようよ!ひっくり返したとするよ!なっ!するとしよう!そしたらホットケーキがどうなる?」
「両面がいい感じに焼けて、美味しく食べられるんじゃないかなぁ?何かそんな気がしてならないんだよなぁ?」
「お前をフライパンで軽く焼いてやろうか!お前をフライパンで軽く焼いてやろうか!ホットケーキを作った事ない人間が、気でモノを言うなって何回言わせんだよ!気で!ホットケーキは、ひっくり返さない!」
「どうして!」
「ホットケーキだからだ!」
「はあ?」
「はい?」
「でも、このままにしといたら、確実に下の面は焦げちゃうよ?」
「焦げない!」
「どっから来んの!その自信!」
「あのな?俺達は今、バーベキューやってる訳じゃないんだぞ!ホットケーキを焼いてるんだぞ!ホットケーキを!」
「どう違うの?焼いてる事には、変わりないじゃん。それって、ひっくり返さなきゃ焦げるって事じゃん!」
「焦げない!」
「だから、どっから来んのその自信!」
「どっからも何も俺達が今!目の前にしてるのは、ホットケーキなんだぞ!ホットケーキは、こうしてれば出来上がる!それはなぜか!それはホットケーキだから!」
「マジ?」
「大真面目だ!」
「怒られない?」
「誰に!」
「いやだからさ。このまま焦がして、悪臭で近所の人達に怒られない?」
「あのな?自分の家の近所に美味しいホットケーキ屋さんが出来たのかなって、大行列が出来る事はあっても!苦情を言いに来るような太ったオバサンはいない!」
「何でキャラ限定?」
「あのな?お前な?さっきから言いたかったんだけどさ!」
「何?」
「焦げるとか言うな!」
「何で?」
「焦げるって、焦げる可能性のあるモノに対して使う言葉だろ?でも、ホットケーキは、その対象外なんだから絶対に言うな!」
「どんな食べ物なんだよ!ホットケーキって!」
「分かってんだよ。ホットケーキってのはさ。」
「どう言う事?何を分かってんの?ホットケーキは?」
「自分が焦げる事をだ。」
「焦げるんじゃん!」
「焦げるよ!そりゃあ、火を使ってんだから焦げるだろ!」
「もう、お前の言ってる事が訳の分からない向こう側過ぎて怖いよ。」
「いいか?つまりは、ホットケーキってのはな?こうして黙ってじっと待ってれば、焦げそうになった時に自らひっくり返る!それはもう、絶妙なタイミングでだ!最高に美味しいタイミングでだ!」
「自我があんの?」
「自我じゃないけど、自我みたいなもんがあるんだよ。本能と言うか、それはもう使命感だな。」
「使命感?」
「最高に美味しい状態を召し上がってもらおうって使命感だよ!太古の昔からホットケーキの持つ使命感だよ!」
「え?酔ってんの?」
「それはお互い様だろ!いいから黙ってホットケーキが自らひっくり返る様を見てろ!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「何かヤバい感じの煙出て来てない?」
「・・・・・・出でない!」
「何か間があったじゃん!変な間があったじゃん!これもう完全に焦げてるじゃん!」
「何か、眠くなって来た。」
「このタイミングで!?」
「うっ!」
「えっ?」
「うっ!」
「えっ?」
「ううっ!」
「ええっ?」
「何か、口からホットケーキが出そう。」
「まだ食ってないじゃん!ダメダメダメダメ!絶対ダメだからな!」

第六百九話
「史上最悪のホットケーキ」

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2018年2月21日 (水)

「第六百十話」

 長閑なバス停でバスを待つ中年の男と若い女。二人には特に接点はない。あるとすれば、たまにこの長閑なバス停でバスを待つぐらいなもんだ。
「この問題の答え解るか?」
「解らないです。」
「じゃあ、この問題の答えは?」
「解らないです。」
「じゃあ、この問題は?」
「解らないです。」
「なら、この問題!」
「解りません。」
「んなら、これは!」
「解りません!」
「ふざけんな!」
「ええーっ!?」
「お前!何の為にメガネ掛けてんだ!」
「目が悪いからに決まってるじゃないですか!」
「そんな理由でか!」
「十分過ぎる程の理由です!メガネ掛けてるからって、全員が全員、天才じゃありませんよ!」
「天才じゃないのにメガネを掛けてるって、ダテメガネか!」
「そう言う意味じゃないでしょ!ダテメガネ!」
「この問題の答えは!」
「解らないです!」
「今日から!いや、今すぐこの瞬間から!そのメガネ外せ!」
「そんな事したら、事故に巻き込まれるか、誰かに迷惑掛けちゃいますよ!」
「でも!メガネ外した方が可愛いなって先輩に言われたら次の日から外すだろうが!」
「そんな先輩いません!どんな激レアなシチュエーションですか!」
「天才はメガネである。」
「何ですか?急に?その格言っぽいのは?」
「昔のメガネの格言だよ!」
「聞いた事がない!と言うかオジサン?何かメガネの事をちょっとバカにしてませんか?」
「バカにする訳ないだろ!天才にするけどバカにした事は一度もない!」
「バカにするの反対語、初めて聞きましたよ。」
「天才はメガネである。メガネでない天才は天才ではない。」
「そんな訳ないじゃないですか!メガネ掛けてない天才だっていっぱいいますよ!」
「あれだろ?一つの事に秀でた者達の中には、メガネを掛けてないヤツもいるじゃないですか!って言いたいんだろ?」
「私、そんなバカみたいな言い方してます?そうですよ!いるじゃないですか!」
「あのな?そう言う一つの事に秀でた者達は、天才とは言わない。」
「天才じゃないですか!天才って言わないなら何て言うんですか!」
「変態!」
「怒られますよ。」
「変態の最上級、大変態!」
「怒られますよ。なら、天才って何なんですか?天才って!」
「いいか?天才ってのはな。どんな難しい問題でも一瞬で解いちゃう人間の事を言うのだよ?最終的にスポーツでも芸能でも政治でも人類の役に立たないのだからね。」
「本当に怒られますよ。」
「なら、今この瞬間、地球が壊滅状態に陥ったとしよう!」
「いきなりですね。」
「スポーツの人が、芸能の人が、政治の人が、役に立つか?いいや立たないね!絶体絶命の本当の窮地で役に立てるのは、全知全能の知識を持つ天才だけなんだよ!」
「スポーツの人も芸能の人も政治の人も、そう言う状態でもそれなりに役に立てると思いますけど?」
「それなりじゃダメなんだよ!地球が壊滅状態の時に!一時の喜びや幸せにすがってる場合じゃないんだよ!我々は、天才の指示の元に地球を復興して行かなきゃならないんだ!」
「バス、待ってるんですよね?」
「バス、待ってるんだよ?」
「早く来ないかな?バス。」
「そもそもだが、キミはなぜ?バスを待ってるんだ?」
「なぜって、駅に行く為にですよ。車運転出来ないし、交通手段がバスしかないからです。」
「メガネ掛けてんだから、瞬間移動装置とか作ればいいだろ?」
「そう言うのが天才の定義だとしたら、この地球上にメガネを掛ける資格を持つ人なんていないじゃないですか!」
「なぜ?」
「瞬間移動してるメガネの人を見た事ないからですよ!」
「おいおいおい、瞬間移動だぞ?そんな瞬間移動の瞬間を凡人に見られるようなヘマは天才はしない。」
「ヘマじゃないでしょ!そんな装置があるなら、みんなで共有した方が世の中便利じゃないですか!」
「おいおいおい、天才の立場に立って物事を言えよ。」
「どう言う意味ですか?」
「凡人ってのはな?自分が出来ない事をする天才を差別する。」
「差別なんてしませんよ。」
「いいや、する。気持ち悪がって、化け物扱いする。」
「そんな昔話みたいな!」
「凡人は天才を色メガネで見る!」
「え?」
「ん?」
「え?今のが言いたかったとかじゃないですよね?」
「何が?」
「色メガネって、言いたかった訳じゃないですよね?だとしたら全くこれっぽっちも面」
「そんな訳ないだろ!そんな事より、バスが早く来て欲しかったら、もうその辺にあるモノでバスを作っちゃえばいいだろ!」
「こんな辺り一面見渡す限りトウモロコシ畑のその辺にあるモノでどうやってバスが作れるんですか!」
「天才なんだろ!」
「目が悪いだけです!」
「じゃあ!この問題もこの問題もこの問題もこの問題も解らないってのか!」
「解りませんよ!こんな超一流大学の問題集なんて解ける訳ないじゃないですか!と言うか、何でオジサンは超一流大学の問題集なんか読んでるんですか?受けるんですか?この超一流大学!」
「バスを待つ間の単なる暇潰し用にに買ってみただけさ。」
「私を巻き込まないで下さい!」
「巻き込むも何もキミがメガネ掛けてるから悪いんだろ!」
「だったら外しますよ!メガネ!だからもう絶対に話し掛けて来ないで下さいね!ほら!これでもう私は天才じゃありませんから!」
「キミ、メガネ掛けてない方が可愛いな。」
「え?」

第六百十話
メガネを外した方が可愛い女子にメガネを外させるテクニック~中級編~」

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2018年2月28日 (水)

「第六百十一話」

 人間は、呆気なく滅んだ。そう、あの悪魔の発明によって、人類はいとも容易く絶滅した。いや、正確には、絶滅も同然となった。増えも減りもしない日々を一体どれほど過ごしただろうか?人間は絶滅と同等になり、そしてその対価として永遠と同等を手に入れた。

第六百十一話
「全自動何もしないでいい機」

「人間ノ数ニ変化ナシ!本日モ晴天ナリ!繰リ返ス!本日モ晴天ナリ!」
「ん?」
「ピピ?」
「ん?」
「ピピピ!?」
「これは!?」

「異常事態発生!繰リ返ス!異常事態発生!」
どうやら、俺の機械がぶっ壊れたみたいだ。
「本日ハ晴天デハナイ!」
まったく、だから機械ってのは信用出来ないんだよ。また、面倒臭い日々が始まる。懐かしくて素晴らしいあの面倒臭い日々がな。
「本日ハ晴天デハナイ!」
まずは、この場をどうするか、だな?

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